【本当に怖い映画30選】トラウマ&衝撃作を“ジャンル不問”で編集部が厳選
2022年8月6日 10:00
「怖い映画」という言葉から、どのような作品を思い浮かべますか?
ホラーやスリラーといった“王道”に恐怖を感じる人もいれば、ラブストーリーや人間ドラマに垣間見えた要素を「怖い」と思ってしまう人もいるはず。「怖い映画」を定義づけるのは、なかなか難しいことなんです。
本記事では、映画.com編集部メンバーが「本当に怖い」と感じてしまった作品を合計30本セレクト。ジャンルは、あえて不問としています。編集部が全力でプッシュする“恐怖体験”――ぜひ味わってみてください!
イ・ビョンホンと「オールド・ボーイ」などで知られる実力派チェ・ミンシクが共演したクライム・サスペンス。「甘い人生」「グッド・バッド・ウィアード」でもビョンホンと組んだキム・ジウン監督がメガホンをとっている。
残忍な連続殺人犯ギョンチョル(チェ・ミンシク)に婚約者を惨殺された国家情報院捜査官スヒョン(イ・ビョンホン)。復しゅうの鬼と化したスヒョンは、犯人に婚約者と同じ苦しみを与えるべく、執ようなまでに追いつめていく。
まるで「殺人=お仕事」といった様子で淡々と命を奪っていくギョンチョルの姿にゾクっとするんですが、何よりも怖いのは……絶対に“負けない”という強固な意思。もちろん肉体的なスキルではスヒョンに歯が立たず、何度も何度も拷問&暴行を受け、ボロボロになっていきます。でも、彼は勝てない代わりに、絶対に負けない&諦めない(第六感も冴えてるので、さらにタチが悪い)。この執念が、本当にヤバイ。こんな奴に関わってしまったら“救い”なんてありゃしません。
捕まった者に死が訪れる謎の存在=「それ」に付け狙われた女性の恐怖を描いたホラー。「アメリカン・スリープオーバー」「アンダー・ザ・シルバーレイク」のデビッド・ロバート・ミッチェルが監督・脚本、マイカ・モンローが主演を務めている。
ある男と一夜を共にした19歳の女子大生ジェイ(マイカ・モンロー)。しかしその男が豹変し、ジェイは椅子に縛り付けられてしまう。男はジェイに「それ」をうつしたこと、そして「それ」に捕まったら必ず死ぬことを彼女に告げる。「それ」は人にうつすことができるが、うつした相手が死んだら自分に戻ってくるという。ジェイは刻一刻と迫ってくる「それ」から逃げ延びようとするが……。
「“それ”に捕まると死が訪れる」という設定や展開がシンプルだからこそ、恐怖の感度が徐々に高まってくる点が斬新。遠くの方にいたはずの“それ”が、カメラを360度パン(=一回転)すると、一気に近づいている……このシーンが、とてつもなく怖い。一体“それ”とは何なのか? とにかく静かに殺しにやってきて、その理由は曖昧。“怖い”表現の新たな可能性を示してくれています。
1973年イギリス製作のカルト映画として知られ、ニコラス・ケイジ主演でリメイクもされた「ウィッカーマン」のファイナルカット版。製作40周年記念として2013年、ロビン・ハーディ監督が未使用のフッテージも使用して再編集し、完成させた。
行方不明の少女捜索のためスコットランドの孤島に上陸したハウィー警部(エドワード・ウッドワード)。早速捜査に取り掛かるのだが、島はサマーアイル卿が統治するケルト神話に支配された禁断の地だった……。
“田舎の風習が怖すぎる”――「ミッドサマー」の元ネタとも言われる問題作。ハウィー警部が訪れた島では、豊作や子孫繁栄を願い、子どもたちにケルト神話をベースとした、エロティックで土着的な教育がなされています。敬虔なクリスチャンである警部は「島民=狂人」だと思い込み、祭のいけにえにされる少女救出に燃えていますが、島民から見れば「警部=異端者」。大盛り上がりの祭のクライマックスで捧げられるのは……「信仰とは?」と深く考えさせられるはず。
ジョージタウンを舞台に次々と起こる猟奇殺人を捜査する刑事が遭遇する悪魔憑き現象を描くオカルト・サスペンスの第3作。監督は「エクソシスト」原作者でもあるウィリアム・ピーター・ブラッティ。キンダーマン警部を主人公にした物語を構想し、続編として「Legion」を書き上げ、自身で映画化に着手した。
1990年、春。ポトマック河畔に黒人少年の首なし死体が上がる。その右手に彫られた双子座を見た途端、キンダーマン警部(ジョージ・C・スコット)の脳裏に15年前起きたそっくり同じ手口の連続殺人の記憶が蘇える。その後、不可解な殺人が連続。手がかりをつかめないキンダーマンは、精神科の責任者・テンプル医師の口から意外な事実を聞かされる。患者の中に15年前に記憶を失い、回復してくると「自分が双子座殺人犯だ」と名乗り出した男がいると言う。問い詰めるキンダーマンに対して、その男は自らを誰でもない、たくさんの人間“レギオン”だと言う。それは新約聖書の中にある悪魔にとりつかれた人間が、イエスに対して答える言葉だった。
