【推しの子】 The Final Act : 特集
【忖度なし本音レビュー】遂に【推しの子】が映画でも
完結する――原作ガチファン&原作未見が観てきたら
「原作好きほど刺さる」「1本の映画として素晴らしい」
年内、年始に絶対に観るべき“想像以上の良作”だった!
実写化決定の報で原作ファンを中心に不安の声が広がった【推しの子】だが、12月5日までにPrime Videoで配信されたドラマ全8話は大いに好評となり、「再現度が高すぎる」「本物すぎる」「想像より圧倒的に良かった」などと称賛に次ぐ称賛が駆け巡った。
不安から絶賛へと情勢が大きく変わるなか、満を持して映画がお披露目に。果たしてその出来栄えはどうなのだろうか? 気になっている観客も非常に多いと思うので、今回はこんな企画をご用意した。
あらかじめ結論を言っておこう。映画「【推しの子】 The Final Act」は、斜に構えた原作ファンが「見たかった【推しの子】はこれ」と恍惚の表情で劇場を後にし、物語を1ミリも知らない原作未見者が「初見でも没入した、1本の映画として素晴らしい」と想像以上の満足感に浸る作品だった――。
この記事を読んで映画館へ行くか? 映画館の後にこの記事を読むか? 全8話のドラマが全話配信中でもあるので、この年末年始、映画の公開にあわせ【推しの子】映画・ドラマを一気観する絶好の機会を逃さないでほしい。
【原作ガチファンレビュー】これだよこれ!見たかった
のは!辛口にみても推せる、原作好きほど突き刺さる!
実際に映画「【推しの子】 The Final Act」を観た、原作ファンの“渾身の感想”をお伝えしていく。
●筆者紹介:SYO(ものかき)…【推しの子】ファンで、原作至上主義の人
遂にこの日が来てしまった……。「【推しの子】」実写化である。この口ぶりからお察しの通り、筆者は原作至上主義者であり、本作に限らず漫画作品の実写映像化に対して個人的なニーズを感じないタイプだ。
ただ一つだけ「許せる」パターンがあり、それは制作陣の原作に対する愛情や情熱が半端じゃない場合。ただ見た目だけ“再現”してもそこに愛が宿っていなければハリボテでしかなく、逆に深い原作理解に裏打ちされたオリジナル要素であれば「この解釈はアリ!」「新たな可能性を見せてくれてありがとう!」と作り手と握手をしたくなるものだ。
●辛口原作ファンの偽らざる感想①:
「俺の見たかった【推しの子】はこれ!」 オリジナル演出が大量、それがいちいち秀逸で原作好きのハートを“撃ち抜く”
そんな面倒な性格のため、「【推しの子】 The Final Act」に対する観賞モチベーションが最初から高かったといえば嘘になる。だが……この作品、悔しいことに「実写化しちゃったよ…」と下がり気味だった自分のテンションをV字回復で覆してきた。
正直言って――いち原作ファンとして割と辛口に見たとしても――ちゃんと推せる。画面の端々からキャスト・スタッフのガチ愛がひしひしと感じられるし、何より原作を補完するオリジナル演出やシーンが大量に盛り込まれており、それらがいちいち秀逸なのだ。観賞中、「俺の見たかった【推しの子】はこれだよ!」とこぶしを握ったのも一度や二度ではない。
まず、本作はドラマシリーズで敢えてあまり描かれていなかったゴローのパートをいきなりオリジナル展開を織り交ぜて丹念に描いていく。冒頭から研修医時代のゴローが入院患者さりなの勧めでアイドル・アイにハマる「エピソードゼロ」が明かされるのだ。
東映ロゴが出た時点ではまだ斜に構えていた自分は、冒頭のアイ率いるB小町のライブシーンから「あれ、オーディエンスの歓声からステージ演出から結構すごくない……?」と慌てだし、ゴローのバックボーンが描かれるシーンで「オイオイオイ“良い”じゃないか!」と居住まいを正さずにはいられなかった。
●辛口原作ファンの偽らざる感想②:
よくある“薄味ダイジェスト”とは根本的に違う…衝撃的なクオリティに「気づけば画面に没入」
