【映画食べ歩き日記】第5回:「ティファニーで朝食を」「君の名前で僕を呼んで」「ファントム・スレッド」…外出自粛中の映画ファンに捧げる“シネマごはん”朝食編!
2020年4月15日 09:00
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[映画.com ニュース] 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ外出自粛要請により、お家で過ごす時間が増えてきたここ数週間。料理や洗濯、掃除など、日々の暮らしを支える家事と丁寧に向き合っている方も多いのでは? そこで「映画食べ歩き日記」では、日々の“おうちごはん”に寄り添ってくれる映画をセレクト。第1弾は「朝食編」と題して、朝食がおいしそうな映画5本を紹介します。なかなか“食べ歩き”ができない状況ですが、映画と一緒に朝ごはんを充実させるのはいかがでしょうか。(映画.com編集部/飛松優歩)
最初は、“銀幕の妖精”オードリー・ヘプバーン主演で、トルーマン・カポーティの同名小説を映画化した不朽の名作。ヘプバーンは、米ニューヨークのアパートで猫と暮らしている高級娼婦ホリーを演じた。ある日、彼女のアパートに作家志望の青年ポール(ジョージ・ペパード)が引っ越してくる。自由奔放で不思議な魅力を持つホリーに、ポールは次第にひかれていくが、テキサスからホリーの夫が彼女を連れ戻しにやって来てしまう。
冒頭で「ムーン・リバー」の甘美なメロディにのせて映し出されるのは、明け方のニューヨーク。1台の黄色いタクシーから降りてきたホリーは、黒いドレスに大ぶりのネックレスというスタイルだ。5番街にたたずむ宝石店「ティファニー」の前へと一直線に進み、白い紙袋からクロワッサンとコーヒーを取り出す。サングラス越しにショーウィンドウを眺め、パンを頬張りながら通りを進んでいく……。映画史に残る、あまりにも有名な朝食シーン。大好きなティファニーの美しいジュエリーを見つめながら、自由気ままに楽しむ贅沢な時間に、世界中の女の子が憧れたことだろう。ちなみに2017年、この5番街の旗艦店に、同ブランド初となるダイニング「The Blue Box Cafe」がオープン(21年まで、改装のため閉店中)。作品の雰囲気を味わうことができる、1度は訪れてみたいスポットだ。
続いて、犬童一心監督(「引っ越し大名!」「最高の人生の見つけ方」)が田辺聖子氏の同名小説を映画化した「ジョゼと虎と魚たち(2003)」。池脇千鶴が足の不自由な女の子ジョゼ役、妻夫木聡が平凡な大学生・恒夫役を務め、ふたりの出会いと別れを描き出す。
祖母が押す乳母車に乗り、早朝の散歩を楽しんでいたジョゼと、衝撃的な出会いを果たした恒夫。そのまま連れてこられたふたりの家で、恒夫は料理上手なジョゼが作ったおいしい朝食をご馳走になる。立つことができないため、台の上に座って料理を作るジョゼ。部屋の壁には料理のレシピが所狭しと貼り付けられている。白いごはん、味噌汁、そしてふわふわのだし巻き玉子……。おいしいごはんを前に、箸が止まらなくなる恒夫の姿を見ると、ついお腹が空いてしまう。
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ティモシー・シャラメとアーミー・ハマーが共演し、ふたりの青年が織りなすひと夏の情熱的な恋を描いたラブストーリー。アンドレ・アシマンの同名小説を原作に、名匠ジェームズ・アイボリー(「日の名残り」「眺めのいい部屋」)が脚本を執筆し、ルカ・グァダニーノ監督(「胸騒ぎのシチリア」「サスペリア」)がメガホンをとった。第90回アカデミー賞で作品賞を含む4部門にノミネートされ、アイボリーが脚色賞を受賞した。
家族とともに北イタリアの避暑地にやってきた17歳のエリオ(シャラメ)は、大学教授の父が招いた24歳の大学院生オリヴァー(ハマー)と出会い、輝かしい夏を満喫する。自転車で街を散策したり、読書に耽ったり、楽器を演奏したり……憧れの休暇の様々なシーンがちりばめられているが、とりわけ印象的なのは、エリオ家族とオリヴァーが囲む戸外の食卓。眩しい日差しが降り注ぐなか、テーブルにはフルーツジュースや果物がズラリ。オリヴァーが、スプーンでたたいて半熟卵の殻を割るキュートな仕草にも注目だ。別荘の明るい庭であったり、涼しそうな木陰であったり、最高のロケーションで味わう朝食は、言いようもなく格別なことだろう。
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4本目は、森山未來演じるモテない草食系男子・藤本幸世がある日「モテキ」を迎えたことから巻き起こる騒動を描いたラブコメディ。10年のドラマ版では野波麻帆、満島ひかり、松本莉緒、菊地凛子が共演し、人気を博した。そして11年の映画版ではキャストを一新し、長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子が顔をそろえた。
注目すべきは、桝元るみ子(麻生)が朝方に入った牛丼屋で、豪快に牛丼をかきこむシーン。幸世が思いを寄せる松尾みゆき(長澤)の友人であり、幸世と関係を結ぶがこじらせてしまう役どころ。「Perfume」の「Baby cruising Love」(本人出演のミュージカルシーンもあり!)や星野源の「ばらばら」など珠玉の音楽が物語を彩っているが、このシーンで流れるのは岡村靖幸の「カルアミルク」。頬に米粒がついているのも構わず完食し、「すいませーん、おかわりください!」と店員に声を掛けると、男性客たちから拍手が沸き起こる。失恋から立ち直り、前を向いた表情が清々しい。新たなスタートを切るため、今日を生きるエネルギーを蓄えるための朝食だ。大根仁監督が手掛ける作品には、登場人物たちの感情が大きく動くシーンに食事が登場する。「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」でも、妻夫木聡がそばを食べる場面が強く印象的に残っている。
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最後は、ダニエル・デイ=ルイスと「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」「ザ・マスター」のポール・トーマス・アンダーソン監督とのタッグ作。デイ=ルイスは、本作をもって俳優業からの引退を表明した。1950年代のロンドンで活躍する、オートクチュールの仕立て屋レイノルズ・ウッドコック(デイ=ルイス)は、英ファッション界を支える存在。ウェイトレスのアルマ(ビッキー・クリープス)と出会ったレイノルズは、アルマをミューズとしてファッションの世界へと迎え入れる。しかし、アルマがレイノルズの整然とした完璧な日常を少しずつ変化させていく。
本作では、レイノルズとアルマが運命的な出会いを果たすシーンで朝食が登場。北イングランドのノース・ヨークシャーに実在する「ヴィクトリア・ホテル」で、レイノルズはウェイトレスとして働くアルマに目を留める。「ウェルシュ・レアビットのポーチドエッグのせ、ベーコン、スコーンとバター&ラズベリージャム、ソーセージ」と、たっぷり注文するレイノルズ。やがて食べ物を運んできたアルマをディナーに誘い、名前が書かれた伝票を受け取る。窓を背に見つめ合うふたりが絵画のように美しく、ロマンチックだ。ウェルシュ・レアビットとは、イギリスで親しまれているチーズ・オン・トースト。チーズ、バター、ビール(エールやギネスなど)、マスタード、ウスターソース、卵黄などを混ぜてソースを作り、パンに乗せてこんがり焼く。少し手間をかけて、普段のトーストをウェルシュ・レアビット風にアレンジしてはいかがだろうか。
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