万引き家族 インタビュー: リリー・フランキー&安藤サクラ、是枝裕和監督作「万引き家族」で見つめ直した“家族”のあり方

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万引き家族

劇場公開日 2018年6月8日
2018年6月7日更新
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リリー・フランキー&安藤サクラ、是枝裕和監督作「万引き家族」で見つめ直した“家族”のあり方

5月19日(日本時間20日早朝)に行われた第71回カンヌ国際映画祭の授賞式で、是枝裕和監督のコンペティション部門出品作「万引き家族」が、最高賞となるパルムドールを受賞した。この日を境に、テレビなどあらゆるメディアで是枝監督の姿を見ない日はないと言っても過言ではないほど。改めて感じるのは、いかなる状況にあっても是枝監督は是枝監督のままだということ。カンヌでの快挙からさかのぼること約1カ月、「万引き家族」で“夫婦”を演じたリリー・フランキー安藤サクラに是枝監督、是枝作品、是枝組についてじっくりと話を聞いた。(取材・文/大塚史貴、写真/サイトウムネヒロ)

これまで、さまざまな“家族のかたち”を描き続けてきた是枝監督の長編第14弾は、昨年12月15日、静かにクランクインした。「死亡通知を出さずに親の年金を不正にもらい続けていた家族が逮捕された事件」に触れた是枝監督は、事件の裏に「他人には理解しがたい、彼らなりに切実な“家族の繋がり”があったのではないか?」と考え、犯罪でしか繋がることが出来なかった家族の絆の物語を完成させた。当然ながら、犯罪を繰り返しながら生計を立てる“家族”が主人公。ある日、虐待を受けていた幼い娘を一員に加えたことから、やがてそれぞれの秘密が明らかになっていく。

本編では、リリーが日雇い労働者の父・治、安藤が妻の信代に扮し、樹木希林が演じる祖母・初枝の年金を定収入として当てにしながら、息子・祥太(城桧吏)、信代の妹・亜紀(松岡茉優)とともに、今にも壊れそうな平屋で質素に暮している。筆者が今年1月、仕事始めで訪れた撮影現場では、決して綺麗とは形容できない和室で“すき焼きもどき”を幸せそうに頬張り、一家団欒のひと時を過ごすひと幕を確認することができた。

カンヌでも演技力が話題になった城桧吏くん、佐々木みゆちゃんは、これまでの是枝作品に出演してきた子役同様、事前に台本を渡されることなく、シーンごとに是枝監督から演出を受けていた。リリーは、「子役ふたりは瑞々しいというか、台本をもらっていないから、ある意味でケダモノの状態でそこにいるわけですよ。女優さん3人にいたっては、化け物だし(笑)。みんなお芝居を越えて、生き物なんです。すごく動物に囲まれている感は俺の中であったんだけど、なんだか居やすかったですね」と笑いながら振り返る。

安藤は、自らを含めて家族として過ごした共演陣を“生き物”と表現する。「全員がそのまんま、生き物として現場にいる感じはしましたね。しかも、どこからも“圧”が伝わってくることがないという。だからすごく楽にカメラの前にいられたんです」。これにはリリーが補足し、「(冬場の撮影だったため)ストーブのあるところにどうせ俺たちが集まってくるっていうのを是枝さんは知っているから、そこであの子たちと安藤さんたちの居方を見ながら、どんどん立体的に次の日のセリフを組んでいくことがあった。最初から『これをやってくれ』という人では絶対にないから。撮っていきながら、役がそっちへいきそうになったら、そちらの方向で膨らませてみる感じですよ」と穏やかな表情で明かす。

もはや是枝作品にとって必要不可欠な存在となったリリーだが、今作でも新たな発見があった様子。「こんなに長く出させて頂いたのは初めてなので、今までとは全然印象が違いますね。是枝さんの撮影現場は、是枝さんのものの作り方を見に来ている感じがして、すごく心地よい塾に来ている印象が強い。是枝さんみたいに丁寧に諦めず、密度を高めていくやり方を目の当たりにすると、『本当にこれしかないんだよなあ』って気持ちになる。その精度の作り方が、とにかく穏やかなんですよ。勉強になるし、呼ばれていない映画の現場でも見学に行きますもん。あと、あんなにお菓子が充実している現場って、なかなかない。是枝さんが甘いものが好きだから、『これ持ってきゃあいいだろう』的なものは一切なく、練りに練ったものがくるから『うわあ、うめえ!』っていうのばっかでしたね」。

一方、是枝組初参戦となった安藤は、スタッフ全員が同じ方向に進んでいることを挙げる。「是枝さんとの呼吸の周期というか(笑)、そういうものも一致していくんですよね。スタッフで、ひとりだけ焦っている人、怒っている人っていうのがいない。変な意味ではなくて、是枝教なんですよ。是枝さんという存在あってのものだということをすごく感じます」。

安藤の話に耳を傾けていたリリーも、同調する。「是枝さんの空気、呼吸に合わせていくことで、それがこの現場でのもの作りでは正解だということが分かっていくんでしょうね。正解は是枝さんしか知らない。とはいえ、是枝さんは最初に大きな枠組みは作るけれど、あとは生き物次第で言葉を変えていくことも多い。是枝さんの呼吸に合わせていかないと、不正解が生まれると思う。例えば、ひとりの役者さんがものすごい演技プランを考えてきて、それを押し通そうとしたら……。でもそういうタイプの人ですら、最終的には是枝さんの映画の中の人になる魔法がある」。

是枝組全体が“家族”のような空気を醸し出すなかで、これまで様々な作品であらゆる形態の家族を演じ続けてきた2人にとって、「万引き家族」を経て感じる居心地の良い家族とは、どのようなものなのだろうか。

安藤「私の場合は、生まれ育った家族、嫁いだ先の家族、結婚して子どもが生まれてっていう自分の家族と3つある。それぞれに、自分の居方も居心地も違っているけれど、全部家族。今回の取材で『家族とは?』って問われたとき、それぞれの家族のあり方の違いに驚かされた。血が繋がっている家族は特別な愛情があるけれど、距離感の問題なのか煩わしい部分がある。でも、なぜか嫁いだ先の家族は、ものすごく自分らしくいられて居心地がいい。この気付きは、面白かったですよ」

リリー「家族っていうものを持ったことがないから、居心地がいいっていうのが分からない。物心ついた時から母親と2人だったし、15歳からはひとり暮らしをして、そのままずっと1人。家族の一般的なフォーマットで生活をしたことがないから、煩わしさを分からなければ、温かさも分からない。でも、ちょっとね、家族って面倒くさそうだけど、いいなって憧れ始めました。撮影中からね」

カンヌ国際映画祭を経て、世界的に有名な“家族”になってしまったが、リリーと安藤はもちろん、大ベテランの樹木、進境著しい松岡茉優と、現状地点に留まることに興味を示さない人たちばかりである。ましてや是枝監督は、「集大成という言葉があまり好きじゃない」と撮影現場で筆者に話していたが、現在も最前線を突っ走っている。次回作に関する情報もチラホラと出回っているが、「世界のコレエダ」となった是枝監督と同時代を生きる幸運を噛み締める機会が、今後増え続けていくことを願わずにはいられない。

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