【エル・ファニング出演作10選】ハリウッド最注目女優の軌跡！　最新作「プレデター　バッドランド」では下半身を失ったアンドロイド役

2025年11月5日 09:00

ハリウッドの若手女優のなかで、最も影響力のある女優のひとりとして注目を浴びるエル・ファニング。子役としてキャリアを始め、誰もが知る超大作から、作家性の高いインディペンデント作品まで幅広いジャンルで活躍し、その多彩な演技で、映画ファンを魅了している。

11月7日に世界同時公開される最新作「プレデター　バッドランド」では、“狩られる側”となった若きプレデターが、協力者として出会うアンドロイドを演じている。下半身を失いながらも、神秘的な存在感を放つ姿は、ファニングの新たな一面だ。そんな彼女の軌跡を、出演する10作品とともに振り返る。

●1.「SOMEWHERE」（2010）

「ロスト・イン・トランスレーション」のソフィア・コッポラ監督が、スター御用達の有名ホテルを舞台に、父フランシス・フォード・コッポラとの思い出や、2児の母となった自らの経験を投影して製作した。

当時11歳だったエル・ファニングは、ハリウッド俳優のジョニー・マルコ（スティーブン・ドーフ）の娘・クレオを演じ、その自然体な演技で、孤独と疎外感を描いた静かな物語の感情的な核心を担った。派手さを好まないコッポラ監督との相性も良く、父親との何気ない会話や、一緒に過ごすシーンで見せる飾り気のない笑顔や視線が、クレオの純粋さや父親への愛情を表現した。

●2.「SUPER 8 スーパーエイト」（11）

「スター・ウォーズ　フォースの覚醒」のJ・J・エイブラムス監督が、スティーブン・スピルバーグをプロデューサーに迎え、「未知との遭遇」など、初期のスピルバーグ作品にリスペクトを捧げて製作したSF大作。1979年、米空軍はネバダ・エリア51の一部を閉鎖する。あるものをオハイオの施設に輸送しようとするが、貨物列車が脱線事故を起こす。そして、そのなかから何かがうごめきだし……。8ミリカメラで映画製作をしていた少年少女たちが事故現場に遭遇し、エリア51をめぐる謎に巻き込まれていく。

ファニングは主人公の初恋相手であるアリスを好演。ゾンビ映画を撮影中に、特殊メイクではしゃぐ無邪気さに加えて、父親が抱える飲酒トラブルに対して、痛みや弱さを吐露する繊細な演技も披露している。宇宙人をめぐるSF作品に、深みを与える重要な役割を果たし、ハリウッドで注目を集めるきっかけになった。

●3.「Virginia ヴァージニア」（11）

フランシス・フォード・コッポラ監督が、推理小説の大家、エドガー・アラン・ポーをモチーフに描くゴシックミステリー。小説家の男・ボルティモア（バル・キルマー）が呪われた街を訪れる数日前、身元不明の少女が胸に杭を打たれ殺されていた。

ファニングが演じる「V.」は、主人公を幻惑の世界に導く重要な役どころ。小説家の創作意欲を刺激し、ストーリーテリングの原動力となった。純粋さと不気味さをたたえたファニングは、現実と幻想の橋渡しともいうべき役割を果たし、作品が描く“闇”をより深化させ、作家性が強い作品でも、特別な存在感を放っている。

●4.「幸せへのキセキ」（11）ディズニープラスで配信中

「あの頃ペニー・レインと」のキャメロン・クロウ監督が、英国人ジャーナリスト、ベンジャミン・ミーの回顧録を映画化。妻を亡くし、半年が経つベンジャミン（マット・デイモン）は、新天地で閉鎖中の動物園があることを知ると、ある思いを胸に動物園の再オープンを目指す決意をする。

ファニングは、飼育係で現場のリーダーであるケリー・フォスター（スカーレット・ヨハンソン）の従妹で、動物公園で働く少女、リリー・ミシュカを演じている。ベンジャミンの息子・ディラン（コリン・フォード）に惹かれ、孤独な彼を支える役どころで、作品がもつ明るく前向きなメッセージを体現。短い出演シーンのなかで、観客に癒しを届けている。

