ザ・ルーム・ネクスト・ドア : 特集
【この映画“魂に効く”】余命わずかの親友からの奇妙
なお願い「わたしが死ぬとき隣の部屋にいて」――“あ
なた”だったらどうする? 心に迫る作品を追い求める
あなたが次に観るべき“珠玉の衝撃作”【最高峰の映画
祭で最高賞を獲得、巨匠の“最高傑作”を更新】
そんな選択の瞬間が訪れる“人生の終わり”、そして“生きる喜び”を同時に描ききった珠玉の映画「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」が、1月31日に公開されます。
同作は、アカデミー賞受賞作「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」で知られるペドロ・アルモドバル監督の新作であり、現時点の“最高傑作”と言えるほどの逸品。それを証明するように、世界三大映画祭のひとつ・ベネチア国際映画祭では、約20分間の拍手喝采を受けて“最高賞”を獲得しています。
たとえば「最近“良い映画”ある?」と聞かれたら、候補のひとつとして、この映画のタイトルを“即答”してしまう――本作、それほどの“良作”です。本特集では、筆者がここまで惚れ込んでいる理由をお伝えしていきます。
【本作、何が珠玉?】巨匠が“最高傑作”更新!瞬きを
忘れるほどの衝撃、そして爽やかな感情があなたを待つ
この映画は、良質な作品を求めてやまない人には、真っ先におすすめしたくなる“魂に効く衝撃作”。その根拠を、以下に記していきます。
[心に深く刻まれる物語]私の“最期”に付き合って――自発的に“死”へと向かう女性と、彼女に寄り添う友人の数日間を描出 ヘビーな題材、しかし鑑賞後は“爽やか”
本作、心にかなり深く刻まれました。つまり、筆者にとっては“一生忘れられない”作品。その最大の理由は物語にあります。
ティルダ・スウィントン&ジュリアン・ムーアという“アカデミー賞受賞俳優”の競演で描くのは、病に侵され尊厳死を望む女性マーサと、彼女に寄り添う親友イングリッドのかけがえのない数日間。詳しいあらすじは予告編をチェックしていただきたいのですが、マーサがイングリッドに“ある依頼”をしたことから、珠玉のドラマが展開します。
その依頼とは「“その日(=死)”が来るまで傍にいてほしい」というもの。
両極に位置するような「人生の終わり」と「生きる喜び」を同時に描くという奇跡的ストーリテリングに酔いしれて、しかも時には「あなただったらどうする?」と目が覚めるような問いかけが待ち受けている。驚くべき体験が味わえる作品なのです。
さらに“尊厳死”というヘビーな題材を扱い、衝撃的な瞬間が多くありながらも、それでいて鑑賞後感が不思議と“爽やか”という点にも、他の作品にはない感情が待っています。
[超有名映画祭で栄冠]「哀れなるものたち」の次はコレ!「シェイプ・オブ・ウォーター」「ジョーカー」「ノマドランド」も獲ったベネチア映画祭最高賞を受賞→つまりオスカー戦線も期待大!
世界で絶賛されている本作ですが、とりわけベネチア国際映画祭(第81回)の最高賞“金獅子賞”に輝いているという事実も、推したくなる大きな理由。この“凄さ”を実感してもらうには、過去の受賞作を振り返るのがベストです。
たとえば、2023年度は日本でも話題沸騰となった「哀れなるものたち」も金獅子賞を受賞。そのほか「シェイプ・オブ・ウォーター」「ROMA ローマ」「ジョーカー」「ノマドランド」なども同賞を獲得しています。
そして、この作品群を見て何かに気づきませんか?