原作者ウィリアム・ピーター・ブラッティが「これがやりたかったんだ!」と自ら提示した第3弾は、サイコスリラー要素高め。キンダーマン警部が超ハードな猟奇事件と対峙していくという形式で物語が進行し、後半からはオカルト濃度急上昇。特筆すべきは、超長回しを経て登場する、巨大なハサミを持った殺人鬼です。毎回「驚かすんじゃねぇ!」と震えながらツッコミ。鑑賞のたびに寿命が縮んでいます。それと天井を這う老婆! 妙に素早いので、不気味度マシマシ……。
日本が誇る怪奇小説家江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」をベースに、日活ロマンポルノならではのお色気シーンてんこ盛りで描いた異色作。夜となく昼となく天井裏を散歩し、他人の生活をのぞき、ついには殺人まで犯す男を描き出す。監督は「(秘)色情めす市場」「牝猫たちの夜」「人妻集団暴行致死事件」の田中登。
遠く浅草十二階をのぞむここは、下宿、東栄館。その屋根裏をゆっくりと這う男の影……郷田三郎(石橋蓮司)だ。貴婦人・清宮美那子(宮下順子)の穏し部屋。そこへ美那子が入ってくると、頬に紅をつけた道化師が現われ、美那子を愛撫する。喘ぐ美那子の表情が、一瞬停止した。誰かが見ている……。屋根裏の散歩にこよなき孤独の愉しみを見いだした郷田の眼下では、下宿館の住人たちの秘め事がくりひろげられている。エス様(神)を生真面目に信仰しながら、女中にいたずらしている遠藤。女のモデルにダリ風のボディペインティングをする女流画家・美幸。郷田はふと天井のふし穴からモルヒネをたらして殺人する幻想にとらわれた。
時は大正時代。夫の居ぬ間に“人間椅子”に座って快楽をむさぼり、またチンドン屋の水玉衣装のピエロと情事にふけるという、状況的にも視覚的にもぶっ飛んだ性癖を持つ美しき有閑マダムが主人公。さらに、退屈を持て余し、天井裏に忍び込んだ覗き趣味の若者にその行為を見られることで、ますます興奮のボルテージが高まるという超変態ぶりを我々観客が目撃するという構造がなんとも倒錯的。究極のエロスとタナトス、そして度肝を抜かれるラストを見届けてほしいです。
海辺の町で暮らす5歳の少年・宗介は、クラゲに乗って家出した魚の子ども・ポニョに出会う。すぐに仲良くなる彼らだったが、ポニョはかつて人間だった父・フジモトによって海に連れ戻されてしまう。ポニョは父の魔法を盗んで再び宗介のもとを目指すが……。
あっけらかんとした明るい主題歌、ボーイミーツガールの物語と、一見怖い要素はなさそうですが、海を舞台にしたダークファンタジーとしてのすごみを感じます。終盤、町が海に沈んで以降のシーンには「風立ちぬ」でも描かれた“あの世”が顕界したかのような独特のムードがあり、見るたびに何とも言えない寂しさと怖さにおそわれます。
直木賞作家・角田光代の同名小説を小泉今日子主演で実写映画化。ある一家の崩壊と再生を描いた家族ドラマ。「ナイン・ソウルズ」の板尾創路、「花とアリス」の鈴木杏、「ツィゴイネルワイゼン」の大楠道代が共演し、「青い春」「全員切腹」の豊田利晃が監督・脚本を担当している。
東京郊外のニュータウンで暮らす京橋家には「隠し事をしない」というルールがあるが、実は家族それぞれが秘密を抱えていた。娘のマナ(鈴木杏)は学校をサボり、息子コウ(広田雅裕)も引きこもりがち、父・貴史(板尾創路)は愛人を作り、妻の絵里子(小泉今日子)は母との間に積年のわだかまりがある。そんなある日、貴史の愛人ミーナ(ソニン)がコウの家庭教師として京橋家にやって来たことをきっかけに、家族の秘密が次々と明らかになっていく。
表向きには“理想的な家族”のように見えている京橋家の秘密が徐々に明らかになっていく様は、現代社会の家族の姿を浮き彫りにしているようで、じわじわと怖いという印象。極めつけは、母親役の小泉今日子が体現した、家庭にも世間にも見せない“顔”。「コンビニで振り返る」というシーンで描かれる表情が、背筋が凍るほど怖く、そして美しいんです。
「嫌われ松子の一生」「告白」「渇き。」の中島哲也監督が、「第22回日本ホラー大賞」で大賞に輝いた澤村伊智氏の小説「ぼぎわんが、来る」を映画化したホラー。岡田准一がオカルトライターの野崎役で主演し、黒木華、小松菜奈、松たか子、妻夫木聡らが共演している。
恋人の香奈(黒木華)との結婚式を終え、幸せな新婚生活を送る田原秀樹(妻夫木聡)の会社に謎の来訪者が現れ、取り次いだ後輩に「知紗さんの件で」との伝言を残していく。知紗とは妊娠した香奈が名づけたばかりの娘の名前で、来訪者がその名を知っていたことに、秀樹は戦慄を覚える。そして来訪者が誰かわからぬまま、取り次いだ後輩が謎の死を遂げる。それから2年、秀樹の周囲で不可解な出来事が次々と起こり、不安になった秀樹は知人から強い霊感を持つ真琴(小松菜奈)を紹介してもらう。得体の知れぬ強大な力を感じた真琴。迫り来る謎の存在にカタをつけるため、国内一の霊媒師で真琴の姉・琴子(松たか子)をはじめ、全国から猛者たちを次々と召集する。