●5.「マレフィセント」（14）ディズニープラスで配信中

1959年製作のディズニーアニメの名作「眠れる森の美女」を、邪悪な妖精・マレフィセントの視点から描き、アニメでは語られなかったマレフィセントとオーロラ姫の間にある隠された物語を明らかにする実写映画。アンジェリーナ・ジョリーが主演し、マレフィセント役を務めた。

オーロラ姫を演じたファニングは、呪いを受けたピュアな王女として登場し、明るく純真なキャラクターを、笑顔と柔らかな声で表現。疑似母娘ともいうべき、マレフィセントとの複雑な絆を繊細に表現している。続編「マレフィセント2」では、精神的にさらに成長したオーロラを演じた。

●6.「アバウト・レイ 16歳の決断」（15）

身も心も男性として生きたいと告白し、そのためにホルモン治療と法的性別変更を望む16歳のレイ。彼女とその家族の絆と葛藤を描いたヒューマンドラマで、ファニングは、トランスジェンダーの主人公を演じた。

「女の子として生まれた体」と「男の子として生きたい心」のギャップを、身体的アプローチはもちろん、家族を演じるナオミ・ワッツ、スーザン・サランドンとの共演では、繊細な感情レイヤーで表現。役への理解と共感をもとに、レイを、友だちと笑い、恋にドギマギし、親に反抗するという、どこにでもいる16歳として自然に存在させている。

●7.「ネオン・デーモン」（16）

「ドライヴ」のニコラス・ウィンディング・レフン監督が、究極の美を追求するファッション業界に渦巻く欲望と狂気を、スタイリッシュな映像美で描いたサスペンススリラー。ファニング演じる16歳のジェシーは、トップモデルを夢見て故郷の田舎町からロサンゼルスに移住し、人を惹きつける天性の魅力で、すぐに一流デザイナーや有名カメラマンの目に留まり、順調なキャリアを歩み始める。嫉妬心を抱くライバルたちは、彼女を引きずり降ろそうと、数々の罠を仕掛けるが、ジェシーもまた、自分でも気付かずにいた、異常なまでの内なる野心に目覚めていく。

●8.「メアリーの総て」（17）

ゴシック小説の名作「フランケンシュタイン」の作者であるイギリス人女性、メアリー・シェリーの半生を映画化。19世紀のイギリス、小説家を夢見る少女・メアリーは妻子ある詩人・パーシー（ダグラス・ブース）と出会い、互いの才能に惹かれあう。やがて、情熱に身を任せて駆け落ちするが、メアリーは数々の悲劇に見舞われる。失意のなかにあったメアリーは、詩人・バイロン卿（トム・スターリッジ）の別荘で「みんなでひとつずつ怪奇談を書いて披露しよう」と持ちかけられ……。

ファニングは、読書や執筆に没頭する内向的な知性を表現。同時に衝動的な恋愛に走る感情の起伏をダイナミックに演じてみせた。

●9.「ティーンスピリット」（19）

3カ月間にわたり歌の特訓を重ねたファニングが、本格的な歌唱シーンに挑戦し、パワフルな歌声を披露している青春音楽ドラマ。イギリスのワイト島で、移民として母子家庭で育った内気な少女、ヴァイオレット・バレンスキは、現実の世界から自分を解き放ってくれる音楽を心のよりどころに生きていた。ある時、国際的に有名な人気オーディション番組「ティーンスピリット」の予選が地元で行われることを知ったヴァイオレットは、居場所を見失った退屈な田舎町を抜け出し、歌手になる夢をつかむため、オーディションに挑む決意をする。

●10.「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」（25）ディズニープラスで配信中

2016年に歌手として初めてノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの若き日を描いた伝記ドラマ。「デューン　砂の惑星」「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」のティモシー・シャラメが主演を務め、ファニングは初期の恋人として知られるスージー・ロトロに着想を得た架空の人物、シルヴィ・ルッソを演じている。ディランの音楽的、感情的な成長に寄り添う女性像を体現し、シャラメとの豊かな化学反応によって、若き詩人の内面的な葛藤を引き出す役割を果たした。ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞で助演女優賞に輝いている。