実は、金獅子賞を獲得した作品の多くは、米アカデミー賞でも旋風を巻き起こし“オスカー受賞”へと結びついています。つまり「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」も賞レースで存在感を放っていくことは“ほぼ確実”。なので、早め早めの鑑賞をおすすめしたいんです。
[巨匠×演技の怪物]全シーン“絵画”のような鮮やかさ――アルモドバル監督の才気煥発!アカデミー賞俳優ティルダ・スウィントン×ジュリアン・ムーアの驚異的な“2人芝居” 名匠たちも惚れ込んだ圧倒的表現力に思わず“瞬き”を忘れるはず
“至高の仕上がり”を、監督&キャストの並びを見ただけで確信していました。
アルモドバル監督といえば、色鮮やかな映像美とユーモアに満ちたテイストが印象的な巨匠。75歳にして“初の全編英語作品”となった本作でも、その才気は画面の端々にまで“充満”。視覚的にも楽しいカラフルな世界観が顕在で、全シーンが神々しい。まるで絵画を鑑賞しているような気分になりましたし、円熟味を増した“演出の妙”にも唸りました。
しかも、キャストのスウィントン&ムーアは、著名な監督陣から愛されている“唯一無二の存在”。ポン・ジュノ、ウェス・アンダーソン、ジム・ジャームッシュ作品に参加していたスウィントン、ポール・トーマス・アンダーソン、トッド・ヘインズとタッグを組んできたムーアの2人芝居を、こんなにも“全身に浴びる”ことができるなんて!
“瞬き”を忘れて見入ってしまうほどの会話劇――これって、スウィントン&ムーアの組み合わせだからこそ成立した“最高のひと時”だと思うんです。本当に、本当に、贅沢な時間なので、是非映画館で味わってください。
【絶賛の嵐】各界著名人が“魂が震えた鑑賞体験”を述懐
「まさに終え方の美学」「アルモドバル映画のすべてがある」
では、各界の著名人は本作にどんな印象を抱いたのでしょうか? それぞれのコメントから“豊かな映画体験”となったことが伝わってくるはずです。
生き方の真髄を問われているような。まさに終え方の美学。最期を迎えた時、どんな顔でいるのか。その顔は人生の集大成となっているのだろうか。その時を最高傑作にするためにも今までの生き方、そして、今、
これからの生き方がとても重要な気がしてきました。
更新されていくペドロ・アルモドバル監督の「集大成」。これ以上の深みの境地があるのだろうか。完璧なスタイリングのかっこいい大人たち。彼らの濃厚な人生の語りに耳を傾け、ジェイムズ・ジョイス原作『ザ・デッド/「ダブリン市民」より』への美しいオマージュに眼を潤ませながら、死の向こう側を想う。大傑作。
一人の女が死と苦悶に対してやってきた友に饒舌になっていく。そうとは知らない友は次第に引き込まれていく。死に無関心だった友の受け身のショットは私でもある。アルモドバルの脚本は観ている側にも参加を促している。鳥の鳴き声が響く山奥での出来事を
映画に昇華した見事な作品である。
遠からず死者になろうとする者と、生者はどのように向き合えばいいのか。このシンプルでいて残酷な問いを、アルモドバルはいくつもの脱線と絶え間ないおしゃべり、鮮やかな色の氾濫とともに描ききる。そして当然女性たちーー母と娘の対話も。これまでとまったく異なる何かに挑戦しているようで、ここには、私たちが
アルモドバルの映画に観てきたものすべてがある。
がんを患う主人公マーサは、旧友のイングリッドに自らの最期を見届けてほしいと依頼する。イングリッドは戸惑いながら引き受けるが、その役割が何をもたらすかは、彼女も、観客である私たちもわからない。ある時を迎えるまで…。死は恐ろしい。せめて誰かに人生の物語を見届けてもらえたら、その苦痛はやわらぐだろうか?寂しさと温かさと、様々な感情が溢れ出る。
人と人とのつながりを、もう一度信じたくなる映画だ。
「かつて親しかった友人」という他者との、適切な距離についての素晴らしい映画。死に向かう物語にも関わらず、中年女性同士の瑞々しく、活きの良い関係性を鮮やかに描き出している。
未来へのお守りのような一本!
