【12月1日は「映画の日」】「映画が題材の映画」20選 編集部が厳選
2023年12月1日 12:00
12月1日が映画産業発祥(日本での有料公開)を記念する「映画の日」であることを、ご存じでしょうか。この記念日が定められたのは、1956年6月29日に行われた日本映画連合会の総会でのこと。それから67年が経とうとしています。
「映画の日」には、全国の多くの劇場で鑑賞料金1000円で映画が観られるサービスが行われており、読者の皆様にはぜひ、映画館へ足を運んでいただけたらと思います。と同時に、「映画の日」だからこそ、映画.com編集部が総力を結集して厳選した「映画が題材の映画」20本をご紹介します。邦画、洋画、アニメと満遍なくご用意しましたので、皆様の豊かな映画体験の一助となれば幸いです。
●邦画
「蒲田行進曲」
劇作家つかこうへいの同名戯曲をつか自らが脚色し、深作欣二監督がメガホンをとって大ヒットを記録した人情喜劇。撮影所を舞台に、破天荒な花形スターと彼を慕う大部屋俳優の奇妙な友情、2人の間で揺れ動く女優の姿を描く。
今回の「映画の中の映画」を象徴するような邦画の名作。何度観ても、作品全体から漂う“熱波”にクラクラさせられます。作品タイトルは「蒲田」ですが、主舞台となる京都・太秦へ足を運ぶたび、今作に思いを馳せずにはいられなくなる“魔力”を持った作品です。
きっとそれは、主人公の銀四郎とヤスに扮した、つかこうへい門下生の風間杜夫と平田満が演劇の世界から持ち込んだ芝居が大きな役割を果たしたからなのでしょうね。「39段の階段落ち」のシーンはもちろんですが、役者ひとりひとりの熱演はまさに“眼福”。令和の時代にもこのような作品が誕生することを願って止みません。(大塚史貴)
「今夜、ロマンス劇場で」
綾瀬はるかと坂口健太郎が共演し、モノクロ映画の中のヒロインと現実世界の青年が織りなす切ない恋の行方を描いたファンタジックなラブストーリー。
映画監督を目指す青年・健司はモノクロ映画のヒロインである美雪に心を奪われ、スクリーンの中の彼女に会うために映画館に通い続けていた。そんなある日、美雪が実体となって健司の前に現われる。モノクロ姿のままの彼女をカラフルな現実世界に案内するうち、健司と美雪は少しずつ惹かれ合っていく。しかし美雪には、人のぬくもりに触れると消えてしまうという秘密があった。
「翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて」の武内英樹監督によるファンタジックラブストーリー。「ローマの休日」「ニュー・シネマ・パラダイス」「カイロの紫のバラ」など名作映画のオマージュがあちこちにちりばめられ、「あ!このシーンはきっと……」と元ネタの作品が頭に浮かぶたびに心が弾みます。レトロおしゃれな世界観のなか繰り広げられる、おてんばなモノクロのお姫様と映画監督を目指す青年の決して叶わぬ恋。魅力的なキャラクターが織りなす切ないラブストーリーと、監督が仕掛けた映画ならではの遊び心に心躍る素敵な作品です。(AM)
「キツツキと雨」
「南極料理人」の沖田修一監督が、無骨な木こりと気の弱い映画監督の出会いから生まれるドラマを役所広司と小栗旬の初共演で描く。2011年・第24回東京国際映画祭で審査員特別賞を受賞。
あるのどかな山村に、ある日突然、ゾンビ映画の撮影隊がやってくる。ひょんなことから撮影を手伝うことになった60歳の木こりの克彦と、その気弱さゆえにスタッフをまとめられず狼狽する25歳の新人監督・幸一は、互いに影響を与えあい、次第に変化をもたらしていく。そして、そんな2人の交流が村と撮影隊の奇妙なコラボレーションを生み出していく。
