新生ディズニープラスでいますぐ見たいおすすめ映画12選【映画.com シネマStyle】

2021年10月27日 12:00

「俳優たちの演技に酔いしれる3作」「映画だから体感できるSFの世界に誘う3作」「全力おすすめ! 編集部員が偏愛する4作」などをご紹介
「俳優たちの演技に酔いしれる3作」「映画だから体感できるSFの世界に誘う3作」「全力おすすめ! 編集部員が偏愛する4作」などをご紹介

Disney+(ディズニープラス)で、新たなコンテンツブランド「スター」の配信が2021年10月27日から始まります。現在の「ディズニー」「ピクサー」「マーベル」「スター・ウォーズ」「ナショナル ジオグラフィック」に「スター」が加わることで、最新映画からオリジナル作品、日本のコンテンツまで今後1万6000を超えるラインアップへと大幅進化します!

作品数の大幅アップで嬉しい悲鳴を上げたいところですが、一方で「たくさんの映画のなかからどれを見ればいいのか迷ってしまう……」という方も多いはず! そこで、映画.comスタッフがおすすめする映画をご紹介。往年の名作から、多彩なジャンルの映画をピックアップしたので、是非、次見る作品選びの参考にしてください。


【俳優たちの演技に酔いしれる3作】

▽麗しきレオに酔いしれる! 豪華絢爛な現代版「ロミオとジュリエット

ロミオ&ジュリエット」(1996年製作/120分/バズ・ラーマン監督)

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バズ・ラーマン監督が、シェイクスピアの古典劇「ロミオとジュリエット」をレオナルド・ディカプリオクレア・デーンズ主演で映画化。時代設定を現代に変更し、衣装をアロハシャツ、武器を銃に置き換え、モンタギュー家とキャピレット家の争いをマフィアの抗争として描いた。ディカプリオは本作で第47回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞。

【あらすじ】
 ベローナ・ビーチで勢力を二分するモンタギュー家とキャピレット家は、長年にわたって抗争を繰り返していた。そんなある日、キャピレット家の仮装パーティに潜りこんだモンタギュー家のひとり息子ロミオ(ディカプリオ)は、キャピレット家の娘ジュリエット(デーンズ)と出会い、瞬く間に恋に落ちる。

水も滴るようなレオの麗しい美貌を余すことなく堪能できる、至極の1本! 本作は、舞台を現代に変えるというバズ・ラーマン監督の斬新なアイデアのもと、脚本とセリフはシェイクスピアの戯曲のまま製作。ラーマン監督の卓越したビジュアルセンスと、当時22歳と18歳だったディカプリオとデーンズのみずみずしい輝きは、製作から25年が経った今も色褪せないままです。

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朝焼けに染まる野外劇場でのロミオの印象的な初登場シーンに始まり、金色の装飾が美しいエレベーター内でのキス、ライトアップされたプールでの愛の誓いなど、幻想的でロマンチックなシーンが満載の本作。中でも特に有名なのは、ロミオとジュリエットが出会う水槽のシーン! きらびやかな仮面舞踏会で甲冑の騎士姿のロミオと、背に羽をつけた天使姿のジュリエットが水槽越しに見つめ合うシーンは何度見ても息をのむ美しさ……。デズリーがエモーショナルに歌い上げる愛のテーマソング「I’m Kissing You」が、より甘く切なく心を揺さぶります。

誰もが知るシェイクスピア作品を、全く新しい現代劇として甦らせた本作。傑作と名高い1968年製作の「ロミオとジュリエット」と見比べてみるのもオススメです!

