フロントライン : 特集
【アツい!刺さる!共鳴する! 感情が爆発──】緊急
レビュー:日本を代表する4人の豪華俳優が繰り広げる
魂の渾身作が、凄すぎて、壮絶すぎて、エモすぎた!
【絶対観たかった一作は、今年最大級の重要作だった】

命を救う壮絶な現場。未知の緊急事態。尋常でない緊迫感。6月13日公開の「フロントライン」は、観ればほとばしる“想い”を抑えきれないはずだ。
見どころのひとつはなんといっても、ポスターにも刻み込まれたこの“4人”の存在感。小栗旬、松坂桃李、窪塚洋介、池松壮亮――日本映画界を代表する面々が、全身全霊をかけて“命の現場”に立っている。

その演技のぶつかり合いは、凄まじいまでの熱を発し、ただのヒューマンドラマでは片付けられないオーラを帯びる。アツい。刺さる。共鳴する。そして記憶が揺さぶられる……。
筆者が「絶対に観る」と決めていた「フロントライン」は、2025年最大級の超重要作だった。だからこそ。鑑賞した感想を、全力で言葉にして届けたい。
●筆者紹介

【最初に結論】超豪華俳優陣、ポスター、予告編…
絶対に観たかった。そして、観ると“ただごとではない”。129分間、心を揺さぶり続ける“魂の一撃”。

ポスターを初めてみた瞬間から、「フロントライン」は私の“絶対観るリスト”の最上位に躍り出た。理由は明確。4人の覚悟の表情から「とてつもないものが観られる」と体が反応したからだ(言葉ではなく、心で共感してもらえると思う)。
だから可能な限り早く観に行った。劇場へ向かう電車に揺られながら、予告編や関連ニュースに改めて触れた。
題材は「2020年のダイヤモンド・プリンセス号内で、何が起きていたのか?」。コロナ禍に突入した最初期の重大事象。日本で初めて、新型コロナウイルス集団感染に直面し、命を救うため戦った者たちの物語――期待が上がって仕方なかった。

そして観た。アツくなった。勇気が湧き出た。ハラハラした。怒りが湧き上がった。考えさせられた。知らなかったことを知った。まさに魂の一撃。ただごとではない映画体験を味わうことができたのだ。
【“アツい”極限の人間ドラマ】
時間との闘い、高まり続ける緊迫感、立ちはだかる困難、脱出のスリル――決して目を逸らせない“命を救う現場の壮絶さ”に胸がアツくなる。

本作で重要な“核”は、命を救う現場の壮絶さと人間ドラマだと感じた。災害対応を専門とする“DMAT”(※ディーマット。Disaster Medical Assistance Teamの略)を含む医師や看護師たちが、ダイヤモンド・プリンセス号に乗り込み、非感染者、軽症者、重症者らの対応にあたっていく。
ご存知の通り、新型コロナウイルスは“これまでの経験に当てはまらない症状”が次々と現れる。感染力が強いゆえ、医師や看護師は「自分も感染するかもしれない危険な状況」にさらされる……。
しかし彼らは、目の前の命を救うことを選ぶ。すべてを力に変え、一歩でも多くと前に進むのだ。
※緊迫の“本編”冒頭5分間の映像↓
物語は手持ちカメラを駆使した臨場感あふれる映像で紡がれ、一度スクリーンに没入するやその熱中は早々には冷めない。
刻一刻と重症化する患者の治療は、まさに時間との戦い。患者を船から病院へ運ぶ“脱出”のスリルは、困難に次ぐ困難でハラハラが尋常ではなかった。

さらには「ウイルスが国内に広がらないこと」を優先する検疫や厚労省に対し、“今この瞬間の、目の前の命”を最優先するDMAT、それぞれの信念が衝突する――。
まさに極限の人間ドラマ。人の崇高な精神に、胸から熱いものが込み上げてくるのを感じ続けていた。
【“刺さる”名演の応酬】
全員、主役。超豪華俳優陣による今年の“演技のベストバウト候補”が連続し、高揚感みなぎる――