緑豊かな山村で行われていくゾンビ映画の撮影。“映画”に触れた人々や環境、そしてとても大事になってくるのが“気持ち”が変わっていくということ。こんなに“映画”という存在が愛おしくなる作品はなかなかありません。
コミカルな映画撮影シーンはもちろんですが、木こりの克彦と新人監督・幸一が隣り合って(距離を詰めたり、時には空けたり)、向かい合って対話する光景もたまらなく好き。特に、食堂でひとつのあんみつを食べ合う場面、劇中屈指の名シーンだと思っています。(岡田寛司)
「カメラを止めるな!」
映画専門学校「ENBUゼミナール」のワークショップ「シネマプロジェクト」の第7弾として製作された作品で、前半と後半で大きく赴きが異なる異色の構成や緻密な脚本、30分以上に及ぶ長回しなど、さまざまな挑戦に満ちた野心作。「37分ワンシーンワンカットのゾンビサバイバル映画」を撮った人々の姿を描く。監督はオムニバス映画「4/猫 ねこぶんのよん」などに参加してきた上田慎一郎。とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画の撮影をしていたが、そこへ本物のゾンビが襲来。ディレクターの日暮は大喜びで撮影を続けるが、撮影隊の面々は次々とゾンビ化していき……。
公開当時の盛り上がりは、今も忘れることができません。普段映画を観ない友人からも「カメ止め見た?」「後半が面白くってさ~」と連絡があり、いち映画ファンとして、低予算でも本当に面白い映画を作れば多くの人に届くんだという希望を感じました。何が起こるかわからない映画製作の裏側と共に、普遍的な父娘の絆も描かれていて、ラストは予想以上に爽やか。何があっても撮影を止めない=映画作りへの諦めない思いが込められたようなタイトルも好きです。(SK)
「雨に叫べば」
「ミッドナイトスワン」の内田英治監督が松本まりかを主演に迎え、新人女性監督が理想の映画を撮影するためにさまざまな困難にぶつかっていく姿を描いた人間ドラマ。男尊女卑やパワハラの匂いが残る1980年代の撮影現場を舞台に、映画製作の舞台裏で繰り広げられる人間模様を、時にリアルに時にデフォルメしながら再現した。
1988年、新人女性監督の花子が意味不明の理由で撮影のテイクを重ね、フラストレーションを溜めたベテランスタッフたちからイジメの洗礼を受ける。さらに、控え室ではカラミのシーンをいやがるアイドル俳優と落ち目のベテラン女優の間でもめ事が起こり、ようやく撮り終えたシーンが映画のレイティングにひっかかるなど、さまざまなトラブルが降りかかる。現場の混乱を聞きつけたプロデューサーから監督交代を告げられ、花子は窮地に追い込まれていくが……。
タイトルこそ「雨に唄えば」に寄っていますが、本編を鑑賞すれば内田英治版「蒲田行進曲」であることが一目瞭然の作品。松本まりかが扮した新人監督・花子という役どころは、かつての内田監督自身の姿を投影しています。自らの身に降りかかった事象をフィクションの世界にちりばめていく“真摯”な姿勢こそが、内田監督の真骨頂といえましょう。
また、今作の舞台となる東映東京撮影所はこれまで実に多くの作品が生み出されてきました。劇中設定の88年は、活況を呈していた最盛期はおろか、映画産業が斜陽期と言われて久しい時期に差し掛かった時期です。それでも、職人気質の“活動屋”たちのプライドがぶつかり合い、多くの意欲作が誕生してきたことも、また事実。これまで撮影所で仕事をしてきた名もなき映画人たちを誇らしく思えてきてしまう逸品です。(大塚史貴)