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ロビン・ウィリアムズはなぜすごいのか? その答えが詰まった1本

ミセス・ダウト」(1993年製作/125分/クリス・コロンバス監督)

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離婚した父親が子どもたちに会いたい一心で、女装して元妻の家庭へ家政婦として潜り込む騒動を描くコメディ。「ハリーポッターと賢者の石」や「ホーム・アローン」シリーズのクリス・コロンバスが監督を務め、ロビン・ウィリアムズが主演を務めた。

【あらすじ】
 離婚裁判の結果、週に1度しか子どもたちに会えなくなってしまった主人公のダニエル(ウィリアムズ)は、特殊メイクアップアーティストの兄の協力で初老のイギリス婦人に変身。“ミセス・ダウト”と名乗り、家政婦として元妻に雇われると、何度もバレそうになるのをごまかしながら家政婦として奮闘する。

Disney+に追加される作品のラインナップを見たとき、「ロビン・ウィリアムズの作品が多い!」と心躍りました。「グッドモーニング、ベトナム」「いまを生きる」「ストーカー」……おすすめはたくさんありますが、個人的には「ミセス・ダウト」こそ、ロビン・ウィリアムズが今も演技派として支持される理由を説明するのにふさわしい1本だと思っています。

声優の役柄なので、冒頭にはアニメキャラを何役もこなすシーンも。ちゃんとミセス・ダウトに見える表情と佇まい、全力で笑わせにくるユーモア、そしてシリアスなシーンで見せる目の動き(哀愁とはこのこと)。ただ面白いだけじゃない、繊細な演技力が光る作品であり、大人が見ると離婚後の家族の描かれ方にもぐっとくるかもしれません。

ロビン・ウィリアムズの作品、もっと長く見たかったなぁ。

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▽ビリヤードブームを日本に巻き起こした、円熟期を迎えたポール・ニューマンとキレッキレの若きトム・クルーズのタッグ作

ハスラー2」(1986年製作/119分/マーティン・スコセッシ監督)

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ポール・ニューマン主演の「ハスラー」(1961)の25年ぶりとなる続編。マーティン・スコセッシがメガホンをとった今作での演技が評価され、ニューマンは第59回アカデミー賞で主演男優賞を受賞している。かつて凄腕ハスラーとして名を馳せたエディ(ニューマン)が、若き逸材ヴィンセント(トム・クルーズ)を一人前に育てようと決意し、自分の持つノウハウを伝授しようとする……。ふたりのほか、ヴィンセントの恋人カルメンをメアリー・エリザベス・マストラントニオが演じたほか、名優ジョン・タトゥーロも出演している。

【あらすじ】
 前作「ハスラー」でミネソタ・ファッツと激闘を繰り広げてから25年、50代になったエディは現役を引退し、酒のセールスで生計を立てながら暮らしていた。ある日、若き日の自分によく似た若いハスラーのヴィンセントと出会ったことで、この“ダイヤの原石”を一流に育て上げることを決意。数カ月後にアトランティックシティで開催される大会に参加すべく、各地で武者修行をしながらゲームの勝ち方、負け方、負けて金を稼ぐ術などを教え込んでいく。ふたりのあいだにすれ違いがあったため大会は別々に参加することになるが、互いに順当に勝ち進み準々決勝で対戦することになる。

円熟期を迎えたニューマン扮するエディと、若さを前面に押し出すクルーズが息吹を注いヴィンセントの対比が実に興味深い。これがステレオタイプの“師弟もの”であったならば、ニューマンにオスカー像をもたらさなかったのではないだろうか。

ふたりの魅力をくまなく引き出したスコセッシはこの4年後、不朽の名作「グッドフェローズ」を世に放ち、賞レースを席巻。ハリウッド映画史を辿るうえでも、出会うべくして出会った映画人たちの情熱、野心が交錯し、自らのその後の進むべき道を見定めることになる極めて重要な作品となった。

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また、エリック・クラプトンの主題歌「ザ・ギフト」をはじめ、ロバート・パーマー、B.B.キングらの渋味の増した美声が作品世界を引き立たせている。

日本で公開されたのは、1986年12月13日。今作がきっかけとなりビリヤードブームが押し寄せ、日本中にプールバーがオープンしたが、多くの人がバブル景気を実感するようになる時期と重なる。巷では連続ドラマ「男女七人夏物語」が空前の大ヒットを記録し、主題歌を歌った石井明美の「CHA-CHA-CHA」は年間シングルヒット曲の1位に輝いた。

