【「ブレット・トレイン」公開記念】伊坂幸太郎原作映画14作品まとめ あらすじ、キャスト、見どころを紹介
2022年9月2日 19:00

テーマにそったおすすめ映画をご紹介する【映画.comシネマStyle】。伊坂幸太郎氏の累計発行部数300万部を超える小説「殺し屋シリーズ」の第2作「マリアビートル」(角川文庫刊)を、ブラッド・ピット主演で映画化する「ブレット・トレイン」が、9月1日に公開されました。
そこで今週は映画.com編集部が、伊坂氏の小説を映画化した作品を、一挙にご紹介。公開順に全14作品のあらすじ、キャスト、見どころを解説していきます。
「陽気なギャングが地球を回す」「陽気なギャングの日常と襲撃」「陽気なギャングは三つ数えろ」からなる、「陽気なギャングシリーズ」1作目を映画化したクライムサスペンス。松田翔太は本作で、スクリーンデビューを果たした。
他人のウソを見破る成瀬(大沢たかお)、正確な体内時計を持つ雪子(鈴木京香)、演説の達人・響野(佐藤浩市)、天才的なスリの腕前を持つ久遠(松田)という、それぞれ奇妙な特殊能力を持つ4人が偶然、銀行強盗にあう。しかし、その強盗が狂言であると見破った彼らは、「自分たちならもっとうまくやれる」と、銀行強盗を計画する。
キャラクターたちのユニークさ、それぞれの才能を生かした軽快な強盗計画、警察に追われながらも颯爽と逃げ出すカーアクションは、まるで実写版「ルパン三世」を見ているような気持になります。そんな華麗な強盗劇からのどんでん返しも必見です。
第2回本屋大賞5位となった、5編からなる短編集を、WOWOWの「ドラマW」で映像化したドラマ版をもとにした劇場版。なおドラマ版は、第33回放送文化基金賞テレビドラマ番組賞を受賞している。
家庭裁判所で調査官として働く武藤(坂口憲二)は、先輩の陣内(大森南朋)とともに銀行強盗に巻きこまれる。無事に解放されたものの、武藤は一緒に人質になった女性・美春(小西真奈美)に一目ぼれ。翌日、万引きで補導された少年・志朗(三浦春馬さん)を担当することになった武藤は、志朗の父親に対する様子に違和感を抱く。やがて武藤は、志朗の衝撃の秘密を知り……。
主人公の先輩である、家庭裁判所調査官の陣内の言葉に、随所でドキッとさせられる本作。「子どものことを英語でチャイルドと言うけれど、複数になるとチャイルズじゃなくて、チルドレンだろ。別物になるんだよ」。子どもと向き合う人々の思いとともに、“伊坂節”全開の物語の驚きの結末を是非見てほしいです。
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後に「フィッシュストーリー」「ゴールデンスランバー」「ポテチ」など、伊坂作品の映画化を、数多く手がけることになる中村義洋監督。第1回本屋大賞3位の原作を映画化する本作で、初めて伊坂氏とタッグを組んだ。
大学入学のため仙台に引っ越してきた椎名(濱田岳)は、隣人の河崎(瑛太 ※現在は永山瑛太)から奇妙な計画を持ちかけられる。同じアパートで暮らす引きこもりの留学生ドルジに広辞苑を贈るため、書店を襲撃しようというのだ。椎名は誘いを断りきれず、本屋襲撃を手伝うハメになるが、この計画の裏には河崎とドルジ、そしてドルジの彼女で河崎の元恋人・琴美(関めぐみ)をめぐる切ない物語が隠されていた。
伏線やある仕掛けの存在で「映像化不可能」と言われた原作小説を、映画として立ち上げた、中村監督の見事な演出は必見。ボブ・ディランの「風に吹かれて」が、河崎、ドルジ、琴美の行く末を切なく彩り、鑑賞後はしばらく、その「The answer is blowin’ in the wind」(答えは風に吹かれている)という歌詞が、耳から離れないでしょう。
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第134回直木賞候補、第3回本屋大賞3位となった「死神の精度」が原作。「恋する惑星」の金城武が主演し、小西真奈美らが共演を果たした。「死神の精度」は、伊坂氏自身が映画化を拒否し続けてきたが、金城が主演するという条件で実現した、というエピソードがある。