人間の醜さもしっかりと描かれているところが好きな作品ですが、特に怖かったのはやっぱり“あれ”のシーン。霊能力者・琴子から携帯電話で指示を受けた秀樹は、家の鏡を全部割るなどして“あれ”の襲来に備えます。しかし、今度は家の固定電話が鳴り、琴子の声で「携帯で話す琴子は“あれ”のなりすまし」だと伝えられます……が、琴子の抑揚のない喋り方もあって(松たか子さんがいい!)、本当の琴子はどっちなのか、どっちの琴子の指示に従えばいいのかがわからない。この真相は本編でぜひ。
「パラノーマル・アクティビティ」「インシディアス」「ヴィジット」など人気ホラー作品を手がけるジェイソン・ブラムが製作し、アメリカのお笑いコンビ「キー&ピール」のジョーダン・ピール(「アス」「NOPE ノープ」)が初メガホンをとったホラー。低予算ながら全米で大ヒットを記録し、第90回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞の4部門にノミネートされ、脚本賞を受賞している。
アフリカ系アメリカ人の写真家クリス(ダニエル・カルーヤ)は、白人の彼女ローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家へ招待される。過剰なまでの歓迎を受けたクリスは、ローズの実家に黒人の使用人がいることに妙な違和感を覚えていた。その翌日、亡くなったローズの祖父を讃えるパーティに出席したクリスは、参加者がなぜか白人ばかりで気が滅入っていた。そんな中、黒人の若者を発見したクリスは思わず彼にカメラを向ける。しかし、フラッシュがたかれたのと同時に若者は鼻から血を流し、態度を急変させて「出て行け!」とクリスに襲いかかってくる。
アメリカに根強く残る人種差別の問題を、サプライズ展開に唸るホラーへと鮮やかに昇華している秀作。表面的には黒人のクリスを歓迎しているような白人の一族に、(宣伝コピーにもなっている)「何かがおかしい」感覚が積み重なっていきます。なかでも印象的なのは、クリスや黒人の使用人たちが流す涙。「笑みを浮かべながら泣く」という奇々怪々な表現を発明(!?)した、メイド役のベッティ・ガブリエルは、眠れなくなるほど怖いです。
CNNが選出した世界7大心霊スポットにも数えられた実在の廃病院「コンジアム精神病院」を舞台に、忌まわしい場所に足を踏み入れた若者たちの運命をPOV形式で描いた韓国製ホラー。キャストに小型カメラを装着して大半のシーンを彼ら自身に撮影させるという手法をとり、リアリティと臨場感を追求している。
YouTubeで恐怖動画を配信する人気チャンネル「ホラータイムズ」が一般参加者を募り、数々の都市伝説を生んだ心霊スポットであるコンジアム精神病院からのライブ中継を計画する。主宰者ハジュン(ウィ・ハジュン)を隊長とする7人の男女は、いくつものカメラやドローン、電磁検出器といった機材を持ち込み、深夜0時に探索を開始。ハジュンが仕掛けた演出も功を奏し、サイトへのアクセス数は順調に伸びていくが、次第にハジュンの想定を超えた怪現象が次々と起こり始める。
ホラー映画には「やってはいけない」「行ってはいけない」というルールを守らず、自ら地雷を踏みぬいていく猛者が欠かせません(台湾ホラー「呪詛」にもいましたね)。最恐スポットからライブ中継を行い、さらには怪現象も演出……禁忌を侵した若者たちに、異形の者たちの怒りはMAX。“追い詰め方”が尋常じゃないんですよ……。小型カメラで撮影された映像で恐ろしさ倍増。怪音とともに、極端なアップで映し出される“黒目の顔”――夢に出てきて、飛び起きたことがあります。
地球規模で新種のウイルスが感染拡大していく恐怖を描いたサスペンス大作。監督は「トラフィック」「オーシャンズ11」のスティーブン・ソダーバーグ。マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレットら豪華キャストが出演している。
接触感染により数日で命を落とすという強力な新種ウイルスが香港で発生。感染は瞬く間に世界中に拡大していく。見えないウイルスの脅威に人々はパニックに襲われ、その恐怖の中で生き残るための道を探っていく。
コロナ禍を予見していたかのような内容で、今見ると現実との符合に気が滅入ってしまう1本。女性が咳き込む導入から受け取る意味合いがまったく違って感じられ、淡々とした描写に終始ドキドキさせられます。そして、ジュード・ロウ演じるフリーの記者が悪意をもって陰謀論をばらまき、パニックを扇動するところが非常に怖いんです。
イタリアンホラーの旗手ダリオ・アルジェントが、連続猟奇殺人事件に巻き込まれたピアニストが謎の解明に挑む姿をショッキング描写満載で描いたサスペンススリラー。デビッド・ヘミングス、ダリア・ニコロディ、マーシャ・メリルが出演。
ローマで開催された欧州超心霊学会で、テレパシーの能力を持つヘルガ(マーシャ・メリル)が突然悲鳴をあげた。彼女は会場内に恐ろしい殺人犯がいることを告げる。その後、ヘルガは自宅アパートで何者かに襲われ惨殺されてしまう。悲鳴を聞いて駆けつけたイギリス人ピアニストのマーク(デビッド・ヘミングス)は容疑者を目撃し、事件の真相を突き止めるべく奔走する。
