「ジュラシック・パーク」放送記念 スティーブン・スピルバーグ監督が大好きだ! おすすめ映画6選 【映画.comシネマStyle】
2021年9月5日 09:00
毎週テーマにそったおすすめ映画をご紹介する【映画.comシネマStyle】。
9月3日の「金曜ロードショー」では、「ジュラシック・パーク」が放送されました。また、ここから4週連続でスティーブン・スピルバーグ監督作品が放送予定となっています。そこで今回は、幅広いジャンルの名作を生み出してきたスピルバーグ監督のおすすめ作品をご紹介します。
改めてスピルバーグ監督の作品を確認してみると、製作総指揮や出演作も含め、映画.comのデータベースに登録されている作品はなんと114作品!
そのなかで監督作品は34作品(特別編は除く)ありました。アクションや近未来SF、パニック映画から、時事問題に切り込んだ社会派作品に、人々の思いを繊細に切り取ったドラマ作品まで幅広い作品を手掛けています。どの作品も傑作ばかりですが、編集部メンバーのおすすめ作品5作品と監督のこだわりがわかる1作品をセレクトしてみました。
「E.T.」「未知との遭遇」など、地球人に友好的な宇宙人像を作り上げたスピルバーグ監督が、相手を選ばず残酷に攻撃する宇宙からの侵略者を描いたのが「宇宙戦争」です。トム・クルーズが、地球が侵略されるなかで子どもたちを守る父親役を演じたSFアクション作品です。
湾岸地帯で働く平凡な労働者レイ(クルーズ)が、別れた妻との間にもうけた子どもたちと面会するその日、突如現れた“何者か”が容赦なく町を破壊していく。レイは子どもたちとともに生きるために町を逃げ出すが……。
娘のレイチェル役をダコタ・ファニング、息子のロビー役をジャスティン・チャットウィンが演じています。H・G・ウェルズの傑作小説を再映画化。撮影はヤヌス・カミンスキー、音楽はジョン・ウィリアムズなど、「マイノリティ・リポート」や「A.I.」などでおなじみのスピルバーグ組が結集しています。
今作で描かれる“宇宙からの侵略者”は、終始謎に包まれたまま。相手が何者なのか、目的は何かといった侵略の全体像は語られず、何の前情報もなく映画開始13分で侵略が始まります。
もし実際に地球が侵略されたらそうなるだろうという、ただ逃げ惑うしかない一般市民目線で地球侵略が描かれ続け、宇宙人や宇宙船といった派手なカットを減らし、すぐ隣で人々が死んでいくさまを映した地を這うようなカメラワークが印象的です。
また、無敵な印象が強いクルーズが、家族をかえりみなかったダメな父親を演じているのもポイント。子どもたちとの溝が埋まらないままでも、なりふり構わず家族を守ろうとする姿にはグッときます。
地球侵略系でないがしろにされがちな人間物語を軸とし、生き残るために人間がどこまで残酷になれるのか、逆にどこまで思いやりを持てるのかを見せてくれる稀有なSF作品です。
大人になり、昔の記憶を失ったピーターパンの冒険を描くファンタジー。「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」「ジュマンジ」などのロビン・ウィリアムズがピーターパンを演じたほか、ダスティン・ホフマン、ジュリア・ロバーツ、マギー・スミスら豪華キャストが出演しています。
ピーター・バニング(ウィリアムズ)は、仕事中毒と言うべき40歳の企業付弁護士。クリスマス休暇に、バニング一家はピーターを孤児院から救ったというウェンディ(スミス)のもとを訪ねる。ある夜、外出先からピーターが帰宅すると子どもたちが消え去り、ドアには「親愛なるピーター、子どもを助けたければ姿を現わせ。ジェームズ・フック」という脅迫状が残されていた。当惑するピーターにウェンディは、ピーターこそがネバーランドからやってきた“ピーターパン”であることを話す。
初めて鑑賞したのは、小学生の頃。「ミセス・ダウト」でロビン・ウィリアムズにはまった私に、父がTSUTAYAでレンタルしてきてくれたのですが、前半はウトウトしてしまったことを覚えています。それもそのはず、家族より仕事を優先する大人になってしまったピーターと、ピーターを心配する家族の気持ちが当時の私には難しかったのです。
今見るとこんなにわかりやすく描いてくれているのに……。パッケージは子ども向けのように見えますが、成長するにつれ、ワクワクすることが少なくなってきた大人にこそ響く作品だと思います。
ピーターがネバーランドに行ってからは作品の雰囲気がガラリと変わり、一気にファンタジーの世界へ。飛べなくなってしまったピーターは、迷子の少年たちの助けを借りて、ピーターパンになるための特訓を開始します。
前半はリアルな現実描写、そして中盤からはキラキラしたファンタジー。映画なのにどこか身近に感じさせてくれるスピルバーグ監督らしい絶妙なバランスと、あの時代の映画ならではの“色”が愛おしい作品です。
