川村元気「失敗と反省」 ロングインタビュー(後編)
2022年9月19日 11:00
「電車男」に始まり、「告白」「悪人」「モテキ」「おおかみこどもの雨と雪」「君の名は。」「怒り」「天気の子」など、これまで40本の映画を手がけてきた川村元気氏は、映画業界ならずとも、クリエィティブな仕事に従事する人々にとって無視することができない存在といえるでしょう。今年、映画プロデューサーのほかに小説家、脚本家、絵本作家など、実に多くの顔を持つ川村氏に、「映画監督」という肩書きが新たに加わりました。
自らの祖母が認知症になったことをきっかけに、人間の記憶の謎に挑んだ自著「百花」の映画化に際し、なぜ監督を務めようと思ったのか。激務をこなす川村氏にとって、仕事というカテゴリーにおける効率、非効率の線引きはどこにあるのか。
この連載では、本人のロングインタビューや仕事仲間からの証言集などを通して、全7回で「川村元気」を紐解きます。映画人としてのキャリアをスタートさせてから「百花」に至るまで、100の企みに迫っていきます。
最終回となる第7回では、川村氏のロングインタビュー後編をお届けします。川村氏の成功体験ではなく、20余年にわたり映画人として生きてきたなかで得た学びを、「失敗と反省」というテーマに基づいて語ってもらいました。
川村:僕は飽き性なんです。映画を40本も作り続けてきたのに、シリーズものを1本も成立させられていない。普通は続編、作りますよね。家を1軒建てたら終わり……みたいな効率の悪いスタイル(笑)。実写を作り続けてきて、なんとなく作り方が分かったような気になっちゃったので、アニメの世界で新人として1からやり直そうと思ったんです。
新人になれる場所を探すというのが、僕のテーマ。新人の頃は一生懸命あれこれ考えるし、綺麗ごとだけではなくて、もしかしたらジャンルメイクが出来るかもしれない。もっと成長できるかもしれない。
もともと細田守という才能に憧れがあり、作品はずっと見続けていました。幸いなことに「おおかみこどもの雨と雪」に呼んでもらえたので、アニメ作りを根本から学びました。自分なりにアドバンテージがあったのは、映画と音楽をどう関係させるか……についての見識。高木正勝さんという作曲家を、劇伴担当として細田さんに推薦したんです。映画音楽で実績のある方ではなかったけれど、成立させられる自信もありました。
川村:「寄生獣」は、大好きな原作です。映画としてもとても気に入っていますし、染谷将太の代表作を作れたとも思っています。山崎貴監督のフィルモグラフィーの中でも、いびつな1本になったと認識もしています(笑)。
一方で、日本映画のバジェット(製作費)で出来ることの限界というのも、現実として突き付けられました。日本語の映画で、日本人の俳優を使い、リクープライン(損益分岐点)が決まっていると使える金額は自ずと上限が見えてしまう。
そういう状況で、大作を製作するというのはすごく大変だなと思い知らされました。そこから更に、アニメへ傾倒していったというのは否定出来ない部分があります。
川村:新海さんは、シンクロ率の高いパートナーだと思っています。「君の名は。」があまりにも大きな成功をおさめたので、いかに自己模倣にならないようにするかを考えました。
「大ヒットした後、全然違う方向のものを作ったら、誰も付いて来てくれなかった」という失敗例は、幾らでもありますよね。「君の名は。」を観てくれた方が、「これじゃない」と思わないものを作らなければならないね、と。
ただ、新海さんのアイデアの源というのが面白くて、「天気の子」では「我々は毎日、天気予報をチェックするところから1日を始めていて、全員が当事者の話になる」と言っていたんですね。そういうところからテーマを見つけてくる宿命を負ってしまったんだな、と感じたのを覚えています。そのうえで、全世界の人にとって共通のテーマを、どれくらいプライベートな物語として作れるか……というのを意識して作ったのが「天気の子」でした。
川村:吉田修一さんの原作で、李さんと再び一緒に……ということで最も気を付けたのは、再三口にしていますが「自己模倣にならないように」でした。「悪人」は興行面、批評面の両方で成功しました。だからこそ、同じことをやったら絶対に失敗すると思い、李さんとはアグレッシブな映画にしようと話しました。
音楽を坂本龍一さん、照明を中村裕樹さんにお願いしたのも、これまでとは少し趣の異なる要素を取り入れたかったからです。「怒り」はとても気に入っている映画で、僕の仕事の中でも到達点のひとつだと思っています。
興行的には「悪人」に届かなかったけれど、作品としては李さんも僕も進化したものを残せたと思うので、あまり反省点はありません。「来る」に関しても、中島さんとの2本目でめちゃくちゃ気に入っているんですが、興行としては「告白」に及ばなかった。
