【第42回日本アカデミー賞】「万引き家族」が8冠！　是枝裕和監督は新部門設立を提言

「誰も知らない」「海街diary」など、さまざまな“家族のかたち”を描き続けてきた是枝監督の長編第14作は、万引きで生計を立てながら東京の片隅に暮らす“家族”の切実な絆を描いたもの。第71回カンヌ国際映画祭最高賞のパルムドールを皮切りに、世界各国の映画賞を席巻し、第91回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。是枝監督は、自らプレゼンターを務めた最優秀監督賞発表の場で「前向きな提言をひとつだけさせて頂きたい」と発言し、新部門の設立を訴えかけた。

「（日本アカデミー賞には）衣装という部門がないんです。“映るもの”としては、とても大事な部門だと思っています。次回からというわけにはいかないかもしれませんが、ぜひ衣装デザイン部門を新しく作って頂きたい」と提案すると、場内は拍手喝さい。総合司会の西田敏行の「メイクアップもないよね」という意見にも同調し「（副賞の）時計を少し減らしていただいても大丈夫（笑）。出来れば、部門を増やしていただきたいですね」と語っていた。

そして演技部門は、男優賞＆女優賞の“最優秀賞”は「孤狼の血」「万引き家族」が分け合う形に。「孤狼の血」で最優秀主演男優賞を獲得した役所広司は「最優秀主演男優賞は、2年連続で頂いて以来、ずっと頂いていなかった。つくづく難しい賞」と喜びを噛み締め、その“バディ”として最優秀助演男優賞を獲得した松坂桃李は「スタッフさんを含め、皆さんと喜びあえるというのは最高の時間。この受賞を皆さんで分かち合いたいと思います」と声を震わせた。最優秀主演女優賞を獲得したのは「万引き家族」の安藤サクラ。家庭と映画製作の両立の悩みを明かしつつも、最後には「ずっとモヤモヤしていたんですが、必ず自分のなかで決着をつけて、映画の時間に携われる時間を作りたい。自分自身をきちんと整えて、映画の世界に戻ってきたい」と宣言していた。

会長特別賞＆最優秀助演女優賞を獲得した樹木希林さんへの“思い”も目立った。第37回の授賞式でともに司会を務めた西田は「司会をしていた時の様子は、未だにまぶたに焼き付いている。今回の受賞に関してインタビューをすれば『嬉しくもあり、嬉しくもなし』というご返事を頂けるんじゃないでしょうか。簡単に歩いているように見えるけど、それを追いかけようとすると足跡が何処にも見つからない。あなたを真似たいんですが、あなたの真似はできません。あなたは唯一無二！　本当に素晴らしい先輩でした」としみじみ。最優秀ブロンズを受けとった内田也哉子が「生前母がよく口にしていた『時が来たら誇りを持って脇にどけ』ということが、文字通り、本日をもってできると思います」と語りつつ謝意を述べると、西田は「天国の希林さんに、届け！　届け！　盛大な拍手を！」を声を振り絞っていた。

さらに初めて司会に挑んだ蒼井優は「皆さんの喜びだったり、覚悟だったり、希望というもの、そして日本映画界に対する焦りを少し感じつつ、明日への活力となるエネルギーをいただけました」と充実の面持ち。同じく西田敏行は「万引き家族」チームに対して、「日本映画界の一員として、パルムドールを獲られた時、本当に誇りに思いました。皆さん、素晴らしい作品を本当にありがとうございました！」と感謝を伝えていた。