35年も前の作品ととらえるか、35年しか経っていない作品ととらえるかは個人差があるだろうが、大人の貫禄たっぷりといった様相のクールなニューマンと、現在までに何度かやってくるピークの最初期といえるクルーズが放つキレッキレの危うい輝きに、今一度酔いしれたい。

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【映画だから体感できるSFの世界に誘う3作】

▽火星ぼっち生活を、科学とユーモアで乗り切る宇宙飛行士の奮闘を描いた感動のSFドラマ

オデッセイ」(2015年製作/142分/リドリー・スコット監督)

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火星にひとり取り残された宇宙飛行士のサバイバルを緻密な科学描写とともに描いた、アンディ・ウィアーのベストセラー小説「火星の人」を映画化したSFドラマ。極限状態の中でも人間性を失わず、地球帰還への希望をもって生き続ける主人公マーク・ワトニーをマット・デイモンが演じ、「エイリアン」「ブレードランナー」などSF映画の傑作を残してきた巨匠リドリー・スコットがメガホンをとった。

【あらすじ】
 火星での有人探査の最中、嵐に巻き込まれてしまったワトニー(デイモン)。仲間たちは緊急事態を脱するため、死亡したと推測されるワトニーを置いて探査船を発進させ、火星を去ってしまう。しかし、奇跡的に死を免れていたワトニーは、酸素は少なく、水も通信手段もなく、食料は31日分という絶望的環境で、4年後に次の探査船が火星にやってくるまで生き延びようと、あらゆる手段を尽くしていく。

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もし、あなたが宇宙にひとりで取り残されたら……そもそも地球に帰れると思いますか? 本作の主人公ワトニーは、そんな絶望的な状況下でも決して地球への帰還を諦めず奮闘します。その武器は、ズバリ科学とユーモア! 自分が生き残るためには何をすべきかを徹底的に考え抜き、次の火星探査船がやってくる4年後を見据え、まずは実験のために持ち込んでいたじゃがいもの栽培に取り組みます。はたして彼はどのように栽培に挑むのか!? そして、どのように地球に帰還するのか!? ぜひ、本編でご確認ください。

ちなみに本作は、シリアスな題材にも関わらずゴールデン・グローブ賞の“コメディ/ミュージカル部門”にノミネートされ、見事、作品賞と主演男優賞を受賞しましたが、きっと本編を見ればそのノミネートと受賞にも納得してもらえるはず。極限下なのに悲壮感を漂わせないそのユニークな展開にニヤニヤし、Fワードを連発して悪態をつきつつも諦めずに挑戦する主人公を、いつの間にか全力で応援してしまうこと必至です。

また、本作は音楽も魅力の1つ。ストーリーとリンクしたデビッド・ボウイドナ・サマー、アバら70年代のヒット曲がベストマッチです。また、NASAの全面的な協力を得て映像化された火星や宇宙生活の描写にも要注目です!

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▽高校生たちが手に入れた“扱いきれない”超能力 人間ドラマが見どころのSFアクション

クロニクル」(2012年製作/84分/PG12/ジョシュ・トランク監督)

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ある日突然超能力を手に入れた高校生たちが、その力に翻弄されていく姿をファウンドフッテージ形式で描いたSFアクションです。

【あらすじ】
 平凡で退屈な日常生活を送る3人の高校生アンドリュー(デイン・デハーン)、マット(アレックス・ラッセル)、スティーブ(マイケル・B・ジョーダン)は、ある日、特殊な能力に目覚める。手を触れずに女子のスカートをめくったり、雲の上まで飛んでアメフトをしたり、3人は手に入れた力を使って刺激的な遊びに夢中になっていく。しかし、そんなある時、あおってきた後続車両にいら立ったアンドリューが力を使って事故にあわせたことから、3人は次第に自らの力に翻弄され、事態は予期せぬ方向へと発展していく。

