ケイコ 目を澄ませて

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劇場公開日:

ケイコ 目を澄ませて

解説

「きみの鳥はうたえる」の三宅唱監督が「愛がなんだ」の岸井ゆきのを主演に迎え、耳が聞こえないボクサーの実話をもとに描いた人間ドラマ。元プロボクサー・小笠原恵子の自伝「負けないで!」を原案に、様々な感情の間で揺れ動きながらもひたむきに生きる主人公と、彼女に寄り添う人々の姿を丁寧に描き出す。

生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえないケイコは、再開発が進む下町の小さなボクシングジムで鍛錬を重ね、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。嘘がつけず愛想笑いも苦手な彼女には悩みが尽きず、言葉にできない思いが心の中に溜まっていく。ジムの会長宛てに休会を願う手紙を綴るも、出すことができない。そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されることを知る。

主人公ケイコを見守るジムの会長を三浦友和が演じる。

2022年製作/99分/G/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ
劇場公開日:2022年12月16日

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(C)2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINEMAS

映画レビュー

4.0コロナ禍の人間模様

2023年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

2020年を舞台にしていると明確に設定されている本作は、人々がマスクをして生活している。コロナ禍に制作された作品の多くは、マスクをしておらず、その作品世界ではコロナが存在しないかのような、奇妙あ平行世界っぽさを感じさせるのに対し、この映画にはコロナが存在している。そして、耳の聞こえない主人公にとって口元を隠すマスクは、コミュニケーションの障害となることも描かれている。
主人公の通うボクシングジムが閉鎖される理由にもコロナが関わっている。元々、古びたジムでオーナーが病気がちであることなど、複数の要因が絡み合っているが、本作は明確にコロナによって人生の分岐点を迎えた人物が描かれている。
後年、コロナ時代の映像表現を研究する時、この時代の作品の中の人間がみなマスクをしていないことに違和感を感じる人が出てくるかもしれない。そんな中にあって、この映画は時代の感覚を的確にフィルムに焼き付けていると思う。

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杉本穂高

4.0表現者として高難度の挑戦を見事に成し遂げた岸井ゆきの

2022年12月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

興奮

生まれつき耳が聞こえないがプロボクサーのテストに合格し、通算3勝1敗の成績を残した小笠原恵子さんの実話に基づく。彼女をモデルにした主人公・ケイコを演じる岸井ゆきのは、プロのレベルに見えるボクシング技術の習得(+体作り)と、台詞に頼らず手話と表情だけで感情を伝えるという、どちらか1つだけでも難易度の高い挑戦を、映画1本の主演で同時に2つに取り組んだ。引き受けるのも相当な覚悟だったと察せられるし、これを成し遂げたことで表現者として2段階も3段階も成長したのではないか。

題に含まれる“目を澄ませて”のフレーズもいい。ボクシングは敵の動きを注視して瞬時に反応し、攻撃する。手話のコミュニケーションも相手の手や表情をしっかり目視する。そして俳優も、人の動作や所作を観察して自身の演技に反映させる。観客の私たちもまた、ケイコが言葉を発しないぶん(手話の字幕はあるが)、彼女の一挙一動に目を澄ませて思いや感情を想像する。「視る」という行為に意識的になる鑑賞体験でもある。

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高森 郁哉

4.516mmフィルムに刻まれた気迫と生き様に圧倒される

2022年12月30日
PCから投稿

16mmの映像から生き様が伝わってくる。岸井ゆきのがリングで拳を構える時、その鍛え込まれた俊敏な動き、瞳にみなぎる気迫と執念にただただ圧倒される自分がいた。勝ち負けなどではない。強いのか弱いのか、あるいはボクサーとしての才能に恵まれているのかすら関係ない。主人公にとってリングや潰れかけのジムは、己の魂を唯一ただひたすら燃焼させることのできる場所。絞り込まれた体と筋肉が躍動し、一発一発のパンチが鈍く乾いた響きを放つ。日常生活における意思疎通や感情表現を体全体を駆使して行うケイコだからこそ、彼女が闘う時、そこには自ずと人生の全てが凄まじいエネルギーで集約されていくのだろう。岸井ゆきのによる映画史に残るこの役どころに留まらず、カメラはその周辺に生きる人々にも目を向ける。とりわけ、岸井とは異なるリングで生きることの”闘い”を体現した三浦友和。三宅監督が描いた二者の対比とつながりと併走に心が震えた。

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牛津厚信

4.5実在の人物からインスパイアされた物語。主役を演じた「岸井ゆきの」が役者としての勝負をかけた作品。

2022年12月17日
PCから投稿

本作は、生まれつき聴覚障害を持つ女性がボクシングに挑戦する「実在の人物」からインスパイアされた物語ですが、劇中で音楽を一切使わないなど、様々なリアリティーにこだわった意欲作となっています。
そして、本作で注目すべきは、何と言っても主役を演じた「岸井ゆきの」の存在感でしょう。
私が初めて「岸井ゆきの」を認知したのは、「愛がなんだ」(2019年)のスマッシュヒットを受けてからです。「神は見返りを求める」(2022年)から体を張りだしたなと変化を感じていましたが、本作では、役者としての「勝負をかけてきたような本気度」を強く感じました。
「岸井ゆきの」の演技は必見レベルですし、彼女を見守るボクシングジムのオーナー役の「三浦友和」の演技も相乗効果を上げていました。
欲を言えば、もう少しボクシングのシーンを見たかったですが、様々な葛藤を描いた作品なので、それを踏まえておけば問題はないでしょう。
16ミリフィルムで撮ることにより、事前に徹底的に準備をし、必要なものだけを撮るなど、様々なチャレンジをしていて、役になりきった「岸井ゆきの」の演技は「賞レース」等で大いに注目されるのは間違いないと思います。

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細野真宏
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