「ロケーション」
女優を妻とするピンク映画のカメラマンを中心に、一本の映画を完成させるロケ隊の姿を描く。津田一郎原作の「ザ・ロケーション」の映画化で、脚本は近藤昭二、監督は脚本も執筆している「時代屋の女房」の森崎東、撮影は水野征樹がそれぞれ担当。主演の西田敏行をはじめ、大楠道代、美保純、柄本明、加藤武、竹中直人、角野卓造らが好演している。
ピンク映画の撮影クルーが「主演女優の自殺未遂」「監督の入院」といったトラブルに遭いながらも、各地でロケーションを行いながら、作品を完成させていく。資金潤沢とは程遠い(一行が移動に使うハイエースのボロさが凄まじい)。でも、執念のアイデアで現実をフィクションに取り込んでいくたくましさ(と業の深さ)が、まぁ素晴らしくてですね……。
この光景ってリアル?フィクション?という感じで、その境界が揺らいでいくさまが非常に面白い。というか、予想の斜め上を行く展開になっていくんですよ……。カメラマン“べーやん”役の西田敏行も最高なんですが、特筆すべきは美保純! 本作での芝居は神がかっている。よく“映画の神様がやってきた”なんて言葉聞きませんか? この作品、めちゃくちゃ降臨してます。(岡田寛司)
「キネマの神様」
松竹映画の100周年を記念した作品で、人気作家・原田マハの同名小説を山田洋次監督が映画化。映画監督を目指し、助監督として撮影現場で働く若き日のゴウは、撮影所近くの食堂の娘・淑子や仲間の映写技師テラシンとともに夢を語らい、青春の日々を駆け抜けていた。しかし、初監督作「キネマの神様」の撮影初日に転落事故で大きなケガを負い、作品は幻となってしまう。大きな挫折を味わったゴウは夢を追うことを諦めてしまい、撮影所を辞めて田舎へと帰っていった。それから約50年。かつて自身が手がけた「キネマの神様」の脚本が出てきたことで、ゴウの中で止まっていた夢が再び動き始める。
ゴウ役は当初、志村けんが務める予定だったが、志村が新型コロナウイルス感染症の肺炎により降板、後に死去したことから、かつて志村と同じ事務所でもあった沢田が志村の意思を継ぎ、代役としてゴウを演じることになった。
映画を愛し、映画作りに夢中になった主人公・ゴウの青春時代。きらきらと眩しくて、昔の撮影所や機材について詳しく知らない私でも不思議と懐かしい気持ちになり、夢を見させてくれる映画って素敵だなと改めて思いました。自らの個性を出しつつ、志村けんさんのバトンをつないだ沢田研二さんの覚悟と男気にもぐっときます。沢田さんが志村さんの楽曲「東村山音頭」を歌うシーンもあるので、ご注目を。(SK)
●アニメ
「映画大好きポンポさん」
杉谷庄吾【人間プラモ】の同名コミックを劇場アニメ化。大物映画プロデューサーの孫で自身もその才能を受け継いだポンポさんのもとで、製作アシスタントを務める映画通の青年ジーン。映画を撮ることに憧れながらも自分には無理だと諦めかけていたが、ポンポさんに15秒CMの制作を任され、映画づくりの楽しさを知る。ある日、ジーンはポンポさんから新作映画「MEISTER」の脚本を渡される。伝説の俳優マーティンの復帰作でもあるその映画に監督として指名されたのは、なんとジーンだった。ポンポさんの目にとまった新人女優ナタリーをヒロインに迎え、波乱万丈の撮影がスタートするが……。
ハリウッドならぬ「ニャリウッド」を舞台に、映画マニアの青年が長編映画の初監督に悪戦苦闘する物語が本編尺90分ピッタリで描かれます。なぜ90分なのかは映画を見てご確認ください。
