スペンサー ダイアナの決意

劇場公開日:

スペンサー ダイアナの決意

解説

クリステン・スチュワートがダイアナ元皇太子妃を演じ、第94回アカデミー賞で主演女優賞に初ノミネートを果たした伝記ドラマ。ダイアナがその後の人生を変える決断をしたといわれる、1991年のクリスマス休暇を描いた。

1991年のクリスマス。ダイアナ妃とチャールズ皇太子の夫婦関係は冷え切り、世間では不倫や離婚の噂が飛び交っていた。しかしエリザベス女王の私邸サンドリンガム・ハウスに集まった王族たちは、ダイアナ以外の誰もが平穏を装い、何事もなかったかのように過ごしている。息子たちと過ごす時間を除いて、ダイアナが自分らしくいられる時間はどこにもなく、ディナー時も礼拝時も常に誰かに見られ、彼女の精神は限界に達していた。追い詰められたダイアナは故郷サンドリンガムで、その後の人生を変える重大な決断をする。

監督は「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」のパブロ・ラライン。

2021年製作/117分/G/ドイツ・イギリス合作
原題:Spencer
配給:STAR CHANNEL MOVIES
劇場公開日:2022年10月14日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第79回 ゴールデングローブ賞(2022年)

ノミネート

最優秀主演女優賞(ドラマ) クリステン・スチュワート
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Photo credit:Pablo Larrain

映画レビュー

3.5クローズアップで体感するダイアナの生々しい苦悩

2022年10月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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共感した! 16件)
ニコ

4.0ジャッキーとダイアナ。重圧に抗う女性の系譜

2022年10月19日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

英王室のチャールズ皇太子(現国王)と結婚し世界中から注目と憧れの的になるが、その後1996年に離婚、翌年に事故死した悲劇のヒロインとして今なお多くの人の記憶に残るダイアナ。その人生の重要な数日間を映画化する企画と聞けば、英国人の監督も女優も食指が動かないわけがなかっただろうと単純に思うが、意外にも監督にはチリ出身のパブロ・ラライン、ダイアナ役には米国人のクリステン・スチュワートが起用された。王室と王族のような絶大な存在を、少し離れたスタンスで客観的に描いたり、大胆な創作を加えて語ったりするのは、むしろ外国人のほうがやりやすいのかもしれない。

ダイアナの人生を端的に表現できる期間として製作陣が選んだのは、チャールズとの結婚から10年後、1991年のクリスマス休暇の3日間。映画の冒頭、ダイアナは道に迷った人として登場する。ロイヤルファミリーが集うエリザベス女王の私邸を目指し、ひとり車を運転していて迷ったという状況なのだが、もちろんこれは彼女自身の人生における迷いと焦燥を象徴していて、その後の会食などの場面でチャールズとの関係が冷え切っていることや、王室の堅苦しいしきたり、警護役やパパラッチから四六時中見張られている状況に、悩み苦しみ追い詰められていく姿が明らかになる。

振り返れば、ラライン監督の「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」も、1963年のケネディ大統領の暗殺から葬儀までのジャクリーン・ケネディ夫人の日々にフォーカスした映画だった。生涯をダイジェストのようにたどる伝記映画ではなく、その人の生きざまを凝縮したような数日間をシンボリックに描くのが得意なのだろう。ジャッキーとダイアナは、政治権力や王室の伝統といった圧倒的な存在によるプレッシャーに苦しみながらも、女性として、また母親として、自らのアイデンティティを貫こうと抗ったという点で共通している。クリステン・スチュワートの熱演も相まって、世の圧力に生きづらさを感じている多くの観客に勇気を与えるはずだ。

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高森 郁哉

4.0名優たちが演じる”名もなき人々”が味わい深い

2022年10月18日
PCから投稿

この映画に大きな展開を期待してはいけない。ストーリー性でグイグイ引き込むというよりはむしろ観客が能動的に足を踏み入れていくタイプの作品と言おうか。それゆえ、ダイアナに興味を持ち、彼女が王族を離脱する決意を固めるまでの心理過程をじっくり見つめたい人にとっては、望みどおりの親密なる映像体験となるはずだ。本作のダイアナは聖人でもなければ悲劇のヒロインでもない。時に少女のような自由奔放さと成人女性としての毅然とした表情を併せ持ち、孤独と不安に押し潰されそうになりながら、暗闇の先の光に手を伸ばそうとする。この等身大の人間像をかつてない存在感で体現するクリステン・スチュワートが見事だ。また本作が興味深いのは、王族たちではなく、彼らのためにお仕えする”プロフェッショナルな人々”を物語の前景に立たせているところ。このアウトサイダー側の目線と言葉がダイアナの存在感と絡まり、深い香りと味わいをもたらしている。

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牛津厚信

3.5 1人の人間らしく生きた女性の物語と捉えたい

2022年10月17日
PCから投稿

悲しい

今は亡きエリザベス女王やダイアナ妃の実像に迫るとしたら、ドキュメンタリー映画という手段が相応しいかもしれない。英国王室にまつわる記録映像は山ほど残っているし、作者はアーカイブ映像を元手に個々の編集と視点を駆使して実在の人物を画面上に再構築できるからだ。

その点、作り物と見られがちなフィクションはやや分が悪いのだが、本作は、ダイアナとチャールズ元皇太子の関係が冷え切っていた1991年のクリスマスイブ前後の3日間にフォーカスすることで、散漫になりがちな人物像を深く切り取っている。そこで、クリステン・スチュワートの登場である。ダイアナのインタビューやNetflixの人気ドラマ『ザ・クラウン』をチェックすることは勿論、イギリス英語のイントネーションからダイアナ独特の話し方、首の傾け方、歩き方を習得してから撮影に臨んだというクリステン。だが、絶望感と不信感でいっぱいの元妃の目に映る、ロイヤルファミリーの冷徹さ、排他性が、演じる俳優の演技を介して観客にまで伝わって来るのは、真似事ではない、生まれながらの資質だと思う。

終始重苦しい映画には、意外に救われるラストシーンが用意されている。でも、その先には非業の死が・・・・・。とは考えず、人間らしく生きた女性のある物語として捉えると、これもありか、と納得できるのではないだろうか。

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清藤秀人