ジャンルはSFアクションですが、 “扱いきれない”超能力を通して描かれるシリアスな人間ドラマが見どころ。超能力を持ったことで、これまでうやむやにしたり、耐えたりしてきた友人や家族との本当の関係性が浮き彫りになっていきます。

今作では、超能力を手に入れた主人公たちに突然地球を守るような正義感が湧くことはなく、「よし、スーパーヒーローになろう!」という展開は訪れません。

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普通の高校生が空を飛べるようになり、念力でものを動かせるようになったらこうなるよなという、バカバカしくて、切なくて、リアルな描写が続き、ファウンドフッテージのモキュメンタリースタイルとマッチしています。

主人公である3人の高校生を、注目され始めた頃のデイン・デハーンマイケル・B・ジョーダンアレックス・ラッセルが演じているのも見逃せないポイントです。脚本はもちろん素晴らしいのですが、当時は無名に近かった3人の演技が、物語をよりエモーショナルにしてくれています。

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▽見たこともないバトルやレースに大興奮!さらに人間ドラマが胸をアツくするSFバトル

アリータ バトル・エンジェル」(2019年/122分/ロバート・ロドリゲス監督)

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国内外問わずファンの多い日本の大ヒットSF漫画「銃夢(ガンム)」を、長年に渡り映画化を熱望していたジェームズ・キャメロンが脚本・製作として携わり、脳以外はサイボーグ化されたヒロイン”アリータ”が爆誕。映画.comがTwitterで行った、「#大画面で堪能したいSF映画」投票で、日本はもちろん、海外のファンからの投票もあり第1位に選出された、世界的に愛される作品。

【あらすじ】
 数百年後の未来。スクラップの山の中から奇跡的に脳だけが無傷の状態で発見されたサイボーグの少女アリータ(ローサ・サラザール)は、サイバー医師のイド博士(クリストフ・ワルツ)によって新たな体を与えられ、目を覚ます。しかし彼女は、自分の過去や今いる世界についてなど、一切の記憶が失われていた。やがてアリータは、自分が300年前に失われたはずの最終兵器として作られたことを知り、そんな兵器としての彼女を破壊するため、次々と凶悪な殺人サイボーグが送り込まれてくる。アリータは、あどけない少女の外見とは裏腹の驚異的な格闘スキルをもって、迫り来る敵たちを圧倒していくが……。

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公開当時も話題になっていたのが、全身サイボーグであるアリータをどう表現するかでした。人間だけれども、体は人間ではない、そんな曖昧な存在が、見事CGで表現され、実写だけれどアニメのような不思議な少女が生まれました。もしかしたら、このビジュアルに尻込みをしてしまうかもしれませんが、見れば見るほど圧倒的な”アリータ”という存在にどんどん心が引かれていくはずです。

また、近未来のくず鉄町で繰り広げられるバトルやモーターボールというローラースケートで駆け抜けるレースは大迫力の興奮シーン。体の一部や全部がサイボーグ化した人々が繰り出す未知の動きは、見ているだけで鳥肌が立ちます。

バトルやレースなどの圧倒的な映像に加え、アリータと周りの人々とのドラマがまたこの作品に心奪われる理由です。一切の記憶をなくしたアリータを娘のようにやさしく見守るイド、何もかもが初めてでいろいろなことに目を輝かせるアリータ、アリータを思いながらも夢との間で揺れ動くヒューゴ、そして初めて知る恋の結末。見たことのないような世界感に没入できるのは、この登場人物ひとりひとりが魅力的でどこか感情移入してしまうからではないでしょうか。

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【全力おすすめ! 編集部員が偏愛する4作】

▽「面白かった」を超えて「心の底から愛せる」! 個人的“ベスト愛せる映画”、大好きすぎる一本

ジョジョ・ラビット」(2019年製作/109分/タイカ・ワイティティ監督)

