仮面ライダー電王という作品は非常に秀逸だと思う。
前作カブトはストーリーが重すぎ、かつ、ちびっ子には難解だと感じ「一体、対象年齢をどこに設定しているのかな?」と疑問に感じたし、後番組キバは「子供向け」ではあるもののあとに残る余韻がなかった。(子供向けにしちゃ暗いし)
プロデューサーの白倉は「時間SFの為、難しいと思われないように「バカが作った番組」に見える事を狙った」と語っている。
そのコンセプトは非常に正解だったと思う。ちびっ子にもわかりやすく楽しめるし、子供と一緒に見ている大人はその裏に流れる伏線を楽しむ事が出来た。
スタッフにも恵まれた。田崎監督と脚本の小林靖子に対して、毎話、毎話、非常に感心しながらTVシリーズを鑑賞していた。
関俊彦を始め、熟練の声優陣がモモ・ウラ・キン・リュウに命を吹き込み、魅力的なキャラクターを確立してくれた。(大塚芳忠の名演も忘れちゃいけない)
そして佐藤健という稀有な才能が、番組のコンセプトをしっかりと具現化してくれた。良太郎はオトナなモモ・ウラ・キン・デネブ達が一目も二目も置く非常に強い心の持ち主なのだ。
更に脇を固める石丸謙二郎の安心感。
脚本にも「子供に感じとって欲しい大切なこと」がいっぱい詰まってた。
怪人が残虐に人を殺すシーンもなく、街の破壊によって失われた命も「その人の事を覚えている人が1人でもいればよみがえる」という設定は子供番組として白眉だと感じた。
とゆーわけで、これだけの布陣で臨む仮面ライダー電王は、大根がたくさんいてもあまり気にならなかった。
白鳥百合子や中村優一や陣内智則や星野亜希が大根でも許せてしまう。
(でも、彼らよりコハナちゃんやコタロウくんの方が演技は上手かったなw)
本作を含め映画作品は「TVシリーズを視聴して、キャラクターやストーリー背景を知っている事」が前提の作りになっている。
そして、渡辺 裕之の牙王はめちゃくちゃカッコよかったー。当時「歴代最年長」となった仮面ライダー。(藤岡弘さんが塗り替えてしまったけれど)
変身の仕方も非常に落ち着いており、その後のライダーや怪人達が「大物感」を出す時のロールモデルになったのではないかと思う。
演技力の面で1番印象深かったエピソードがある。小学校に入学した息子が、ある日1人の俳優さんを指して
「この人、ボクが1番好きな俳優さん。電王に出ていた時から好き。ほら、あの役で」と言った。
23〜24話でゲスト出演しただけの無名の人だ。
「え〜、よく覚えてるね〜」とその時にはさほど気にしなかったのだが、更に数年後、日経トレンディにて「今年のヒット人」に選ばれた彼の名を知る。それは若き日のムロツヨシだったのだ。
ムロさんも凄いが、息子の見る目もなかなかのモノなのかな、と親バカの感慨に耽る一件であった。