コラム:下から目線のハリウッド - 第26回

2022年1月21日更新

下から目線のハリウッド

【2022年公開予定】ハリウッド5大スタジオ注目映画を一挙紹介!

沈黙 サイレンス」「ゴースト・イン・ザ・シェル」などハリウッド映画の制作に一番下っ端からたずさわった映画プロデューサー・三谷匠衡と、「ライトな映画好き」オトバンク代表取締役の久保田裕也が、ハリウッドを中心とした映画業界の裏側を、「下から目線」で語り尽くすPodcast番組「下から目線のハリウッド ~映画業界の舞台ウラ全部話します~」の内容からピックアップします。

今回のテーマは、2022年に5大映画スタジオから公開予定の注目映画!22本をピックアップして紹介します。


三谷:いきなりですけど、私、人生のある時期において勉強熱心なほうだったと思うんですよ。学生の頃とか。

久保田:受験ソルジャーだった10代の頃とかね。

三谷:そうですね。なので、映画も、「今年どういう映画が出るのかな?」という予習を毎年やるんです。

久保田:僕は予習とかしてこなかったなぁ。だから浪人したんだろうけど(笑)。

三谷:いやいやいや(笑)。で、今回は、2022年にどこからどんな映画が目白押しかという予習をしようと思います。

久保田:すごい。映画番組みたいだ(笑)。

三谷:一応、映画の情報を取り上げているPodcastですけど、たまにはこういった作品の紹介みたいな回もあっていいかなと(笑)。

久保田:なるほど。

三谷:どういう取り上げ方をしようかなと考えたんですが、ハリウッド映画の主要5スタジオ――「ディズニー」「ワーナー・ブラザース」「ユニバーサル」「ソニー」「パラマウント」というスタジオごとの目白押しをピックアップしてみました。

久保田:スタジオで観る映画を決めたことないけど、スタジオごとにカラーとか見えて面白いかもね。

三谷:そうですね。そのあたりもお伝えできれば。で、まずはディズニーからピックアップしてみたいのですが、いろいろと作品を見て並べて思ったのが「やっぱりディズニーは強い!」というところですね。

久保田:やっぱそうなんだ。

三谷:ディズニーには、Disney+(ディズニープラス)とかもあって、劇場でも配信でも映画を出しますし、「スター・ウォーズ」シリーズやマーベル作品など彼らが持っている作品群がそもそも強いというところがあります。

久保田: やっぱりキャラクターがすごく豪華ですよね。

三谷:そうなんです。ここから先の紹介はアメリカでの公開日を基準にお話ししますが、まず5月6日、日本ではそれに先駆けて5月4日公開予定なんですけれども、「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」が出てきます。

「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」
「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」

久保田:これはあれだよね、超イケメンの俳優さんが主役をやってる。

三谷:ざっくりしすぎてますが、そこは間違ってないです(笑)。ベネディクト・カンバーバッチ主演で、2022年1月7日公開の大ヒット作「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」にも登場しているキャラクターがメインの作品ですね。

久保田:いきなりビッグタイトルですね。

三谷:なのですが、その前にじつはオリジナル作品で注目したいのがありまして。ディズニー傘下となっているピクサーの「私ときどきレッサーパンダ」という作品があります。

「私ときどきレッサーパンダ」
「私ときどきレッサーパンダ」

久保田:「はれときどきぶた」みたいですね。

三谷:そうですね(笑)。じつは劇場公開予定もあったのですが、1月中旬にDisney+のみでの独占配信に変更されています(※註:Disney+を提供していない国と地域では、本作の劇場公開を行う予定/日本では3月11日からDisney+で配信)

久保田:どんなストーリーなんですか?

三谷:この作品はアジア系カナダ人の女の子が主人公で、その子が、興奮すると巨大レッサーパンダになってしまう、という設定なんです。興奮してる時の自分はレッサーパンダなんだけれども、でも、そっちの自分も本当の自分なんじゃないか、ということで本当の自分を見つけていくという物語のようです。

久保田:これ面白そうだね。

三谷:次に、6月17日(日本では7月予定)に「バズ・ライトイヤー」という作品が公開されます。

「バズ・ライトイヤー」
「バズ・ライトイヤー」

久保田:これは「トイ・ストーリー」シリーズの、あのバズ・ライトイヤーですか?