イタリアンホラーの大傑作「サスペリア」のダリオ・アルジェント監督作ですが、実は「サスペリア」以前に製作されており、日本の公開時の都合でこのタイトルになってしまった「PART2」。元祖のバレエ学校とは何の関連性もなく、原題「Profondo Rosso」(深紅)のとおり、真っ赤な流血が観る者の脳裏にこびりつく恐怖を描いています。とある事件を目撃した主人公が謎の連続殺人を追う物語で、殺害方法がとにかくエグイ。出てくるアイテム、色彩、カメラワークのすべてが恐ろしく美しい芸術的ホラー。犯人を見つけ出す仕掛けも超一級。「サスペリア」でも印象的なゴブリンのプログレロックが本作でも響き渡り、視覚と聴覚をビンビンに刺激します。
ある日突然消えた恋人を捜す執念と亡霊にとり憑かれたかのような男が、次第に精神的に追い詰められていく姿を描いたサイコサスペンス。1988年に製作され、93年には監督のジョルジュ・シュルイツァー自身のメガホンにより、「失踪 妄想は究極の凶器」(ジェフ・ブリッジス、キーファー・サザーランド、サンドラ・ブロック出演)としてハリウッドリメイクもされている。
オランダからフランスへ車で小旅行に出がけたレックス(ジーン・ベルボーツ)とサスキア(ヨハンナ・テア・ステーゲ)だったが、立ち寄ったドライブインで、サスキアがこつ然と姿を消してしまう。レックスは必死に彼女を捜すが手がかりは得られず、3年の月日が流れる。それでもなお捜索を続けていたレックスのもとへ、犯人らしき人物からの手紙が何通も届き始める。
あの「シャイニング」の巨匠キューブリックが3回鑑賞し、「これまで見たすべての映画の中で最も恐ろしい映画」とコメントしたガチサイコパス案件。自らクロロホルム実験を行うという周到な計画犯罪を企てターゲットを探す犯人のレイモン(ベルナール=ピエール・ドナデュー)。自己顕示欲も強く、信じられないような方法でレックスに接近します。その後のふたりの心の動き、平然と悪行を行うレイモンの“表の顔”に驚愕必至。本当に“血も涙もない”人間の恐怖を描くサスペンスです。
小野不由美による第26回山本周五郎賞受賞の同名ホラー小説を映画化。監督は「決算!忠臣蔵」「忍びの国」「予告犯」や、心霊ホラードキュメンタリー「ほんとにあった!呪いのビデオ」シリーズを手掛けた中村義洋。主人公を竹内結子さんが演じ、橋本愛、佐々木蔵之介、坂口健太郎、滝藤賢一らが脇を固める。
小説家の「私」(竹内結子)に、読者である女子大生の久保さん(橋本愛)から届いた一通の手紙。「住んでいる部屋で奇妙な音がする」と書かれたその手紙に、好奇心から「私」と久保さんが調査を開始する。そこで明らかとなったのは、その部屋の過去の住人たちが転居先で自殺や無理心中、殺人などさまざまな事件を引き起こしたという事実だった。彼らは、なぜその部屋ではなく、さまざまな別の場所で不幸に遭ったのか。「私」たちは、ある真相にたどり着き、さらなる事件に巻き込まれることとなる。
それなりの本数のホラーを観てきましたが、“身の毛がよだつ”とはこういう事を言うのか……と感じるほど、恐怖を感じた作品は後にも先にもこの1本のみです。これは過去の因縁、土地と家をめぐる呪い、穢(けが)れの話。鑑賞後、思わず実家の建つ土地が昔はなんだったのか調べてしまったほどです。自分が暮らす部屋で不可解な音がしたら、誰だって不穏なものを感じますよね。それにしても容赦のない恐怖を撮り上げた中村義洋監督、もう1度観てと言われても、まっぴらごめんです。
未現像だったフィルムの発見を機に、撮影所内で次々に起こる奇怪な出来事を描いたホラー映画。「リング」の中田秀夫監督の劇場デビュー作。「ハリウッド・ホンコン」「メイド・イン・ホンコン」のフルーツ・チャン監督が「THE JOYUREI 女優霊」としてハリウッドリメイクしている。
監督に昇進したばかりの村井(柳憂怜)は、初監督作品の撮影に意欲をみせていた。セットも組まれ、カメラ・テストも順調に進む。ところが、そのテスト・フィルムには途中から全く別の映像がダブっていた。端尺フィルムだと思っていたものが、実は未現像のフィルムだったらしい。しかし、その映像を小学生の頃にテレビで見た記憶がある村井はすっきりしなかった。和やかな雰囲気の下、撮影は順調に進んでいったが、ある日、村井はロケバスの窓から例のフィルムに写っていた女優の背後にいた髪の長い女の姿を見つける。それをきっかけに、現場では次々と不思議な出来事が起こっていく。
本来そこにいないはずのもの、見えないはずのものに遭遇してしまった時、人は恐怖を感じると思います。本作のところどころで画面に映り込む禍々しい存在は、まさに絶対に遭遇したくないキャラクター。登場するたびに心臓が縮み上がります。中田監督が後年大ヒットさせる「リング」のような派手さはなく、無駄を削ぎ落としたシンプルな作りですが、逆にそれが恐怖を増しています。日本のホラー史に残る名キャラクター“貞子”の原型とも言われる、謎の“女幽霊”をぜひご覧ください。