演技のぶつかり合いがとことんすさまじく、演技にだけでも鑑賞料金と時間を捧げる価値がありまくることも、強くお伝えしたい!
ざっと挙げるだけでもこんなにある。
・小栗旬(結城=DMAT指揮官) VS 松坂桃李(立松=厚労省官僚)

現場を指揮する結城と立松の衝突は、やがて唯一無二の信頼へ――小栗旬はもちろん、松坂桃李もすごすぎる
・小栗旬(結城) VS 窪塚洋介(仙道=DMATの医師で、結城の“戦友”)

“あの震災”で出会った結城と仙道が、命と責任、未知の状況に立ち向かうが…
・窪塚洋介(仙道) VS 森七菜(羽鳥=船のクルー)

感染拡大のリスクを可能な限り抑えるか、乗客の願いを叶えるか…“使命”の違いが、予想もしないドラマを生む
・桜井ユキ(上野=報道ディレクター) VS 光石研(轟=報道責任者)

報道は人を救うか、追い詰めるか? 視聴率を求める刺激的な番組づくりに、“報道現場の最前線”で疑問が湧き上がる――
・池松壮亮(真田=若きDMAT医師) VS 滝藤賢一(宮田=隔離病院の医師)

「あんた、何日あの船にいたの?」 “地獄をみてきた医師”と“地獄に直面する医師”が対話する――
全員が主役。誰ひとり“脇”になっていなかった。
どの対峙にも信念と葛藤があり、ひとつひとつが“ただの演技”ではなく、魂と魂が真正面からぶつかり合う……まさに演技のベストバウト集と呼ぶにふさわしい凄まじさに、感服しきりだった。
【“沁みる”強靭なメッセージ】
「人道的に正しい選択肢はどちらか」「やれることは全部やる」「ルールを破れないなら、変える」…炸裂する“なんとしても伝えたい思い”。ひたむきで、強くて、そして感動的だった――

物語とキャストの熱演を通じて、強靭かつ心に沁み入るさまざまなメッセージが浮かび上がってくる。
印象的なものをご紹介したい。防護服やDMATジャケットの内側に“覚悟”を詰めた医師・看護師たちや、乗客の恐怖に寄り添い希望を届けようとしたクルーたちの“メッセージ”だ。

(ネタバレになるため詳述を避けるが)誰も彼も、やはり極限状況を前に心が折れそうになることがある。
しかし彼らは逃げずに向き合い続け、“その瞬間”を越えていく。そんな時、決まって印象的なセリフが放たれるのだ。



それらの言葉は、決して叫びではない。希望をつかみ取ろうと、強く誓うように響き渡るのだ。素晴らしい――泣きたくなるほどひたむきなメッセージの数々が、胸に迫りに迫ってくる。
製作陣は、キャストは、これらの言葉を最も伝えたかったのではないか。筆者自身も迷ったときには「人道的に正しいこと」に立ち返ろうと思った。
本作はただハラハラドキドキで終わらない。人間の崇高な精神を浮かび上がらせ、「大切なものを持ち帰れる映画」。それが「フロントライン」だ。
【“鬼気迫る”リサーチによるすごみ】
「コード・ブルー」「THE DAYS」プロデューサーが300ページ超の取材ノートを基に映画化。生の記録ならではの“本物”に満ち、“知らなかった意外な事実”が大量にあった。

鑑賞していて、リアリティの異常さにはたと気づいた。実話がベースの映画とはいえ、この現実感は事件的だと思った。
それもそのはず、本作は綿密なリサーチをもとに構築されているからだ。企画・プロデューサーの増本淳氏(「コード・ブルー」シリーズ、Netflix「THE DAYS」など)が、実際に現場で働いていた医師・看護師・役人らへの徹底取材を行い、“現場の人々しか知らない肌感覚”を物語に反映している。