三谷:そうです。

久保田:はい、観ます。決定です。

三谷:即決でお買い上げということでありがとうございます(笑)。「トイ・ストーリー」に出てくるバズ・ライトイヤーは玩具なんですけれど、この作品は、その元になった宇宙飛行士としてのバズ・ライトイヤーの物語なんです。

久保田:なるほど!玩具のモデルになった宇宙飛行士の話なんだ。

三谷:なので人間を描く作品になっています。

久保田:じゃあ、急にフラメンコを踊ったり、スペイン語をしゃべり出したりはしないんだ。

三谷:そうですね。ないとは言い切れないですけれど、そもそもの設定が違うと思うので(笑)。

久保田:そのシーンあったら嬉しいなぁ(笑)。

三谷:次は、7月8日に「ソー:ラブ・アンド・サンダー」というマイティ・ソーの映画が公開される予定です。こちらはタイカ・ワイティティが監督をする注目作です。もともと、タイカ・ワイティティ監督は、日本の漫画が原作の「AKIRA」を撮る予定だったんですが、契約上、「ソー:ラブ・アンド・サンダー」を優先することになったという経緯もあったりします。

久保田:そうなんですね。「AKIRA」も観てみたいけどなぁ。

三谷:じつは「AKIRA」も撮影の直前まで進行していたんです。ロサンゼルスの撮影での税金優遇措置の審査も通っていたんですけれど、スケジュールがズレたりしたこともあって、そうこうしているうちに、「ソー:ラブ・アンド・サンダー」の撮影に行かなくてはいけなくなったようです。

久保田:前にも話しましたけど、契約はいろいろ大変だよね。(契約に関しては、第7回「そこまで細かく決めなきゃいけない? リアルにシビアな映画の「契約」ウラ舞台!」で詳しく語っています)

三谷:そうですね。続いて11月には「ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー」が公開予定です。

三谷:ブラックパンサーの2作目ということなのですが……。主役であるティチャラー役のチャドウィック・ボーズマンが、2020年8月に惜しくも結腸がんでお亡くなりになってしまったんです。

久保田:えっ。そうだったの……?

三谷:はい。マーベルは、チャドウィック・ボーズマンが演じていたティ・チャラ役をリキャストしないようで、彼以外のキャストは前作から続投ということらしく、そのあとの世界をどう描くのかが気になっています。なので、これはぜひ観ておきたい作品として挙げました。

久保田:たしかにそういう背景も聞くときになりますね。

三谷:あとは、「アバター」という作品を覚えてますか?

久保田:はい。青いメイクの。めちゃくちゃヒットした映画だよね。

三谷:この映画を製作した21世紀フォックス(現・20世紀スタジオ)は、2019年にディズニーに買収されていまして。第一作(2009年)から10年以上の時を経て、2022年の12月に第二作が公開される予定になっています。

画像は「アバター(2009)」
画像は「アバター(2009)」

三谷:しかも、「アバター」は今、第三作、第四作もすべて撮影が終わっているんですよ。

久保田:そんな「まとめて撮っちゃいます」みたいなケースってあるんですか?

三谷:いやー、なかなかないですね。これはジェームズ・キャメロン監督ならでは、というところだと思います。3本の映画を一気にまとめて撮るということは、1年半くらい撮影していることになるんですよ。

久保田:ローカル局のまとめ撮りみたいだね(笑)。

三谷:これは大変ですよ。

久保田:これ、監督だけじゃなくて、スタッフさん全員大変ですよね。

三谷:そうですね。いやすごい。CGとかも含めて、見どころも多いことが期待できるので、挙げさせていただきました。あとは、2022年秋公開予定の「Disenchanted(原題)」。こちらは「魔法にかけられて」という作品の続編で、今注目されている女優のエイミー・アダムスが主人公で、一作目を観た人は楽しみにしていると思います。ということで、ディズニーではこの7本が確実に観ておきたいかなというところになりますね。やっぱりさすがの布陣ですね。