音楽好きの死神・千葉(金城)は強烈な雨男で、彼が人間界に現れるときはいつも雨。彼の仕事は、7日後に死ぬ予定の人間に近づき、“実行=死”か“見送り=生かす”かを判定すること。ある時、1985年の東京に現れた千葉は、次のターゲットとなる薄幸の女性、藤木一恵(小西)に近づき観察を始めるが、判定を下す7日目、彼女に思いがけない運命が訪れる。
本作最大の見どころは“主演・金城武”だ。もはや暴風雨的とも言えるイケメンぶりであり、姿を現せば立ちどころに、画面上のすべてをなぎ倒していく。
彼の役どころが“ちょっとズレた死神”なので、おとぼけ発言連発があざとくて見ちゃいらんないシーンがいくつかあるが、それさえ目をつむれば“金城・爆イケ・武”を目撃できるだけで100点満点。伊坂作品の紹介記事なのに金城武を宣伝するという倒錯的なレビューを書いてしまうくらいハマれてしまう。おすすめ。
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1975年、早すぎたパンクバンド「逆鱗」は世間に理解されぬまま、最後に「FISH STORY」という曲を残して解散した。そして舞台は1982年、2009年と時は流れて2012年、彗星激突の危機に見舞われた地球へ。人々が避難し、静まり返った街で営業を続けるレコード店では、店長(大森南朋)と車椅子の客・谷口(石丸謙二郎)が過ごしており、店内には「FISH STORY」が流れていた。
誰かがほんの少し勇気を出したことで、「無駄なんじゃないか」と思うことをひたむきに続けたことで、地球を救うこともある。本作を見ると、いつも「何事にも意味がある」という前向きなメッセージが心に刻まれます。伊坂作品の華麗な伏線回収を表現する、終盤のシークエンスは、爽快感たっぷりです。
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第129回直木賞候補、第1回本屋大賞3位となった同名小説を映画化。
大学院で遺伝子の研究をする兄の泉水(加瀬亮)と、街の落書きを消す仕事をし、自分がピカソの生まれ変わりだと思っている弟の春(岡田将生)。ふたりは、宮城・仙台の街で起こる連続放火事件と、現場近くに必ず残されるグラフィティアートの関連性に気付く。ふたりは事件の謎解きに乗り出すが、やがて24年前からいまへとつながる家族の謎が明らかになっていく。
原作でも鮮烈な印象を残す「春が2階から落ちてきた」という一文。映画の冒頭、その一文にあたるシーンを見ただけで、伊坂作品が見事に映像化されていることに確信を持つことができると思います。家族とは何か。正しいこととは何か。重いテーマを扱いながらも、原作同様の軽妙な語り口で、家族が出したある結論が描かれています。「俺たちは最強の家族だ」「楽しそうに生きていれば、地球の重力なんて消してしまえるんだ」――キャストたちの名演が、伊坂氏の哲学が垣間見える原作でも重要な言葉の数々に、特別な力を与えています。
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己のポリシーを貫く泥棒・黒澤(堺)、神に救いを求める青年・河原崎(柄本)、不倫相手と互いの伴侶を殺害する計画を進めるカウンセラー・京子(寺島)、仕事と家族を失ったサラリーマン・豊田(板尾)。そんな4人の人生が交錯し……。
伊坂ワールドの個性豊かなキャラクターたちに、これまた個性豊かな俳優たちが息を吹き込み、魅力的な役としてスクリーンで躍動します。特に原作の「重力ピエロ」「フィッシュストーリー」でも出てくる、謎の自分ルールで空き巣を働く黒澤は、筆者のお気に入りのキャラクターです。
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おなじみの中村義洋監督が、第5回本屋大賞を受賞した同名小説を映画化。