増本氏自身が脚本も手がけ、伝導率を損なうことなく細部に刻み込んだ結果、“すごみ”とも言えるオーラが作品全体に付与されたわけだ。その情報の密度は、まるで本当に現場に立ち会っている感覚を生み、もはやフィクションの域を超えている、と思う瞬間すらあった。
特に、仙道たちが初めて船に乗り込むシーンが記憶に残る。結城が「(船に乗り込む面々は)みんな嫌がってないか?」と聞くと、仙道は「嫌がってるっていうか、緊張してるね。防護服着るのも初めてって奴もいる」と答える。
怖がっている、気負っているでもなく、緊張している――まさに“生のセリフ”だと感じ、細かいポイントだが(いや、細かいからこそ)一気に本作へ感情移入したことをよく覚えている。

また、「ウイルスはもちろん、船内の極限状況の疲労なども命をおびやかす」「新型コロナウイルスは、大切な人と寄り添えない病でもある」など、気づきに満ちた“事実”が大量に描かれていた。だからこそ本作からは、普通のコンテンツとは一線を画す重みを得られる。
知ることで想像でき、想像できれば行動へ移せる。情報と感情が融合し、人を突き動かす、本当に唯一無二の作品である。
【“共鳴する”決断の連続】
人類が直面した未知のウイルス。なにが正解かわからない。それでも、決断しなければ…登場人物の試行錯誤と責任感が、働くすべての人を勇気づける。

実は「フロントライン」は、働くすべての人に観てほしい映画でもある。その理由は、登場人物の“決断の連続”に強く勇気づけられ、明日への活力を得られるからだ。
私たちが決断するときには、往々にして前例や一般常識などの判断材料があるもの。しかしこの映画の登場人物たちは、誰も体験したことのない状況に直面し、何が正解かまったくわからないまま、己の知識と経験を総動員し、決断する――。

全ての決断に責任があり、それを背負って生きる人々の姿が、老若男女、働くすべての人(そして特に管理職の人)の胸に焼きつくように刺さるのだ。アツい。あまりにもアツい。
最近では映画「ラストマイル」や、Netflix「新幹線大爆破」など、職務と決断にフォーカスした名作が熱狂を生んだが、「フロントライン」もまた本質を突き詰めた一本。
ここまで読んで心の温度がじんわり上がった人は、間違いなく観てほしい映画だ。
【感情爆発】全人類が観るべき、心がアツくなる渾身作
コロナ禍は世界的な“未曾有の緊急事態”…ゆえに“他人の話”ではない。記憶に直結する私たちの物語。2025年最大級の重要作。

レビューもいよいよ最後だが、改めて断言したい。「フロントライン」はまさに今、観るべき一作だ。
この物語は他人事ではない。コロナ禍は全人類が共通して直面した未曾有の緊急事態であり、ゆえに私たち一人ひとりが、本作の登場人物と“同じ経験”をしているからだ。

極限のリアリティで紡がれた本作は、すなわち“私たちの記憶”を揺さぶる物語であり、限りなくミクロであり、かつ限りなくマクロなドラマである。
2020年のあのとき、筆者は店舗がほぼすべて閉店したショッピングセンターの暗がりを歩くなか、この世の終わりのような気分になっていた。しかしながら、閉ざされた日常、先が見えない不安、ウイルスとの戦いを経て、今や私たちは“普通の日常”にいる。
それは、本作で描かれた苦闘の賜物に違いない。物語が終盤に近づくにつれ、心がぐんぐんアツくなるのをハッキリと感じた。この温度の正体はおそらく“感謝”なのだと思う。

そして。観終わったあと、筆者のなかで感情があふれた。怒り、涙、誇り、勇気。暗闇を切り開き、希望をつかみとれ――。
さまざまな感情が、あなたの胸のなかでも爆発するだろう。2025年の最重要作品のひとつ。見逃してはならない、全人類に向けた渾身作だった。