大型ディスカウントショップのスピード現像カウンターで働く中年男サイ・パリッシュ(ロビン・ウィリアムズ)。長年、真面目に仕事に携わってきた彼だが、私生活では家族も友人もいない。そんなサイは、常連客である主婦ニーナ・ヨーキン(コニー・ニールセン)の幸福な家庭に憧れている。いつしか彼は、ヨーキン家のスナップ写真を密かに自宅の壁に貼り、自分が家族の一員になる空想にふけるように。しかし実際のヨーキン家は幸福ではなく、ニーナは夫との諍いが続く日々を送っていた。
「ミセス・ダウト」「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」などコメディ作品や良い人の役柄のイメージが強いロビン・ウィリアムズが、写真現像屋で働く孤独な中年男性を怪演しています。にこやかなのにまったく笑っていない目が印象的。全体的に白い画面もあいまって、“静かな狂気”をじわじわと感じられる珠玉の1本です。
鬼才ポール・トーマス・アンダーソン監督が、20世紀初頭のカリフォルニアの石油産業を背景に、家族、宗教、裏切り、そして欲望について描いた人間ドラマ。主演はオスカー俳優ダニエル・デイ=ルイス。第80回アカデミー賞では主演男優賞と撮影賞を受賞している。
1920年代のカリフォルニア。石油採掘業者のダニエル・プレインビュー(ダニエル・デイ=ルイス)は、ほこりまみれの町リトル・ボストンへおもむく。そこで見事に石油を掘り当て、莫大な富を築き上げたプレインビュー。息子との関係、住民の絶大な信頼を集めるカリスマ牧師イーライ・サンデー(ポール・ダノ)との対立などを通じて、次第に破滅への道を辿っていく。
ジョニー・グリーンウッドの音楽とともに、息が詰まりそうな、ただならぬ恐ろしさが全編を覆っているとんでもない作品。石油採掘業者プレインビューの壮絶な欲望や裏切りが描かれ、父と息子の関係、家族、宗教を背景に、人間が持つ底知れぬ心の闇の怖さ、悲しさを、観る者にたたきつけます。ダニエル・デイ=ルイスが演じたプレインビューがラストに起こす行為が衝撃的。脳裏から離れなくなるはずです。
国の古典怪談「薔花紅蓮伝」をベースに、人里離れた家に住む一家の継母と美しい姉妹の確執、そして“家”自体が放つ禍々しい怪奇現象を描いた恐怖映画。「グッド・バッド・ウィアード」「悪魔を見た」「密偵」のキム・ジウン監督が、原作のモチーフのみを踏襲し、結末の予測できないホラー映画として現代的に再構築している。
ソウル郊外に静かに佇む一軒家。長期入院を終えて、スミ(イム・スジョン)とスヨン(ムン・グニョン)の美しい姉妹が帰ってきた。継母のウンジュ(ヨム・ジョンア)は笑顔で迎えるが、ふたりはどこか冷ややかな表情をしていた。姉のスミは継母のことを明らかに毛嫌いし、妹のスヨンは少し怯えている。その夜、スヨンは部屋に何者かの気配を感じて怖くなり、スミのベッドにもぐりこんだ。「私が守ってあげるからね」とスヨンを抱きしめるスミ。しかし、やがてそのスミが悪夢にうなされるよう。それは、亡くなった実母が血を流す幽霊となりよみがえってくる夢だった。その悪夢以来、家のあちらこちらで怪奇現象が連続して起こり始める。
目を引くDVDのジャケットに惹かれて鑑賞しました。すべてが明らかになるラストの展開に震えますが、個人的には“音”が特に怖い。姉妹の叫び声(やたら叫ぶ)、怪奇現象を強調するいや~な効果音、家の中を歩くぎしぎしとした音。不安になる音がたくさん使用され、いつの間にか、やかんのお湯が沸騰した音さえ怖くなってきます。ホラー耐性がある方は、ヘッドホンをつけての鑑賞がおすすめ。
第51回アカデミー賞で作品賞、監督賞、助演男優賞など5部門を制した戦争ドラマ。ロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン、ジョン・カザール、メリル・ストリープらが共演し、ベトナム戦争で心身に深い傷を負った男たちの苦悩と友情、そして戦争の狂気を描いている。監督は「サンダーボルト」「天国の門」のマイケル・チミノ。
ペンシルベニアの製鋼所で働くマイケル(ロバート・デ・ニーロ)、ニック(クリストファー・ウォーケン)、スティーブン(ジョン・サベージ)たちは休日になると鹿狩りを楽しんでいた。やがてマイケルたちは徴兵され、ベトナムへ。彼らは戦場で再会するが、捕虜となり、残酷な拷問ゲームを強要される。マイケルの機転で脱出に成功するが、その後ニックは行方不明に。マイケルは彼を捜すが……。
故郷での日常描写から一転、人間を変えてしまうほどの戦場の狂気、愚かさ、残虐性、怖さが痛々しい。特にロバート・デ・ニーロ演じる主人公たちが捕虜となって強いられるロシアンルーレット(自分の頭に銃口を向けて引き金を引くゲーム)のシーン。死への恐怖を超えると「泣き笑いしてしまう」という緊迫感あふれる光景によって、「恐ろしい」という感情以外のものも芽生えるはず。
