男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎

劇場公開日:

解説

大阪を旅する寅次郎とそこで出会った浪花芸者の楽しくも哀しい恋を描くシリーズ二十七作目。脚本は「男はつらいよ 寅次郎かもめ歌」の山田洋次と同作の朝間義隆の共同執筆、監督も同作の山田洋次、撮影も同作の高羽哲夫がそれぞれ担当。

1981年製作/104分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1981年8月8日

ストーリー

気ままな旅ぐらしを続ける寅次郎は、瀬戸内海の小さな島で、ふみという女に出会った。平凡な身なりだが、どこか素人ではなさそうな雰囲気の美しい女だ。大阪、新世界界隈。例によって神社でバイに精を出す寅の前を三人の芸者が通りかかった。その中の一人に、あの島で会ったふみがいた。「寅さんやね、確か」と寅の手をとるふみ。数日後、柴又のとらやに、手紙が届いた。ふみのこと、ニ人で毎日楽しく過ごしているとの内容に、とらやの一同は深いため息をつくばかり。ある日、寅はふみから十何年も前に生き別れになった弟がいることを聞いた。「会いたいけど、会ったって嫌な顔されるだけよ」と言うふみに、たった二人の姉弟じやないかと会いに行くことを勧める寅。二人はかすかな便りをたどって、ふみの弟、英男の勤め先を探しあてた。しかし、英男はつい先月、心臓病で他界していた。英男の恋人、信子から思い出話を聞き、涙を流すふみを寅はなぐさめる言葉もない。その晩、寅の宿に酒に酔ったふみがやって来た。「寅さん、泣いていい?」と寅の膝に頭をのせ、泣きながら寝入ってしまうふみ。寅は、そんなふみに、掛布団をそっとかけると、部屋から出た。翌朝、ふみの姿はなく、「寅さん、迷惑なら言ってくれればいいのに。これからどうして生きていくか、一人で考えます」との置手紙があった。数日後。とらやでは、家族を集めて、寅が大阪の思い出話をしていた。そこへ、突然ふみがとらやを訪ねてきた。ふみは芸者をやめ、結婚して故郷の島で暮らすことを報告に来たのだ。「お前ならきっといいおかみさんになれるよ」と哀しみをこらえて、明るく励ます寅次郎だった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第5回 日本アカデミー賞(1982年)

受賞

主演女優賞 松坂慶子

ノミネート

主演男優賞 渥美清
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映画レビュー

4.0【寅さんシリーズ中盤の、久しぶりの王道の寅さん振られパターンの作品。松坂慶子さんの際立つ美しさに魅了される作品でもある。】

2024年6月14日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 今作ぐらいになると、私でも知っている俳優さん達の数が、徐々に増えて来る。今作で言えば、松坂慶子さんは当たり前として、満男を演じた小さな吉岡秀隆さんである。
  この後、徐々に吉岡さんがメインになって行くとは、今作を当時映画館で観た方は思いも知らなかっただろうなあ。-

◆感想

・今作でマドンナを演じた若き松坂慶子さんの際立つ美しさには、改めて驚く。
 現在では、存在感溢れる女優さんとして活躍されているが、特に和服を着た役柄が魅力的である。
 今作でも、和服姿がとても似合う芸者さんを演じられていて、実に魅力的である。寅さんでなくとも、惹かれるであろう。
 寅さんが松坂さん演じる芸者のふみの美しさを、とらやの面々の前で語る寅さんのアリアのシーンは今作の名シーンの一つだと思う。あの語りだけでふみの美しさを容易に想像させるのであるから。

・今作で、初登場の吉岡さんも幼いながら、何となく現在の風貌が有り更に名子役の萌芽を感じさせる。

<舞台が大阪と言うのも、今までシリーズを観て来た中では珍しいのではないかと思うし、山田洋次監督が好きではなかったと資料にある関西弁も、面白く取り入れられている。
 更に言えば、寅さんが泊まっていた宿を経営するキビシイ母にこき使われる男を演じた芦屋雁之助さんが、大阪の風情をより醸し出している作品だと思う。>

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共感した! 4件)
NOBU

3.5松坂慶子が美しすぎる

2023年12月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

笑える

楽しい

松坂の美しさに尽きる映画。この当時、最も脂が乗りきって美しく、歌を歌えば「愛の水中花」が大ヒット(劇中でもさりげなく紹介)、主演ドラマも映画も多数で、今現在の女優を見ても松坂以上は無いと思っている。って訳で寅さんはというと、またしても大魚を逃してしまう所がもどかしく、切ないという、いつもの寅さんでした。大阪を舞台にした芸人さんとの掛け合いは流石に面白いです。