映画製作の夢と狂気を遊び心たっぷりに描きながら、映像編集によって映画の見せ方が変わっていく様子を、実際に編集を変えた映像を何パターンも見せていく入れ子細工のような構成で“編集アニメ”としても楽しめます。(五所光太郎)
「千年女優」
「パーフェクト・ブルー」の今敏監督が、数十年にわたり1人の男性を思い続けた女優の姿を、時間や空間を超えて描くオリジナル長編アニメーション。小さな映像制作会社の社長・立花は、かつて一世を風靡した昭和の大女優・藤原千代子のドキュメンタリーを作るため、人里離れた千代子の邸宅を訪れる。30年前に突如として銀幕から姿を消し、隠遁生活を送っていた千代子は、立花が持参した1本の鍵を見て、思い出を語りはじめる。千代子の語りは、いつしか現実と映画のエピソードが渾然一体となり、波乱万丈の物語へと発展していく。
小津安二郎作品、黒澤明の「蜘蛛巣城」など、名作邦画へのオマージュを交えながら、原節子や高峰秀子を思わせる架空の名女優の人生を87分で描く今敏監督の劇場アニメ第2作。「君たちはどう生きるか」で宮崎駿監督とタッグを組んだアニメーターの本田雄が、キャラクターデザイン・作画監督を手がけています。
平沢進による音楽をバックに、女優の過去と彼女が出演した映画が虚実ないまぜになりながら時間と場所が自在に変化していく、ふだんアニメを見ない方にも強くお勧めできる1作です。(五所光太郎)
「劇場版SHIROBAKO」
アニメーション業界の日常や実情、実態を描いて話題を集めたテレビアニメ「SHIROBAKO」の完全新作劇場版。監督は「ガールズ&パンツァー」などの人気作を手がける水島努。いつか必ず一緒にアニメーション作品を作ろうと約束した、上山高校アニメーション同好会の5人。卒業後、アニメ制作会社「武蔵野アニメーション」の制作進行として働く宮森あおいをはじめ、アニメーター、声優、3Dクリエイター、脚本家など、5人はそれぞれの場所や役割でアニメーション制作に携わり、「第三飛行少女隊」で夢に一歩近づくことができた。アニメーションの世界に自分たちの居場所を見つけ、少しだけ成長した5人の前に、新たな苦悩や試練が立ちはだかる。
アニメーションに関心のある方すべてに見てほしい、オリジナルテレビアニメ「SHIROBAKO」の続編。テレビアニメをつくる制作会社の舞台裏を描いたテレビアニメ版を踏襲し、本作では劇場アニメを制作する様子が描かれます。
テレビアニメ版の物語の5年後を舞台に、登場人物たちに思い入れがあるほどつらくなるビターな展開もありますが、アニメーション制作の夢と希望(とほんの少しの絶望)がつまった本作を見るとアニメがもっと好きになるはずです。(五所光太郎)
●洋画
「サンセット大通り」
映画の都ハリウッドのサイレント時代と50年代、2つの時代がシンクロする作品。「ハリウッドでハリウッドを描く作品が作りたかった」とビリー・ワイルダーは製作意図を語っている。売れない脚本家ギリスは、無声映画時代の大女優ノーマの家へ迷い込む。華やかな世界への返り咲きを願う彼女は、ギーリに脚本の手直しを頼むが……。ノーマ役のグロリア・スワンソンの緊迫感あふれる演技は秀逸。「クレオパトラ」などの監督として知られるセシル・B・デミルが、本人役で登場している。
“冒頭からクライマックス!”のお手本のような映画。未見の方は、この衝撃を味わってほしいです。絶対に結末が気になりますから……。サイレント映画の没落と音付き映画(トーキー)の台頭、過去への栄光と未来への眼差しといった対比、不気味なエリッヒ・フォン・シュトロハイムの名演等々、語りたくなる部分はたくさんありますが、なんといってもグロリア・スワンソン!