【より興味深くなる解説・考察】死との対峙、細かな
セリフが物語を象徴…見逃せない3つの注目ポイント
最後にお伝えしておきたいのが、映画.comが特に注目した“考察が捗る”ポイント。以下の3つの部分に着目しておけば、さらに充実の映画体験になるはずなので、より深く作品に入りたい人は、ぜひご一読のうえご鑑賞ください。
[注目①:正反対な主人公2人]“死”を楽しみにしているマーサと、“死”に恐怖を感じるイングリッド 対照的なスタンスが物語に“深み”を与える
“死”に対して正反対の印象を持っているマーサとイングリッド。実は、この設定がドラマに更なる“深み”を与えています。
マーサは“死”から逃げるどころか、それ自体を楽しみにしつつ、自らの手で“その時”を決める、とまで言い切ります。一方のイングリッドは“死”に対して、受け入れ難いほどの恐怖を抱き、自身の小説に記述することで克服しようと考えます。そんな2人が“ひとつの死”に向かってともに生活をし、それぞれの“心”に変化が生じていきます。
真逆に見える“死への考え方”が、どちらに傾いていくのか。一見穏やかな生活にも見えますが、それぞれの“死への考え方”へと引っ張り合っているとも言えるので、いわばシーソーゲームのような“スリル”が生じているんです。
その“結末”は、是非映画館で目撃してください。
[注目②:死を探す重要シーン]マーサの自宅で“死にいたる薬”を探す。もしもイングリッドが見つけてしまったら……彼女はそれを手渡すか? 何気ない瞬間に極限の問い、最後の最後まで結びついていく
マーサが尊厳死を迎えるための“薬”を自宅に忘れる→イングリッドと取りに帰るというシーンにも注目を。これはつまり、2人が“死”を探す様子をメタフォリカルに表現した場面です。
ここでひとつ、問題が。マーサが“薬”を見つけるならまだしも、死を恐れるイングリッドが見つけた場合は、一体どうするのでしょうか――隠蔽するのか、それとも“薬”(=マーサの“死”)を手渡すのか。イングリッドにとっては“極限の選択”となっていくはず。彼女たちの運命はいかに?
ちなみに、このシーンだけでなく「真実を話すか、嘘を述べるか」という選択は、かなり重要な意味合いを帯びてきます。最後の最後までこの要素が関連するので、一つ一つの会話をしっかりと脳裏に焼き付けて。
[注目③:マーサとイングリッドの“心の距離”]再会は30年ぶり――どこかぎこちなかったはずの2人の“距離感”が徐々に縮まっていく “最期”を共に過ごす→お互いが唯一無二の存在へ
マーサとイングリッドの“距離感”の変化にも注目してみると、作品の“さらに奥深く”まで手が届きます。
実は、2人の再会は約30年ぶりのこと。若かりし頃の最も活気に満ちた日々をともに過ごしましたが、月日は流れ、すっかり疎遠になっていました(そういうことって、ありますよね)。会っていない時間を埋めるかのように、病室で語らう日々を過ごすマーサとイングリッド。ここから“最期の時”を過ごすという密約を交わし、2人の関係はさらに進展していきます。
当初は距離をとりつつ対話を繰り返していた2人が、やがて寄り添い、“言葉”が無くても相手のことを理解する。そして互いに「あなたでなければいけない」と言えるような関係になっていくさまが、心の琴線に触れてくるはず。
全編を通じて、人と人の“距離”を象徴するようなセリフが数多く登場しているので、目だけでなく、耳にもしっかりと意識を張り巡らせて鑑賞してみてください。
そうすることで、ただ見ているだけでは辿り着けない、なおかつ、ほかのどんな作品とも異なる境地に連れて行ってくれます。筆者は幸運なことに、そう鑑賞できたので、本作を特に推したいのです。