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マッチ

5.0マドンナも綺麗ですね。

2023年9月10日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

マドンナ・松坂慶子さんは、本当に「銀幕のスター」ですね。
楽しく笑うことのできるコメディー、人情も一般目線の日本の風景。

優れた作品、素晴らしいですね。
ありがとう❤️✨

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共感した! 1件)
シャカ

5.0寅さん屈指の心に染みるお話でした 本当に「男はつらいよ」です

2023年5月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

1981年8月公開、第27作

マドンナは松坂慶子
公開時29歳

1979年7月から10月にかけて全13話放映されたテレビドラマ「水中花」でブレイク
その主題歌「愛の水中花」は本人の歌唱によるものでその年の大ヒットにもなりました
その番組と主題歌が、それまではせいぜい中堅どころの女優に過ぎなかった彼女をスターに押し上げたのです

翌年の1980年4月公開の「五番町夕霧楼」では主演女優に抜擢
1981年1月公開の「青春の門」でも主演
そして同年8月公開で本作なのです

ついでにいえば、次の年の1982年10月公開の大ヒット映画「蒲田行進曲」でも主演女優となり、映画女優ナンバーワンと誰もが認める存在となったのです

つまり映画女優として大スターにあれよあれよと駆け上がったばかりの最高の彼女の瞬間を本作は写しているのです
宝山寺門前のレストランでタンクトップ姿になるシーンが正にそれです

あまりの美しさに感嘆するばかりです
「男はつらいよ」のマドンナは歴代総勢47人いるそうですが、美しさで言えば彼女が最高峰だと思います

「ぬけるような白い肌、それがうれしい時なんか、パッ〜と桜色に染まるんだよ
悲しい時は透き通るような青白い色
黒いほつれ毛が二筋三筋
黒い瞳に涙をいっぱい溜めて・・・」

寅さんの解説に掛け値なし
その通り!上手いこと表現するなあと
本作をみる全員が納得したと思います

マドンナと大阪で再会するのは石切神社です
大阪の東のはずれ、生駒山の麓です
結構標高も高いところで大阪平野が一望できます
彼女に生き別れの弟がいると聞くのは生駒山の宝山寺

どちらも1966年の映画「河内カルメン」の舞台の直ぐ近くです
大阪の女を本作で描くならば、大阪の女を描いたその映画に敬意を示そうという山田洋次監督の思いを感じます

新世界は東京で言えば浅草が一番近い雰囲気かも知れません
この当時はもっとワイルドだったと思います
今は健全な観光地となっています

おふみさんが、寅さんの宿に押し掛けて泊まって行ったあの夜
彼女は酔ったふりをして寅さんに抱かれに来たのだと思います
だから早朝に彼女は怒ったように帰っていくのです
寅さんはそんな女心にはまるで気付けない男なのです
手を出さないのは寅さんなりの美学というか、臆病というかどちらもです

翌朝チラシの裏の置き手紙でようやく彼女の本心に気付くのですがもはやあとのまつり
みにくくともあがけばよいのに、それができないのが寅さんなのです
ホント男はつらいよです

おふみさんは気乗りしなかった結婚を決断してしまうのですから

夏にとらやに寅さんを訪ねて上京して来たのも、これが結婚を止める最後のチャンスだと自分を納得させる為のものだったと思います
寅さんに自分を攫って逃げて欲しかったのです
でもそんなことできない寅さんだということも彼女自身がよ~く分かっているのです
とらやからの去り際の突然の大雨は寅さんの心の涙ではなく、おふみさんの涙だったのだと思います

ラストシーンで遠い遠い対馬にまで寅さんが会いに来たのは何故?
未練?

女心に疎い寅さんもあれからつらつら考えて、彼女が訪ねて来たその本当の意味にようやく思い当たったのでしょう

そうなると彼女の結婚生活が上手く行っているのか心配になって、いてもたってもいられなくなったのでしょう

彼女からの幸せな新婚生活を報告する手紙とは、入れちがいになってしまったのです

彼女の幸せそうな姿
彼女の旦那の真面目そうな好青年の姿
どこからどう見てもお似合いの新婚さん
一目それをみたら、もうそれだけで寅さんの用事は全部済んだのです

これで良かった
彼女に手を出さなくて良かった
彼女を攫って逃げなくて良かった

本当に男はつらいよ
寅さんはいい人として去っていくのみなのです

また日本全国フーテンの旅の始まりなのです

寅さん屈指の心に染みるお話でした

コメントする 2件)
共感した! 4件)
あき240

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