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「面白かった」ではなく、「心の底から愛せる」と強く感じる映画には、そうそう出合えるものではありません。「ジョジョ・ラビット」は、全力で抱きしめて「ヨ~シヨシヨシ」と撫でたくなる、なんとも愛くるしい作品です。

【あらすじ】
 第2次世界大戦下のドイツに暮らす10歳のジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は、空想上の友だちであるアドルフ(タイカ・ワイティティ)の助けを借りながら、青少年集団「ヒトラーユーゲント」で、立派な兵士になるために奮闘する毎日を送っていた。しかし、訓練でウサギを殺すことができなかったジョジョは、教官から「ジョジョ・ラビット」という不名誉なあだ名をつけられ、仲間たちからもからかいの対象となってしまう。母親とふたりで暮らすジョジョは、ある日家の片隅に隠された小さな部屋に誰かがいることに気づいてしまう。それは母親がこっそりと匿っていたユダヤ人の少女だった。

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第2次世界大戦下のドイツ。10歳のジョジョは、青少年集団「ヒトラーユーゲント」で、立派な兵士になるべく奮闘中、でも訓練では失敗続き。落ち込むジョジョを励ますのは、なんと総統アドルフ・ヒトラー! ……空想上の、です。

ある日、ジョジョは母と暮らす家の片隅に、小さな隠し部屋があることを発見します。恐る恐る覗くと、なかには見知らぬ少女の姿が! エルサと名乗る少女は“最大の敵”“下等な生物”とされるユダヤ人。しかも、あろうことか「母が匿っていた」ことがわかります。空想上のヒトラーは少女を排斥しようと躍起ですが、ジョジョは聡明なエルサに次第に惹かれていきます。

この作品、ジャンルをひとつに絞るのが非常に難しい……。序盤、ジョジョやエルサのキュートさにやられ、1分間に5回くらい割り込んでくるユーモア(タイカ・ワイティティ大好き)にひどく笑わされます。中盤からは予想外の角度から圧倒的な展開がやってきて、カタルシスが全身を突き上げる。そして結末には、鼻の奥に熱いものがこみあげてくる。感情がグラデーションのように変化し、そうして「愛おしい」という思いがやってくるんです。

1秒ごとに、かわるがわるユーモアとメッセージと感動が押し寄せ、見ている間ずっと幸福。だから愛せてやまない。そしてエンドロールの直前、“あの行動”を選んだジョジョを、あなたはきっと抱きしめたくなるはずです。この映画を見て、1人でも多く幸せな気分になってほしいなと思います。

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マイケル・ベイの世界観に初代ボンドがやって来た!アルカトラズが舞台のアクション大作

ザ・ロック」(1996年製作/135分/マイケル・ベイ監督)

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猛毒の神経ガス・ロケット弾を奪ってアルカトラズ島を占拠したテロリスト集団と、密命を帯びて島に潜入した2人の男の戦いを描いたアクション大作。ショーン・コネリーニコラス・ケイジエド・ハリスが共演。「トランスフォーマー」シリーズ、「アルマゲドン」のマイケル・ベイが監督を務め、製作にドン・シンプソンジェリー・ブラッカイマーが名を連ねる。なお、シンプソンは1996年に亡くなっており、作品のラストには「この映画をドン・シンプソンの思い出に捧ぐ」とクレジットされている。

【あらすじ】
 米海軍の英雄ハメル准将(ハリス)は、部下とともに海軍兵器庫から致死性の神経ガス・ロケット弾を奪うと、観光客81人を人質にアルカトラズ島を占拠。ロケットの照準をサンフランシスコに向けた。島に潜入してロケットの発射装置を除去する――その任務に選ばれたのは、FBIの化学兵器スペシャリスト、スタンリー・グッドスピード(ケイジ)。そして、脱獄不可能な刑務所として知られたアルカトラズを熟知する囚人ジョン・パトリック・メイソン(コネリー)も参加することに。メイソンは、33年前にアルカトラズを脱獄した唯一の男だった。

