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歌舞伎いいよね。
DNAに刻まれてる何かを揺さぶってるんじゃないかという気すらするの。
黎明期のテレビ時代劇なんかは、歌舞伎を参照したのが多いんじゃないかな。
三日月宗近が歴史改変を防ぎにいくんだけど、宗近は任務を忠実に果たすと、かつての主・足利義輝が殺されることになるんだよね。この設定がもういい。宗近、葛藤しまくり。
はじめ足利義輝は名君に見えるんだよね。苦しい状況で腐るわけでもなく、色んな人の話もよく聞いて、いい判断してんの。そりゃ宗近もなんとかしたいと思うわっていう。
話の中で刀剣男士のアクションでるんだけど、いいね。殺陣はさすがにお手のもの。
現代的に早いアクションをやるわけじゃないけど、型がビシッとしていてかっこいい。
観るほうが分かりやすくできてていいね。
義輝は将軍になるんだけど、異界のものに操られちゃうの。それでおかしくなっちゃうんだよね。
でも元々が名君だから、下のものが諌めるんだよね。この諌め方もいいね。「あなたほどの方がどうしてそんなことを。どうかお改めください」という感じで。上司に物申すときは参考にしよう。
そして迎える石清水八幡宮。宮司を不用意に討とうとする義輝を松永久直が諌めるのね。
でも怒った義輝が、自ら手を下すならまだしも、同席してた雲居姫に扇子で打たせるんだよね。これは、ひどい。流石にこれは、久直、堪忍袋の緒が切れるのもしょうがない。
その納得感の与え方がうまいの。
そこに現れた宗近も、久直を正しい歴史のように動かそうとして。
密かに決意を固めた久直は、父・弾正に「義輝、討つべし」と謀反をけしかけるの。
主君を裏切るのは、武士としてあり得ないんだね。当然、弾正は怒り久直を手討ちにしようとさえするの。
しかし、久直はこんこんと義輝の腐敗ぶりを説き、そしてなんと、陰腹!
すごいよ。自らの命を投げ打ってでも、世のために、ふさわしくない主君を討つことを決める。
ここの久直の動きもいいね。父に対しては武士として振る舞い、母に対しては息子として振る舞う。「先立つ不幸をお許しください」は泣ける。
そして刀剣男士も協力して、義輝を討ちに行く。
アクションシーンの中で「われらとてお主の気持ちはわかっておる。お主の手で義輝を討て」はベタだけど泣ける。みんな適当なこと言いながら宗近のこと分かってたんだな。
それで大団円のあとは、演劇のカーテンコール風にみんな挨拶してくのね。
ここもカッコよかった。さっと人が割れるとそこに主要登場人物がいたりね。観せ方うまいの。
音楽は邦楽で、かっこいいね。途中の琵琶の語りもすごく良かった。
また歌舞伎を観に行こうと思ったよ。
あと、ここまでの流れと関係ない話だけど。
作品を観てて思ったんだけどね。例えば愛する人を「助けなきゃ」と思ったときに、刀剣男士が現れて「その者は死ぬのが正しい歴史」と言われても、知らねえよと思うよね。
これから変えるのは、お前らにとっては過去だけど、俺にとっては未来なんだよっていう。
なんか時間の不思議も感じたよ。