ギレルモ・デル・トロ製作でハリウッドリメイクが決定したアルゼンチン製の新感覚ホラー。アルゼンチンの住宅街で起こる怪奇現象をショッキングなシーンの連続で描き、世界各地のファンタスティック映画祭で話題を呼んだ。
ブエノスアイレスの住宅で、下水溝から不気味な声が聞こえたり、歩く子どもの死体が現れたりといった怪奇現象が続発する。警察官のマザはパラノーマル現象を研究するチームと協力し、真相を解明するべく現地へと向かう。しかし、殺意に満ちた恐ろしい悪霊たちが、彼らに襲いかかる。
大半のホラー映画では、怪現象に対して「実行する者」と「目的」が明示されます。ですが、本作では、その部分がほぼ“謎”。「起こってしまうんだから仕方がないだろ?」精神で、とんでもない量の怪奇現象が頻発します(しかも致死性の高い凶悪なものばかり)。初っ端から登場する“壁叩きつけシーン”が強烈ですし、全裸怪人&首折れ老女のビジュアルも悪夢。なにより「超常現象の調査チームが、怪異に対抗する術を一切もっていなかった」という点が一番怖いと思います。
突如として凶暴化した鳥の大群に襲われる人々の恐怖を描いた、アルフレッド・ヒッチコック監督による名作パニックスリラー。ダフネ・デュ・モーリアの短編小説を原作に、推理小説作家エバン・ハンターが脚色を手がけている。
新聞社の社長令嬢メラニー(ティッピー・ヘドレン)は、ペットショップで知り合った弁護士ミッチ(ロッド・テイラー)に興味を抱き、彼を追ってボデガ湾沿いの港町を訪れる。その町で、メラニーは突然舞い降りてきた1羽のカモメに額をつつかれてしまう。翌日、ミッチの妹キャシー(ベロニカ・カートライト)の誕生日パーティで、カモメの大群が子どもたちを襲う事件が発生。夜には無数のスズメがミッチの家に侵入し、その後も町のあちこちで鳥の大群が人間たちに襲いかかる。
初めて見たのは、確か小学校低学年のとき。「小鳥の映画かな」とウキウキしながらテレビをつけましたが、1時間後には後悔することに。途中から一緒に見始めた母親に「カラスのシーンが怖いよ」「この後カラスが……」と何度も予告されていたにも関わらず、群れになったカラスが人を襲うシーンは想像の何倍も怖かったです。目をくり抜くのはトラウマ。鑑賞して以来、道端にいるカラスにも怯えるようになりました。
刺激的な映像を求めて夜のロサンゼルスを駆けめぐる報道パパラッチの姿を通し、視聴率至上主義のテレビ業界の裏側を浮き彫りにしたサスペンススリラー。主演は、ジェイク・ギレンホール。「ボーン・レガシー」などの脚本家として知られるダン・ギルロイの長編監督デビュー作。
まともな仕事にありつけず軽犯罪で日銭を稼ぐ男ルイス(ジェイク・ギレンホール)は、偶然通りかかった事故現場で報道スクープ専門の映像パパラッチの存在を知り、自分もやってみようと思い立つ。早速ビデオカメラを手に入れたルイスは、警察無線を傍受して事件や事故の現場に猛スピードで駆けつけ、悲惨な映像を次々と撮影していく。過激な映像で高額な報酬を得るようになったルイスは、さらなるスクープ映像を求めて行動をエスカレートさせていき、ついに一線を越えてしまう。
ギレンホール演じる報道パパラッチのルイスの、悲惨な事故現場を渇望する常軌を逸した眼差し、焦げつくような激しい野心に震えます。モラルを踏みつけ、法さえも越え、次第に制御不能になっていく男の行動に恐怖しつつも、そんな“怪物”を生み出したのは、視聴率至上主義のテレビ業界や、より過激な映像を見たがる視聴者たち(私たち)。ルイスの身の毛もよだつサクセスストーリーに、不快感がこみ上げること必至です。
キャロル(カトリーヌ・ドヌーブ)は、姉のヘレン(イボンヌ・フルノー)とアパート暮しをしている。姉にはマイケル(イアン・ヘンドリー)という恋人があり、毎日のようにアパートに連れて来て泊め、神経質で潔癖なキャロルに嫌悪感を抱かせた。キャロルにもコリンという恋人がいたが、接吻されただけで身の毛がよだつ。アパートに帰って口をすすがずにいられない。ある日姉たちは旅行に出かけた。一人残されたキャロルは勤め先でも男の話だけしか聞けない。ある晩、男に犯される夢を見た。それ以降仕事も休むようになり、ぼんやり部屋で過すように。部屋の壁が大きく裂けたり、粘土のようにやわらかくなる……彼女の幻覚なのか、現実なのかわからない。そんな時、コリンが訪ねて来たことで事件が起こる。
当時のドヌーブは20代前半、ほっそりと儚げでどこか陰のある美少女といった佇まいです。その美貌から、街を歩けば男たちから性的な視線を送られ、一見優しそうな恋人は実は自己中。姉は既婚者の恋人を自宅に連れ込み、キャロルは情事の音で眠りを妨げられる……。そんな生活で極度の男性嫌悪に陥ったキャロルは次第に精神のバランスを崩し、姉の留守中に恐ろしい狂気にとり憑かれてしまいます。荒んでいく家、キャロルの幻聴や幻覚を、観客の不安をあおる映像と音で表現。血しぶき飛び散る陰惨なシーンは、モノクロームで良かった…と思えるほど。