「演技に言葉はいらぬ、表情で語るもの」を実際に体現する“あの顔”。あまりにも強烈すぎる(でも、常に哀愁を携えているのも見どころ)。久々に見直して、改めて大傑作だと思いましたが、ふとこんなことも。これは映画における“時代の転換”によって生まれた悲喜劇。昨今の映画製作における流れの速さを見ていると、そろそろ“第2のサンセット大通り”みたいな物語が生成されてきてもおかしくないのかも。(岡田寛司)
「8 1/2」
映画史にその名を残すイタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニの代表作として知られる自伝的作品。一流映画監督のグイドは、新作の構想に行き詰まってしまいクランクインを2週間も先延ばしにしていた。療養のため温泉地を訪れるグイドだったが、女性たちとの関係や仕事上の知人たちとの現実に悩まされ続けるうちに、様々な夢や幻が彼の前に現われるようになり……。
映画監督が自身の仕事と私生活を描く自伝的作品は、○○監督の「8 1/2」と例えられるほど有名であり、後世のあまたのクリエイターに影響を与えたイタリアの巨匠の代表作。“映像の魔術師”フェリーニが、新作に行き詰まり、妻と愛人、仕事上の知人たちとの関係に悩みながらも、若い女優に心を奪われ、夢と虚像、そして現実があいまいになるさまを美しいモノクロームで描きます。マルチェロ・マストロヤンニの色男ぶりにも注目。(MK)
「映画に愛を込めて アメリカの夜」
フランソワ・トリュフォー監督が、映画を愛する者たちに捧げた群像劇。フランス・ニースのスタジオ“ラ・ビクトワール”を舞台に、「パメラを紹介します」という映画の撮影を行っているスタッフ・キャストたちの人間模様が描かれる。出演はジャクリーン・ビセット、ジャン=ピエール・レオほか。原題の「Day for Night」とは、カメラレンズにフィルターをかけて、夜のシーンを昼間に撮影することを指す。73年度のアカデミー賞では外国語映画賞を受賞した。
原題の「La nuit americaine(アメリカの夜)」は、カメラレンズにフィルターをかけて、昼間に夜のシーンを撮影すること。その言葉と設定がすでに映画的。トリュフォー自身が監督役で出演、劇中の架空の映画でジャン=ピエール・レオーが演じる主演俳優はスタッフに恋をする、などと入れ子構造に展開する舞台裏の人間ドラマ、トリュフォーの実体験に基づいたエピソード、そして映画製作の裏側も垣間見られる、映画ファン必見の1本。(MK)
スティーブン・スピルバーグ監督が、アーネスト・クラインによる小説「ゲームウォーズ」を映画化したSFアクション。貧富の格差が激化し、多くの人々が荒廃した街に暮らす2045年。世界中の人々がアクセスするVRの世界「OASIS(オアシス)」に入り、理想の人生を楽しむことが若者たちの唯一の希望だった。そんなある日、オアシスの開発によって巨万の富を築いた大富豪のジェームズ・ハリデーが死去し、オアシスの隠された3つの謎を解明した者に、莫大な遺産とオアシスの運営権を明け渡すというメッセージが発信される。それ以降、世界中の人々が謎解きに躍起になり、17歳の孤独な青年ウェイドもそれに参加していた。そしてある時、謎めいた美女アルテミスと出会ったウェイドは、1つ目の謎を解き明かすことに成功。一躍オアシスの有名人となるが、ハリデーの遺産を狙う巨大企業IOI社の魔の手が迫り……。
映画の天才スピルバーグが、本作について「自分が子どもに戻れるような作品を作りたかった」と語った通り、著作権の壁を超えて数々の名作映画やゲーム、コミックなどのネタを投入し、ポップカルチャーの魅力をたっぷりと詰め込んだ最高の娯楽作品。
夢、友情、そして恋が描かれたシンプルでいながら王道のストーリーにも共感すること必至。「機動戦士ガンダム」「AKIRA」など、日本生まれの人気キャラも多数登場。さて、あなたはいくつ見つけられますか?(KA)
「ヒューゴの不思議な発明」
世界各国でベストセラーとなったブライアン・セルズニックの冒険ファンタジー小説「ユゴーの不思議な発明」を、マーティン・スコセッシ監督が3Dで映画化。駅の時計台に隠れ住む孤児の少年ヒューゴの冒険を、「映画の父」として知られるジョルジュ・メリエスの映画創世記の時代とともに描き出す。1930年代のパリ。父親の残した壊れた機械人形とともに駅の時計塔に暮らす少年ヒューゴは、ある日、機械人形の修理に必要なハート型の鍵を持つ少女イザベルと出会い、人形に秘められた壮大な秘密をめぐって冒険に繰り出す。
