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映画「ナショナル・シアター・ライブ「ハンサード」」 ナショナル・シアター・ライブ「ハンサード」
劇場公開日 2021年1月15日
解説
イギリスの国立劇場ロイヤル・ナショナル・シアターが厳選した名舞台を映像化してスクリーン上映するプロジェクト「ナショナル・シアター・ライブ」の1作。TVドラマ「ROME ローマ」などで知られる俳優サイモン・ウッズの劇作家デビュー作で、1980年代サッチャー政権下のイギリスを舞台に、政治家とその妻の結婚の危機を描いた「ハンサード」を収録。保守党の政治家ロビンは、妻ダイアナと30年来共有していたコッツウォルズの邸宅に戻る。しかしそこは理想的な家とは程遠い、荒んだ場所へと成り果てていた。妻は酔っ払い、庭はキツネに荒らされる中、潜めていた秘密の事柄があちこちから顔を出しはじめる。出演は「gifted ギフテッド」のリンゼイ・ダンカンと「ミス・シェパードをお手本に」のアレックス・ジェニングス。
2019年製作/103分/G/イギリス
原題:National Theatre Live: Hansard
配給:カルチャヴィル
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2021年2月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
ナショナル・シアター・ライブにて鑑賞。99分間2人きりで罵り合いっぱなし。前半は正直冗長に感じられたものの、しかしラスト5分で心撃ち抜かれる。脚本の緻密さ、俳優陣の人間臭さ。心の奥底で炭化してしまった想いがぺろりと剥がれて出てきてしまった瞬間の、なんと愛おしいことか。
2021年1月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない」みたいな話だろう、と思って観に行ったのだが、かなり違っていた。
舞台は、1988年。田園地帯の、とある家の一室。
シンプルで抽象的な舞台セットが多いNTライブにしては珍しく、実生活の様々なモノに満ちた部屋である。
奥の方にはキッチン。うかうかしていると、小道具に目が行って、台詞を聞き逃してしまいそうだ。
登場人物はたった2人。
夫は“保守党”の議員で、週に1回、ロンドンから帰ってくるらしい。
妻は二日酔いなのか、“起き抜け”の風情。普通の主婦であるが、政治的には夫とは真逆の“左派”である。
時は、サッチャー政権の新自由主義の時代。「国民がなんで保守党に投票するのか理解できない」と愚痴る妻。
夫は、魅力のない野党を尻目に、「流れに乗っているのだ」と応じる。日本とそう変わらない。
「LGBT」についても、夫婦間で意見は対立する。
それにしても、正味80分という短い時間に、一体どれくらいの言葉が発せられたのであろうか?
103分とあるが、それは解説映像を含めての時間だ。
“夫婦間の問題”と政治談義の間を、いつ果てるとも知らない“無限ループ”のように、何度も何度も行ったり来たりする。
台詞に付いていくのがやっとだし、明確なストーリーが存在しないので、“言葉の洪水”に観ている自分の頭も飽和してくる。
そして、話の中身が煮詰まった頃、突然、夫婦の“息子”の話が出てきてラストを迎える。
涙のラストをもたらす、“デウス・エクス・マキナ”。
タイトルの「ハンサード」とは国会議事録のことらしいが、演劇の中身とは特に関係はない。
夫が政治家であることに引っかけて、80分のあいだ、すごい密度で続く夫婦の“論戦”のことを、「私的なハンサード」と呼んだのかもしれない。
政治問題といい、「LGBT」といい、いろいろと出てきて、単なる夫婦間の“痴話げんか”の物語ではない。
当時のイギリス事情を知らない自分は、付いて行けずに、半ば“置いてきぼり”状態であったが、予想外に面白い作品だった。
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