劇場公開日 2022年12月16日

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ケイコ 目を澄ませてのレビュー・感想・評価

全215件中、1~20件目を表示

4.0コロナ禍の人間模様

2023年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

2020年を舞台にしていると明確に設定されている本作は、人々がマスクをして生活している。コロナ禍に制作された作品の多くは、マスクをしておらず、その作品世界ではコロナが存在しないかのような、奇妙あ平行世界っぽさを感じさせるのに対し、この映画にはコロナが存在している。そして、耳の聞こえない主人公にとって口元を隠すマスクは、コミュニケーションの障害となることも描かれている。
主人公の通うボクシングジムが閉鎖される理由にもコロナが関わっている。元々、古びたジムでオーナーが病気がちであることなど、複数の要因が絡み合っているが、本作は明確にコロナによって人生の分岐点を迎えた人物が描かれている。
後年、コロナ時代の映像表現を研究する時、この時代の作品の中の人間がみなマスクをしていないことに違和感を感じる人が出てくるかもしれない。そんな中にあって、この映画は時代の感覚を的確にフィルムに焼き付けていると思う。

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杉本穂高

4.0表現者として高難度の挑戦を見事に成し遂げた岸井ゆきの

2022年12月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

興奮

生まれつき耳が聞こえないがプロボクサーのテストに合格し、通算3勝1敗の成績を残した小笠原恵子さんの実話に基づく。彼女をモデルにした主人公・ケイコを演じる岸井ゆきのは、プロのレベルに見えるボクシング技術の習得(+体作り)と、台詞に頼らず手話と表情だけで感情を伝えるという、どちらか1つだけでも難易度の高い挑戦を、映画1本の主演で同時に2つに取り組んだ。引き受けるのも相当な覚悟だったと察せられるし、これを成し遂げたことで表現者として2段階も3段階も成長したのではないか。

題に含まれる“目を澄ませて”のフレーズもいい。ボクシングは敵の動きを注視して瞬時に反応し、攻撃する。手話のコミュニケーションも相手の手や表情をしっかり目視する。そして俳優も、人の動作や所作を観察して自身の演技に反映させる。観客の私たちもまた、ケイコが言葉を発しないぶん(手話の字幕はあるが)、彼女の一挙一動に目を澄ませて思いや感情を想像する。「視る」という行為に意識的になる鑑賞体験でもある。

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高森 郁哉

4.516mmフィルムに刻まれた気迫と生き様に圧倒される

2022年12月30日
PCから投稿

16mmの映像から生き様が伝わってくる。岸井ゆきのがリングで拳を構える時、その鍛え込まれた俊敏な動き、瞳にみなぎる気迫と執念にただただ圧倒される自分がいた。勝ち負けなどではない。強いのか弱いのか、あるいはボクサーとしての才能に恵まれているのかすら関係ない。主人公にとってリングや潰れかけのジムは、己の魂を唯一ただひたすら燃焼させることのできる場所。絞り込まれた体と筋肉が躍動し、一発一発のパンチが鈍く乾いた響きを放つ。日常生活における意思疎通や感情表現を体全体を駆使して行うケイコだからこそ、彼女が闘う時、そこには自ずと人生の全てが凄まじいエネルギーで集約されていくのだろう。岸井ゆきのによる映画史に残るこの役どころに留まらず、カメラはその周辺に生きる人々にも目を向ける。とりわけ、岸井とは異なるリングで生きることの”闘い”を体現した三浦友和。三宅監督が描いた二者の対比とつながりと併走に心が震えた。

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牛津厚信

4.5実在の人物からインスパイアされた物語。主役を演じた「岸井ゆきの」が役者としての勝負をかけた作品。

2022年12月17日
PCから投稿

本作は、生まれつき聴覚障害を持つ女性がボクシングに挑戦する「実在の人物」からインスパイアされた物語ですが、劇中で音楽を一切使わないなど、様々なリアリティーにこだわった意欲作となっています。
そして、本作で注目すべきは、何と言っても主役を演じた「岸井ゆきの」の存在感でしょう。
私が初めて「岸井ゆきの」を認知したのは、「愛がなんだ」(2019年)のスマッシュヒットを受けてからです。「神は見返りを求める」(2022年)から体を張りだしたなと変化を感じていましたが、本作では、役者としての「勝負をかけてきたような本気度」を強く感じました。
「岸井ゆきの」の演技は必見レベルですし、彼女を見守るボクシングジムのオーナー役の「三浦友和」の演技も相乗効果を上げていました。
欲を言えば、もう少しボクシングのシーンを見たかったですが、様々な葛藤を描いた作品なので、それを踏まえておけば問題はないでしょう。
16ミリフィルムで撮ることにより、事前に徹底的に準備をし、必要なものだけを撮るなど、様々なチャレンジをしていて、役になりきった「岸井ゆきの」の演技は「賞レース」等で大いに注目されるのは間違いないと思います。

