劇場公開日 2022年10月14日 PROMOTION

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スペンサー ダイアナの決意 : 特集

2022年10月3日更新

【本当に今観るべき】結末のカタルシスが半端じゃない
映画の面白さを120%堪能する[最高級の物語と演技、
メタファーに次ぐメタファー]知的興奮の海に溺れよう

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映画を観る醍醐味のひとつに、メタファー(隠喩)を読み解く快感がある。

10月14日から公開される映画「スペンサー ダイアナの決意」は、良質なヒューマンドラマではあるが、脳をフル回転させて没頭するような“知的興奮”にあふれている。

メタファーに次ぐメタファーを解き続け、やがてたどり着くのは、静かだが破壊的なカタルシスをともなうクライマックス。“本当に今、観るべき”ストーリーと最高級の演技に溺れる117分間を、心ゆくまでご堪能あれ。


【予告編】世界は、誰も知らないダイアナを知る

【あらすじとキャスト&スタッフ】

クリステン・スチュワートがダイアナ元妃を演じ、第94回アカデミー賞で主演女優賞に初ノミネートを果たした伝記ドラマ。ダイアナがその後の人生を変える決断をしたといわれる、1991年のクリスマス休暇を描いた。監督は「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」のパブロ・ラライン。


【まずは観た感想】知的好奇心を刺激する秀作
メタファーを解く快感、極上の演技…これぞ映画体験!

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映画.com編集部が実際に鑑賞したうえで、本作の見どころを大きくわけて2つご紹介。物語展開の素晴らしさと、クリステン・スチュワートの名演についてだ。


●脳がフル回転―― メタファーを読み解き続ける→抜群の結末に圧倒

予告編を観れば、本作はダイアナの苦悩と葛藤、そして生き抜くと決めた姿を描く“美しく切ない感動作”に思えるだろう。もちろん、それは本作最大の特徴である。しかし筆者に強く刺さったのは、ヒューマンドラマではなく、脳がフル回転するような知的興奮だった。

どういうことかというと、本作は全編通じて多くの暗喩(メタファー)が描かれる。例えばダイアナの実家が登場するが、そこは彼女自身の内面世界を象徴する。こうしたメタファーが、数え切れないほど盛り込まれているのだ。

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ゆえに筆者はそれらを見つけだし、意味に考えを巡らせ、テーマを読み解き続けた。映画を観るというより、ほとんどスポーツやテンポのよい射撃ゲームに近い感覚で、脳が心地よい快感と達成感に満たされていった。これは鑑賞前には予想していなかった、いい意味で期待を超えるサプライズ。メタファーを咀嚼し続けながらなんだか非常に嬉しくなった。

そして作品が提示する道しるべをたどっていくと、結末にすべての感情が弾ける快感が待ち受けている。ダイアナは果たして何を選び、何を得るのか? ネタバレになるため多くは語らないが、ひとつ言えるとしたら「観客は強いカタルシスを感じる」ということ。「スペンサー ダイアナの決意」は、映画を超えて胸に迫る体験となるかもしれない。

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●クリステン・スチュワートの演技がすさまじい…“眼差し”がすべてを語る

「トワイライト」シリーズで当時の若年層を中心に人気を博したクリステン・スチュワート。「アクトレス 女たちの舞台」(2014)で仏セザール賞の助演女優賞を受賞するなど、演技派としても知られている。

本作「スペンサー ダイアナの決意」で第94回アカデミー賞の主演女優賞に初ノミネートされたが、熱演ぶりを観れば納得だ。特に“眼差し”が強く、強く印象に残る。

ダイアナ元妃(右)を演じるクリステン・スチュワート
ダイアナ元妃(右)を演じるクリステン・スチュワート

スチュワートは、その瞳でほとんどすべての感情を表現。ダイアナの心のコップは満杯であり、なんとか表面張力でこぼれずに保っている……1枚でもコインが入ればたちまちあふれるようなギリギリ感も、驚嘆すべき精度で演じきっている。

そしてその眼差しは表面的な意味だけではなく、物語の根底に流れる「人生の何にフォーカスし生きるか。それを決めることが重要だ」というメッセージをも体現している。エンドロールに突入する直前はため息もの。ぜひ注目してみてほしい。