野党初となる首相の凱旋パレードが行われている仙台で、ラジコンヘリ爆弾を使った首相暗殺事件が発生。時を同じくして、久々に旧友・森田森吾(吉岡秀隆)と再会を果たしていた青柳雅春(堺雅人)は、突然現れた警官から発砲され、暗殺事件の犯人に仕立てられ、追われる身となる。
警察に偽の証拠を固められ、情報を操作され、誰も信じられない状況のなかで、青柳は自分に唯一残された「人を信じる力」を発揮して逃げ続けます。伊坂作品では、ギャングや泥棒など、ならず者たちの正義や信念が尊重されますが、本作では善人の正義や友情が真っ直ぐに描かれます。相手がどんなに巨大だろうと、状況がどんなに絶望的だろうと、何者にも壊せないものが必ずある、と信じさせてくれます。
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仙台で生まれ育ったふたりの青年、プロ野球のスター選手・尾崎(阿部亮平)と、空き巣を生業(なりわい)とする今村(濱田岳)。同じ生年月日を持つふたりは、対照的な人生を歩んでいた。今村はあるとき、意外な事実を知る。
どこか抜けており、空き巣の師匠を“専務”と呼び、尾崎に強い憧れと謎の執着を見せる今村というキャラクターを、はじめは「不思議ちゃんだな」と、どこか距離を持ってみていました。しかし、物語が進むなかで、どんどんその不思議な魅力にはまっていき、気づけば彼の心の動きに合わせて涙を流していました。伊坂原作映画の“顔”ともいえる濱田岳の、仙台に対する思いなどを語ったインタビューはこちら(https://eiga.com/movie/57065/interview/)。
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個性もバラバラな、父親と呼ぶべき人物が4人もいる高校生の由紀夫(岡田)は、4人から受ける愛情に煩わしさを感じていた。クラスメイトの多恵子(忽那汐里)には、「父親たち全員に似ている」と言われ、複雑な思いを抱いたある日、由紀夫は賭博場で鞄の盗難事件を目撃。そのことがきっかけで、一家はとんでもない事件に巻き込まれていく。
4人の父親がいるといわれると、「大丈夫なのだろうか?」といらぬ心配をしてしまいましたが、頭脳系、体育会系、モテ系、ちゃらい系とそれぞれ違う魅力を持っており、その上で何よりも息子を愛している父親たちの姿に、筆者としては羨ましい思いを抱きました。そんな父親たちと息子のやりとりはほほ笑ましい一方で、由紀夫が巻き込まれていく事件の全貌が少しずつ見えてきてからの怒涛の展開には、手に汗握るハラハラが待っています。
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「犯人に告ぐ」「イキガミ」で知られる瀧本智行監督が、小説「殺し屋シリーズ」の第1作「グラスホッパー」を映画化。「脳男」に続き、再び生田斗真とタッグを組んだ。浅野忠信、山田涼介らが殺し屋を演じた。
仕組まれた事故で恋人を失った教師・鈴木(生田)は、復讐のため教員としての職を捨て、裏社会の組織に潜入。しかし、復讐を遂げようとした相手は、“押し屋”と呼ばれる殺し屋の手で殺される。押し屋の正体を探ろうとした鈴木だったが、自らの嘘がばれ、組織から追われる身に。ハロウィンの夜、渋谷のスクランブル交差点で起こった事故をきっかけに、心に闇を抱えた鈴木、鯨(浅野)、蝉(山田)という3人の男の運命が交錯していく。
小説「殺し屋シリーズ」の第2作「マリアビートル」を映画化した「ブレット・トレイン」につながる裏社会の描写は、知ってはいけない世界を覗いてしまったような恐ろしさはありながら、どこか洒落が利いていて、思わずニヤリとしてしまいます。人を車に轢かせる“押し屋”、人を自殺に追い込む“自殺屋”、誰かを演じ、ある状況を作り出す「劇団」などなど。キーパーソンを務める佐津川愛美さんが最高にクールです。
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堺雅人主演で日本でも映画化された同名小説が、韓国で再映画化。国家的な陰謀に巻き込まれた平凡な男を、「MASTER マスター」「新感染半島 ファイナル・ステージ」のカン・ドンウォンが演じています。