世界各国を飛び回る少年記者タンタンと、相棒の白いフォックステリアのスノーウィが繰り広げる冒険を描き、世界中で親しまれているベルギーの漫画家エルジェによる「タンタンの冒険旅行」を3D映画化。スピルバーグ監督にとって初の3Dアニメーションに挑んだ作品です。
少年記者タンタンは市場で偶然、17世紀に洋上でこつ然と消えた帆船「ユニコーン号」の模型を手に入れる。しかしその模型を追って謎の男たちに拉致されてしまう。実は模型のなかに、宝へと導くヒントが隠されていたのだ。そんななか、ユニコーン号の最後の船長の子孫・ハドック船長と出会い、ともに宝の謎を解き明かす冒険へと出かける。
今まで恐竜を現代に蘇らせたり、近未来の世界を描いたりと、実写映画でも私たちを知らない世界へと誘ってくれたスピルバーグ監督が、なぜわざわざアニメーションで描くのだろうか?とはじめは訝しんでいましたが、見てみれば圧巻。目まぐるしく変わる冒険の舞台やカメラワーク、さらにキャラクターの豊かな感情表現やコミカルな動きは、実写とは一味違うワクワクを感じさせてくれます。
特にアニメーションならではといえるのは、タンタンの相棒であり愛犬のスノーウィ。彼の愛らしい動きと主役のタンタンよりもハードなアクションシーンの数々は、実写では実現不可能なレベルのものばかり。一緒に見ていた我が家の愛犬も、スノーウィの活躍する声に反応して興奮を示すほどでした(笑)。
原作好きにもうれしいポイントが残っているのも憎いところ。市場で書いてもらったタンタンの似顔絵が原作絵だったり、デュポンとデュボンのおとぼけ刑事が相変わらずのおまぬけを見せてくれたり。
初めて見る人でも、登場するキャラクターたちに愛着がわくシーンがたっぷり。誰もが楽しめる冒険活劇なので、家族や友人たちと見てもらいたい作品です。
スピルバーグ監督とトム・ハンクスが、「プライベート・ライアン」「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」に続き3度目のタッグを組んだヒューマンドラマ。
東ヨーロッパの小国クラコウジアから飛行機に乗り、米ニューヨークの空港に着いたビクター・ナボルスキー(ハンクス)は、祖国で起きたクーデターのため、パスポートが無効になり入国を拒否される。しかし、彼にはどうしてもニューヨークで果たさなければならないある誓いがあった。彼は入国を目指して空港内に住み着き、そこでユナイテッド航空の客室乗務員のアメリア(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)ら様々な人々と出会う。
本作のモデルなったのは、1988年から約19年間にわたり、仏シャルル・ド・ゴール空港に滞在した、もともとはイラン国籍のメーラン・カリミ・ナセリさん。さまざまな事情が重なり、イギリスへの入国を求め、空港で生活することになったそうです。
映画では空港で待ち続ける男と、彼を見守る人々の交流が描かれます。緊張状態にある祖国には戻れず、だからといってアメリカにも入国できない。“法の隙間”に落ちてしまったビクターは、空港という特殊な場所で過ごすしかないのですが、思いやりと人の良さとアイデアで、自分の居場所を見つけていきます。ビクターの“愛され力”と、次々と状況を打破していく姿は、どこかハンクスがかつて演じた「フォレスト・ガンプ 一期一会」のフォレストを彷ふつとさせます。
劇中に登場するのは、ビクターをはじめ、“彼”からの連絡を待ち続けるアメリア、思いを寄せる入国係官ドロレスを遠くから見つめるエンリケ、ある過去のため故郷に帰れず、目立たないように日々をやり過ごすグプタら、人生の時間が止まったような人々。しかし、どこにも行けない状況のなかでも、絶望せず前を向くビクターが、彼らの時間を少しずつ動かしていくさまに、胸を打たれます。
ハンクスが話す“架空の言語”もコミカルなので、是非チェックしてみてください。
第66回アカデミー賞で、スピルバーグが、4度目のノミネートにして初の監督賞を獲得したヒューマンドラマ。監督賞以外にも作品賞など7部門を受賞しました。ナチスによるユダヤ人大虐殺から多くの命を救った実在のドイツ人実業家オスカー・シンドラーを描いた名作。
1939年、ナチスドイツ占領下のポーランド。戦争を利用して一儲けしようと狙うドイツ人実業家シンドラー(リーアム・ニーソン)は、軍の幹部に取り入り、ユダヤ人の所有していた工場を払い下げてもらう。軍用ホーロー容器工場を立ち上げた彼は、安価な労働力としてユダヤ人たちを雇い入れ、事業を軌道に乗せていく。しかしナチスによるユダヤ人の迫害は日ごとにエスカレートし、ついに虐殺が始まる。凄惨な光景を目の当たりにしたシンドラーは、私財を投じて彼らの命を救うことを決意する。
