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【完全リスト】西島秀俊、NYタイムズが選ぶ2021年最高の俳優に選出「控えめでメランコリックな存在感」

2021年12月10日 10:00

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2021年最高の俳優の1人に選出
2021年最高の俳優の1人に選出
写真/間庭裕基

世界の映画賞で快進撃を続けている濱口竜介監督作「ドライブ・マイ・カー」に主演した西島秀俊が、デンゼル・ワシントンホアキン・フェニックスらと並び米ニューヨーク・タイムズ紙が選ぶ2021年最高の俳優に選出された。

その年の最高の俳優を選出する「Great Performers/The Best Actors」は、同紙が毎年行う恒例企画で、今年選出されたのは14人。アジアからは唯一、西島が選ばれた。日本人ではこれまで、04年に栗山千明(「キル・ビル」)、06年に渡辺謙(「硫黄島からの手紙」)と菊地凛子(「バベル」)が選出されているが、日本映画への出演で選出されたのは西島が初となる。

ドライブ・マイ・カー」は、村上春樹の同名短編を映画化したもの。妻を亡くした舞台俳優であり演出家の家福(西島)が、チェーホフの戯曲「ワーニャ叔父さん」を演出することになり、愛車のサーブで東京から演劇祭のある広島へ向かう。そこで出会った寡黙な専属ドライバーのみさき(三浦透子)と過ごすなかで、家福はそれまで目を背けていたことに気づかされていくという物語だ。

カンヌ国際映画祭で脚本賞など4冠を獲得し、先日発表された第31回ゴッサム賞では最優秀国際映画賞、第87回ニューヨーク映画批評家協会賞では作品賞を受賞。第94回米アカデミー賞国際長編映画賞部門の日本代表作品に決定している。

米ニューヨーク・タイムズ紙が選ぶ2021年最高の俳優14人と選出理由は下記の通り(順不同)。

スチュワートは、ダイアナ妃の人生を変えたクリスマス休暇に焦点を当てた「スペンサー」で、チャールズ皇太子との離婚を決意するダイアナ妃役を演じた。

同紙は、スチュワートとダイアナ妃は、現代文化において「多くの有名人と同様に、二次元的であると同時に、自分のイメージに溺れて果てしなくミステリアスな存在である」といい、「名声とその不幸を、身をもって知るスチュワートのような人物だけが、ダイアナ妃の謎に迫ることができるのかもしれない」「(スチュワートは)その恐るべき才能を完全かつ大胆に発揮している」と評している。

スミスは、世界最強のテニスプレイヤーと称されるビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を育てあげたテニス未経験の父親リチャードの実話を基に描いた「ドリームプラン」での演技が評価された。

同紙は、「彼はリチャード・ウィリアムズになりきっているわけではない。彼は、ウィル・スミスとしてのエッセンス、つまり彼の魅力、意欲、知性、狡猾さを用いて、リチャード・ウィリアムズになることがどのような感じなのかを私たちに伝えている」と述べている。

ネッガは、1920年を舞台に、高校時代の友人2人の予期せぬ再会がもたらす危機を描いた「PASSING 白い黒人」で、主人公のひとりで白人のふりをして生きるクレア・ケンドリー役を演じた。

PASSING 白い黒人」は、ネラ・ラーセンの1929年の小説「白い黒人」を、俳優のレベッカ・ホールの長編初メガホンで映画化。モノクロで製作された本作では、ネッガ演じるクレアが黒人なのか白人なのかが謎に包まれたまま物語が進行する。その答えは複雑で、クレアは白人と黒人の境界線を行き来する。

同紙は、「ネッガは、この終わりなき自己革新を危険な種類の自由として演じており、華やかで一見恐れを知らないクレアが、このゲームが実際にはどれほど危険なものかを知っていることをほのめかしている」と、難役をこなしたと解説している。

ギャビー・ホフマン「C'mon C'mon(原題)」

ホフマンは、ホアキン・フェニックス主演のヒューマンドラマ「C'mon C'mon(原題)」での演技が、評価された。

ラジオジャーナリストのジョニー(フェニックス)は、姉ヴィヴ(ホフマン)から息子の世話を頼まれ、元気いっぱいの甥っ子にロサンゼルスでの生活を教えようと、一緒に国中を旅することを決める。

