マーティ

劇場公開日:

解説

ハロルド・ヘクトとバート・ランカスターの設立したヘクト=ランカスター・プロの作品で1955年度カンヌ映画祭で国際大賞を受けている。原作は1954年、ドナルドソン賞とシルヴニア賞の2つを得たパディ・チャイエフスキーのテレビ劇。これを原作者のチャイエフスキーが映画にアダプトして脚色した。テレビ演出家のデルバート・マンが処女監督に当たり、撮影は「帰らざる河」のジョセフ・ラシェル、音楽は「太平洋作戦」のロイ・ウェッブ。出演者は「恐怖の土曜日」のアーネスト・ボーグナイン、ジーン・ケリー夫人のベッツイ・ブレア、イタリア劇壇の名女優エスター・ミンチオッティの他、新人たちが顔をそろえている。ハロルド・ヘクト製作になる1955年作品。

1955年製作/91分/アメリカ
原題:Marty
配給:松竹外画部
劇場公開日:1955年12月15日

ストーリー

ニューヨークのブロンクスで肉屋に働いているマーティ(アーネスト・ボーグナイン)は誠実な青年だが、生まれつきの醜男のため結婚もせずに母のピッレッティ夫人(エスター・ミンチオッティ)と2人暮しをしていた。良い相手があったら早く身をかためたいとあせっていたのだが、善良で内気な彼は気の利いた言葉で女を誘い出すことすらできなかった。土曜日の夜、アンギーやジョーなどの仲間と集っていると、母から電話がかかって、従弟夫婦が来ているからすぐに帰って来てくれといって来た。トーマスとヴァージニアの夫婦は姑のキャサリンとの間がうまくいかないので、キャサリンをマーティの家に置いてくれないかというのだった。キャサリンは母の妹だからマーティは賛成した。マーティは肉屋の店を主人から買い受けて自分で経営したいと思っていたので、銀行に勤めているトーマスに金融のことで相談してみると、トーマスは機嫌よく承知して、ヴァージニアと帰って行った。夕食後、マーティはアンギイとダンスホールへ行った。すばしこいアンギーはいち早く相手を見つけて踊り出すが、マーティは相変らず、まごついていた。だが、1人淋しそうにテーブルに坐っている娘(ベッツイ・ブレア)が眼にとまった。彼女は友だちと一緒に来たのだが、パートナーとなった青年は彼女があまり魅力のない娘なので置き去りにしたのだった。自分のみじめな立場に気がついた娘は、そっとバルコニーに出て泣いている様子だった。マーティは遠慮深く声をかけて、彼女と踊ってから近くの喫茶店で遅くまで話し込んだ。娘はクララといって教養もあり、学校の女教師をしていた。マーティと同じように、風采があがらないために苦しみをなめて来た娘だった。マーティはクララを自分の家に連れて来た。クララを彼女の家まで送ったマーティは翌日の日曜日に電話をかける約束をして別れた。その日曜日になったが、朝からキャサリンが引っ越して来たり、教会へ出かけたりして落ち着かない。クララは家にいてマーティからの電話を待った。正午をすぎ夕方になった。その頃、マーティはいつもの仲間と酒場にいた。クララが醜いとか魅力がないといって、電話をかけさせなかった連中もいざとなると相手もなく、どこへ行こうという当てもないのだった。やがてマーティはやっと決心がついた。「俺は彼女に電話をかけるんだ。相手が醜くかろうが、心がきれいだったらいいじゃないか!」といい捨てるとマーティは電話ボックスへとび込んで行った。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第28回 アカデミー賞(1956年)

ノミネート

助演男優賞 ジョー・マンテル
助演女優賞 ベッツィ・ブレア
撮影賞(白黒) ジョセフ・ラシェル
美術賞(白黒)  
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フォトギャラリー

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写真:Everett Collection/アフロ

映画レビュー

2.5どうでもいい人ではない

2022年12月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

主人公マーティ(アーネスト・ボーグナイン)がとってもいい人で、親や友人だけでなく、肉屋にくるお客さんからも気に掛けてもらってます。醜男だからモテないという設定が結構露骨で、ダンスホールで出会う女性クララ(ベッツィ・ブレア)も「イモ」呼ばわりと、容姿の美醜がやたらに強調されているのが、時代のせいなのか…。クララに対する母親や友人らの反応も意外だったし、その反応に対するマーティがとった行動も理解できず、あまりしっくりきませんでした。第28回アカデミー賞で作品賞、監督賞を含む4部門受賞作なんですよね~!