タイトルからは一見、少年少女の冒険映画のように思えますが、実は映画史の教科書にしてもいいぐらい、いかに映画がエンタテインメントとして発展したかを知ることができる、「映画」そのものが好きな人にこそ見てもらいたい作品です。
特に世界初の映画のひとつであるリュミエール兄弟作の映像を初めて見た観客が、悲鳴を上げて避けようとする光景が再現されているのは感動。手品の技法を駆使して映画を作り上げていく様子も描かれ、物語を通して娯楽映画の起源を体験することができます。(NK)
「人生はシネマティック!」
第2次世界大戦中のイギリス・ロンドンで、映画製作に情熱を注ぐ人々を描いたヒューマンドラマ。1940年のロンドンでカトリンはコピーライターの秘書として働いていた。人手不足のため、彼女が代わりに書いたコピーが情報省映画局の特別顧問バックリーの目に留まり、ダンケルクでドイツ軍の包囲から兵士を救出した姉妹の感動秘話を映画化する脚本チームに加わることとなった。戦争で疲弊した国民を勇気づけるための映画だったが、製作が開始され、ベテラン俳優のわがまま、政府と軍による検閲や横やりなどトラブルが続出。そのたびにカトリンたちの脚本は二転三転してしまう。なんとか撮影は大詰めを迎えるが、最後に最大級のトラブルが待ち受けていた。
第2次世界大戦下、激しい空爆にさらされながらも映画製作に情熱を燃やし、自分の人生を生きることを諦めなかった人々を描いた作品。“映画”が政治宣伝の道具として利用されることにやるせなさを覚えますが、言論統制のなか「人生の1時間半を捧げたくなる映画を作りたい」という思いで、映画製作に尽力する映画人たちに心を打たれます。悲劇的な展開も待ち受けますが、ヒロインのたくましさに救われるとともに、戦火が広がりつつある今だからこそ、深く考えさせられるものがあります。(AM)
「カイロの紫のバラ」
ウッディ・アレンが監督・脚本を手がけ、映画ファンの女性がスクリーンの中から飛び出してきたスターと恋に落ちる姿を描いたファンタジックなラブストーリー。
1930年代、大恐慌真っただ中のニュージャージー。セシリアは失業中の夫と愛のない生活を続けながら、ウェイトレスの仕事で家計を支えていた。彼女にとって、つらい現実を忘れられる映画鑑賞だけが心の支えだ。そんなある日、お気に入りの映画「カイロの紫のバラ」を映画館で見ていると、映画の主人公トムが突然セシリアに向かって話しかけてきて……。
「ローズマリーの赤ちゃん」のミア・ファローがヒロインを務め、「愛と追憶の日々」のジェフ・ダニエルズが劇中映画の主人公トムと彼を演じる俳優ギルの2役を演じた。
映画ファンの女性がスクリーンの中から飛び出してきたスターと恋に落ちるファンタジックなラブストーリー。今の時流で例えるなら、推し活の対象が目の前に現れ、自分を好きと言ってくれるわけですが、似たような妄想をしたことがある方も多いのでは!?
つらい現実を忘れられる映画鑑賞だけが心の支えの主人公が、不思議な体験を経て成長し、たどり着くラストシーンもきっと心が温かくなるはずです。(KA)
「ニュー・シネマ・パラダイス」
シチリアの小さな村を舞台に映写技師と少年の心あたたまる交流を、あふれる映画愛とともに描いた不朽の名作。シチリアの小さな村の映画館を舞台に、映画に魅せられたサルバトーレの少年から中年に至るまでの人生を3人の役者が演じる。
映画監督として成功をおさめたサルバトーレのもとに、老いたアルフレードの死の知らせが届く。彼の脳裏に、「トト」と呼ばれた少年時代や多くの時間を過ごした「パラダイス座」、映写技師アルフレードとの友情がよみがえってくる。
エンニオ・モリコーネによる叙情的な美しい音楽とともに、胸いっぱいに感動が広がる言わずと知れた名作映画。DVDもブルーレイも持っていますが、テレビ放送されるたびに、なぜか録画したくなってしまいます。上映用に編集された劇場版と、約50分が追加された完全版が存在し、好みが分かれるところですが、共通して描かれているのは大切な人との出会いとあふれる映画愛。いつか、撮影地となったシチリアのパラッツォ・アドリアーノを見学に訪れたいものです。(AM)
「バビロン」