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細野真宏

3.5恵子の語りに耳を凝らして

2024年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

三宅唱監督作品。

「全身で感じる振動=音は快感そのものだった」(小笠原恵子(2011)『負けないで!』創出版 p.96)

そのように本作の原案である本で恵子さんは語っているのだが、本作をみた私も同じように快感を得た。

フィルムによる味わい深い画、繊細に録られた音。

それらは各シーンに具体性をもって現れる。
序盤のケイコが更衣室で着替えるときにみえる背中の筋肉。会長と妻が病院帰りに歩道橋で歩くシーンで、電車の通過とその後の彼らの位置が決まっていること。ケイコが夜に河川敷で立っている姿。高架下で電車の光が点滅すること。会長がインタビューされている姿。生活音。紙に文字を書く音。電車が通り過ぎる音。声。唸り声。

もちろんボクシングの仕草も。スパークリングがあんなにも心地よいのは、ケイコとトレーナーの息が合っているからで、いやむしろ合っていなければスパークリングはできなく、美的価値を帯びない。

本作がカメラに収める出来事は、私たちの生活の地続きにあるものだ。それらを映画として再現前させて、観客は「目を澄ませる」ことになる。するとそれらの〈美しさ〉を再認識できる。その快感。三宅監督はそんな魔法を観客にかけるのだと思う。

だから本作をみた多くの人の感想は、「なんかよかった」何だと思う。よいのは間違いない。けれどそれだけでいいのかとも思ってしまう。

端的に思ったことは「なぜケイコはボクシングをやっているか」である。ボクシングをするのが快感だから?それはそれでいいけれど、「だからなんですか」になりかねない。もちろん聴覚障害であることの葛藤を全面に出すことはステレオタイプな障害/者表象になりかねない。けれどケイコが「人間」としてなぜボクシングに励み、闘うのか。その物語は必要なのではと思ってしまう。

それは私だけの感覚なのだろうか。ケイコはジムの退去に立ち会わなくていいし、会長からもらった帽子を被って、いつもと変わらないトレーニング、いつもと変わらない生活を送ればいい。それで「ケイコ」や物語は描かれたのだろうか。

ケイコがなぜボクシングをやっているか気になって、原案である小笠原恵子さんの『負けないで!』を読んだ。正直、映画よりもこの本の方が「面白い」。それは映画と比較して恵子さんが生い立ちからボクシングのプロとして活躍するまでといった語られることの多さもあるが、何より恵子さんがボクシングに実存を賭けていることがよく分かるからだ。

恵子さんは、生まれながら左耳が聞こえなかったが、右耳は聞こえていたため中学生までは普通学級に通っていた。しかし右耳の聴力もだんだんと落ちて、それに伴い学力も低下し、同級生が障害を理解することもなかった。そんな諦めや無力感が、彼女をグレさせた。高校生の時は先生の顔面を殴り、専門学生の時は寮から追い出され、バイクを乗り回して留年した。

ボクシングを始めたのは20歳の時で、動機は「なんとなく」。だけど強くなりたかったそうだ。この動機はなんとなく分かる。みんなと同じ普通になりたいのに、障害によって上手くできなくて、その解決方法が見つかったわけじゃない。将来の漠然とした不安の中で、何かしないといけない。障害による他者からの眼差しに抗うためには自身が強くならなくちゃいけない。そんな人生をかけた暗中模索で見つけたボクシング。恵子さんがボクシングをやる理由が、この本では語られている。

それは障害者がプロボクサーになる物語ではなく、恵子さんがプロボクサーになる物語だ。そこで障害は語られるが、それは一つの側面でしかない。だからこそ恵子さんが語られることは、私たちの「諦め」や葛藤とも普遍性を持つし、「面白い」と感じれる。もちろん恵子さんの苦しさを〈私〉の苦しさと安易に同一化することはできない。けれど確かに通じる部分はある。

恵子さんの面白さは事欠かせない。ボクシングをやり始める前の高校生の時、彼女は先生や親に暴行を働き、鬱憤を晴らしていた。なぜそんなことをしてしまうのか自問すると、部活動に所属しておらず力が有り余っているからと思い、ジョギングをやり始めた。そしたらそれが習慣になってしまったらしい。