「来る」は熱狂的に好きでいてくれるファンはいるんですけどね……。スタンリー・キューブリックの「シャイニング」がホラーなのかといえば、意見が割れるじゃないですか。そういう路線を狙ったのですが、「来る、来ると言って、何にも来ないじゃないか!」と怒る人がいたことも事実として受け止めています。僕らは「来る、来ると言って、何にも来ないのが面白い」と思っていたんです。どちらも凄く気に入っている作品ですが、興行面で前作を超えられなかったというのが反省すべき点です。
そういう意味では、2周目、3周目に入っているんですよね。同じ監督と複数回にわたって映画を作るという。いかにフレッシュな気持ちで対峙出来るか……という課題を、自分の中に抱えるようになりました。
川村:これまでに脚本を書いていても、あえてクレジットしないことを選んだ作品はありました。そういう判断をするプロデューサーは、他にもいると思います。僕の場合は小説も書いてきたなかで、映画の脚本家として改めてデビューするとしたら、何が一番意味不明で面白がってもらえるだろう? と考えていたんです。実写の日本映画で脚本を書いたとしても、誰も驚かなかったでしょうし。
そんな時に、藤子・F・不二雄プロさんから「脚本を書いてもらえないか」とお話を頂いたんです。「なるほど、ドラえもんか!」という思いと、藤子・F・不二雄先生が一番好きな作家さんなので「怖いな」という思いも一方でありました。
でも、F先生がどうやって物語を構築していったのかを勉強出来る! という思いが勝り、お受けしたわけです。ただ、「ドラえもん」の下駄を履かせてもらって脚本を書いたのに、これで失敗したら立ち直れない……と思いました。結果的に興行面でも成果(興収53.7億円)を出せて、ホッとしました。
この時は、現代を生きる子どもたちを取り巻くアニメや映画についてじっくり調べました。僕らのようにアニメ映画といえば「ドラえもん」しかなかった世代の子ではなく、ピクサー作品にも日常的に触れている子たちです。僕がやる以上は、そんな子どもたちが「ドラえもんを観たい」と思ってもらえるグラフィックの作り方、キャラクターの構築って、どういうことだろう? って。
それで、キャラクターを多用したり、要素を複雑にしていきました。あの頃に劇場で観て、いまは中学生になっていたりする子たちが、いまだに「『宝島』がすごく好き」と言ってくれる事があって、それは凄く励みになっています。
川村:小説「神曲」を書いていました。くしくも神、ウイルス、不信感などがテーマの小説でした。世の中が目に見えないものに振り回されていく感じ、ネットの世界では憎悪が渦巻き、世界が悪い方の想像力で動いていくさまを見つめながら、じっと家で小説を書いていました。
小説執筆は「世界から猫が消えたなら」から始まって、「億男」「四月になれば彼女は」「百花」と続き、「神曲」が5作目となりました。ある意味で、一番自分らしい小説が書けたと思っています。
川村:岩井さんは、僕にとってアイドルのひとり。どういう風に演出をするのか、どうやったらあんな空気感の映像になるのか……というのを、本打ちや現場で見ながら勉強をさせてもらいました。
川村:松さんは残酷なくらい天才。現場に入った瞬間に、全体が見えているんでしょうね。それが梨園の血なのかもしれませんが、現場に入った瞬間からすでに勝っている印象があります。
僕は女優さんでは、深津絵里さんと松さんの姿から色々なことを教えてもらいました。タイプは違うのですが、深津さんの持つ圧倒的なストイックさ、松さんの持つ奔放さと言うか、動物的な強さみたいなものを目の当たりにしました。
「悪人」でご一緒させてもらった樹木希林さんからは、ヒットしたら天狗になる、こけたら落ち込むというのではなく、あるがままを受け入れなさいよ! と教わった気がします。「力むな、力んだって面白いことは出来ないんだから。力まないでいれば、良いものが来た時にパッと捕まえられるでしょ?」って。
希林さんはマネージャーを置かなかったので、オファーの連絡をするとご本人が電話に出るわけです。「企画のご相談なのですが、脚本を送ってもいいですか?」「宅急便の人がピンポンピンポンうるさいから嫌なのよ。なんてタイトルなのよ?」「『悪人』という作品なんですが…」「うーん、じゃあ、それやるわ!」というやり取りで、出演が決まりました(笑)。
普通の俳優であれば、脚本を読んでから他の出演者などを確認し、企画の可能性を見定めながら決めていく。ただ一方で、大事なものを掴み損ねているんじゃないか。希林さんは力まずにいることで、大事なものをスッと捕まえてきたんでしょうね。タイトルを聞いただけで、どんな役かも、どんな物語かも確認せずに出演を決めるって、そういう事なんだろうなあ。僕はそんな仙人みたいな境地にはとても及びませんが、そういうやり取りをさせて頂くことで、力まずに映画を作ってこられたと思っています。
川村:僕は、バランスを取っていないんです。バランスの取れているものって、面白くないじゃないですか。いかにアンバランスを作るか。現場にそういう状況を作って撮ることもあるし、完璧に計算し尽くして撮ったものを意図的に編集や音楽でリズムを壊すこともあります。
