時代屋の女房

劇場公開日

解説

骨董屋を経営する中年男と、その店に転り込んできた娘の関係を中心に、近所に住む人々の生活を人情味ゆたかに描く。第八七回直木賞を受賞した村松友視の同名小説の映画化で、脚本は「キャバレー日記」の荒井晴彦、長尾啓司、「黒木太郎の愛と冒険」の森崎東の共同執筆、監督も森崎東、撮影は「港町紳士録」の竹村博がそれぞれ担当。

1983年製作/97分/日本
原題:Time and Tide
配給:松竹

ストーリー

東京の大井で、三十五歳でまだ独り者の安さんと呼ばれている男が「時代屋」という骨董屋を営んでいる。夏のある日、野良猫をかかえ、銀色の日傘をさした、真弓という、なかなかいい女がやって来ると、そのまま店に居ついてしまう。この店は、品物じゃなくて時代を売るから時代屋というので、安物ばかりだが、思い出と歴史の滲み込んだ、古くさいミシンや扇風機が並べられている。一緒に暮すようになっても、安さんは、真弓がどういう過去を持っているか訊こうともしない。そんな真弓がひょいと家を出ていくと、暫く戻ってこない。喫茶店サンライズの独りもんのマスターやクリニーング屋の今井さん夫婦、飲み屋とん吉の夫婦などが親身になって心配していると、真弓は何事もなかったかのように帰って来る。闇屋育ちのマスターは、カレーライス屋、洋品店、レコード屋などをやったあげく、今の店を開き、別れた女房と年頃の娘に毎月仕送りをしながらも、店の女の子に次次と手をつけ、今はユキちゃんとデキているが、その彼女は、同じ店のバーテン、渡辺と愛し合っている。今井さんの奥さんが売りにきた古いトランクから昭和十一年二月二十六日の日付の上野-東京間の古切符が出てきた。四十七年前、ニキビ面だった今井さんが近所の人妻と駆け落ちしようとして連れ戻され、使わなかった切符で、青春の思い出を蘇らせる今井さん。真弓がいない間に、安さんは、どこか真弓に似ている美郷という女と知り合い、関係を結ぶ。東京の孤独で華やいだ暮しを畳んで、彼女は東北の郷里に戻って結婚しようとしており、その寂しさの中で、安さんと出会ったのだ。マスターは遊びが過ぎて店を閉める羽目となり、ユキちゃんと渡辺クンに店を引き取ってもらい、小樽の旧い友人を訪ねて旅に出ることにする。安さんも、岩手でのぞきからくりの売り物があると聞き、一緒に車で旅に出る。道中、しみじみと人と人との絆や傷について考える安さん。そんなことを考えていた安さんが店に戻った翌日、真弓が初めて現れたときと同じように、冬にもかかわらず日傘をさして帰ってきた。ペコリと頭を下げる真弓だが、もちろん安さんは何も言わず訊かない。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第7回 日本アカデミー賞(1984年)

ノミネート

主演男優賞 渡瀬恒彦
主演女優賞 夏目雅子
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映画レビュー

4.5夏目雅子が生きた“時代”を刻んだ値打ちモノ

2020年5月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

萌える

1983年の公開当時に観て、ずいぶん大人の雰囲気だと感じ入ったものだが、撮影時はおそらく23か24。今観てもその早熟ぶりに驚かされるし、本作から2年後に白血病で亡くなったことも邦画界にとって計り知れない損失だった。

前年公開の「鬼龍院花子の生涯」では渡世人に育てられ極道相手に啖呵を切る芯の強い女性役で話題になった夏目雅子が、「時代屋の女房」では都会的で気まぐれな猫のような面も垣間見せる真弓と、東京での生活に馴染めず故郷・岩手での結婚を控えている純朴な美郷の二役で、多面的な魅力をふりまいている。初見の際は真弓が失踪後に変装して安さんの前に現れたのかと勘違いしたが、思うに、一本の映画で夏目雅子のさまざまな表情をたっぷり収めるための二役だったのだろう。

時代を封じ込めた古物を売る骨董屋が舞台だが、図らずも夏目雅子が生きて演じた時代をフィルムに刻み後世に伝える映画となった。

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高森 郁哉

4.0夏目雅子という“時代”

2022年8月18日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

(原作未読)①冒頭とラスト、銀色の傘をクルクルと回しながら夏目雅子が登場する。歩道橋の上に傘が見えているだけの普通の風景なのに登場する前のその一瞬に漂う高揚感、そしてその姿が現れるやありきたりの風景を一瞬にして華やかなものに変える存在感。美貌や演技力云々の前に画面のそこにだけ光が当たっているような、そこから目が離せないような、やはり「カメラに愛された者」だけが持つ輝きを放つ“稀有”な女優だったと思う。②