【解説・考察】描かれるモチーフは何を意味する?
読めば「スペンサー」がもっと面白くなる3の注目点

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では、モチーフの数々にはどんな意味があるのか? 本編のなかから一部を抜粋し、独自の解説・考察をご紹介していこう。

※ここでの記述はあくまでも編集部独自の解釈であり、公式の回答ではありません。ご了承ください。


①:真珠のネックレスは[夫の不貞]

ダイアナは夫・チャールズから真珠のネックレスを贈られる。これはチャールズが不倫相手に贈ったものと同じ真珠であり、つまり“夫の不貞”の象徴とも言える。それを身につけるという状況が、ダイアナの苦悩を一層際立たせる。しかしネックレスの意味は局面ごとに複雑に変化するので、目を離してはならない。


②:アン・ブーリンは[ダイアナの精神状況]

序盤でダイアナは「アン・ブーリン 受難者の生涯」という本を手に取る。16世紀に実在し、ダイアナとは遠縁関係にあるアン・ブーリンは、夫のヘンリー8世によって処刑された。ヘンリー8世は心を傾けた別の女性を王妃にするため、ブーリンを殺したのだという。

「スペンサー ダイアナの決意」の劇中では、ブーリンは幽霊のようなイメージとして現れ、ダイアナの精神状況を代弁していく。ときに希死念慮をにおわせるだけに、ブーリンの存在が静かだが衝撃的なシーンを形作っていく。

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③:ダイアナの実家は[彼女自身の内面世界]

ダイアナの実家(生家)は廃墟となっており、敷地にはロープが張り巡らされている。ダイアナの内面世界=心のなかのメタファーであり、彼女がそこへ足を踏み入れれば、自身の心と対峙することになる。物語の重要な転換点となるモチーフでもある。

以上、3つのメタファーを抜粋した。これだけではなく、ほかにも「厳重に運び込まれる食材」「寒くても暖房を入れない伝統」「狩りで放たれるキジ」など劇中に数多く潜んでいる。映画館の集中力を研ぎ澄ませられる環境で、1つ1つ発見してもらいたい。


【本当に今、観るべき映画】と断言する理由は?
エリザベス女王の存在、混迷の時代を生きる強きテーマ

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本作は「本当に今、観るべき映画」と言える2つの時事性を備えている。1つはエリザベス女王(エリザベス2世)の存在、もう1つは混迷の時代。ネタバレなしで記述していこう。


●理由①:エリザベス女王とダイアナの関係を、新たな角度から描く

1991年のクリスマス休暇が題材となるだけに、もちろんエリザベス女王も登場。ダイアナがエリザベス女王に「テレビの衣装、素敵でした」と話しかけ、会話を交わすシーンがある。

2022年9月8日に死去した英女王・エリザベス2世。期せずして本作は、世界中に報じられた時事性とリンクしたのだ。

エリザベス2世とダイアナ元妃は不仲説が囁かれていたが、本作で描かれる会話は、彼女らの関係性にまた別の角度から光を当てたように思える。ごく短いものだが、ぜひとも噛み締めてもらいたいワンシーンである。

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●理由②:混迷の時代、不自由を感じ生きる私たちに勇気を与える

ダイアナが経験したこの3日間は過酷そのものだったはずだ。常に監視され、窮屈なしきたりを強いられ、厄介者と思われていることをひしひしと感じながら過ごす。しかもそこはただの親戚の集まりではなく、世界で最も伝統のある英国王室のクリスマスなのだ。

劇中でダイアナが経験するそれは、(実際どうだったのかは別問題として)自由を奪う檻のメタファーと解釈できる。抑圧されながらも気高く戦うダイアナの姿は、コロナ禍や戦争などがはびこる“混迷の時代”に生きる私たちを勇気づける。

今、抑圧を感じる人は、きっと本作のクライマックスに快哉を叫びたくなるだろう。映画の面白さを120%堪能できる最高級の物語、演技、メタファー。さあ、知的興奮の海に溺れよう。

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