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湊かなえ原作映画6作品まとめ あらすじ、キャスト、見どころを紹介 【「母性」公開記念】

2022年11月26日 13:00

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「告白」「北のカナリアたち」…湊かなえ原作映画は名作ぞろい
「告白」「北のカナリアたち」…湊かなえ原作映画は名作ぞろい
(C)映画「告白」フィルムパートナーズ

テーマにそったおすすめ映画をご紹介する【映画.comシネマStyle】。湊かなえ氏の衝撃作を、戸田恵梨香さんと永野芽郁さんの共演で映画化する「母性」が、11月23日に公開されました。

そこで今週は映画.com編集部が、湊氏の小説を映画化した作品を、一挙におさらい。6作品のあらすじ、キャスト、見どころを、製作年順に紹介していきます。

※本記事には、原作や映画のネタバレとなりうる箇所があります。未見の方は、十分にご注意ください。
画像18(C)2022映画「母性」製作委員会

▽1.「告白(2010)」(106分/R15+/中島哲也監督)
画像2(C)映画「告白」フィルムパートナーズ
【作品概要】
 「下妻物語」「嫌われ松子の一生」の中島哲也監督が、累計発行部数360万部を超え、2009年本屋大賞を受賞した同名ミステリー小説を映画化。衝撃的な物語が話題を呼び、興行収入が38億5000万円の大ヒットを記録した。
【あらすじ】
 ある中学校の1年B組の担任を務める教師の森口悠子(松たか子)の愛娘が、学校のプールで溺れ、命を落とす。警察は事故死と判断するが、森口は学年末の終業式の日に、犯人はクラスのなかにいると生徒たちに告げる。
画像3(C)映画「告白」フィルムパートナーズ
【見どころ】
 本作は「教師と生徒」、それと同時に、森口をはじめ、犯人である少年Aの母(黒田育世)、少年Bの母(木村佳乃)という3人の母が登場しており、「親と子ども」の物語でもあります。背筋が凍るほど稚拙な動機が巻き起こした悲劇を前に、森口は生徒と同じ目線に立ち、過激な“命の授業”を行います。少年Aが作り上げた逆転時計は絵空事に過ぎず、現実では時間が巻き戻ることなどない。一度失われた命が戻ることは、ありえないのだと。
画像16

▽2.「北のカナリアたち」(2012年/130分/阪本順治監督)
画像4(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会
【作品概要】
 「亡国のイージス」「大鹿村騒動記」の阪本順治監督が、連作ミステリー「往復書簡」所収の「二十年後の宿題」を原案に紡いだヒューマンサスペンス。吉永小百合が教師役で主演し、森山未來満島ひかり勝地涼宮崎あおい小池栄子松田龍平らが、大人になった生徒たちを演じた。
【あらすじ】
 日本最北の島・礼文島と利尻島で小学校教師をしていた川島はる(吉永)は、ある事件で夫・行夫(柴田恭兵)を失う。その出来事をきっかけに島を出てから20年後、教え子のひとりを事件の重要参考人として追う刑事の訪問がきっかけとなり、はるはかつての生徒たちに会う旅に出る。再会を果たした恩師を前に、生徒たちはそれぞれの思いを口にし、現在と過去が交錯しながら事件の謎が明らかになっていく。
画像5(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会
【見どころ】
 ひとつの事件がさまざまな視点で描かれることで、全く異なる意味を帯びていく、湊作品の真骨頂ともいえるヒューマンミステリー。日本映画界を代表する豪華キャストたちの名演と、「劔岳 点の記」などで知られる名キャメラマン・木村大作がとらえた日本最北の島である礼文島と利尻島の美しくも厳しい冬景色により、重厚感たっぷりの作品に仕上がっています。ある些細な行動、言葉、あるいは口にできなかった思いが、誰かの人生を変えることがある。はる先生と生徒たちの“語り”で真実が浮かび上がってくるミステリー、物語の背景にある、あたたかな絆を描くヒューマンドラマのバランスが絶妙です。
画像16

▽3.「白ゆき姫殺人事件」(2014年/126分/中村義洋監督)
画像6(C)2014「白ゆき姫殺人事件」製作委員会 (C)湊かなえ/集英社
【作品概要】
 「アヒルと鴨のコインロッカー」「ゴールデンスランバー」など、伊坂幸太郎原作の映画化でも知られる中村義洋監督が、ある殺人事件をめぐる同名サスペンス小説を映画化。
【あらすじ】
 日の出化粧品の美人社員・三木典子(菜々緒)が何者かに惨殺される事件が発生。やがて、典子と同期で、地味な存在の城野美姫(井上真央)に疑惑の目が向けられる。テレビのワイドショーは美姫の同僚や同級生、故郷の人々や家族を取材し、関係者たちの口からは、美姫に関する驚くべき内容の証言が飛び交う。
画像7(C)2014「白ゆき姫殺人事件」製作委員会 (C)湊かなえ/集英社
【見どころ】
 過熱報道、SNSでの炎上、口コミの信頼性、ルッキズムなど、現代社会が抱える闇が、ある凄惨な殺人事件を軸に暴かれていきます。本作は2014年に製作されましたが、劇中で描かれるような嘘と悪意が連鎖するネット社会は、いまも何ひとつ変わっていないように感じます。「信頼できない語り手」という湊作品の特徴が、物語の真相を二転三転させ、「どんな可能性もありうる」と思わせる、嘘も憶測も全て飲みこんだ井上さんの演技が圧巻です。
画像16