久保田:野球で例えると、「四番が並びました!」みたいな感じですね。

三谷:そうですね。さすがディズニーです。さて、次はワーナー・ブラザースから、4本を選んでみました。1本目は、3月4日公開予定の「THE BATMAN ザ・バットマン」です。

「THE BATMAN ザ・バットマン」
「THE BATMAN ザ・バットマン」

三谷:これはDCコミックスをワーナーが持っているところから、また新しくバットマンのフランチャイズをつくろうということで製作された映画になります。「TENET テネット」にも出演していた若手演技派俳優のロバート・パティンソンが新たにブルース・ウェイン/バットマンを演じていて、内容的にも謎解きの要素が盛り込まれているなど、注目度の高い作品になっています。

久保田:バットマンも人気作だもんね。これも強い作品だなぁ。

三谷:あとは4月15日(日本公開は4月8日予定)に「ファンタスティックビーストとダンブルドアの秘密」が公開予定です。

「ファンタスティックビーストとダンブルドアの秘密」
「ファンタスティックビーストとダンブルドアの秘密」

三谷:こちらは「ハリー・ポッター」の系譜になる作品ですが、「ハリー・ポッター」フランチャイズは、ワーナーにとっては命綱みたいな部分もあるので目玉作品になっています。

久保田:「ファンタビ」って言われているやつですよね。

三谷:そうです。

久保田:ごめんなさい、もうそれ以上のことはわかってないです。にわかなので(笑)。

三谷:次は5月20日(日本公開日未定)「DCスーパー・ペット(原題)」という作品が全米公開される予定です。これは3Dアニメーションのヒーローもののコメディといった作品。DCの世界観で、動物のスーパーヒーロー(DCコミックスのヒーローが飼っているペットという設定)が色々いる、といった内容なんです。

久保田:めちゃめちゃ足が速いワンちゃんとか、猫の肉球の丸いところが全部銃になってて弾が出るとか?

三谷:予告では、犬がマント姿で空を飛んだり、リスの手から電撃が出たり、子猫のしっぽがガトリングガンになったりするシーンがありました(笑)。個人的にちょっと気になる作品なので挙げさせていただきました。

久保田:うん。ちょっと気になるね。

三谷:あとは、12月16日「アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム(原題)」という作品が全米公開予定です。

画像は「アクアマン」
画像は「アクアマン」

久保田:おー、アクアマン。

三谷:アクアマンは「ゲーム・オブ・スローンズ」のジェイソン・モモアさんという、ちょっと人間離れしているくらいのマッスル感のある俳優さんがいらっしゃるんですが、彼がヒーローを演じています。その肉体美だけでも一見の価値はあるんじゃないかなと思います。もちろん、映画としてもアクションシーンが魅力的だったり、前作も王道でありながらも飽きさせない展開は見どころだと思います。

久保田:僕は「すげぇ身体!すんごいなこの人!」っていうのが強烈に印象に残ってます。ホントにそれくらいすごい(笑)。

三谷:続いて、ユニバーサルですね。こちらは3本選ばせていただきました。まずは6月10日全米公開予定(日本では22年夏公開予定)の「ジュラシック・ワールド ドミニオン」です。

「ジュラシック・ワールド ドミニオン」
「ジュラシック・ワールド ドミニオン」

三谷:これは「ジュラシック・ワールド」シリーズの3本目になります。「ジュラシック・パーク」シリーズの大ヒットを受けて、さらに拡大できないかということで「ジュラシック・ワールド」として製作されたのが2015年。2作目「ジュラシック・ワールド 炎の王国」が2018年に公開されて、満を持しての三作目ということになります。恐竜の映画は僕ら結構いっぱい観てきていると思うので、どういったところに新しさが出るのかが気になるところですね。

久保田:人間が恐竜に化けたりするんじゃないですか。探検する人たちが木の実食べて恐竜になっちゃうみたいな。

三谷:いやいやいや。さすがにそれはぶっ飛びすぎでしょう(笑)。今明かされているところだと、これまでのシリーズには登場してなかった「7つの新種の恐竜」が出るなんて話もあるみたいです。次のユニバーサル注目作品は、ユニバーサルの子会社でアニメーション製作会社のイルミネーション・エンターテインメントから、7月1日公開予定(日本では22年内に公開予定)の「ミニオンズ フィーバー」です。

