男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎

劇場公開日:

解説

晩秋の吉備路を舞台に寅次郎と結婚に失敗した寺の娘とのふれあいとすれちがいを描く。脚本は「男はつらいよ 旅と女と寅次郎」の山田洋次と朝間義隆の共同執筆。監督も同作の山田洋次、撮影も同作の高羽哲夫がそれぞれ担当。

1983年製作/95分/日本
原題または英題:Tora-san Goes Religious
配給:松竹
劇場公開日:1983年12月28日

ストーリー

車寅次郎がふらりとやってきたのは義弟の博の生家がある備中高梁。今年は博の亡父の三回忌にあたり、その墓参りを思いついて訪れたのである。そこで寺の和尚と娘の朋子に出会った寅次郎はお茶に呼ばれ、すすめられるままに酒へと座は盛り上がりすっかり和尚と意気投合。朋子の弟・一道は仏教大学に在籍しているものの写真家になりたいといって父と対立していた。翌日、帰ろうとした寅次郎は朋子が出戻りだということを知る。そこに法事の迎えがやって来て、二日酔の和尚に代って買って出た寅次郎は、名調子の弁舌がすっかり檀家の人たちに気に入られてしまい、寺に居つくハメになった。数日後、博、さくら、満男の親子三人が三回忌の法事で寺にやってきた。そして、介添の僧の姿をした寅次郎を見て度胆を抜かれる。ある日、大学をやめて東京の写真スタジオで働くという一道を和尚は勘当同然に追い出した。一道には病弱な父を支えて酒屋を切り盛りしているひろみという恋人がいた。ある夜、和尚と朋子の「寅を養子に貰うか」という会話を耳にした寅次郎は、翌朝、書きおきを残して東京に発った。とらやに戻った寅次郎は、一同に余生を仏につかえることを告げ、帝釈天での押しかけ修業が始まった。ある日、とらやに一道とひろみが訪ねてきた。お店の休みを利用して上京してきたひろみを泊めてほしいとのことだった。結局、二人共二階の寅次郎の部屋に泊まり、数日後、朋子がそのお礼に訪ねてきた。寅次郎は嬉しいのだが、そわそわしてゆっくり話そうともしない。そうしているうちに朋子の帰る時間がやってきた。朋子は見送りに来た寅次郎にそれとなく好意を伝えるが、寅次郎は冗談としてうけとりはぐらかす。朋子は悲しげに去っていた。そして寅次郎は、又、旅に出るのであった。

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映画レビュー

4.0兄弟は他人の始り。 家族は時間が経つとバラバラになるが、日本国は時...

2024年11月3日
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When I am 75♥️

4.5【”門前の寅さん、習わぬ経を読む。”寅さんのテキヤの口上を活かした説法が可笑しく、竹下景子さん演じる住職の娘との恋と、彼女の弟を演じた若き中井貴一さんの恋が上手く描かれた逸品。】

2024年6月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

知的

幸せ

ー 寅さんシリーズの魅力は数々あるが、その一つに寅さんの見事な口上があると思う。   今作はそれを活かした、寅さんがひょんなことからお坊さんになり、法事の後の流れるような可笑しな説法が面白い。   そこから、寅さんが世話になっている博の檀家の寺の竹下景子さんが扮する娘さんの僧侶の父と、カメラマンになりたい中井貴一さん扮する息子との対立や、博の父(今作では出演は無いが、志村喬さん)の亡き後の遺産相続など、重いテーマを上手く纏めていく変わらずの脚本の良さも見事である。ー ◆感想・・になってません・・。 ・竹下景子さんを知ったのは〇坊の時、両親が好きだったクイズダービーという番組である。確か竹下さんは、はらたいらさんに次いで正解率が高かった記憶がある。  故に、早熟な私は美しく明るい笑顔を浮かべる聡明な女性である竹下さんのファンになったのだと思う。  今作でも、その魅力は十二分に発揮されており、柴又へ訪れた竹下さん演じるトモコが岡山に帰る時刻が迫った時に、寅さんに駅まで送って貰った時の切なげに寅さんを見つめる表情にヤラレルのである。 ・今や、邦画の名優の粋に近づきつつある中井貴一さんに至っては、最初は誰だか分からなかったほどの、初々しさである。  この作品は今から40年近く前の作品であるが、寅さんシリーズを見る際の私の密やかなる愉しみは、今や大御所となられている多くの俳優さん達のお若き時の姿を拝見する事である。何だかしみじみと”皆さん、頑張られたこそ、確固たる俳優の地位を築かれたのだろうなあ。私も明日も仕事を頑張ろう。”と思うからである。 <今更であるが、寅さんシリーズは本当に観ていて飽きないのである。  凄い事だと素直に思うし、多くの方々に愛されている事が分かるのである。  読書タイムに入る前に寅さん映画を見ると、心穏やかになり静に読書が出来、熟睡出来るのである。  そして、寅さんシリーズのような奇蹟的な映画シリーズは、世界で唯一無二なのだと改めて思うのである。>