スティーブン・スピルバーグ監督が、第2次世界大戦時のノルマンディー上陸作戦を題材に、極限状態に置かれた兵士たちの絆と生きざまを描いた戦争ドラマ。第71回アカデミー賞では監督賞、撮影賞など5部門を受賞。トム・ハンクスが主演を務め、トム・サイズモア、エドワード・バーンズ、バリー・ペッパー、ビン・ディーゼル、マット・デイモンらが共演している。
1944年。連合軍はフランスのノルマンディー海岸に上陸するが、多くの兵士たちが命を落とした。激戦を生き延びたミラー大尉は、最前線で行方不明になった落下傘兵ジェームズ・ライアン二等兵(マット・デイモン)の救出を命じられる。ライアン家は4人の息子のうち3人が相次いで戦死しており、軍上層部は末っ子のジェームズだけでも故郷の母親の元へ帰還させようと考えたのだ。ミラー大尉(トム・ハンクス)と彼が選んだ7人の兵士たちは、1人を救うために8人の命が危険にさらされることに疑問を抱きながらも戦場へと向かう。
人が人を殺し、殺される戦争の一端が体感できる「怖い映画」。音の要素が強いので、5.1チャンネルで鑑賞しないと怖さが半減すると思います。戦争映画の歴史をかえた冒頭のオマハビーチの死闘はもちろん、物語の後半、メリッシュ(アダム・ゴールドバーグ)がドイツ兵ともみあう光景が鮮烈。「ナイフが体にじわじわと入り、命を落とす」というシーンが、公開当時、とてつもなく怖かったことを、今でも憶えています。
第91回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作。ロープや安全装置を一切使わずに山や絶壁を登る「フリーソロ」と呼ばれるクライミングスタイルで世界的に知られるクライマー、アレックス・オノルドの緊迫感あふれるクライミングに密着。監督は、山岳ドキュメンタリー「MERU メルー」も高い評価を得たエリザベス・チャイ・バサルヘリィ&ジミー・チン。
ナショナル・ジオグラフィック誌の表紙を飾るなど、世界で著名なクライマーの1人として活躍するアレックス・オノルドには、1つの夢があった。それは、世界屈指の危険な断崖絶壁であり、これまで誰もフリーソロで登りきった者はいない、米カリフォルニア州ヨセミテ国立公園にそびえる巨岩エル・キャピタンに挑むこと。この前人未到のフリーソロのために幾度の失敗と練習を重ねてきたオノルドは、2017年6月3日、ついにエル・キャピタンへの挑戦を開始する。
“フリーソロ”とは、安全装置を一切使わずに山や絶壁を登るクライミングスタイルのこと。カメラは同じ目線でそのクライミングの様子を捉えているので、次の瞬間には絶壁から落ちてしまうのではないかという怖さと緊張感が半端なく伝わってきます。そしてそれ以上に、そんなことに挑み続ける世界的クライマー、アレックスの死への恐怖を超越したような覚悟と、生き様が恐ろしくもあり、尊く感じられるはずです。
幼い娘を殺された男と、彼に手を貸した謎の男が繰り広げる復讐劇を描いたバイオレンス・ドラマ。監督は「回路」「CURE」「スパイの妻 劇場版」の黒沢清。脚本は「リング」の高橋洋。撮影は「萌の朱雀」の田村正毅が担当。哀川翔と香川照之が出演している。
幼い愛娘を暴行の末、殺害された宮下(香川照之)は、偶然知り合った塾の講師・新島(哀川翔)の協力を得て、犯人への復讐を企んでいた。ある組織の幹部・大槻(下元史朗)を拉致監禁した彼らは、拷問にも似たやり方で実行犯を暴こうとする。やがて、大槻の口から檜山(柳ユーレイ)の名前があがった。ところが、その名前を聞いた途端、宮下がひどく狼狽し始めた。彼は以前、その男と関係を持っており、彼の恐ろしさを知っていたのだ。それでも、新島の勢いに押されて、宮下は檜山を拉致。大槻と共に監禁し、娘を殺害した犯人の名前を吐かせようとするが、事態は思わぬ方向へと転じていく。
ビデオデッキとテレビ。ネタバレになってしまうので深く言及しませんが、凶悪過ぎるアイテムと化します。ひとまず鑑賞してみてください。待ち受けているのは、想像だにしない絶望です。
家長である祖母の死をきっかけに、さまざまな恐怖に見舞われる一家を描いたホラー。監督は、本作が長編デビューとなったアリ・アスター(「ミッドサマー」)。トニ・コレット、ガブリエル・バーン、アレックス・ウルフ、ミリー・シャピロが出演している。
祖母エレンが亡くなったグラハム家。過去のある出来事により、母に対して愛憎交じりの感情を持ってた娘のアニー(トニ・コレット)も、夫、2人の子どもたちとともに淡々と葬儀を執り行った。祖母が亡くなった喪失感を乗り越えようとするグラハム家に奇妙な出来事が頻発。最悪な事態に陥った一家は修復不能なまでに崩壊してしまうが、亡くなったエレンの遺品が収められた箱に「私を憎まないで」と書かれたメモが挟まれていた。
呪いのビデオが巻き起こす惨劇を描いた鈴木光司氏のベストセラー小説を、中田秀夫監督&高橋洋脚本で映画化し大ヒットを記録したホラー映画。ジャパニーズホラーブームの火付け役となり、2002年にはハリウッドでリメイクされた。