「ミニオンズ フィーバー」
「ミニオンズ フィーバー」

久保田:これは観ます。かわいいよね~。

三谷:そうですね。今回のミニオンズは1970年代が舞台なんですけれども、前作「ミニオンズ」で大活躍したミニオンと、幼少期の怪盗グルーが登場するらしいです。

久保田:観ます観ます。もうグッズも買います。

三谷:無条件ですね(笑)。かわいいミニオンズたちの活躍をもう一度観てみましょうというお話ですね。

画像10

三谷:あとは、12月21日北米公開予定の「スーパーマリオ(タイトル未定)」があります。これはもう皆さんご存じの任天堂のゲーム「スーパーマリオブラザーズ」の世界をベースにしたCGアニメ映画です。

久保田:これは大変だ。

三谷:これは、正直かなり楽しみだなぁと思っていて。声優陣がめちゃくちゃ豪華なんですよ。

久保田:誰ですか?

三谷:まずは、マリオ役にクリス・プラットが起用されていると。

久保田:おー!

三谷:あとは、アニヤ・テイラー=ジョイという、「クイーンズ・ギャンビット」に出ていた主演の人がピーチ姫役です。あとは、ジャック・ブラックがクッパ役とか。しっかりキャラクターに合わせた感じのキャスティングになっているところも期待できます。

久保田:キャスト豪華ですね~。

三谷:任天堂の作品が初めてイルミネーション・エンターテインメントの映画になるということで、それも非常に注目です。

久保田:これはビジネス的な感じで言うと、任天堂法務部vsユニバーサルっていう。

三谷:そうですね。昔、1980年代に任天堂とユニバーサルは裁判で争ったことがありまして。「ドンキーコング」が、「キングコング」の商標権を侵害しているんじゃないか、ということで任天堂がユニバーサル側から訴えられたんですが、任天堂はそれを退けたという出来事があったんですよね。

久保田:いやー、任天堂法務部は最強と言われていますからね。

三谷:そんな任天堂さんが映画の世界に、しかもユニバーサル傘下のスタジオをと手を組んで映画になるということですから、とても楽しみな作品です。というところで、次はソニー・ピクチャーズの注目映画です。

久保田:ソニーの注目作は何本あるんですか?

三谷:4本あります。ソニーは、スパイダーマンのユニバースというのが非常に強いということで。まずは、4月1日に日米同時公開される「モービウス」という作品です。

「モービウス」
「モービウス」

三谷:これは、「スパイダーマン」のスピンオフで、人気悪役のモービウスの孤独な戦いが描かれていて、「ヴェノム」や「スパイダーマン」とのリンクを感じさせるシーンが予告では複数登場しているので、どう絡んでいくかが非常に楽しみな作品です。

久保田:ちょっと手元の資料で写真を見てますけど、怖そうな雰囲気ありますね。

三谷:主役のジャレッド・レトさんですね。この方は非常に役に入り込むタイプの俳優さんとしても知られていて、今回こういう役だということで、もしかしたら撮影現場でコミュニケーションをとるのが大変だったりするかもしれないですね。いや、実際はわからないですけれど(笑)。

久保田:あー、でも役に入るタイプの俳優さんは、独特の空気感を現場でも出されますからね。そのぶん演技もすごいものになりますよね。

三谷:次は、ゲーム原作で2月18日に日米同時公開予定の「アンチャーテッド」という作品。

「アンチャーテッド」
「アンチャーテッド」

三谷:これは元々、ソニーのテレビゲームが原作で、トム・ホランド主演ということで非常に期待の作品になっています。次は、4月8日全米公開予定の「Bullet Train(原題)」という映画がありまして。これは、ブラッド・ピットが主演していて、伊坂幸太郎原作の「マリアビートル」がハリウッドで映画化されるという作品です。しかも、監督はアクション監督出身のデヴィッド・リーチ第8回「アクションでカラダを張るだけじゃない!? 「スタント」の現場から意外なキャリパス!で紹介)で、新幹線の中での非常に密度の高いアクションが展開されるそうなんですけれど、どういう映画に仕上がっているのか、非常に楽しみです。