強盗から人気アイドル歌手を救い、一躍国民的ヒーローになった誠実な宅配ドライバーのゴヌ(カン)。久々に連絡があった旧友ムヨル(キム・ウィソン)と再会するが、そのとき、目の前で爆弾テロが発生し、次期大統領候補が暗殺される。さらにムヨルが「お前を暗殺犯に仕立てるのが組織の狙いだ」との言葉を残して自爆。ムヨルの言葉通り、ゴヌは暗殺犯として警察から追われる身となるが……。
「国家的な陰謀に巻き込まれ、大統領候補殺害容疑をかけられてしまう」なんて、「自分の身に降りかかることはないだろう」と思えるんですが、主人公の誰でも信用してしまう、ただただ優しい青年ゴヌだって、そんなことになるとは露知らず、事件に巻き込まれていきます。原作と同様、わけの分からない状態から少しずつピースがはまっていく、なんとも言えない伊坂ワールドの爽快感は、韓国版でももちろん健在です。
日本版「ゴールデンスランバー(2010)」を鑑賞済みの人には、是非一味違うアクションシーンも見てほしいところ。荷車付きのバイクで町中を滑走するシーンや、近接での銃撃ありの取っ組み合いは手に汗握ります。韓国らしい激しいアクション多めの本作と日本版を見比べてみるのもおすすめです。
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「パンとバスと2度目のハツコイ」「愛がなんだ」の今泉力哉監督が、第12回本屋大賞9位にランクインした、伊氏の唯一となる恋愛小説集を映画化。不器用でも愛すべき人々のめぐり合いの連鎖を、10年の歳月にわたって描き出す。
仙台駅前で街頭アンケートを集めていた会社員の佐藤(三浦春馬さん)は、アンケートに答えてくれた女性・紗季(多部未華子)と出会い、付き合うことに。そして10年後、佐藤は意を決して紗季にプロポーズする。佐藤と紗季を中心に、美人の同級生・由美(森絵梨佳)と結婚し幸せな家庭を築いている佐藤の親友・一真(矢本悠馬)、妻子に逃げられ途方に暮れる佐藤の上司・藤間(原田泰造)、由美の友人で声しか知らない男に恋する美容師・美奈子(貫地谷しほり)ら周囲の人々の運命が交錯する。
今泉監督の繊細な語り口と、伊坂作品ならではの仕掛けで、思わぬ形でつながっていく人々のめぐり合いが、あたたかく描かれていきます。なぜ目の前の人と出会い、恋に落ちたのか――。自分の大切な人のことをそっと思い浮かべ、“ささやかな奇跡”に感謝したくなる作品です。
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小説「殺し屋シリーズ」の第2作「マリアビートル」を、ブラッド・ピット主演、「デッドプール2」のデビッド・リーチ監督でハリウッド映画化。なお「マリアビートル」は、英国推理作家協会賞(ダガー賞)の最終候補となるなど、日本のみならず、海外でも人気を集めている。
いつも事件に巻き込まれ、自分とは無関係の人の死に遭遇する、“世界一運の悪い殺し屋”レディバグ(ピット)。彼はある日、依頼人のマリア(サンドラ・ブロック)から、東京発・京都行の高速列車「ゆかり号」内でブリーフケースを盗み、次の駅で降りるだけの簡単な仕事を請け負う。高速列車に乗りこんだ彼は、早速ケースを発見するが、なぜか9人の殺し屋たちに命を狙われ、降りたくても降りられない事態に。やがて、偶然乗り合わせたはずの殺し屋10人の任務が交錯し、過去と因縁がつながっていく。
「伊坂ワールドを、ハリウッドの豪華スター共演、ド派手アクション満載で映画化するとこうなる!」という、ビジュアルもスケールも想像を超える本作。原作以上に、殺し屋同士の過去や因縁が濃密に結びついていくため、映画オリジナルの展開も楽しむことができます。トラブルを避けようと、常に受け身なキャラがどこか新鮮なブラピはもちろん、原作から性別は変更されたものの、サイコパス度合いはそのままのプリンスを演じたジョーイ・キングが最高です。
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