ホワイトバード はじまりのワンダー : 特集
大ヒット作「ワンダー」ファンが唸った“珠玉の傑作”
あれから6年。いじめっ子・ジュリアンはどうしてる?
おばあちゃんの衝撃の過去を知り、彼は何を想うのか…
2024年ラストを“優しい涙”で包んでくれる感動作
注目作品が大量に公開される2024年、12月。あれも観たい、これも観たいと映画好きにとって嬉しい悩みが増えますが、映画.com編集部に所属する筆者の個人的な注目作は、12月6日公開の「ホワイトバード はじまりのワンダー」です。
世界中で大ヒットし、日本でも“自分のベスト映画”に挙げる人が多い「ワンダー 君は太陽」の“もうひとつ”の物語が描かれ、主人公はいじめっ子だったジュリアンとそのおばあちゃん。正直、「ワンダー」そのままの雰囲気をイメージしていると印象は異なりますが、「ワンダー」ファンでもある筆者が観た感想は……
「ワンダー」そのままではないですが、同作を観た後と同じように人の親切が心に沁みて、感動で胸がいっぱいになりました(その理由や感想を、これからお話ししますね)。
きっと、みんないろいろあった2024年。その締めとして、“優しさ”に包まれる本作はいかがですか?
【待ってた!】「ワンダー」待望のアナザーストーリー
いじめをして退学に…問題児ジュリアンはどうしてる?
「ワンダー 君は太陽」の公開から6年。まずは、本作がもっと楽しみになる期待ポイントをご紹介します。
[待ってて良かった①]あの「ワンダー」のもうひとつの物語 “世界一嫌な奴”だったいじめっ子・ジュリアンは、祖母の壮絶な過去を聞き、何を思う――?
「ワンダー 君は太陽」では、先天性疾患を抱え、顔にたくさんの手術跡が残るオギー(ジェイコブ・トレンブレイ)が、初めて通い始めた学校でいじめや裏切りにあい、くじけそうになりながらも、家族に支えられて困難に立ち向かっていく姿を描きました。全世界での興行収入は320億円(※2018年の映画公開当時)を突破。「正しいことよりも親切なことを選ぶ」というセリフが、多くの人々の心に深くしみわたり、今でもファンが増え続けている人気作品です。
そして同作でオギーをいじめていたのが、「ホワイトバード」の主人公の一人であるジュリアン(ブライス・ガイザー)です。同級生ジャック(ノア・ジュプ)から「世界一嫌な奴」と評されていたジュリアンは、いじめをきっかけに退学し、本作で新しい学校に編入します。
しかし、周囲の生徒となじめず、「ワンダー」での経験から、無気力に「人に意地悪も優しくもしない。ただ普通に接する」と考えるようになっていました。そんなジュリアンを心配する祖母・サラ(ヘレン・ミレン)は、封印していたはずの自身の過去を話すのです。
気になるその過去とは……? 言葉で説明するよりも、予告編で観ていただきましょう。
「ワンダー」とはまた一味違う世界観が展開し、現在のジュリアンとどうつながっていくのか、どんどん目が離せなくなっていきます。
[待ってて良かった②]なぜ“いじめっこのその後”を描くの? “救済”を目指した原作者の真意を知り、鑑賞前でも胸がアツくなる
原作「ワンダー」には続編的書籍「もうひとつのワンダー」があり、ジュリアンらの視点でオギーとの出会いがどんな変化をもたらしたのかを描いています。なぜジュリアンはオギーや周囲の人々にあんな態度をとっていたのかが明かされ、原作ファンの間ではひときわ人気を集めているのです。
一方で、映画公開時にはジュリアンを非難する声(いわゆる「ジュリアンになるな運動」)もあったそうで、この非難に違和感を持った原作者のR・J・パラシオが「もうひとつのワンダー」を執筆し、さらに「いじめた側の救済まで描かなければ、『ワンダー』の真の世界観は完結しない」と決意し、完成させたのが原作の「ホワイトバード」でした。
その思いに胸を打たれた「ワンダー」のプロデューサーたちが再集結し、本作の映画化を実現。いじめられた側だけでなく、いじめた側も救済したい――そんな真意を知れば知るほど、本作への期待がもっともっと膨らんでいきます。
[待ってて良かった③]2024年のラストを涙で包む、感動のヒューマンドラマ――
冒頭でも触れましたが、注目作の公開が重なる2024年ラスト。いろんなジャンルが公開されますが、暗い話題も多かった今年を優しい気持ちで締めたいと思っている方には、本作を激推しさせてください。
鑑賞後には、過去に他者から受けた親切を思い返して、それが心にじんわりと沁みてきて……。寒い冬なんて関係ないくらい、ぽかぽかした優しさで胸が満たされていました。今年にもぴったりな感動のヒューマンドラマを、劇場に鑑賞しに行きましょう!
【レビュー】「ワンダー」ファンが観たらどうなった?
親切の意義を知り、「ワンダー」と同じ涙が流れました
ここから、一足先に本作を鑑賞した映画.com編集部員のレビューを掲載します。「ワンダー」の公開時には、好きすぎて個人的な口コミ活動を頑張っていた「ワンダー」ファン。そんな人が本作を観たら、どうなった?