実際、運動神経もよかったらしいが、さらに手先も器用だった。周囲の人と馴染むことができず、ひとりでこもることもあって、絵を描いていた。絵を描くことも上手で、市のコンクールで入賞するぐらいの腕前だった。絵に関して言えば中学生の時の出来事が面白い。当時、支援学級の先生が彼女に寄り添わず、指導要綱に沿って彼女と接したから、洋梨の絵を描いて渡したそうだ。その意味は「用無し」。恵子さんの賢さが分かると同時に笑えるエピソードである。手先の器用さは、その後恵子さんがボクシングの傍らでやる歯科技工士の仕事にもつながっている。

彼女がボクシングのプロになることは、女性で競技人口が少なく、さらに聴覚障害があるから尚更難しかった。だから彼女がプロになりたいと言うこともできず、ジムも転々としていた。そこで見つけた「トクホン真闘ボクシングジム」。ジムの会長も実は中途失明者らしい。だが障害に理解があるわけでもなく、恵子さんが耳が聞こえないことは「気で直せる」と思っているらしい。とても根性論だとは思うが、会長と恵子さんが向き合ったからこそ培われた関係はあって、だからプロになれたのだと思う。さらにジムのトレーナーも根気よく接してくれて、セコンドの指示がみえるようにリングサイドを動き回って指示したり、ボクシング用語を伝えるために、オリジナルの手話まで考案してくれたそうだ。

このようにこの本には、恵子さんの人生が語られている。さらに「面白く」。そしてふと思うのである。本作は、この「面白さ」を翻案しているのかと。もちろんこの本を忠実に映像化として再現する必要は全くないし、原案に留めることは問題ない。それは映画の制作における限界としてあるからだ。だが翻案においては、原作にあった普遍性や本質を取り出す必要はあるのではないだろうか。それがないとも言わない。けれど足りない。「試合中の母の不安がブレた写真から伝わってきた」(p.137)を映画で再現することでもない。なぜケイコが歯科技工士ではなくホテルの清掃員なのか、ボクシングをするのか、妹ではなく弟が登場するのか、所属ジムを変えることに拒否反応を示すことの意味が足りない。必然性が足りない。

恵子の語りに耳を凝らして。それもまた、私たちがケイコをみる時に必要なことだろう。

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abokado0329

ケイコの勝利

2024年4月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

 生まれつきの聴覚障がいのため耳が全く聞こえないケイコ。ホテルの下働きをしながらボクシングジムに通い、プロのリングにも立つ。だがこれは、そんな不遇のボクサーのサクセス・ストーリーではない。むしろ挫折の物語だ。

 彼女はなぜ闘うのか。勝とうが負けようがリングに立ち、ジムで汗を流す。そのことだけに命の輝きを求めようとしているかのようだ。荒川あたりの河川敷で共にシャドウボクシングに励むケイコとジムの会長、岸井ゆきのと三浦友和が、まるで『ミリオンダラー・ベイビー』のイーストウッドとヒラリー・スワンクに見えてくる。会長に甘えるような岸井ゆきのの楽しそうな表情が印象的だ。

 試合に負けた数日後、ケイコは偶然出会った相手ボクサーからリスペクトに満ちた挨拶を受ける。彼女の勝利の瞬間だ。映画は静かに主張する。試合に勝つことだけが勝利じゃない、時に挫けそうになる自分に打ち勝ってこそ、真の勝利があるのだと。

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inosan009

3.5気迫と生き様が見事に光る

2024年3月28日
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2022年劇場鑑賞99本目 秀作 68点

演技派かつ中の下みたいな女性を演じさせたら右に出る者はいない岸井ゆきの渾身の作品

すげえ楽しみにしていたし、観る前から絶対に傑作だろうなあと思って足を運びましたが、何を思ったのか珍しく中盤寝てしまって、一番大事な描きの部分で情報が入らず見終えてしまった、、、

普段お金を払って寝ることないし、観る作品もだいぶ限定しているのでまずあり得ないのですが、失態。このままだと平等な評価ができないし、最近になってAmazonで配信されたので直ぐに見返します、、、以下追記欄に再評価します

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サスペンス西島

3.0『夜明けのすべて』を監督すると知って、どんな監督なのか観てみた作品...

