男はつらいよ 噂の寅次郎
劇場公開日:1978年12月27日
解説
昭和四十三年に登場して、今正月で十年目を迎えた二十二作目の今回は、マドンナに大原麗子、寅さんの恋敵に室田日出男を起用して、泉ピン子が脇をかためている。脚本は「男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく」の山田洋次と同作の朝間義隆の共同執筆、監督も同作の山田洋次、撮影も同作の高羽哲夫が担当している。
1978年製作/105分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1978年12月27日
ストーリー
旅先で偶然、博の父、[風票]一郎と出会った寅は、そこで、[風票]一郎に人生のばかなさについて諭され、「今昔物語」の本を借りて、柴叉に帰った。その頃、“とらや”では、職業安定所の紹介で、荒川早苗が店を手伝っていた。寅は帰るや否や、家族を集めて、[風票]一郎の受売りを一席ブツのだった。翌朝、修業の旅に出ると家を出ようとするところに、早苗が出勤して来た。彼女の美しさにギョッとする寅だが、旅に出ると言った手前、やむなく、店を出た。通りを歩いていると、さくらに出会った寅は急に腹痛を訴えるのだった。救急車で病院に担ぎ込まれた寅だが、たいしたこともなく、家に帰った。早苗が現在、夫と別居中であることを聞いて、寅はウキウキしながらも、彼女を励まし、力づけた。彼女も寅の優しい心づかいに、思わず涙ぐみ、“寅さん、好きよ”とまで言うので、“とらや”一家やタコ社長の心配はつのる一方であった。ある日、早苗は義兄の添田に夫の離婚届を渡された。高校で教師をしている添田は密かに彼女を慕っていた。暫くして、早苗の引っ越しの日、手伝いに出かけた寅は、そこで生徒を連れてキビキビと働く添田を紹介された。気やすく早苗に話しかける寅に、撫然とする添田だった。やがて、そんな添田が、“とらや”に早苗を訪ねてきた。添田は外出している早苗を暫く待っていたが、意を決するように立ち上がると、手紙と預金通帳を、早苗に渡すように、寅に託して立ち去るのだった。添田が出て行くと、入れちがいに早苗が戻って来た。その手紙は、「僕は学校を辞めて、故郷の小樽に帰るが、早苗は、頑張って生きて欲しい」という内容で、預金通帳には、百万円の数字が一行目に記入されていた。添田の気持を悟った寅は、「早く後を追え、今ならまだ駅にいる」と躊躇する早苗を説得するのだった。寅の顔を凝視していた早苗は、振り返ると、駅に向かって駈けだした。翌朝、例によって、家族の止める声を背に受けて、旅に出る寅の姿があった……。