▽4.「少女」(2016年/119分/三島有紀子監督)
画像8(C)2016「少女」製作委員会
【作品概要】
 「しあわせのパン」「繕い裁つ人」の三島有紀子監督が、湊氏がベストセラーとなった「告白」の次に執筆した同名小説を映画化。本田翼山本美月の共演で、「人が死ぬ瞬間を見たい」という願望を抱える女子高生が過ごす夏休みを描く。
【あらすじ】
 高校2年生の由紀(本田)と親友の敦子(山本)は、夏休み前に転校生・紫織(佐藤玲)が親友の死体を見たと話すのを聞いて以来、自分も人の死を目撃してみたいと思うように。そこで由紀は小児科病棟でボランティアを始め、余命わずかな少年たちと仲良くなり、自らの欲望を満たそうとする。一方、陰湿ないじめに遭い、生きる希望を失いかけていた敦子は、誰かの死を見れば生きる勇気を取り戻せるのではないかと考え、老人ホームでボランティアをするようになる。
画像9(C)2016「少女」製作委員会
【見どころ】
 「人が死ぬ瞬間を見たい」という不気味な欲望を燻ぶらせる由紀と敦子は、死に惹かれる狂気的なサイコパスではなく、家族の問題やいじめなどに苦しみ、闇から抜け出したいと願う等身大の女子高生。「告白」同様、思春期の少年少女たちの、無邪気ゆえに容赦ない攻撃性や、根の深い心の闇が描かれています。

劇中で由紀が執筆する小説「ヨルの綱渡り」には、「たったひとりで、真っ暗な夜のなかを綱渡りしているような状態にあっても、救いの手が、必ず夜から救ってくれる」というメッセージが込められているようにも感じます。ふたりが別々に過ごす夏休みが終盤に向けてつながっていく、“因果応報”のドラマが見どころです。


▽5.「望郷」(2017年/112分/菊地健雄監督)
画像10(C)2017 avex digital Inc.
【作品概要】
 ひとつの島を舞台にした全6編から構成される短編集「望郷」から、「夢の国」「光の航路」の2編を、貫地谷しほり大東駿介の主演で映画化。「ディアーディアー」「ハローグッバイ」の菊地健雄監督がメガホンをとった。
【あらすじ】
 しきたりを重んじる家庭に育ち、島で故郷に縛られる生活をしていた夢都子(貫地谷)は、家を出て、大人になり幸せな家庭を築いていた。ある日、子どもの頃から自由の象徴として憧れていた本土にある「ドリームランド」が今年で閉園することを知り、彼女はずっと思い続けていたことを語り始める。一方、転任のため9年ぶりに本土から故郷の島へ帰ってきた航(大東)のもとに、ひとりの男性が訪ねてくる。教師をしていた父・正一郎(緒形直人)の教え子を名乗る畑野(浜野謙太)の話から、航は父の本当の姿を知ることとなる。
画像11(C)2017 avex digital Inc.
画像12(C)2017 avex digital Inc.
【見どころ】
 各作品の主人公である夢都子と航は、ある過去に囚われている人々。生きるなかで誰もが抱えるであろう、そうした過去の傷や後悔にまつわる謎。過去と向き合い、謎を解き明かすことが、明日を生きる希望をもたらすかもしれないことが伝わってくるような物語です。それぞれ約1時間の長さであるにも関わらず、味わい深い濃密な物語に仕上がっているため、湊氏の短編作品の強度を知ることができる、短編への入り口としてもおすすめの作品です。

▽6.「母性」(2022年 公開中/115分/廣木隆一監督)
画像13(C)2022映画「母性」製作委員会
【作品概要】
 戸田恵梨香永野芽郁が母娘役を演じたミステリードラマ。ある未解決事件の顛末を、“娘を愛せない母”と“母に愛されたい娘”それぞれの視点から振り返り、やがて衝撃的な真実にたどり着くまでを描く。「ここは退屈迎えに来て」「ノイズ」の廣木隆一監督がメガホンをとった。
【あらすじ】
 女子高生が、自宅の庭で死亡する事件が起きた。発見したのは少女の母で、事故なのか自殺なのか、真相は不明なまま。物語は、悲劇に至るまでの過去を、母と娘のそれぞれの視点から振り返っていくが、同じ時間・同じ出来事を回想しているはずなのに、その内容は次第に食い違っていく。
画像14(C)2022映画「母性」製作委員会
【見どころ】
 原作は、湊氏が「これが書けたら、作家を辞めてもいい。そう思いながら書いた小説」と語るほど思い入れの深い作品。母娘なのに、いや母娘という近い関係だからこそ、一度生じたすれ違いや誤解は、いつしか決定的な溝となって、関係にひびを入れることになるのです。
画像15(C)2022映画「母性」製作委員会

母と娘、それぞれが「信頼できない語り手」となり、嘘をついているのか、記憶を改ざんしているのか、憎しみが記憶を捻じ曲げているのか、どちらも複雑な経過をたどり、いくつもの“真実”が生まれていきます。母の視点と娘の視点を表現した、戸田さんと永野さんの巧みな演じ分けも必見。さらに、実は正体の分からない“母性”そのものや、“母性”を語ることで女性たちに課されてきた負荷などについて、答えの出ない問いを投げかける作品でもあります。

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