ジャコメッティ 最後の肖像 : 特集
“現オスカー”俳優VS“今最もその座に近い”俳優による《至高の心理戦》
何日経っても肖像画が完成しない──この男、本当に天才芸術家なのか?
良質ブランド=《シャンテ・ムービー》本作が新年1作品目
「シャイン」のオスカー俳優ジェフリー・ラッシュと、「君の名前で僕を呼んで」でゴールデングローブ賞候補となったアーミー・ハマー。実力派2人の共演が実現した「ジャコメッティ 最後の肖像」が、2018年1月5日から全国公開。東京でのメインの上映館は、直近では「女神の見えざる手」「ノクターナル・アニマルズ」を上映し、「良作を上映する劇場」として熱い支持を受けるTOHOシネマズシャンテ。新年初映画に、“シャンテ印”の上質な芸術作品はいかが?
「シャイン」で受賞のJ・ラッシュVS“次のアカデミー賞俳優”A・ハマー
肖像画の完成をめぐる、静かだが複雑で情熱的な2人の《演技戦×心理戦》
「恋におちたシェイクスピア」「英国王のスピーチ」「鑑定士と顔のない依頼人」などで味わい深い名演を披露しつつ、海賊役も難なくこなす大御所ジェフリー・ラッシュが、今度は希代の芸術家アルベルト・ジャコメッティを演じる! 受けて立つのは、「ノクターナル・アニマルズ」「君の名前で僕を呼んで」で存在感を発揮し、オスカーも射程圏内といわれる美形俳優アーミー・ハマー。“動”のラッシュと“静”のハマー、新旧演技派の究極の手合わせが、今、始まる――。
ラッシュの演技力は誰もが知るところだが、その最大の武器は役への執念にある。本作では外見から役に近づけるため試行錯誤を繰り返し、話し方やシルエットから本人になりきった。身長や筋肉量にもこだわり、完璧を求めるラッシュの姿勢は、まさに孤高の彫刻家ジャコメッティそのものだ。
「ソーシャル・ネットワーク」でデビッド・フィンチャー、「J・エドガー」でクリント・イーストウッドの薫陶を受けたハマーが、ジャコメッティの肖像画のモデルを引き受けた作家役に挑戦。巨匠を迎え撃つ知性派キャラクターを堅実かつ抑えた演技で丹念に表現し、作品の手綱を握る。
1日で完成するはずだった肖像画は、ジャコメッティ(ラッシュ)の異常なほどのこだわりによって1日、また1日と延びていく……。絶対的な美を追い求めて暴走するジャコメッティに振り回され、疲弊していくロード(ハマー)は、どう太刀打ちするのか? 2人の攻防から、目が離せない。
金をばらまき、決まり切った日課に従い、妻の目の前で不倫相手を抱く!?
芸術家ジャコメッティは変人か? 天才か? 本作で“その正体”が分かる
“20世紀で最も重要な芸術家”と称され、17年夏に東京で開催された大回顧展は約14万人もの動員を記録。死後50余年を経てもなお、世界中の人々を魅了し続ける芸術家・ジャコメッティの“真実の姿”が映し出されているのも、本作の大きな魅力だ。度重なるエキセントリックな言動、周囲を戦慄させるほどの美へのこだわり、創作への渇望……一体何が、彼を偉人たらしめているのか? ジャコメッティの狂気と情熱を余すところなく描ききった本作を見れば、そのヒントがつかめるはずだ。
創作にしか興味がないジャコメッティは、報酬として分厚い札束を受け取っても渋い顔。アトリエの床に無造作に放り投げ、ロードを驚がくさせる。さらに、妻とケンカすると紙幣を投げつけ、周囲は札束だらけに。常人には理解しがたいジャコメッティの価値観、あなたはどう受け止める?
“英雄色を好む”を地で行くジャコメッティのアトリエには、奔放すぎる愛人が白昼堂々とやってくる。神出鬼没の愛人の登場により、肖像画の作業が中断され、ロードを困惑させることもしばしば……。さらには、ジャコメッティと妻、愛人の修羅場も勃発! 巻き込まれたロードの運命は?
ジャコメッティにとって、食事は楽しみというよりも燃料の補給に近い。決まった場所で決まった料理を食べ、腹を満たしたらすぐアトリエに戻り、作業を再開する。商売相手にお茶に誘われても、ロードが食事中でも、その信念を曲げることはない。究極の自分本位、これこそ“創作の鬼”!
「自分の過去作はすべて未完成」と暴露し、出来上がった彫刻を「クソ」とののしり床にたたきつけ、デッサンが気に入らなければ、ロードが絶句するほどの驚くべき手段までとる――。ジャコメッティはなぜ、ここまで創作に魂をささげられるのか? 狂気すら漂う執念に、圧倒されるはずだ。
「見たままを描く」というジャコメッティは、創作中にロードのあごが数センチ動いただけでも激怒! そのくせ、キャンバスに描かれていく肖像画は、ジャコメッティ独自の感性が爆発。どんな風に見えている? 思考回路はどうなっている? 天才の仕事ぶりが、見る者の想像をかき立てる。
文化人も熱視線を注ぐ、良作ファンの安心印=「シャンテ・ムービー」
「アート」「ヨーロッパ」ジャンルの良作好きへ推奨したい年始1本目
「光をくれた人」「ドリーム」「エル ELLE」「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」……映画ファンの心をとらえて離さない“シャンテ・ムービー”に、また1つ良作が加わった。ピーター・バラカンや片岡鶴太郎ら、ひと足先に本作を鑑賞した著名人からも、ジャコメッティの生きざまを写し取った本作に驚きと称賛の声が続々。1964年のフランス・パリの空気を感じ取られる町並みや、ジャコメッティのアトリエなど、アート&ヨーロッパ好きの映画ファンにはたまらない要素も満載だ。
「ミッドナイト・イン・パリ」「鑑定士と顔のない依頼人」「太陽と月に背いて」など、「アート」×「ヨーロッパ」は映画ファンの人気ジャンル。18年、その最先端として公開されるのが本作だ。撮影においてはジャコメッティ財団の全面協力を得て、膨大な資料を基に当時のアトリエを完全再現。さらに4人のアーティストが派遣され、アトリエ内の絵画や彫刻を本物そっくりに仕上げた。「リリーのすべて」「ルーム」を手がけた撮影監督ダニー・コーエンの職人芸も、本作のクオリティを底上げしている。