同紙は、「映画のなかでもっとも稀なことのひとつは、知識人を信頼できる形で描くことだ」といい、教師であり、作家であり、学者でもあるヴィヴ役のホフマンの演技は、「彼女の授業を受けたり、彼女の論文を読んだりしたくなるような説得力を持っている」と評した。

西島は、「ドライブ・マイ・カー」で、妻を亡くし、背を向けてきた現実に向き合うことになる舞台俳優で演出家の家福悠介役を演じて評価を得た。

同紙は、西島の演技について「村上春樹の原作を濱口竜介が映画化したこの作品は、悠介と彼の置かれた状況についての私たちの思い込みを静かに解き、スピリチュアルな理解のようなものに到達する。西島秀俊はその力の鍵を握っており、彼の控えめでメランコリックな存在感は、鋭いウィットと痛烈で批判的な知性を隠し持っている」と説明している。

デンゼル・ワシントン「マクベス」

ワシントンは、ジョエル・コーエンが監督、脚本を務めた「マクベス」でタイトルロールを演じた。スコットランドの武将マクベスが、魔女たちの予言に野心を掻き立てられて主君を暗殺し王位に就くが、重圧に耐えきれず錯乱して次々と罪を重ねていくさまを描き出す。

同紙は、ワシントンとシェイクスピアという組み合わせを、「明らかに偉大なレシピ」と断言。「ワシントンの『マクベス』へのアプローチには明白なものはない。忠実な軍人であり夫でもあるマクベスは、最初は倦怠感という感情を持っているように見えるが、そこから殺人狂に至るまでの過程は、悲劇的な感情の力作」と絶賛している。

ホアキン・フェニックス「C'mon C'mon(原題)」

フェニックスは、突然甥っ子の世話をすることになったラジオジャーナリストのジョニー役を演じたヒューマンドラマ「C'mon C'mon(原題)」での演技に注目が集まった。

同紙は、「『ジョーカー』で米アカデミー主演男優賞を受賞したフェニックスは、過激な変身劇で知られているが、彼の真の才能は常に繊細さにある」「本作で彼はまたしても肉体的に変化している。彼のつぶやきのような言葉遣いと肩の落ち具合から、彼がジョニーであると信じることができる。本作での彼は、彼が演じている悲しくて優しい男以外の人間には到底見えない」とそのカメレオン俳優ぶりを評価した。

トンプソンは、「PASSING 白い黒人」で、1920年を舞台に白人のふりをして生きるかつての友人クレアと再会するアイリーン・レッドフィールド役を演じた。

PASSING 白い黒人」は、ネラ・ラーセンの1929年の小説「白い黒人」を、俳優のレベッカ・ホールの初メガホンで映画化。同紙は本作でのアイリーンの役割を、「クレアがこの映画のパズルだとしたら、アイリーンはそのパズルを解き明かそうとする人物。クレアが大胆で衝動的なのに対し、アイリーンは礼儀正しく慎重であり、友人の前では謎の倦怠感に悩まされる」と解説。

トンプソンの演技を、「おとなしいアイリーンの動揺を声、目、息に染み込ませ、それらの感情が一体となって表現されない感情の嵐となる様子を描いた」と評した。

ボー・バーナム「ボー・バーナムの明けても暮れても巣ごもり」

「ボー・バーナムの明けても暮れても巣ごもり」は、YouTuber出身という異色の経歴を持つ人気コメディアンで、「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」で長編映画監督デビューを果たしたバーナムが、コロナ禍で巣ごもり生活を送りながら自ら出演、撮影をしたNetflixのスペシャル番組。

本作は、隔離されたバーナムの自宅で撮影され、バーナムは自分自身を演じている。30歳を目前にして、次に何をすべきかを探っている、頭脳明晰でクリエイティブな男だ。バーナムは、劇中で面白可笑しい歌を歌い、体と魂をさらけ出し、いまの状況の悲惨さを考察している。

同紙は、「バーナムは自分自身を演じるだけでなく、インターネット全体、つまり私たちひとりひとりの頭のなかに存在する声、気分、ジョーク、面白みのない性格の不協和音を演じている。すべてが、少しばかりリアルすぎるのだ」と、現実世界の真に迫る構成を評価した。