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赤ヒゲ

4.0普段は悪役が多いボーグナインだけど、こうした人のいい役もなかなか似合っている。オスカー獲得も納得(作品的には・・・)

2020年10月9日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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kossy

3.5イタリア系アメリカ人の哀歌

2020年5月17日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ブロンクスに住む34歳の独身男マーティを主人公に、イタリア系移民でカトリックの小市民の生活をリアリズムで描いた小気味よい映画。イタリア系というとピエトロ・ジェルミの「鉄道員」を連想するが、ニューヨークが舞台の為か、切れ身の良い映像で展開が無駄なくスムーズに流れ、90分の放映時間があっと言う間に終わってしまった。映画と云うより、ニューヨークの舞台劇の趣向が勝った内容で、完成度の高さもその範囲内である。1950年代のアメリカ映画において、美男美女ではない容貌の劣る男女の恋愛映画は異色で貴重だ。悪役で名を馳せたアーネスト・ボーグナインの人柄の良いチャーミングな役も珍しいが、演技も充実している。主人公の母親と伯母の姉妹の会話が、どこの国にも通じる(特にイタリアと日本)嫁いびりの内容で笑わせてくれる。

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Gustav

5.021世紀の今の日本にこそ必要な物語です

2019年7月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

素晴らしい映画に出逢えた幸せを感じます
こんなに美しい恋愛映画はありません
心から感動しました

主人公のマーティは34歳
ネットで今話題の子ども部屋おじさん
小太り、ブ男、高卒、下町の肉屋の店員
本人も自覚する非モテキャラです
同居の母親からも、肉を買いに来たお客さんにまで口ぐちに早く結婚しろ、なぜしないのよ?と言われてへこむ毎日
仕様がないと諦めてもいて、地元の非モテグループとつるんでグダグダと週末を過ごしています

正に現代的な設定です
21世紀の今の日本にこそ必要な物語です

主演のアーネスト・ボーグナインの演技が素晴らし過ぎます
クララに知り合って舞い上がり話が止まらなくなる姿
キスを拒否されて消沈してへこむ姿
別れ難くいつまでも一緒いて、深夜に彼女の家までバスで送り、家のドアの前で明日も会いたいと握手して別れる姿
どのシーンも見事です、いとおしいです

クララ役のベッツィ・ブレアもまた素晴らしい見事な配役でした
確かに美女ではありません
イモだのなんだのとさんざんな言われようですが、最初の登場シーンで遊び人の男がパッとしないが十分魅力的じゃないかと言う姿形、雰囲気にピッタリはまっています

29歳の高校教師の役です
奥手で真面目の設定どおりの知的な面立ち
痩せすぎで胸も腰も尻もペッタンコです
地味で母親からももっと年がいってるはずとけなされます

だけど彼女の笑顔は男の心が晴れる笑顔です
この人となら人生を一緒に歩き続けたい、全力で取りに行きたいと思える女性の姿形です

クララを見た次に、車のバックシートにもたれる遊びなれた看護婦の顔を見、その声を聞いたとき、マーティだけでなく私達観客も、その決定的な違いを実感させられるのです
本当に絶妙で奇跡のような配役と言えるでしょう

クラブで男から取り残され、選ばれない自分への情けなさ惨めさに泣き出しそうな表情
マーティからの約束の電話が来ず打ちのめされつつ、微かにまだ期待しているその表情
共感と説得力がありました

34歳と29歳の男女
現代の日本なら全然適齢期です
しかし当時ならそれよりプラス5歳、いやプラス10歳の今の日本なら44歳と39歳のカップルの物語のイメージだろうと思います

この非モテカップルの恋の行方だけでなく、嫁姑問題と親放れや、親の子放れの問題も描かれます
マーティに彼女ができたとたんに、その彼女のことをことさらに悪くいいだす教会の前でのシーンや実家の家でいいあう叔父夫婦はまるで米国版の渡る世間は鬼ばかりでした

エンドマークが出た時、拍手をしてしまいました
それはマーティの変化に、そして見事な作品に対しての拍手です
恋愛に遅いなんてありません
マーティとクララの幸せを確信して暖かい心が残りました

是非、現代の東京を舞台にしたリメイクを観たいと思います

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あき240