久保田:ここに日本原作の作品が入ってくるのは楽しみだね。

三谷:あとは、10月7日全米公開予定の「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース (パート1)(原題)」という作品があります。

「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース (パート1)」
「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース (パート1)」

三谷:じつは、2018年にCGアニメ作品でビジュアルが独特な「スパイダーマン スパイダーバース」という映画があったんです。ご存知ですかね?

久保田:いやー、知らないです。

三谷:こちらはその続編ということで、アメコミテイストなビジュアルなんですけれど、すごく魅力的で。すでに大ヒットになっている「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」の世界観と混じってくるような展開があるという話のようで。要はマルチバースというような、パラレルワールドみたいなものを描くっていう内容みたいです。

久保田:はいはい。なるほど。

三谷:だから黒人の男の子がスパイダーマンになるという世界線のお話と、本家のトム・ホランドスパイダーマンとして出てくる世界線同士が交わりだすみたいな、すごいカオスな世界になっていくんですけれども、そこはぜひ観てみたいなというところで注目です。そして、最後はパラマウントの注目映画です。

久保田:パラマウントはどんなラインナップなんですか?

三谷:2022年のパラマウントは、トム・クルーズに非常にお世話になる1年になるのですが、その前に夏公開予定の「ソニック・ザ・ムービー ソニック vs ナックルズ」があります。

「ソニック・ザ・ムービー ソニック vs ナックルズ」
「ソニック・ザ・ムービー ソニック vs ナックルズ」

三谷:ソニックは2020年にシリーズ第一作があるんですが、それが成功したということで続編が登場します。

久保田:これも元々は日本のセガのゲームが原作ですよね?

三谷:そうです。CGアニメと実写が混ざったような感じの世界観の作品で。昔、ソニックの映画のマーケティング資料をみたいなものがインターネット上で流出して、ソニックのビジュアルがいかにきついか、みたいなものがバッシングされ、その結果、一からビジュアル作り直して、結果的にヒットしたっていう経緯もあります。

久保田:資料流出って普通にすごい問題だけど、結果的によかったんだ。すごいな(笑)。

三谷:そして5月27日に日米同時公開予定なのが、「トップガン マーヴェリック」。

「トップガン マーヴェリック」
「トップガン マーヴェリック」

久保田:マーヴェリックって「トップガン」の登場人物のマーヴェリックってことですよね?

三谷:そうなんです。

久保田:観たなぁ!「トップガン」!

三谷:トップガンといえば、1986年に公開されて大ヒットもして、今も名作と言われている作品ですよね。トム・クルーズが主演で、空軍のパイロットの話で。

久保田:トム・クルーズがね、教官ともう……すんごいのよ(笑)。

三谷:そうですね(笑)。その続編が、30年以上の時を経て、同じくトム・クルーズ主演で。

久保田:すごいですね。だって歳が全然違うじゃないですか。20代が、50代になってるわけですよね。

三谷:ストーリー的には、アメリカ海軍のパイロット養成学校トップガンに、マーヴェリックが教官として帰ってきて、という内容のようですが、もう楽しみ以外の何物でもないですね。そして、さらに9月30日公開予定なのが、「ミッション:インポッシブル7(仮題)」です。

画像は「ミッション:インポッシブル フォールアウト」
画像は「ミッション:インポッシブル フォールアウト」

久保田:ミッションやりすぎでしょう、これは! だって7ですよ。「ソウ」と同じくらいシリーズありますよ。

三谷:そうですね。相変わらずトム・クルーズは自身でスタントをやるというところもブレていないので。もう御年59歳ですよ。

久保田:ウソ? いやぁ……すごいとしか言えないよ。

三谷:本当にそうですね。この作品はコロナ禍中に撮影していたこともあって、コロナ対策に対するトム・クルーズの気合の入り方がすごいということが話題になったこともありました。密な状況になっていたスタッフを彼が発見して、そのスタッフに向かって強い口調で怒る音声と映像が一時期ちょっと流れたんですね。ただ、それだけスタッフや共演者のことを真剣に考えているという表れだし、そこまで気合を入れた作品でもあるので、ぜひ観たいですね。そして、ラストになりますが、パラマウントから12日25日米公開予定の「Babylon(原題)」という作品があります。