マイケル・ベイ版「007」です。嘘です。いや、あながち間違っちゃいない。ショーン・コネリーといえば、ご存知の通り、初代ジェームズ・ボンド。実は、本作で演じているメイソンも「英国諜報部員」という設定なんです。現役バリバリの頃、米国政府に捕まり、その存在は完全に抹消。裁判が行われないまま、60歳を越しても幽閉され続けています。

長年の獄中生活でスキルは衰えているかと思いきや、そんな事は一切ございません。FBIが提示した「恩赦」という言葉に不信感を抱くと、即逃走。そして、サンフランシスコでド派手なカーチェイス! マイケル・ベイらしい“過剰破壊”の連続に、ハンス・ジマーの超クールな音楽が重なっていきます。アルカトラズ潜入後は、ほぼ無双状態。良い感じの悪役も揃っていますから容赦はしません。

そんなコネリー卿とタッグを組むのが、伊達男のケイジ。「化学兵器のスペシャリスト」という実戦向きではない設定にもかかわらず、なぜか格闘技術が開花。人は徐々に成長し、学んでいく生き物。マイケル・ベイ的映画では、そんなことはどうでもいいんです。秒です。秒で成長していきます。

今見てもツッコミどころは満載なんですが、それもまた良い。猛毒の神経ガスは、一度吸ってしまえば、皮膚が焼きただれ、背骨も折れて、内臓が飛び出しちゃうというヤバすぎる効能ですし、メイソンはきっと瞬間移動能力を持っているに違いない。でも、いいんです。「面白ければ、それでいい。矛盾? そんなもん知るか」というベイ監督の意志が貫かれている。拍手喝采。タイムリミット系アクションという側面もありますし、最初から最後まで、全く飽きずに楽しめると思います。

最後に小ネタをひとつ。冒頭、ハメル准将が亡き妻の墓前で決意を表明するというシーンが描かれます。この墓に書かれた文字に注目してみてください。驚くべき表記が彫られていますから。 Netflixで配信中の「ハリウッドを斬る! 映画あるある大集合」でもイジられていますが、思わず「いや~、映画って自由だな……」と口にしちゃいましたよね。ある意味“観客ファースト”の表現なんです(笑)。

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▽目を背けたくなるほどの“嫌な感情”が息づく、絢爛豪華な英王室へようこそ

女王陛下のお気に入り」(2018年製作/120分/PG12/ヨルゴス・ランティモス監督)

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ギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモスが、18世紀イングランドの王室を舞台に、女王と、彼女に仕えるふたりの女性の入り乱れる愛憎を描いた人間ドラマ。第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で審査員グランプリを受賞し、女王アンを演じたオリビア・コールマンが女優賞を獲得。作品賞を含む9部門10ノミネートを果たした第91回アカデミー賞では、コールマンが主演女優賞に輝きました。

【あらすじ】
 18世紀初頭、フランスとの戦争下にあるイングランドで、女王アンの幼なじみレディ・サラ(レイチェル・ワイズ)は、病気がちで気まぐれな女王を動かし絶大な権力を握っていた。ある日、没落した貴族の娘アビゲイル(エマ・ストーン)が宮廷に現れ、アン女王の侍女として仕えることに。戦争をめぐる政治的駆け引きが繰り広げられるなか、女王のお気に入りになることで、再び貴族の地位に返り咲こうとするアビゲイルだったが……。

ロブスター」「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」などの衝撃作を世に送り出してきたランティモス監督と、18世紀イギリスの歴史劇。最初は全く想像のつかない組み合わせだと思いましたが、美しくきらびやかな宮廷には似つかわしくない、目を背けたくなるほどの“嫌な感情”がまざまざと描かれており、やはり“ヨルゴス・ランティモス”印の一筋縄ではいかない歴史物に仕上がっているのです。

