権利関係でイオン・プロダクションによる「カジノ・ロワイヤル」の映画化は、21作目にして今作が初!満を持して登場した第1作目の「007」は、殺しのライセンス=00<ダブル・オー>を取得する前後の若きジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)が主人公。特に007シリーズのファンではなかったのですが、「最初の任務は、自分の愛を殺すこと」という宣伝文句に誘われて公開時に観ました。今回は、久しぶりにDVDでの観賞。とにかく、オープニングから度肝を抜かれます。ほとんどのスタントはダニエル・クレイグ本人がやったそうですが、観ているだけで汗が出、息が切れ、痛みを感じさせるものでした。ストーリーの骨格は、世界中のテロリストの資金源となっている「謎の男」の正体を突き止め、莫大な金が闇に流れるのを防ぐというシンプルなものですが、登場人物たちの心理描写や話の伏線が複雑に絡み合っていて、推理小説を読み解くような面白さに溢れています。そして、物語に花を添えるボンドガールは、今までのボンドガールとは一線を画すまさに「運命の女」として登場します。ボンドが初めて本気で愛する女性、ヴェスパー・リンド(エヴァ・グリーン)は、英国財務省の職員というお堅い役柄で、かつてのボンドガールとは全く違った印象の知性あふれる美女。00<ダブルオー>となったボンドを相手に一歩も引かぬ勝ち気で聡明なヴェスパー。はじめのうちはお互いに疎ましい存在なのだが、幾多の危機を共に乗り越えるうちに恋に落ちてゆきます。物語の進展とともに徐々に謎が明らかになっていき、その一方ではさらになぞが深まっていく。そしてラストでは、意外な真相が明らかになり…。エヴァ・グリーンは、デビュー作「ドリーマーズ」(03)を監督した巨匠ベルナルド・ベルトルッチに「常軌を逸するほどに美しい」と絶賛され、仏を代表する女優になりつつありますが、今作のヴェスパー役もまさにはまり役でした。プロデューサーのマイケル・G・ウィルソンの言葉、「これは、すべてを最初から作り直す気持ちで臨んだ作品。過去のシリーズと切り離して観て欲しい」にあるように、まさに「原点回帰」をテーマに作られた作品に仕上がっています。どのようにしてジェームズ・ボンドが「007」になっていったのか?上司M(ジュディ・デンチ)の命令に背き、ミスを犯し、敵に拷問され、女性と恋に落ちと、さまざまな運命に翻弄されながら、少しずつクールで無敵の「007」になっていきます。そうした人間くさい主人公こそ、新しいジェームズ・ボンドの魅力であり、実は原作者イアン・フレミングが描いた「007」だったのかなと思いました。約2時間半、たっぷりと楽しめる超一級のエンターテイメント作です!