久保田:とうとう最後ですか。

三谷:これは、あまり知られてはないかもしれないのですが、「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督の最新作です。

「ラ・ラ・ランド」
「ラ・ラ・ランド」

三谷:ハリウッド黄金時代を舞台に、サイレントからトーキーに移っていくその世界と、それに対して人々はどういう風に対応していくか、という様子を描いています。

久保田:はいはい。

三谷:非常に豪華なキャスト陣で、ブラッド・ピットマーゴット・ロビーが主演にありつつ、他にもかなり豪華なキャストが起用されています。「ラ・ラ・ランド」の監督作品なので観に行く人も多いと思います。

久保田:けっこうアクション大作とかエンタメに振った作品が紹介された中でも、これはちょっと毛色も違いそうですね。

三谷:そうですね。――というところで、かなり駆け足ではありましたけれど、2022年ということで22本を選んでみました。

久保田:多いですねぇ、22本(笑)。

三谷:すいません(笑)。久保田さんは気になる作品はありましたか?

久保田:いろいろあったけど、横文字弱いんだよなぁ……。

三谷:そこ? そこっすか?(笑)。

久保田:「マリオ」と「私ときどきレッサーパンダ」は覚えてる。

三谷:ちゃんと刺さったものがあったのはよかった。横文字のタイトルじゃないし(笑)。

久保田:それもそうなんだけど、他の作品は四番バッターみたいな作品で、それはそれで面白そうなんだけど、「私ときどきレッサーパンダ」は初見だから。

三谷:その意味ではマリオも、ゲーム業界では四番ですけれども、映画という業界でどう活躍してくれるかが楽しみですね。

久保田:改めてラインナップを見ると、完全に新しい、新作みたいなものは少ないですね。

三谷:そうですね。既に確立されているブランドの続編、前日譚、リメイクだったり。オリジナル作品は非常に少ないですね。そこは今の劇場公開映画の宿命といいますか。大作やヒットしたシリーズ作で公開カレンダーの枠が埋まっていくほど、新しい作品が入り込む隙間がなくなる状況になったりはするので。そういうところで物足りなさを感じる方もいらっしゃるかもしれないですけれど。

久保田:たしかに中トロ大トロ、中トロ大トロ、みたいな(笑)。

三谷:ただこれは、コロナ禍の影響もあって、本当は2020年から2021年に公開しようと思っていた作品の公開が、ズレにズレていったというケースもあるので。中トロ大トロ率が高いのかもしれないですね。

久保田:全体を見ると、季節的には夏とか年末が公開多いんですかね。

三谷:そうですね。映画の公開時期にはシーズンがあったりするんですが、それは別の機会にお話しできれば。というわけで、今年も映画を楽しんでいただけたらと思います!


この回の音声はPodcastで配信中の『下から目線のハリウッド』(2022年の注目映画を予習しよう!)でお聴きいただけます。

筆者紹介

三谷匠衡のコラム

三谷匠衡(みたに・かねひら)。映画プロデューサー。1988年ウィーン生まれ。東京大学文学部卒業後、ハリウッドに渡り、ジョージ・ルーカスらを輩出した南カリフォルニア大学の大学院映画学部にてMFA(Master of Fine Arts:美術学修士)を取得。遠藤周作の小説をマーティン・スコセッシ監督が映画化した「沈黙 サイレンス」。日本のマンガ「攻殻機動隊」を原作とし、スカーレット・ヨハンソンやビートたけしらが出演した「ゴースト・イン・ザ・シェル」など、ハリウッド映画の製作クルーを経て、現在は日本原作のハリウッド映画化事業に取り組んでいる。また、最新映画や映画業界を“ビジネス視点”で語るPodcast番組「下から目線のハリウッド」を定期配信中。

Twitter:@shitahari

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