■ジョゼフィーヌ&ガブリエル・サンズ「Petite maman(原題)」

双子のジョゼフィーヌ&ガブリエル・サンズは、森で出会ったふたりの少女の魅惑的な友情を描いた心理ドラマ「Petite maman(原題)」に出演した。

祖母を亡くしたばかりのネリー(ジョゼフィーヌ)は、母親の子ども時代の家を片付けるのを手伝いつつ、家のなかや周囲の森を探検する。そんなある日、ネリーはツリーハウスを作っている同い年の女の子マリオン(ガブリエル)に出会う。

同紙は、「本作の設定はあまりにも奇妙で繊細なため、説明するとネタバレになってしまう」と前置きし、「この双子の姉妹はお互いに完璧に自然体で、遊び心のあるあたたかい姉妹の絆を、心を揺さぶるものに変えている」と選出理由を明かしている。

カンバーバッチは、トーマス・サベージの小説が原作の心理スリラー「パワー・オブ・ザ・ドッグ」で、不穏な行動をとる主人公フィル・バーバンク役を演じた。

本作の舞台は、1920年代の米モンタナ。牧場を共同経営するフィルとジョージは、性格が正反対の兄弟。弟ジョージがシングルマザーのローズと結婚したのが気にくわないフィルは、ローズに対していじめとも言える行動を取り続ける。そのつらさに耐えられず、ローズは酒に溺れるように。あるときからフィルがなぜかローズの息子ピーターの面倒を進んで見るようになると、彼の真意はどこにあるのかと、ローズの不安はますます強まる。

同紙は、「カンバーバッチは、聡明で頭脳明晰な男性を演じることを得意としてきた」「フィルも、ある意味ではこの仲間に属している。イェール大学を卒業し、博識で音楽の才能もあり、頭の回転が速く、残酷な皮肉を言う才能もある。しかし、彼が世間に示している人物像は、西部のかろうじて文化的な男であり、荒々しく、意地悪で、ストイックな男らしさの代名詞のような人物だ。果たして彼は何者なのか? 怪物か、それとも殉教者なのか? 本作はその答えを導き出すのに時間をかけ、カンバーバッチはフィルがいなくなった後でさえもその謎を残している」と、謎めいた複雑な男を体現した演技力を評価した。

パスカリウは、セックステープ流出騒動を描いた風刺コメディ「アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ」で、個人的なセックステープがインターネット上に流出し、キャリアが脅かされる女性教師のエミリア役を演じた。本作は、第71回ベルリン国際映画祭で金熊賞を獲得している。

本作は、コロナ禍での撮影環境を反映して、俳優はマスク姿で登場する。その理由についてメガホンをとったラドゥ・ジュード監督は、「セックスの滑稽な面を示しつつ、リアリティを追求した。マスクも俳優たちの安全性を守ると同時に、現在をそのまま反映させようと思ったため」と説明している。

同紙は、「この映画は、ルーマニアの舞台俳優であるカティア・パスカリウが顔の半分が見えない状態で観客の注目を集められるか否かにかかっている。インターネット上のセックススキャンダルに巻き込まれた教師を演じるパスカリウは、嫌なこと、不安なこと、議論の多いこの時代のヒーロー的な女性になっている」と評した。

■オナー・スウィントン・バーン「The Souvenir: Part II(原題)」

スウィントン・バーンは、ジョアンナ・ホッグ監督が若き芸術家の初恋と自己発見を描いた自伝的作品「スーヴェニア 私たちが愛した時間」(2019)の続編「The Souvenir: Part II(原題)」に前作と同じくジュリー役で主演した。

スーヴェニア 私たちが愛した時間」は、1980年代初頭、映画学校に通う温室育ちの学生ジュリーが、外務省に勤めるという教養豊かだが怪しげな年上の男性アンソニーと出会い親密な関係になるなかで、自分が撮りたい世界を見出していくさまを描いた。

同紙は、スウィントン・バーンが実母でジュリーの上品な母親役を演じたティルダ・スウィントンと共演していることに触れ、「『スーヴェニア』は2部構成の物語で、スウィントン・バーンは自分の力に対する自信を、劇中のジュリーの成長とともに高めていくようだ。ということは、もちろん、彼女の自信は最初からそこにあったということだ」と俳優としての資質を評価している。

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