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見どころは、全員がオスカーノミネートを果たすハイレベルな演技を見せたコールマン&ワイズ&ストーンによる、身勝手な女たちのパワーゲームです。17人の子どもを亡くした傷を抱え、痛風に苦しみ、愛に飢えた孤独な女王アン。女王を裏で支配し、絶対的な権力を誇りながらも、アビゲイルという“脅威”を全力で排除しようとするサラ。一見純真ですが、のし上がるためには手段を選ばない、怖いもの知らずのアビゲイル。3人が罠を仕掛け、ほくそ笑み、叫び、暴走し、欲情し、泥まみれになり……。何事も我慢せず、己の欲望のままに振る舞う“節操のなさ”に、笑いがこみあげてきます。そんな女優たちの顔のアップショットも多く、さまざまな思惑を秘めた眼差しから、すさまじい“圧”が伝わってきます。一方で、広角レンズ撮影など特異なカメラワークが、誰もが必死でありながらも愚かしい人間模様を、冷ややかに切り取っているのです。

そして、なりふり構わぬ禍々しい権力争いの先に待ち受けている結末に、見る者の笑いは消え去り、戦慄することでしょう。「ごめんあそばせ、宮廷では良心は不良品よ」という言葉を忘れないように、毒気たっぷりのえもいわれぬ世界に、是非足を踏み入れてみてください。

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▽自由奔放で毒舌な無責任ヒーロー!R15+の痛快アクションエンタテインメント
 「デッドプール」(2016年製作/108分/R15+/ティム・ミラー監督)

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マーベルコミックの異色のヒーロー、デッドプールを主役に描くアクションエンタテインメント。2008年に企画がスタートしたものの配給の20世紀フォックス(現在はディズニー傘下となり20世紀スタジオに改称)が製作のGOサインを出さず、2014年にVFXのテスト映像が流出し、それが思わぬ大好評を受けたことでようやく製作された異例の作品。

【あらすじ】
 好き勝手に悪い奴らをこらしめ、金を稼ぐヒーロー気取りな生活を送っていた元傭兵のウェイド・ウイルソン(ライアン・レイノルズ)は、恋人ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)とも結婚を決意し、幸せの絶頂にいた矢先、ガンで余命宣告を受ける。謎の組織からガンを治せると誘われたウェイドは、壮絶な人体実験を受け、驚異的な治癒能力と不死の肉体を得るが、醜い身体に変えられてしまう。ウェイドは、赤いコスチュームを身にまとった「デッドプール」となり、人体実験を施した張本人のエイジャックス(エド・スクレイン)の行方を追うのだが、愛するヴァネッサがエイジャックスに誘拐されてしまう。

主人公は饒舌かつ毒舌で下品なことも言うし、血も飛び交う容赦ない殺戮シーンもあるR指定の作品ですが、“第四の壁”を超えてスクリーンから観客に向かって話しまくるデッドプールの自由奔放なキャラクターがとにかく痛快で、人好きのする作品です。その証拠に全世界で7億8,200万ドル(約890億円)の興行収入を上げ、全米ではR指定作品として記録的な大ヒットを飛ばし、日本でも興収20.4億円のスマッシュヒットを記録しました。

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日本のプロモーションでは、“無責任ヒーロー”というキャッチコピーで宣伝されていましたが、アベンジャーズとは違って自ら世界のピンチを救ったりはしないけど、自分の大事な人を守るためなら命がけで戦う一面も持った、実はアツいキャラクターでもあるので、未見の方はぜひチェックを。

また、本作の最大の成功の要因は、自らプロデューサーも兼任した主演のライアン・レイノルズの存在に尽きます。ユーモアとリアルの世界の自虐的なネタがどんどん飛び出すデップーのキャラクターは、センスあふれる彼なくしては実写化できなかったことは間違いあいません。

なお、続編「デッドプール2」のプロモーションでレイノルズが来日した際、幸運にも彼と一緒にバスに乗り、都内を周遊しながら取材する機会に恵まれましたが、取材陣の質問に的確に、それもユーモアを交えながら答える彼に、その場に居た誰もが魅了されていました。また、取材終わりでは「みんなで一緒に撮影しようよ」と気さくに提案してくれ、ハリウッドスターとの思わぬ記念撮影まで実現したのでした。ライアン・レイノルズ、めっちゃいい人ですよ!

