“35歳で人生最高の仕事ができる説”は本当か? ハリウッドスターで検証してみた
2021年11月20日 12:00
あるドキュメンタリーで、庵野秀明監督がこう語っていた。「人間、一番いい仕事をするのは35歳。人生で一番いい仕事をするんだったら、ちゃんとしたものをそこでやろうと」
1995年の「新世紀エヴァンゲリオン」制作当時を振り返る際、庵野監督がぽつりとつぶやいたその短い言葉に、何やら胸に刺さるものがあった。彼は35歳で「エヴァ」をつくった。あと3年でその年齢を迎える筆者にとって、“35歳で人生最高の仕事ができる説”はのっぴきならない課題に思えた。
自分が35歳になったとき、「人生最高の仕事ができた」と胸を張れているだろうか? なんだか茫漠たる不安にかられ、とにかく行動しなくちゃと思ったので、自分の仕事(映画記事)に焦点を当て“ひとつの疑問”を調査して記事にすることにした。
疑問とは、“映画の世界におけるトップ・オブ・トップ”であるハリウッドスターや監督たちが、35歳のときにどんな仕事をしていたのか? それぞれの年齢と作品をリストアップし、記事タイトルの説を検証してみようと思う。
※それぞれの年齢は「映画の公開年」から「人物の生年」を引くことで計算しています。誕生日、公開日によって厳密には年齢が前後する場合がありますが、ご了承ください。
すでに「ジョーズ」「未知との遭遇」という大ヒット作を連発し、ハリウッドの寵児となっていたスティーヴン・スピルバーグ。35歳の年に満を持して「レイダース 失われたアーク《聖櫃》」を発表する。ちなみにその翌年には、映画史に残る最大ヒット作(当時)「E.T.」を発表するのだから、まさに無双状態だったと言えるだろう。
8歳のころから子役として活躍しているスカーレット・ヨハンソンは、キャリア30年近い大ベテラン。そんな彼女の最高の当たり年と言っていいのが2019年、35歳の時。何しろ「マリッジ・ストーリー」「ジョジョ・ラビット」でアカデミー賞主演&助演にダブルノミネートされ、「アベンジャーズ エンドゲーム」でも見せ場をさらう活躍ぶりだった。
ハリソン・フォードが映画俳優としてブレイクしたのが「スター・ウォーズ」。24歳のとき俳優デビューしたものの芽が出ず、一度は俳優をやめて大工に転職していたというフォードが一躍世界的なスターとなったのは、35歳のときだった。その後の活躍はご存知のとおり。79歳になった今も現役バリバリで、「インディ・ジョーンズ」第5弾など新作がスタンバイしている。
ボディビル界のカリスマとして映画界に進出後も、長らく不遇の時代を送っていたシュワルツェネッガー。転機となったのが、35歳のときに公開された「コナン・ザ・グレート」だった。その活躍がジェームズ・キャメロン監督の目にとまり、2年後の1984年に「ターミネーター」で一躍世界的大スターへとのぼり詰めることになる。
キャリア初期“トム・クルーズの妻”という肩書が先行してしまうニコール・キッドマンだったが、演技派としての素質は早くから見出されていた。クルーズとの離婚まもなくして公開された「めぐりあう時間たち」では、特殊メイクによる付け鼻でその美貌を隠して演技力一本で勝負。アカデミー賞主演女優賞を獲得することになる。
二枚目スターとしてキャリアを確立させたケビン・コスナーが初めて監督業に挑戦した「ダンス・ウィズ・ウルブズ」が公開されたのが1990年。コスナーが35歳のときだった。自身で主役も兼ねたこの作品は、タブーとされていた字幕に3時間の長尺という、セオリーを無視した野心的な作りながら興行的に大成功をおさめ、アカデミー賞7部門を受賞した。
近作「女王陛下のお気に入り」でもオスカー候補となったレイチェル・ワイズにとっても、35歳の年がひとつのピークと言えそう。「ナイロビの蜂」ではアカデミー賞助演女優賞を受賞し、キアヌ・リーブスと共演した「コンスタンティン」でも1人2役を演じ、ボックスオフィスでの大ヒットに貢献している。