今回のコラムは、「金曜ロードショー」の「ジュラシック・パーク」放送に合わせた企画ですが、同作と同時期にスピルバーグが作っていたのが、「シンドラーのリスト」です。
前者が当時の最新のCGを駆使したバリバリの娯楽大作であるのに対して、後者は人類史上最大の汚点のひとつとも言われる、ナチスのホロコーストに抗った実在のドイツ人実業家を、全編モノクロのドキュメンタリータッチで描いた重厚かつシリアスなドラマで、とても同じ監督が撮った作品とは思えない正反対の作品です。両作品をご覧いただくと、スピルバーグがいかに天才か痛感することでしょう。
また、上映時間は195分ありますが、全編緊張感あふれる展開でその長尺をまったく感じさせません。実話の持つ重みもあって、目を離せなくなること必至です。
物語の主人公は、自身もナチスの党員で、戦争に乗じて一儲けを企む実業家のオスカー・シンドラー。最初はユダヤ人を安価な労働力としてしか見ていなかった彼が、ナチスの非道を目の前にして、ユダヤ人を助けるため、自分の危険も顧みずに知恵と勇気を振り絞って立ち上がる姿は胸に迫るものがあります。
なお、扱うテーマがテーマだけに、何の罪もない人々が虫けらのように虐殺される姿や、死を予感して恐怖に怯える人々の姿も描かれており、正直、見るに堪えないシーンもあります。しかし、我々と同じ人間が犯した愚行を絶対に繰り返さないためにも直視すべき作品であり、悪魔のようなナチスから罪なき人々を守るために奔走したシンドラーの姿は、人間が本来持っているはずの強さ、優しさを感じさせ、美しくもあります。
本作をご覧になった方には、スピルバーグがテロとその報復の悪循環を描いた「ミュンヘン」もお薦めしたい。同作は、72年のミュンヘン・オリンピック開催中に発生した、パレスチナゲリラのイスラエル選手団襲撃事件を受け、イスラエル政府が敢行した特殊部隊によるゲリラ暗殺作戦と、暗殺を司令された隊員たちの苦悩を描いた作品ですが、ユダヤ人のスピルバーグがパレスチナ人を一方的に断罪することなく、お互いの歩み寄りを求めるメッセージを込めており、非常に見応えがあります。ジェームズ・ボンドになる前のダニエル・クレイグやフランスを代表する名優マチュー・カソビッツ、オスカー俳優のジェフリー・ラッシュも出演しており、キャスティングも豪華なので是非ご覧ください。
最後に紹介するのは、スピルバーグ監督作品ではありませんが、スピルバーグ監督が語り手のひとりとして登場する、映画愛に満ちた胸アツなドキュメンタリーです。映画に命を吹き込む映画音響の世界をスピルバーグ、ジョージ・ルーカスら著名監督陣、伝説の音響技師たちが語るドキュメンタリー。
音楽、声、効果音など、映画を彩る様々な“音”はどのように作られ、どういった効果を生んでいるのか。知られざる映画音響の世界とその歴史を紐解き、技術だけではなく才能の輪、その仕事愛と情熱に興奮と感動を覚える作品です。(執筆:和田隆)
1927年に初のトーキー映画「ジャズ・シンガー」が誕生して以来、常に進化を続けている映画音響。フィルム時代からデジタル時代の新旧名作群の映像とともに映画音響の世界を紹介。スピルバーグ、ルーカスに加え、ソフィア・コッポラ、デビッド・リンチ、アン・リー、クリストファー・ノーラン、ライアン・クーグラーなどの著名監督、「スター・ウォーズ」のベン・バート、「地獄の黙示録」のウォルター・マーチ、「ジュラシック・パーク」のゲイリー・ライドストロームら伝説の音響技師や作曲家たちへのインタビューで、映画における“音”の効果と重要性に迫っていく。
紹介されるスピルバーグ監督作品では、「プライベート・ライアン」の冒頭の戦場シーンの埋没感に音がいかに貢献しているか、「ジュラシック・パーク」の恐竜の声をどのように作り出したのかなどが明かされます。
スピルバーグ監督は「物語に命を与えるのは音だと信じてきました」とし、音響技師たちに向けて「皆さんの作る音が物語を輝かせ、音が瞬間を永遠にするのです」と述べ、「インディ・ジョーンズ」や「E.T.」などの名シーンも映し出されます。
自分の好きなシーンを思い返すと、音がいかに効果的な役割を担っていたか、視覚だけでなく音から感情を感じ取っていたことに気づき、映画の見方がさらに深まる映画ファン必見の作品です。
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スピルバーグ監督作品、いかがだったでしょうか? まだまだ紹介しきれないくらい名作が揃っているので、秋の夜長の映画鑑賞に是非チェックしてみてください。
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