「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督が、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビーら豪華キャストを迎え、1920年代のハリウッド黄金時代を舞台に撮り上げたドラマ。チャゼル監督がオリジナル脚本を手がけ、ゴージャスでクレイジーな映画業界で夢をかなえようとする男女の運命を描く。
夢を抱いてハリウッドへやって来た青年マニーと、彼と意気投合した新進女優ネリー。サイレント映画で業界を牽引してきた大物ジャックとの出会いにより、彼らの運命は大きく動き出す。恐れ知らずで美しいネリーは多くの人々を魅了し、スターの階段を駆け上がっていく。やがて、トーキー映画の革命の波が業界に押し寄せ……。
デイミアン・チャゼル監督は、「ラ・ラ・ランド」「バビロン」で、ハリウッドの光と闇を描いてきました。対をなすような2作品は、どちらも冒頭近くのシーンが秀逸。前者では渋滞中のハイウェイで人々が踊り出し、後者では魔窟のような屋敷を舞台に、乱痴気騒ぎが繰り広げられます。
サイレント映画からトーキー映画へ――映画業界を揺るがした変化は、マニー、ネリー、ジャックの運命を狂わせていくことに。熱に浮かされたかのような黄金時代のハリウッド、それぞれの浮き沈みの激しい人生模様に目を奪われますが、何といっても映画愛がストレートに伝わるセリフが素晴らしい(からこそ、切ない)。映画史上の事件や、実在の人物がモデルになった、大きな荒波に揉まれた人々を目撃できるだけではなく、当時の映画製作現場のありえない舞台裏を知ることができる作品としても、一見の価値ありです。(TY)
「雨に唄えば」
「踊る大紐育」のジーン・ケリーとスタンリー・ドーネン監督によるミュージカル映画の傑作。
無声映画からトーキーに移行し始めた頃のハリウッド。人気スターのドンとリナは何度も共演し結婚を噂される間柄だが、ドンはつけ上がった態度のリナに愛想を尽かしている。そんなある夜、ドンは歌も踊りも上手い新進女優キャシーと恋に落ちる。その後、ドンとリナの新作がトーキーで製作されることになるが、リナの致命的な悪声のために不評を買ってしまう。そこでドンはリナの声をキャシーに吹き替えて製作することを思い立つ。
言わずと知れたミュージカル映画の金字塔。70年以上も前に製作されたとは、とても思えません。それは、これまでに何度も何度も国境を越えて舞台化されていることからも、普遍的なテーマが多くの人から受け入れられていることを実証しています。むしろ、アカデミー賞で無冠だったのが不思議でなりません。
個人的には、ミュージカル映画としての側面以上にコメディ映画としても評価されて然るべきではないかと感じています。ジーン・ケリーとドナルド・オコナ―の卓越な演技合戦も改めて多くの方々に観てもらいたいと思う特筆ポイントです。(大塚史貴)
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父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
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奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
文豪・田山花袋が明治40年に発表した代表作で、日本の私小説の出発点とも言われる「蒲団」を原案に描いた人間ドラマ。物語の舞台を明治から現代の令和に、主人公を小説家から脚本家に置き換えて映画化した。 仕事への情熱を失い、妻のまどかとの関係も冷え切っていた脚本家の竹中時雄は、彼の作品のファンで脚本家を目指しているという若い女性・横山芳美に弟子入りを懇願され、彼女と師弟関係を結ぶ。一緒に仕事をするうちに芳美に物書きとしてのセンスを認め、同時に彼女に対して恋愛感情を抱くようになる時雄。芳美とともにいることで自身も納得する文章が書けるようになり、公私ともに充実していくが、芳美の恋人が上京してくるという話を聞き、嫉妬心と焦燥感に駆られる。 監督は「テイクオーバーゾーン」の山嵜晋平、脚本は「戦争と一人の女」「花腐し」などで共同脚本を手がけた中野太。主人公の時雄役を斉藤陽一郎が務め、芳子役は「ベイビーわるきゅーれ」の秋谷百音、まどか役は片岡礼子がそれぞれ演じた。