仏映画サイトが推薦する、カンヌ映画祭パルムドール受賞作12本
2020年6月7日 15:00
[映画.com ニュース]コロナウイルス感染拡大の影響により、今年の通常開催は断念となったカンヌ国際映画祭。映画史に残る傑作を選出してきた映画祭に思いを馳せ、仏映画情報サイトallocineが12本の過去のパルム・ドール作品を推薦。映画.comの作品情報と共に紹介する。
■「パルプ・フィクション」(1994)
「審査員長のクリント・イーストウッドによって賞が発表されると、ブーイングと拍手が同時に起きた」
翌年のアカデミー賞脚本賞も受賞した、クエンティン・タランティーノ監督の出世作。アメリカの低級犯罪小説であるパルプマガジン的なストーリーをコンセプトに殺し屋たちの話を3つの物語が交錯するように語られるコメディ、バイオレンスドラマ。
■「欲望(1966)」
「フランシス・フォード・コッポラ、ブライアン・デ・パルマ、ダリオ・アルジェントら他の偉大な映画製作者にインスピレーションを与えた」
フリオ・コルタサルの短編小説をヒントにミケランジェロ・アントニオーニ監督が書き下した原作を、アントニオーニとトニーノ・グエッラが共同で脚色。翌年のアカデミー監督賞にもノミネート。公園で撮影した写真に取り憑かれたファッション写真家の錯乱を描く。撮影はカルロ・ディ・パルマ、音楽はハービー・ハンコックが担当。
■「ピアノ・レッスン」(1993)
「ポエジーと音楽、繊細な美学、そして登場人物たちの間を駆け巡る感情の渦に圧倒される映画的名作」
ジェーン・カンピオンがオーストラリア映画として、また女性監督として初のパルムドールを受賞。9世紀半ばのニュージーランドを舞台に、ひとりの女と2人の男が一台のピアノを媒介にして展開する、三角関係の愛のドラマ。
■「エレファント」(2003)
「没入感のあるシーケンスショットや不穏なドリーショットを通して、ごく普通の一日がいかにして血なまぐさい悲劇へと変わっていったのかを描写するために、数人の若者の視点を用いた。この映画は賛否両論あったが、パルムドールだけでなく、監督賞も獲得した。(現在のルールでは、このような組み合わせはできなくなっている)」
1999年のコロンバイン高校での銃乱射事件を、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のガス・バン・サント監督が描く。生徒役の出演者はみな俳優ではなく実際の高校生で、セリフは彼らが即興で話すという演出で話題を集めた。
■「マーティ」(1955)
「主人公の表面的な醜さこそが彼の人生を熟考するものにした」
パディ・チャイエフスキーのテレビドラマを映画化。ブロンクスで肉屋を営み、自らの外見にコンプレックスをもつ、30代半ばの男のほろ苦い恋愛劇を描いたデルバート・マン監督による傑作ロマコメ。アカデミー賞作品賞、監督賞、脚色賞、主演男優賞の4部門獲得。
■「失われた週末」(1945)
「ワイルダーの最も有名な作品ではないが、臆病というテーマを探求した作品の一つ。主人公は被害者としてではなく、自らの堕落の責任者として位置づけられている」
ニューヨークに住む売れない作家のドンは、アルコールに溺れる日々を過ごしていた。酒代に困っては兄の金に手をつけ、果ては商売道具のタイプライターまで売ろうとする。絶望の淵をさまよう男をビリー・ワイルダー監督が描いた。アカデミー賞作品賞はじめ4部門も受賞。
■「パリ20区、僕たちのクラス」(2008)
「ローラン・カンテ監督の強みはリアルでドキュメンタリー的なアプローチ。本物の教師が実際の生徒たちの前で指導する教室の日常をシンプルに描いているので、誰にでも親しみやすく語りかける」
生い立ちも出身国もさまざまな24人の生徒と1人の国語教師の交流を通じ、フランスの教育現場を赤裸々に描いた作品。演技経験のない24人の子供たちのリアルな芝居が注目を集めた。
■「ワイルド・アット・ハート」(1990)
「パルムドールはロックンロールであることをデビッド・リンチが証明した。ギターリフのように電気的で猛烈で、時にシュールで、リンチの他の作品より親しみやすく入門となる映画。カンヌ映画祭は重くて退屈な長編映画のためだけにあるものだという既成概念を変える」
ニコラス・ケイジ主演のバイオレンスなラブストーリー。ある日、恋人ルーラの目の前で襲いかかってきた男を返り討ちにし、殺してしまったセイラー。その男は、娘に異常なほどの愛情を持つルーラの母マリエッタが送り込んだ刺客だった。2年間の刑期を終え出所したセイラーは、ルーラを連れてカリフォルニアへと旅に出る。
■「第三の男」(1949)
「何度上映されても魅力的で刺激的なまま。本物のフィルムノワールの名作」
パルム・ドールが設定される前の最高賞グランプり受賞作。イギリス人作家グレアム・グリーンのオリジナル脚本を名匠キャロル・リードが映画化。第2次大戦終戦直後、米英仏ソの四カ国による分割統治下にあったウィーンに親友ハリー・ライムを訪ねてきたアメリカ人作家のホリー。だが、ハリーの家に着くと守衛からハリーは交通事故で死亡したと告げられる。腑に落ちないホリーはウィーン中の関係者をあたり、真相究明に奔走する。
■「影武者」(1980)
「日本の巨匠のこだわりを結集した大型予算の歴史的フレスコ画」
黒澤明監督が「デルス・ウザーラ」以来5年ぶり(日本映画としては「どですかでん」以来10年ぶり)に製作した、戦国スペクタクル巨編。製作総指揮としてフランシス・F・コッポラとジョージ・ルーカスが参加、アメリカでも公開され独創的な様式美と壮麗な合戦絵巻が評判を呼んだ。時は戦国時代、あやうく処刑をまぬがれた盗人が武田信玄の影武者となり、信玄の幻に威圧されながらも敵をあざむいていく。
■「タクシードライバー」(1976)
「社会的格差による大都市での暴力が増加で、当時世界で最も犯罪率の高かったニューヨークを中心としたベトナム戦争後のアメリカのイメージにも大きな影響を与えた」
マーティン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロがタッグを組み、孤独なタクシードライバーの姿を通して大都会ニューヨークの闇をあぶり出した傑作サスペンスドラマ。ニューヨークの片隅で鬱屈した日々を送るベトナム帰還兵の青年トラビスを演じたデ・ニーロの出世作。
■「地獄の黙示録」(1979)
「間違いなくカンヌ映画祭の歴史の中で最も物議を醸した作品の1つ」
「ゴッドファーザー」シリーズで世界的成功を収めたフランシス・フォード・コッポラ監督による傑作戦争映画。ジョゼフ・コンラッドの小説「闇の奥」を原作に、舞台をベトナム戦争下のジャングルに移して戦争の狂気を描く。過酷で困難を極めた撮影時のエピソードは伝説的であり、その過程はドキュメンタリー「ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録」(91)で発表された。