【第45回日本アカデミー賞】「ドライブ・マイ・カー」が最多8冠! 受賞者たちの言葉に「3.11」への思い
2022年3月11日 23:07
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第45回日本アカデミー賞の授賞式が3月11日、東京・グランドプリンスホテル新高輪国際館パミールで行われ、濱口竜介監督作「ドライブ・マイ・カー」が最優秀作品賞を含む8冠に輝き、幕を下ろした。
村上春樹氏の小説を西島秀俊主演、濱口監督で実写映画化した「ドライブ・マイ・カー」。第94回アカデミー賞では日本映画史上初となる作品賞と脚色賞をはじめ、監督賞、国際長編映画賞と4部門ノミネートを果たし、世界中で高く評価されている。
西島「俳優に嘘をつかせないために、徹底的に現場を作ってくださった。嘘をつかないということの積み重ねが、こういう結果に繋がったのかなと思います」
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そんな西島の言葉を象徴するかのように、今回の日本アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞に加え、撮影賞、照明賞、録音賞、編集賞でも“最優秀”を獲得。技術スタッフの功績にも注目が集まった。
濱口監督は、最優秀監督賞のスピーチの場で11年目を迎えた東日本大震災(2011年3月11日)に触れ、東北記録映画3部作(「なみのおと」「なみのこえ」「うたうひと」)に言及。「その時、いろいろな形で被害にあわれた方たちが示してくださった力強い生きる姿、生命力を捉えたいと思いました。そのことが今、自分が監督をする基盤になっていると思います。その結果として、『ドライブ・マイ・カー』という映画ができました」と明かしつつ、今後の抱負も述べた。
濱口監督「自分たちの一日一日の仕事は、未来を作っていくということなんだと思います。間違えることもあると思いますが、そのたびに引き返し、少しずつ進んでいくしかない。少しでも良い社会にするとか、良い世界にすると言うと大げさですが、今この場所からしか始まらないと思っています。今後も皆さんと今の仲間、未来の仲間として一緒に映画をつくっていけたら嬉しいと思います」
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最優秀男優賞の授賞タイミングでは、2つの光景が印象的だった。ひとつは「すばらしき世界」で優秀男優賞を獲得した役所広司の姿。軽快なトークで場を沸かせていたが、胸元をよく見てみると“青と黄色”。式典の最中に言及されることはなかったが、ウクライナカラーのポケットチーフが確認できた。そして、最優秀賞に輝いた西島秀俊(「ドライブ・マイ・カー」)の受賞コメントは心に響くものだった。
混迷を極め、さまざまな“繋がり”が切れている世界。そして、濱口監督と同様、東日本大震災に触れつつ「人との繋がり、魂の再生の物語が、今日こうやって賞をいただけたのは何か大きな意味があるのではないかと思っています」と話す。「これからも人生、それから人に寄り添う希望を持つような素晴らしい作品に参加したいと思っています。日本映画のために、これからも身を捧げたいと思っています」と意気込んでいた。
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初の最優秀主演女優賞となった有村架純(「花束みたいな恋をした」)は、これまでの“出会い”に感謝を述べた。作品にどのような影響を与えられるのか――。常々不安を感じる有村の背中を押していたのは「これまで出会った方々がくれた言葉たち」だった。「いつも思い浮かぶのは、これまで一緒に仕事をしてきてくれた方たちの顔。その方たちがいてくれたから好きな芝居を続けることができたのかなと思っております」と話しつつ、最後には「世界中が一刻も早く穏やかに過ごせますよう祈っております」と言葉を紡いでた。
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最優秀助演男優賞には「孤狼の血 LEVEL2」の鈴木亮平、最優秀助演女優賞は「護られなかった者たちへ」の清原果耶。鈴木は、映画の世界にのめり込んだ子ども時代、芝居を始めた18歳の頃を振り返り「たくさんの人に迷惑をかけながら、たくさんの方に助けていただいて、今日一つの評価をいただきました。その方たち一人ひとりの顔を思い出しながら、ブロンズを眺めて夜を過ごしたい」と感慨深げ。一方、清原は、受賞に驚きを隠しきれず。「たくさんのみなさんの支えがあっていただいた賞。俳優として、映画を愛する人間としてこれからも精進していきたい」と決意を新たにしていた。
また、大林宣彦監督の妻で映画プロデューサー・大林恭子氏が協会特別賞に。そのスピーチに、参列者たちはしっかりと耳を傾けていた。
大林氏「私が出会ったたくさんのスタッフ、キャスト、制作に加わっていただいた皆様に、この場を借りて、お礼を申し上げたいと思います。私は昭和13年生まれですが、昨日は東京大空襲から77年目でした。私は東京大空襲の、雨のように降る焼夷弾、火の中を逃げ回りました。ちょうど7歳の女の子でした。そして、今日は3月11日。東日本大震災が起こった日。私たちは忘れることなく、伝えていかなければならないと思っています。もし映画に……映画の力で、未来の平和を作ることができるのなら……。映画の力を信じたいと思います。若い映画作家の皆様に繋いでいってほしいなと思います」
第45回日本アカデミー賞受賞者一覧は、以下の通り。
最優秀監督賞:濱口竜介「ドライブ・マイ・カー」
最優秀脚本賞:濱口竜介、大江崇允「ドライブ・マイ・カー」
最優秀主演男優賞:西島秀俊「ドライブ・マイ・カー」
最優秀主演女優賞:有村架純「花束みたいな恋をした」
最優秀助演男優賞:鈴木亮平「孤狼の血 LEVEL2」
最優秀助演女優賞:清原果耶「護られなかった者たちへ」
最優秀撮影賞:四宮秀俊「ドライブ・マイ・カー」
最優秀照明賞:高井大樹「ドライブ・マイ・カー」
最優秀音楽賞:岩崎太整、ルドウィグ・フォシェル、坂東祐大「竜とそばかすの姫」
最優秀美術賞:原田哲男「燃えよ剣」
最優秀録音賞:伊豆田廉明、野村みき「ドライブ・マイ・カー」
最優秀編集賞:山崎梓「ドライブ・マイ・カー」
最優秀アニメーション作品賞:「シン・エヴァンゲリオン劇場版」
最優秀外国作品賞:「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」
新人俳優賞:今田美桜、西野七瀬、三浦透子、吉川愛、磯村勇斗、尾上右近、宮沢氷魚、Fukase
協会特別賞:大林恭子、笹竹利行、月岡貞夫
会長功労賞:草笛光子、戸田奈津子、野上照代、野沢雅子、森英恵、山崎努
会長特別賞:大塚康生、原正人、田中邦衛、千葉真一、澤井信一郎、高岩淡、ワダエミ
協会栄誉賞:京都アニメーション、東映アニメーション
フォトギャラリー
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