テレビディレクターの浅川玲子(松嶋菜々子)は、「見ると一週間後に死ぬ」と巷で噂されるビデオテープの存在を知る。親戚の娘も犠牲になったことを知り調査を開始するが、玲子自身もそのビデオを見てしまう。玲子は元夫である大学講師・高山竜司(真田広之)に相談し、ビデオの映像を分析。三原山の噴火に関係があることを突き止めた彼らは、大島へ向かう。
語りたくなるシーンがたくさんあるJホラーの名作ですが、個人的には呪いのビデオに出てくる“鏡”が一番怖いです。貞子の母親が髪を梳かしている、シンプルな鏡。実家で「リング」を鑑賞後にふと後ろを見ると、ほぼ同じ(に見える)鏡が壁に掛けられていたんです。恐る恐る「ねぇ、うちにあるあの鏡、『リング』に出てきたのと一緒じゃない?」と家族に投げかけてみたところ、怖がりでまだ貞子の衝撃から抜け切れていなかった姉から「なんでそんな余計なことに気付くの」とぶち切れられ、大喧嘩をすることに。悲しい思い出もよみがえる、思い出深いシーンです。ちなみに、その鏡はある日突然割れてしまい、数年前に捨ててしまいました。
スランプ中の若手作家と現実世界に出現した小説のヒロインが繰り広げる恋を描いたラブストーリー。「リトル・ミス・サンシャイン」のジョナサン・デイトン&バレリー・ファリスが同作以来6年ぶりに手がけた監督作。脚本を執筆し、タイトルロールを演じたのは、映画監督エリア・カザンの孫娘ゾーイ・カザン。共演はポール・ダノ。
19歳で天才作家として華々しくデビューしたものの、その後10年間にわたりスランプに陥っているカルヴィン(ポール・ダノ)は、夢で見た理想の女の子ルビー・スパークスを主人公に小説を書き始める。するとある日、目の前にルビー(ゾーイ・カザン)が現れ、カルヴィンと一緒に生活を始める。しかし、ルビーが自分の想像の産物であることを隠そうと、カルヴィンは周囲と距離を置き、そのことに寂しさを覚えたルビーは、新しい仲間たちと交流を広げていく。そうして次第に関係がぎこちなくなっていく2人だったが……。
恋愛相手が自分の理想からずれていったとき、自分ならどうするのか――。実生活でも相手のここだけは嫌だと感じるとき、ありますよね。嫌な部分も含めて好きになれたらいいのですが、主人公のカルヴィンは自己愛が高すぎてそれができません。終盤、カルヴィンが文字を打ちながらルビーを思いのままに操るシーンは、狂気じみていて本当にぞっとします。恋愛って本当は結構えぐいです。
「タイタニック」(97)のレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが11年ぶりに共演し、ある夫婦の夢や葛藤を描いた人間ドラマ。監督は「アメリカン・ビューティー」「007 スペクター」「1917 命をかけた伝令」のサム・メンデス。
1950年代アメリカ・コネチカット。郊外の閑静な住宅街に暮らし、子どもにも恵まれた理想の夫婦フランク(レオナルド・ディカプリオ)とエイプリル(ケイト・ウィンスレット)。しかし、2人はマンネリ化する日々に不満を募らせて、次第に溝を深めていく。
まるで「タイタニック」のアナザーバージョンのような、ロマンティックな出会いが描かれるのも束の間、地獄の夫婦喧嘩が開始数分で勃発。冒頭からヘビーに感じるのですが、その後の鬱展開を辿れば、ほんのジャブだったことに気付かされます。恋愛と結婚、出産、夢。ライフイベントに抱く甘い幻想を雲散霧消させ、誰もが目を逸らし、絶対に認めてはならない“人生の真実”が暴かれていきます。何も信じられなくなる前に、耳をふさぐのが賢明かも。私は高校生のときに鑑賞し、結婚観をがらりと変えられました。
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父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
文豪・田山花袋が明治40年に発表した代表作で、日本の私小説の出発点とも言われる「蒲団」を原案に描いた人間ドラマ。物語の舞台を明治から現代の令和に、主人公を小説家から脚本家に置き換えて映画化した。 仕事への情熱を失い、妻のまどかとの関係も冷え切っていた脚本家の竹中時雄は、彼の作品のファンで脚本家を目指しているという若い女性・横山芳美に弟子入りを懇願され、彼女と師弟関係を結ぶ。一緒に仕事をするうちに芳美に物書きとしてのセンスを認め、同時に彼女に対して恋愛感情を抱くようになる時雄。芳美とともにいることで自身も納得する文章が書けるようになり、公私ともに充実していくが、芳美の恋人が上京してくるという話を聞き、嫉妬心と焦燥感に駆られる。 監督は「テイクオーバーゾーン」の山嵜晋平、脚本は「戦争と一人の女」「花腐し」などで共同脚本を手がけた中野太。主人公の時雄役を斉藤陽一郎が務め、芳子役は「ベイビーわるきゅーれ」の秋谷百音、まどか役は片岡礼子がそれぞれ演じた。