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NOBU

3.0寅さん、罪な男だね。

2023年11月12日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

渋谷の交差点の懐かしい景色。リコーもパソコン作ってたんだ。

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あっちゃんのパパと

5.0口笛を吹く寅次郎の意味

2023年8月31日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

第32作「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」 1983年の年末公開 ちょうど40年前です 2023年のお盆 コロナ禍もようやくおさまり、行動制限は無くなくりました 久し振りに帰省された方もさぞかし多いことでしょう そして猛暑 史上一番の暑さだったそうです こんな酷暑の中、黒い袈裟で檀家回りをされるお寺さんは大変です 我が家にお越し頂いているお寺さんも暑さでダウンされたそうで、今年は奥様が代わってお越しされお経を読んで下さいました 一応資格は持っておりますとお断りされました 読経が終わっての法話は、慣れないご様子でした つい最近西本願寺の前を通りかかって参拝したばかりだったので、その話で助け舟を出せて良かったです それで本作を思いだしてまた観たくなりました 今回の舞台は、岡山県備中高梁 行ったことはないけれど、誰もが郷里を思い出すような、懐かしさを覚える街です 1971年の第8作で博の郷里がここ備中高梁で登場しています あの時は博の母の葬儀でした 今回は博の父もすでに死んでいたことになっており三回忌として登場します 三回忌ですから、博の父は1982年に亡くなった設定です 寅さんの過去作で博の父親役で出演した志村喬も実際にその年にお亡くなりになっています 本作は山田監督なりの法要だったのでしょう 備中=岡山県といえば? そう、あの金田一耕助シリーズの多くの舞台となったところです 野村芳太郎監督が1977年に撮った松竹版「八つ墓村」もそのひとつ 金田一耕助役は渥美清さんだったじゃないですか その作品でロケ地になった広兼邸は備中高梁駅から30キロ程さらに山に入ったところです そして岡山県と言えば長門勇 芸名の姓はなぜか山口県の旧国名なのですが、岡山県倉敷の出身 「おえりゃあせんのう」とかの岡山弁が彼のトレードマークです 「八つ墓村」自体には出演はされていませんが、古谷一行主演の金田一耕助のテレビシリーズでは日和警部役として大変有名です 本作ではハンコ屋の大旦那役で出演されています 寅さんがエセ僧侶となって執り行ったのは、93歳でなくなって生きていれば100歳のハンコ屋の母の七回忌法要でした 八つ墓村に登場した双子の老婆は100歳近いとされていましたから、この法要自体そのオマージュだったのだと思います 1977年の「八つ墓村」から、本作は6年目なのでいわば七回忌なのです それに寅さんが転がりこんだ寺は蓮台寺で、「八つ墓村」に登場したのは蓮光寺でした なんとなく似ています 博は亡父諏訪飈一郎の備中高梁の屋敷を処分した遺産の分配金で、タコ社長の印刷工場に出資して経営を安定させたようです オフセット印刷機を導入できたとタコ社長喜んでます つまりこの時からただの印刷工員兼営業マンから共同経営者になったのだと思います マドンナは竹下景子 出演時30歳 この後、1987年の第38作「男はつらいよ 知床慕情」、1989年の第41作「男はつらいよ 寅次郎心の旅路」と都合3回マドンナとなります 役は全部別人です この3回のマドンナ役は、後藤久美子をマドンナに数えなければリリー役の浅丘ルリ子の4回に次ぐものです 柴又駅のホームで寅さんの袖をつかんで自分の気持ちを打ち明けるいじらしさは素晴らしい名シーンで心に残るものです 山田監督も心打たれたのだと思います 朋子のその後は、再婚したと第48作「男はつらいよ 寅次郎紅の花」で寅さんが話していますからどこかから僧侶を婿に迎えたのだと思います 中井貴一と杉田かおるの演じる若い二人の恋の行方は語られません 少なくとも中井貴一が演じた朋子の弟は、僧侶として寺には戻らなかったということです もしかしたら弟が寺に戻らなくて済むように気が乗らなくても無理にでも再婚したのかもしれません そして寅さんも忘れる為に 口笛を寅さんが吹くシーンはありません 終盤に口笛をアレンジした劇伴が流れるだけです ではなぜこのタイトルなのでしょうか? 口笛を吹くのはどんな時でしょう 格好つけてる時? 綺麗な女性を誘う時? 悩んでいて落ち着かない時? やせ我慢をしてる時? 寅さんが心の中で吹いているのは、たぶん、悩んでいるのとやせ我慢の口笛です ラストシーンは因島大橋の近くです 共用開始は1983年12月4日だそうですから、劇中のお正月明けには開通しています 因島大橋は因島と、尾道と水道を挟んだ向島の先の向島とを結ぶ橋です この橋が出来たからには因島と向島とを結ぶフェリーもいつかは無くなるだろうという会話があります 現実でも今はもうないようです そこに冒頭で出会ったレオナルド熊が演じる大工が通りかかり再会します 因島大橋の工事現場で働いていた時に飯場の飯炊き女とよろしくなって所帯をもったとあき竹城の演じる妻を紹介されます 彼の幼い娘も彼女に良くなついているようです 美人でも上品でもないけれど、気のいい家庭的な女性です 熊さんとは釣り合いがとれているのです 取り込み忘れたという彼女の一家の洗濯物が冬の海風にはためいています 僧侶になるなんて寅さんには土台無理な話 朋子と結婚しようなんて身の程知らずなことだったのです 釣り合いがとれるわけがないのです 熊さんの家族のような形 貧しくとも干された一家の下着から見える幸せの形 「これが本当の人間の暮らしだ」 第8作で博の父から聞いた言葉を思い出したのだと思います 寅さんはフェリーできっと口笛を吹 いていたに違いありません 素晴らしい演出による終わり方でした やっぱり自分にはリリーさんが一番相応しい女性だったんだ そう寅さんは思ったでしょう でもいつどこで会えるものか皆目わかりゃしない 最後にリリーさんに会ったのは1980年の「寅次郎ハイビスカスの花」の時だから3年前 リリーさんに寅さんが再開するのは、1995年の第48作「男はつらいよ 寅次郎紅の花」のこと 12年後のことになるのです 口笛を吹かずにいられましょうか 蛇足 博の父の菩提寺は、第8作で博の母を弔った寺と墓が違っています どうして? 野暮はよしましょう それくらい監督もスタッフも百も承知のこと 街中の寺では本作の物語は成立しないという判断だったのでしょう

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あき240

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