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【閲覧注意!恐ろしい2本の昆虫映画】

▽砂地の惑星でヤバい虫に襲われる恐怖(「DUNE」ではない)

スターシップ・トゥルーパーズ」(1997年製作/128分/ポール・バーホーベン監督)

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ロバート・A・ハインラインの小説「宇宙の戦士」を、ポール・バーホーベンが実写映画化し、昆虫型宇宙生物と人類の戦いを過激描写満載で描いたSF戦争アクション。

【あらすじ】
 未来の地球。民主主義崩壊後、人類は地球連邦政府の支配下に置かれ、兵役を経た者だけが市民権を得ることが出来た。高校を卒業した青年リコ(キャスパー・バン・ディーン)は、宇宙軍のパイロットを目指す恋人カルメン(デニース・リチャーズ)に影響されて軍に入隊する。最も過酷な機動歩兵部隊に配属された彼は、猛訓練の日々を経て分隊長に任命される。そして、昆虫型宇宙生物アラクニド=バグスの襲撃によって故郷が壊滅したことを知った彼は、仲間たちとともに壮絶な戦いに身を投じていく。

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圧倒的武力が物事を解決するようになった地球。人種や男女差別もなく平等(軍人はシャワーも男女一緒に浴びます)、理想的でクリーンな社会を思わせますが、兵役を経た「市民」のみが市民権を有するという設定。エリートの彼女を追いかける主人公、という格差恋愛物語を軸に、地球人の敵となる昆虫型宇宙生物(バグ)との戦いを描きます。

真っ当な社会に見せつつも、全体主義を思わせる本作、実はナチス・ドイツのプロパガンダ映画のパロディなのです。四半世紀ほど前の作品ですが、リアルなバグの造形、宇宙戦闘シーンなど、特撮ファンは必見です。飛び散るバグの粘液、人体破壊を含むスプラッター描写もてんこ盛りなので、グロテスクな描写に弱い方はお気を付けください。

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▽蝿と同化してしまった科学者の悲劇の恋

ザ・フライ」(1986年製作/96分/デビッド・クローネンバーグ監督)

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1958年作「蝿男の恐怖」をデビッド・クローネンバーグがリメイク。科学者と彼の発明を知った恋人の、おぞましくも悲痛な恋愛ドラマ。

【あらすじ】
 科学者のセス(ジェフ・ゴールドブラム)は記者のベロニカ(ジーナ・デイビス)に開発中の物質転送装置を公開する。生物の転送実験で失敗が続くが、やがてセスは自らの体を転送することに成功。しかもその後、彼の体には驚異的な活力が備わる。セスは、転送装置に一匹の蝿が紛れ込んでいたこと、そしてそれが転送後にセスの体と遺伝子レベルで融合したことを知る。彼の肉体は次第に蝿のように変化していく……。

個性派俳優ジェフ・ゴールドブラムの出世作。彼が演じるセスは、研究熱心が過ぎて&恋人が元カレに会いに行くことに嫉妬してしまうという子供っぽさがあだとなり、自ら発明した装置で悲劇を起こしてしまいます。セスの恋人役のセクシーな記者を演じたジーナ・デイビスとはこの作品の後、実際に結ばれて結婚していた期間もあったので、ゴールドブラムにとっては公私ともに忘れがたい作品でしょう。

装置のアップデート過程で、実験用猿の外側と内臓を反転させたり、セスの背中に謎の毛が生え、その後、ソリッドなボディの昆虫とは程遠い、湿度と粘度あるグロテスクなビジュアルとし、爪や歯を抜いていくなど、じょじょに蝿化させていく変態的なこだわり、それを具現化した技術力もポイントです。

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