以降もアイの幼少期がつぶさに描かれたり(アイにフォーカスした小説「45510」とのリンクも)、カミキヒカルとの出会いや関係性が早い段階で示されたりと、原作サイドと密にコミュニケーションを取っていなければ描けない「ラストから逆算した地ならし」がさく裂。繰り広げられる展開に驚かされながら、気づけば当初の不安はどこへやら、画面に没入していた。
各キャラクターの心情描写も絶妙で、アイドルとしての激務と慣れない育児で限界を迎えたアイが赤ん坊のルビーに激高してしまう→自分の母親に受けた仕打ちがフラッシュバックして絶望→我らのミヤえもん降臨→ひと段落し、子どもたちへの愛情を痛感する、といった「アイの本心&ビデオカメラで記録するまでの心の動き」「ミヤコの“母親”としての偉大さ」等の掘り下げが大幅に補強されている。
これらはほんの一例で、はっきり言って原作ファンほど突き刺さる仕掛けが多すぎる「ガチ層向け」になっている点に衝撃を受けた。漫画実写作品によくある「幅広いターゲットを狙う薄味のダイジェスト版」とは根本的に違う仕様になっていたからだ。
●辛口原作ファンの偽らざる感想③:
これはもう、原作と実写映画の“運命共同体” 本作で【推しの子】は“もうひとつの完結”を迎える――
ドラマシリーズで「恋リア編」から「スキャンダル編」までを描き、映画では“中抜き”をする形で「エピソードゼロ」と「15年の嘘」編にフォーカスした大胆な構成もその一環で、これによって「ゴローのさりなへの想い」と「アクアのルビーへの想い」がすっきりと連結。原作終盤のアクアの行動理念が整理され、より深く刺さるようになったのは本作の大きな功績と言っていい(アクアの「守りたいもの」がくっきりと浮き出る仕様になったことで、クライマックスのあるシーンでは不覚にも涙が……)。
ネタバレを避けるためにこれ以上の言及は避けるが、「足している」だけでなく「削っている」或いは「変えている」ポイントも全てに納得がいくものになっている。例えば、有馬かなや黒川あかねの出番を制限する代わりに何気ない(がファンにはグッとくる)セリフに集約させ、各々の性格に一貫性を持たせる妙手など、原作勢が故にわかる“変換”が抜群に上手い。
さらに、劇中でしっかりと描かれるライブシーンがまさかの“あのライブ”であるところも完璧(原作ファンにはこの表現で察しが付くのではないか)。そのチョイスに涙腺を刺激されていると、本作オリジナルのB小町の「SHINING SONG」が想定以上に名曲でまた驚かされる。独立して見たとしてもハイクオリティなのだ。
そもそも本作の劇場公開日は、原作最終巻の発売日の翌々日。にもかかわらず原作の最後まで描くということは、両者は何年も前から綿密に打ち合わせをした共犯関係と見て間違いない。
これはもう原作と実写映画という“別物”の距離感ではなく、運命共同体。「【推しの子】」は「The Final Act」で“もうひとつの完結”を迎える――。そんな言葉が脳裏によぎるほど、完成されていた。
【原作未見の人が観たら】初見なのに最高に面白い!
映画として素晴らしい&大満足鑑賞体験【良作保障】
これが本記事最後のパートなので、もう少々お付き合いを! 原作を体験していないうえに、ドラマ8話も観ていない状態で映画を鑑賞。「自分も原作未見だけど、楽しめるかな?」と考えている人は、ぜひ参考にしていただき、映画館へ急いでもらえればと思う。
●執筆者紹介:映画.com編集部・MOMO…本人は原作未見、娘が原作ファン
小6と小1の娘を持つワーキングマザーで、【推しの子】の原作漫画とアニメは未見。長女がアニメにハマっており、グッズ購入をねだられたり、「YOASOBI」の主題歌「アイドル」を頻繁に歌っていたりしたので、タイトルと絵柄だけは知っていました。
原作をほとんど知らない私が、本当に前知識ゼロ、ぶっつけ初見で映画「【推しの子】 The Final Act」を……楽しめますかね!?