●本編開始直後、筆者の心の流れ「『ワンダー』ファンとしては絶対に観逃せない!」→「ジュリアンのその後めっちゃ気になる」→「え、祖母の過去の話?」
「ワンダー」のもうひとつの物語が公開される。
公開日を知った瞬間、すぐにカレンダーにメモをしました。最後にはちょっと同情してしまったあのジュリアンのその後が気になっていましたし、作品を知れば知るほど「見届けないといけない」という使命感も芽生えていました。
そして迎えた鑑賞当日。
ジュリアンが中心の話になると予想していたので、現代のジュリアンの話じゃなくて、おばあちゃんの過去の話。さらには、”ジュリアン”という名前がつけられた裏には“命を救う大切なエピソード”があったことに驚き、気付けば前のめりで鑑賞していました。
一方で、「ワンダー」ファンとしては特に嬉しくなる共通点もたくさんありました!
【現在パート】
・ジュリアンの登校シーンや、ランチ時間にぼっち飯をする姿が、「ワンダー」のオギーと重なる
【過去パート】
・サラがつらいときに空想の世界を思い浮かべるのも、オギーと似ている
・サラを助けてくれたジュリアンの家族が優しくて、オギーの家族と重なる
・校長先生が良い人
まだまだ「これは一緒かも」と思う発見があったので、皆さんも探してみてください!
●[観られて良かった①]まるで「フェルメールの絵に命が吹き込まれた」ように美しい世界観に心奪われる…映像美が「ワンダー」と明確に異なる&進化している!
さらに「観られてよかった」と感じるポイントがいくつもあったので、わかりやすく・詳細に語っていきます!
本作を語るうえで外せないのが、映像表現の美しさです。場所などによりフィルムとデジタル、VFXを組み合わせたこだわりようで、納屋で暮らすようになったサラが思い描く空想世界は、まるでおとぎ話のような世界。美術館で好きな絵画を見つけた時と同じように、ほんの一瞬で目を奪われました。
編集用下見フィルムを見た原作者のR・J・パラシオは、ジュリアンの母が少女時代のサラ役の髪にブラシをかけるシーンについて「フェルメールの絵に命が吹き込まれたような光景」と表現したほど。
ここまで映像美にこだわるのは「ワンダー」とは異なる&進化しているポイントであり、より本作を魅力的に輝かせています。
●[観られて良かった②]“告白シーン”は個人的に生涯ベスト1! やっぱり“名言の宝庫”で、好きだこの映画
私が「ワンダー」のファンになったきっかけは、数々の名言が心に響いたからです。特に校長先生の「オギーは見た目を変えられません。我々の見る目を変えなくては」というセリフにはっとさせられました。
本作も「ワンダー」のようにずっと心に刻んでおきたい名言の宝庫 。人生に悩んだときに心を楽にしてくれるような言葉がたくさんありました。あまりにも好きだったのが、過去パートでジュリアンがサラに告白する場面のセリフです。
「もうすぐ戦争が終わる。その後、僕が描いている未来の人生には君が存在する」
好意だけではなく、そのときまで一緒に生きようという覚悟まで込められていて、個人的には生涯ベストの告白シーン! 文字だけではこの感情のすべてを表現できないのがもどかしすぎる! サラの返事は、ぜひ劇場で確かめてください。
●[観られて良かった③]ラスト5分は確実に泣く… 「ワンダー」から引き継がれるテーマ“優しさこと本当の強さ”“正しさよりも親切を選ぶ”に涙
本作の軸として描かれるのは、他者への“親切”です。「優しさこそ本当の強さ」だと説いた「ワンダー」に通ずる、人生が豊かになるような精神です。
(ネタバレを避けて詳述しませんが)特にラスト5分はそのメッセージがとてつもなく胸に迫るものがあり、鑑賞後には「ワンダー」と同じく、“優しい感動”に包まれていました。この5分は確実に泣く……と断言したいのですが、やっぱりそれは人それぞれ。筆者はラスト15分前くらいからすでに泣き始めていたことを告白します。
●[観られて良かった④]いつでも親切な人でありたい 鑑賞後のちょっとした変化
「ワンダー」と同じく、優しい感動に包まれた鑑賞後。他者に優しい人でありたいと強く思いました。
電車で席を譲ったり、困っている人に自分から声をかけたり。簡単なことだけれど、大人になると勇気が必要になることでもあります。
筆者自身も常に親切な人でいたかったですが、時間や気持ちに余裕がないことを言い訳に、周囲に気を配ることができないこともありました。でも、本作を観た今なら、勇気を持ち続けて、ずっと親切な人でいたい。当たり前だけれど忘れがちな大切なことを、改めて本作が教えてくれました。
●[結論]「ワンダー」に勝るとも劣らない感動が待っていた! 直後に「ワンダー」を観て本作を観て、そしてまた「ワンダー」が観たくなる、ファン大満足のオススメ映画!
「ワンダー」とはまた違った物語だけれど、同じ感動が待っていた本作。「ワンダー」が観たくなって、その後にはまた本作が観たくなって、その後にまた「ワンダー」が観たくなって……今は“優しい気持ち”がずっと続く無限ループにはまっています。
こんな感情になれるなんて、なんて幸せな年末なんだろう。
2024年を最高な気分で締めるのにふさわしい1本です。ぜひ劇場で鑑賞してください!