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もーさん

5.0夏目雅子は、猫のような風貌と雰囲気を持っている得難い女優なのです 他にはいない彼女だけの唯一無二の存在なのです

あき240さん
2022年2月20日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

なんか個人的なツボにハマってしまいました
正直そんな大したことはない映画と思います
でもやっぱり星5つつけてしまう
なぜだかとても染み入る映画なんです

夏目雅子
彼女の個性が最も引き出せている映画だとおもいます
彼女の美しい姿を追い求めているなら、本作が一番満足のいく映画だと思います

調べてみると身長164cm 体重50kg B86 W58 H88とありました
この数字全然サバをよんでないことが良く分かります

細く華奢で、すらりと長い手足、青白いほどの白い肌、細くて長めの首と小さな顔、切れ長の大きな目
彼女が映っているだけで映画になるんです

でも大井町なんて良く知っている下町が舞台なものだから、こんな美しい女性が本当にこの世の中に実在するんだという感覚が、観る側の私達に生じるのです
その感覚が映画の中のお話と妙に絡みあって、なんとも説明のできない感情が巻き起こってくるのです
今風にいえば、とてもエモイのです

夏目雅子は、真弓と美郷の一人二役
二人はそれぞれ全く関係がない人物なのだから、別々の役者で良いはず
でも監督は夏目雅子にどちらも演じさせています
安さんにとっては、同じだからです
猫のように迷いこんで、去っていく女なのです

夏目雅子は、この猫のような風貌と雰囲気を持っている得難い女優なのです
他にはいない彼女だけの唯一無二の存在なのです

大井町は、京浜東北線にのって品川の次の駅
大昔から個人的な思い出が色々とある街なものですから、商店街や街並みの風景がチラリと映るだけで、その記憶が鮮やかに蘇ってしまいます

何度となく写る三ツ又地蔵尊は大井町駅西口から400メートルほどのところ
駅前ロータリーから商店街を抜けてほんのすぐです
らせん階段が特徴的な歩道橋は、池上通りの大井三ツ叉交差点に掛かるものです
あの歩道橋を彼女が傘を差して渡って来たということは、多分駅から来たわけではないのでしょう

時代屋は映画のセットではなく撮影当時この場所に実在していて、そこで撮影されたそうです
今は跡形も無くなってしまっています
何もかも変わっているようでもあり、なにも変わっていないようでもあります

今井クリーニング店は、新幹線の高い高架の下を走る横須賀線の踏切のすぐそばで、東急の下神明駅から西大井駅方向に少し行った辺りですね

みんなが揃う居酒屋のシーンも染み入ります
品川区の地元民が集まる居酒屋はあんな雰囲気なんです
まるで自分が通っていたお店のようなんです

そんな街に、夏目雅子が歩いている!
もうそれだけで胸が一杯になるのです
灰色の薄汚れたゴミゴミと建て込んだ下町の光景が、夢の中のバラ色の世界になるのです
猫のような女が実在しているんだと

でも猫のような女は、理想のようで実は大変なんです
プチ・ファムファタルなのです
男の心をかき乱す存在になるのは間違いありません

1983年の3月の公開
いまから約40年昔の大井町の姿
時代屋の名前のとおり、映画の中の町並み自体が古物になってしまってしまいました

夏目雅子も、渡瀬恒彦も、津川雅彦も、沖田浩之も、朝丘雪路も、森崎東監督まで、みんな鬼籍に入ってしまいました

人も街も、思い出も、みんな時代屋に並べられた古物みたいになってしまったのです

劇中であんこう鍋を用意しながら真弓がこんなことをいいます

「私達ってやさしいのかしら?それとも残酷なのかな?
「だってさ人に使われて静かに死のうとしているものを、無理やり生き返らせてもう一度人に使わせるものにしちゃうわけでしょう」
「安さんが優しくって、私が残酷なのかな?」

もちろん彼女のこの台詞は、自殺しようとした青年と、彼を立ち直らせようと努力している自分のことを言ってます

ですが、この映画を公開から約40年後の21世紀に観た時、違う意味に聞こえてくるのです

40年も昔の、人と街並みと、思い出なんて、時代屋に並べられた過ぎった時代のもうどうでいいガラクタみたいなものだと

そんな風に昔の記憶を蘇らせる映画を観るなんて
トランクからでてきた切符みたいな記憶を蘇えらせることと同じなのよと

だって36年ぶりに再会したところで、杖をついた腰の曲がった白髪のおばあちゃんの姿なのですから
今井さんにはさぞ残酷だったでしょう
そうしてそれよりも、連絡を受けていそいそとホームまで迎えに来たのに、ひと目見て愕然として帰えられてしまったおばあちゃんへの今井さんの仕打ちの方がもっともっと残酷なのです

やさしいのかな?それとも残酷なのかな?
あの台詞は、自分にはそんな意味に聞こえたのです

それでも、自分はやさしいのだと思うのです
だって映画の中は時代が止まっているのですから
いつまでも思い出のそのままなのです

ふと考えてみれば、この大井町駅の二つ先の蒲田駅は、大昔松竹蒲田撮影所のあったところです
あの♪虹の都 光の港 キネマの天地~の歌のところです
蒲田からは、池上通りをまっすぐ北に1 時間ほど歩くとこの時代屋の脇の歩道橋にぶち当たるのです

真弓は映画の中の幻影の女だったのかも知れません

真弓は傘を差して、空に近い高い歩道橋を渡って時代屋にやってくるのです
メリー・ポピンズみたいに

本作の併映はリバイバルと言っても僅か5ヵ月前に公開されたばかりの「蒲田行進曲」でした
なんなんでしょう?不思議なことです

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あき240

3.5夏目雅子にとってはベストの作品では?

Yohiさん
2021年9月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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Yohi
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