この村、何かおかしい! 「ガンニバル」と一緒に見たい“閉鎖的な空気”に追い込まれる映画10選
2022年12月30日 16:00
ディズニープラスのコンテンツブランド「スター」の日本発オリジナルドラマ「ガンニバル」(配信中)。都会から遠く離れた山間にある「供花村」を舞台に、ある事件をきっかけに供花村の駐在として左遷された阿川大悟(柳楽優弥)が、老婆の奇妙な死を境に、「人が喰われているらしい」と噂される村の異常性に飲みこまれていく。
本作は、2018年に連載が開始され、累計発行部数210万部を超える二宮正明氏による同名サスペンスコミックを、「岬の兄妹」「さがす」の片山慎三監督、「ドライブ・マイ・カー」の大江崇允による脚本という“国際基準”の布陣で実写化するもの。この記事では、世界市場を相手に、日本映画界の俊英たちが放つヴィレッジサイコスリラーにちなみ、宗教や古くからの因習、民間伝承に基づく“閉鎖的な空気”が主人公を追い込んでいく映画10選をご紹介。果たして“おかしい”のは、彼らか? それとも……。
退屈なアメリカを飛び出し、刺激を求めてバンコクにやってきたリチャード(レオナルド・ディカプリオ)は、偶然の出会いから秘密の孤島「ザ・ビーチ」を訪ねることに。そこでは、20人ほどの若者が暮らす楽園のようなコミュニティが形成されていた。当初は友好的だったリーダーのサル(ティルダ・スウィントン)だったが、次第に狂気じみたコミュニティの“正体”が明らかになる。アレックス・ガーランドの同名ベストセラー小説を、アカデミー賞監督のダニー・ボイル(「スラムドッグ$ミリオネア」)が映画化。
米ニューヨーク近郊で語り継がれてきた都市伝説を題材に、米作家ワシントン・アービングが19世紀に発表した「スリーピー・ホロウの伝説」を、現代に置き換えたドラマシリーズ(全4シーズン)。アメリカ独立戦争で戦っていたイカボッド・クレーン(トム・マイソン)が、250年の眠りから目覚め、同じく現代によみがえった“首なし騎士”が巻き起こす不可解な事件と謎に迫る。かつて、ティム・バートンがジョニー・デップ主演で映画化した「スリーピー・ホロウ」も製作されており、両者のアレンジや語り口の違いを楽しむのも面白いはず。
不慮の事故で家族を失ったダニー(フローレンス・ピュー)は、大学で民俗学を研究する恋人や友人たちと5人でスウェーデンを訪れ、奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」に参加する。沈まない太陽、美しく咲き誇る花々、陽気に歌い踊る村人たち。楽園に思えた村に、やがて不穏な空気が漂いはじめ、妄想やトラウマ、不安と恐怖がダニーの心をかき乱していく。長編デビュー作「ヘレディタリー 継承」が高い評価を集めたアリ・アスター監督の第2作。“村ホラー”の新たな金字塔だ。
マーティン・スコセッシ監督&レオナルド・ディカプリオが4度目のタッグで挑んだ、孤島を舞台にした心理サスペンス。失踪した女性患者の謎を探るために、孤島に建つ犯罪者用精神病院を訪れた米連邦保安官テディ・ダニエルズ(ディカプリオ)に、次々と不可解な出来事が起こる。閉鎖的な舞台設定に加えて、トラウマを抱える主人公の内面が現実/幻想のボーダーをあいまいにしていく巧みな構成は、「ガンニバル」にも通ずるものがあり、見応えたっぷり。ディカプリオの繊細な演技も必見。
ある少年が殺人事件を目撃。犯人はフィラデルフィア警察署の麻薬課長だった。捜査を担当する刑事ジョン・ブック(ハリソン・フォード)は、少年と彼の母親、そして自身の命を守るため、親子が暮らす村に逃げ込む。そこは文明社会から距離を置いた、大自然のなかの共同体で、電気も使わない17世紀の生活様式を守って暮らすアーミッシュの村だった。共同体を舞台にした犯罪サスペンスに加え、宗教の壁を超えた刑事と未亡人の恋模様が切なく描かれる。第58回アカデミー賞2冠の秀作だ。
ある日、連絡が途絶えていた妹から、奇妙な手紙を受け取ったパトリック(ケンタッカー・オードリー)は、過激な突撃潜入取材が売りのサム(AJ・ボーウェン)とともに、妹が暮らす共同体「エデン教区」に潜入取材を敢行する。誰もが「ここで豊かな生活ができるのは『ファーザー』のおかげだ」と口を揃える地上の楽園に、やがて不穏な空気が流れ始めて……。実際にカルト教団が起こした集団自殺事件をモチーフに、全編POV(主観視点)による撮影が、臨場感あふれる恐怖を演出。
得体の知れない“よそ者”の男(國村隼)が現れたことで、平和な村が大混乱に陥る韓国発のサスペンスホラー。男の噂が広がるなか、村人が自身の家族を虐殺する事件が多発する。殺人を犯した村人には、湿疹でただれた肌に、濁った眼をして、言葉を発することもできない状態という共通点があった。事件を捜査する村の警官ジョング(クァク・ドウォン)は、自分の娘に殺人犯と同じサインがあると気付き、“よそ者”を追い詰めるが、その行き過ぎた行動が混乱に拍車をかけてしまう。
看護師として働くジョンヨン(イ・ヨンエ)は夫とともに、6年前に行方不明となった息子のユンスを探し続けていた。捜索途中に悲劇的な事故に遭い、憔悴しきった彼女の元に「ユンスに似た子を、郊外の漁村で見た」という情報が寄せられる。しかし、漁村へと向かった彼女の前に、釣り場を営む怪しげな一家が立ちはだかる。村人は口を閉ざし、警察も非協力的。愛する我が子を取り戻すため、ジョンヨンは釣り場の一角にある家に侵入するが……。二転三転する展開から目が離せない。
過疎化に苦しむ孤島を舞台に、島に現れた不審人物を誤って殺してしまった、イチジク生産者の青年・泉圭太(藤原竜也)と幼なじみの猟師・田辺純(松山ケンイチ)、新米警察官の守屋真一郎(神木隆之介)の3人が共犯者として“死体隠し”に奔走するサスペンス。殺した不審人物は元受刑者のサイコキラー・小御坂睦雄(渡辺大知)であり、その足取りを追う警察が大挙して押し寄せ、島には不協和音が生じる。国内外で高い人気を誇る漫画家・筒井哲也氏(「予告犯」)の同名コミックを映画化した。
亡き父が韓国に遺した別荘で暮らす輝夫(岡田将生)と、日本での結婚生活に嫌気がさし転がり込んできた妹の要(川口春奈)が、不可解な事件をきっかけに、「聖地X」と呼ばれる、忌まわしい禁断の地に足を踏み入れてしまう。そこに立ち入った者に必ず訪れる“約束された死”から逃れようとする兄妹の運命とは……。劇作家・演出家の前川知大が主宰する「劇団イキウメ」の同名人気舞台を、「22年目の告白 私が殺人犯です」の入江悠監督が映画化し、オール韓国ロケで製作された異色ホラー。
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父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。