効率良く進めても、予定通りにいってしまったら、僕は空いた時間で変なものを撮って、それを混ぜることで作品を壊しにかかると思うんです。アクシデント待ちというか、散々準備してアクシデントを待つみたいなところがあると思います。
川村:この作品は「京都・ご飯」というキーワードがあって、美術や食が生きてくる企画。女性プロデューサーの発案で、連ドラとしてやったら面白いんじゃないかと考えていたので、Netflixを前提とした作品です。僕としては初めての連ドラ作品となります。
是枝監督で、撮影が近藤龍人さん、美術が種田陽平さん、音楽が菅野よう子さんですから、ほとんど映画の作り方なのですが。
川村:是枝さんが凄いのは、子どもたちやエキストラさんなど、俳優ではない人を俳優にしてしまう演出力。これって圧倒的に「自分なら演出出来る」という自信がないと取れないチョイスだと思うんです。新たな引き出しを開けてしまうというか、あれはちょっと真似出来ません。
それと、巨匠たちってパルムドールを受賞しようが、変わらず成長する努力を惜しまない、自分の伸びしろを探している気がします。是枝さんも、フランスや韓国へ行って撮ることで、自分の未開発だった能力の芽吹きというものを体験している印象があります。先輩たちがそういう努力を続けているわけですから、安穏となんかしていられません。
川村:今回は、日本列島がテーマです。日本中を旅しながら災いが出て来る扉の“戸締まり”をしていく女の子・すずめの物語。
僕らが暮らす日本という国の形って縦に長い。島々で分断されているようで、それでも繋がっているものって一体何だろう。日本人であること、島国に住んでいることをとことん突き詰めると、世界で起きている分断と繋がるのかもしれない……、という要素がベースとしてありました。
これだけ大きなテーマから入る映画作りというのは、刺激的です。最初から多くの人が観ることを前提にした作品づくりというのを、宮崎駿さんと鈴木敏夫さんはずっと続けてきたんだろうなあ……、と思わずにはいられません。「すずめの戸締まり」は、物語としてこれまでで一番面白いと、Vコンテを見た人の多くが言っています。新海さんは、ストーリーとしてある種の到達点に行き着いたんじゃないかと思います。
川村:僕の中で、アニメを除いて企画がほとんどない状態に突入します。何をするんでしょうね……。
でもまあ、何かしら出てくると思います。僕にもやっと、「待つ」という力が付いてきたのかもしれません。脚本家として仕事をしなかったのは、きっと「ドラえもん」が待っていたから。監督をしなかったのは、きっと「百花」が待っていたから。だから、必然なんでしょうね。
配信プラットフォームが浸透した時代に、僕らは映画館のために何を作るのかを考えていかなければならない。時代の変化に対応しながら、なおかつパフォーマンスを発揮することが求められていきます。
第1線で活躍する監督たちも20年選手、30年選手時代に突入しています。ここから新しい才能が出てこないとまずいし、僕も含めて今いる選手たちもアップデートを続けていかなければならない。
かつて30代の自分に小説を書くという行為を課したように、40代は撮るということでいかにアップデート出来るのか。そして撮るとなったら、真剣に映画館で映画を見せることのアドバンテージを考えていったわけです。この考えを追求していくことで、まだまだ発見はあると思っています。
全7回の集中連載、いかがでしたでしょうか。「誰も知らない100の企み」と銘打ちましたが、「100」では収まりませんでした。川村氏は、とことん自分と向き合い、常に新人になれる場所を探し、自己模倣にならないよう肝に命じながら40本の映画を作り続けました。
いまは手持ちの企画がないと取材時には話していましたが、きっと既に新たな企画を動かし始め、脚本も執筆しているに違いありません。そして、再び映画ファンを「あっ!」と驚かす企画の中に「100」の先にあるものを潜ませているはずです。
クールなようでいて、実は人間臭さも持ち合わせた川村氏が、40代をどう走り抜け、円熟味を増した50代に如何に突入していくのか――。そして、「50問50答」で触れていましたが、まだ撮ったことのない時代劇にどういうテーマを見出し、どのタイミングで挑戦するのか。進捗があり次第、映画.comで詳細をご紹介させていただきますので、ご期待ください。
執筆者紹介
大塚史貴 (おおつか・ふみたか)
映画.com副編集長。1976年生まれ、神奈川県出身。出版社やハリウッドのエンタメ業界紙の日本版「Variety Japan」を経て、2009年から映画.com編集部に所属。規模の大小を問わず、数多くの邦画作品の撮影現場を取材し、日本映画プロフェッショナル大賞選考委員を務める。
Twitter:@com56362672
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