94年からはじまった人気ドラマ「ER緊急救命室」でブレイクを果たしたジョージ・クルーニーが初めて出演したメジャー映画が「フロム・ダスク・ティル・ドーン」。同作では、知名度で先行していたクエンティン・タランティーノの兄役という位置づけながら、ワイルドな魅力はその後の活躍を予感させるに十分だった。クルーニー35歳、当時からすでにトレードマークの白髪が存在感を見せ始めていた。
デンゼル・ワシントンが初めてアカデミー賞を受賞したのが「グローリー」。背中を鞭打たれながら痛みに耐え、無言で涙を流すシーンは強烈なインパクトを残した。その2年前に「遠い夜明け」で初のアカデミー賞ノミネートを勝ち取っており、「グローリー」での受賞でキャリアは盤石に。その後、2001年「トレーニング デイ」で2度目のオスカーを受賞することになる。
「恋人たちの予感」に主演して人気に火がついたのが20代後半。そこから数々の恋愛映画で人気を不動のものにしていたメグ・ライアンが、35歳のときに挑んだ作品が「戦火の勇気」(デンゼル・ワシントン共演)だった。それまでとは正反対の、毀誉褒貶相半ばするタフな軍人役を演じてイメージチェンジを図るも、評判は今ひとつ。ただ、その勇気は褒め称えられるべきものだろう。
長編デビュー作「セックスと嘘とビデオテープ」でいきなりカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したのが、なんと26歳のとき。そこから4本の長編を経て、35歳のときに「アウト・オブ・サイト」で2度目のブレイクを果たす。その2年後に今度は「エリン・ブロコビッチ」と「トラフィック」を同年のうちに発表し、黄金時代を築いていくことに。
20代のときに主演した「オスカーとルシンダ」「エリザベス」での演技力が高く評価されたケイト・ブランシェット。35歳のときに公開された「アビエイター」で早々にオスカーを獲得した。ちなみに同作で演じた実在の女優、キャサリン・ヘプバーンは、オスカー計4度の最多受賞女優。すでに2つのオスカー像を持っているブランシェットが、どこまでこの名女優に迫れるかにも注目だ。
ハーバード大学を主席で卒業した超インテリのテレンス・マリックが代表作「天国の日々」を世に送り出したのが35歳のとき。撮影後のポストプロダクションに2年もの長時間をかけた反動なのか、マリックは突如として表舞台から姿を消し、映画製作から遠ざかる。その後、「シン・レッド・ライン」でカムバックを果たすまで、約20年の歳月を要することになる。
「ブロードキャスト・ニュース」で一躍注目されたホリー・ハンターだが、35歳のときに大物監督と組んだ2本の映画でアカデミー賞ダブルノミネートを果たす。見事オスカー像を獲得した「ピアノ・レッスン」(ジェーン・カンピオン監督)の名演は言うまでもなく、「ザ・ファーム 法律事務所」(シドニー・ポラック監督)でも小気味よい演技で、主演のトム・クルーズを輝かせている。
今や世界的な大スターとなったライアン・レイノルズだが、その道のりは決して平坦ではなかった。35歳当時のレイノルズは、スカーレット・ヨハンソンとの結婚に破れ、興行的にも批評的にも大失敗した「グリーン・ランタン」公開でどん底に突き落とされる。
ちなみにその2年前には「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」で演じたキャラクター(デッドプール)も嘲笑の的にされていたため、さぞかしツライ時期を過ごしていたことだろう。ただ、その後の活躍はご存知のとおり。「ウルヴァリン: X-MEN ZERO」も「グリーン・ランタン」もすっかり持ちネタとして有効活用しているあたり、人生何がプラスに転じるかわからない。
以上、限られた時間で調べたのはこんな感じ。35歳で人生で最高の仕事ができる説は、メグ・ライアンとライアン・レイノルズ以外は「まあ当てはまっている」と判断できる。そこそこ有力な説と言えそうだ。
引き続き調査を続けるが、ユーザーの皆さまで「この人は35歳でこんな仕事してたよ」などありましたら、映画.comの問い合わせフォームや、公式Twitterなどで情報提供をお願いします。
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