しかし結論を言うと、初見の私でもずっと画面に視線が釘付けで、顔が熱くなるくらい集中して最後まで観られました。正直、ちょっとびっくり……! 上述のSYOさんのレビューどおり、ガチ勢向けでもあると思いますが、それでいて初見の人も楽しめる、両方をしっかり実現させたすごい映画だと感じました!
●原作未見でも楽しめた理由①:未見の人にもわかりやすい物語、そして“完璧で天才的なアイドル”齋藤飛鳥さん=アイの存在!
前半から、情報量が多いながらもエピソードが過不足なく描かれ、背景知識がなくても十分楽しめる作りで、未見の人にもわかりやすい物語だと感じました。
特に“未見の観客も魅了する力”があったのは、齋藤飛鳥さんが演じたアイの存在。まさに“完璧で天才的なアイドル”の輝きを放っていて、「うおっまぶしっ」と直視できませんでした。スクリーンいっぱいに広がる彼女のオーラをシャワーのように浴びる、これだけでも映画館に行く価値があると断言できます。
そしてアイのステージに心を鷲掴みにされたかと思いきや、物語は急展開……原作ファン的には超有名なシーンだと思いますが、私は当然、知らなかったので、本当に本当に衝撃を受けました……。
●原作未見でも楽しめた理由②:二宮和也さん=カミキヒカルの存在! 登場から一瞬で映画の空気を変える、圧倒的な演技力、緊張感、深み
主人公アクア(櫻井海音さん)とルビー(齊藤なぎささん)はもちろん、個人的に「登場した瞬間に空気が変わった」と感じたのは、二宮和也さん扮するカミキヒカルです。
二宮さんの出演に「嘘ぉ!?」と仰天しつつ、それまで丁寧に丁寧に積み重なってきた物語を、一瞬で“まったく別の方向”に捻じ曲げてしまう(もちろんいい意味で)ほどの圧倒的で禍々しい演技力、緊張感、深みにさらに仰天……!
そして二宮さんと言うと、かつて出演したドラマ「流星の絆」で、両親を惨殺され、犯人への復讐を願う青年を演じていましたよね。そんな彼が、【推しの子】でこのカミキヒカルに扮するということが、とっても感慨深いものがありました。二宮さんが映画の大きな見どころのひとつです、ぜひお楽しみに!
●ほかにも良かったところを箇条書きで…1本の映画として素晴らしい、大満足の鑑賞体験だった
これ以外にもたくさんあって、書ききれないのがもどかしい……!
・もともと推しのアイドルはいなかった私ですが、有馬かな(原菜乃華さん)が推しになるくらい魅力的!・このライブパフォーマンス、轟音シアターや爆音上映などで観れば、本当に最高の体験になるなあ~・アイドルとしての苦悩、悲しい過去やトラウマ、親子の愛、サスペンス要素が絶妙に絡み合い、原作を知らない私でも終始退屈せず、最後まで楽しめたのがすごい・映画では語られない、アクアとルビーたちの“これまでの物語”がとても気になったので、全8話のドラマを一気観したくなった・細かいところですが、倉科カナさんが吉田鋼太郎さんをビンタするシーン。そのときの倉科さんのスピード感、2人の顔がなぜか忘れられないくらい好き映画が終わった後は、とても良い映画を鑑賞したとき特有の浮遊感があって、物語に思いを馳せながら町をフラフラ歩いてしまいました。1本の映画として素晴らしい、そう感じる鑑賞体験でした!
【推しの子】ファンの長女とも一緒に楽しみたいので、まずはドラマを観てみようかな~!
★記事の最後に
以上、原作ファン・SYOさん、そして原作未見の映画.comスタッフの感想を紹介した。
映画「【推しの子】 The Final Act」、12月20日から全国公開中。ぜひとも映画館で本編を目撃し、“本作にかけた思い”を堪能していただければと思う。