シネマ歌舞伎 海神別荘

劇場公開日:

シネマ歌舞伎 海神別荘

解説

歌舞伎の舞台公演を映画館のスクリーンでデジタル上映する「シネマ歌舞伎」シリーズ第16弾。1914年に発表された泉鏡花による戯曲が原作で、海底にある宮殿「琅かん殿(ろうかんでん)」の公子と地上の美女の恋を描く。ひとりの美女が海中の宮殿・琅かん殿(ろうかんでん)の公子に輿入れし、彼女の美しさに惚れた公子は優しくもてなす。しかし、美女は地上への未練を捨てきれず……。2009年7月に歌舞伎座で上演された舞台をデジタルシネマ化。

2012年製作/103分/日本
配給:松竹
劇場公開日:2012年2月18日

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映画レビュー

3.0耽美な世界に漂うときの間(魔) 美の極致

2022年3月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

幸せ

萌える

天野氏の舞台美術・衣装と共に、それはそれは美しい世界。海老蔵丈の凛々しい立ち姿、出演なさっている方々それぞれ美しい。大蛇(龍?)のうごめく様すらため息が出る。舞台の隅から隅まで目が行き届いている。どこに目を移そうが抜かりなし。
勿論、その中でもひときわ美しいのは玉三郎氏。言の葉を発する前の、その息遣いまで、華開くような耽美の世界。すっと動かす視線・指先…。何をどうとってもこの世のものとは思えません。
息を吹きかけるのも憚られるような美しさ。

音楽もたゆたう海の波の動きに身をゆだねるがごとく…。玉三郎氏の物腰を邪魔しない。

だけど、う~ん、海老蔵氏のあの言い回しは、わざとやっているのか。世間ずれしている(世間の価値観から大きく外れているほどの純な心をもつ)公子を表現するための演出なのか?小学校の学芸会かと思ったよ。

そして、原作を読んでいないけど、あの展開、あのオチ。正直ついていけない。人柱となった娘が幸せになると言う筋にしたいのだろうとは思うけど。元の世に戻れぬ娘のポジティブ思考?美しければなんでもいいの?

鏡花作品に貫かれている、異端のものへの憧憬。その世界観を愛でようとし、その存在に意味をみる姿勢。世界の裏側から覗き見た価値観。それを余すところなく、ビジュアル的にこれ以上ないだろうと思わせる様式美で再現せしめた作品。

昔から、玉三郎氏のファン。歌舞伎も観に行ったし、真田広之氏との『天守物語』とか、真田氏のロミオで玉三郎氏演出の『ロミオとジュリエット』の舞台にも酔いしれました。
今回もそういう世界を期待しただけに、ちょっと残念でした。
本音を言えば公子を変えて撮り直してほしい。
(なので、玉三郎氏だけなら配役☆5つでも足りないけれど、平均点下げさせていただきました)

シネマ歌舞伎の映画館の上映では『高野聖』とセットで、玉三郎氏の、泉鏡花の世界や芸術論についてのインタビュー付き。そこで玉三郎氏が「映画と舞台と違う」って仰っていたけど、その違いかしら?
もう一回見て、その世界観を理解せねばと思いました。

と、文句付けていますが、耽美な世界は堪能できます。ぜひ、ご覧になって、その世界に酔って下さい。

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とみいじょん

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