2024年3月17日
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鑑賞方法:映画館

『夜明けのすべて』を監督すると知って、どんな監督なのか観てみた作品。
それまでもこういった、落ち着いた雰囲気で主人公が何を考えてるのか観客が読み取ることを求められる作品は苦手だったので、賞をたくさん受賞して期待してたけど、私には響く部分は少なかった。
今回『夜明けのすべて』が凄く好きだったので何か感想が変わるかなともう一度観てみた。
初見の時より、光や音、色々こだわってるところは見えてきたけど、やはり私は『夜明けのすべて』の方が好きだった。

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はるはな

1.5”セクシー田中さん”事件どころやない 無知な素人の原作者をおいてけぼりにしている しかしタイトルに、普通、ダジャレを入れるかな

2024年3月12日
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鑑賞方法:VOD

ボクシングは素人なのでよく分かりませんが
身体は作ってきてますね
でもボクシング自体は、後付けのパンチ音で迫力をだしているだけ
スピードはないし頑張って腰を入れて打つところがオーバーアクションでいかにも素人っぽい
まあ、もろに付け焼き刃
マシントレーニングもどう見てもキレイフォームとは言い難い

演技はいつものように、なんにでも対応できる上手い役者だから、こんなもんでしょう

作品は聴覚障害のある女性ボクサーの話なんですが、はっきり言って薄いし浅い
ボクシングを始めた理由も普通、聴覚障害のために起こるトラブルも目新しさはない
それどころか耳が聞こえにくいとわかったのに、マスクをしたまま大声で話すのをを笑うところなのかどうか、戸惑ってしまう
簡潔に言うなら、紆余曲折したけど小さな日常から、勇気を貰って再起するという話
自伝好きならいいかもしれないけれど、普通は何も心を動かせるようなものが無い
ドキュメントとしてもね
そういう意味では、難しい役どころだったのかもしれない
そういう意味での
アカデミー賞主演女優賞かいな

よくある、役者にストイックな挑戦をさせるために選んだ題材という気がする
今回は岸井ゆきのがターゲットになっただけ
岸井ゆきのの挑戦映画です
つまり、主演女優賞狙いの作品でしょう

ネットで原作者の小笠原恵子さんのインタビュー記事を読んで驚きました
映画よりずっと波乱万丈な濃い人生
熱いハートとガッツのある魅力的な人でした(美人だし)
ジムの会長は映画以上にスゴい人で、彼女に影響を与える存在だった
その上
本人の知らない間に映画化が進んで、主役まで決まっていたとか(映画化の話はあったそうですが、いつの間にか立ち消えていたそうです)
本人は素人だからこんなモノくらいにしか考えていないけど
ストーリーも何も、映画を観るまで知らなかった
なんてこったい
”セクシー田中さん”事件どころやない
もっと言うなら、家族構成を変えたのは仕方ないにしても、主人公の職業は歯科技工士だったのに、ホテルの清掃係に変えられているのも腑に落ちない
職業に貴賎はないけれど、ボクシングといえばバイトしながらハングリー精神で頑張っているという固定観念を持たせたかったのか
それとも、時間の都合で単純な仕事に変えたのか
よくある”事実を基にしたフィクション”で誤魔化してるんですが、なんか嫌
本人はなんとも思っていませんけどね
ただ、共通点は暗かった事だけと言っています
つまり、聴覚障害の女子ボクサーという題材だけを利用した別の作品です
なのに、名前を恵子にしたり、目の悪いジムの会長とかはつかっている
もう、こんな映画は、はっきりいって作り直した方がいい

タイトルの”目を澄ませて”はしらけます
原作?の”負けないで!”では聴覚障害というのが分かりにくい
だからといって普通、ダジャレを入れるかな

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nakaji

4.0全ての人たちをきちんと描く

2024年3月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

「夜明けのすべて」があまりに良かったので過去作をと思い観ましたが、これも評判は知ってたけどとても良い作品でした。
耳が聞こえないボクサーという主人公の映画なので当然セリフは少ないわけだけど、目、歩き方、普段のオンオフ、ボクシングの身体性のアクション(素晴らしい!)で見事にそこにいる人として描かれていました。
生活音(電車の音、水面所の音、車の音)が際立つ音響で、これを主人公は聞いていないと思いながら見るととても不思議な感覚でした。

この映画も登場人物すべてがそこにいると思わせてくれる作品で、それが本当にこの作品をスペシャルにしていると思います。
エンドロールの生活風景のショットたちの中にも、今の映画の中にいたような人たちがたくさんいるのだなと思わされて、とんでもない作品と思いました。

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あした

3.0頑なな気持ちがほどけてく

2024年3月7日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

興奮

結局人はひとり
なんてことはない
それを静かに、だけど確かに伝えてくれる映画だった

弟の彼女、ジムの先輩、そして対戦相手とも
ケイコの頑なな気持ちがほどけていく描写にグッときた

友達とのやり取りに字幕がない軽やかさも、そこに日常がある気がして良かった

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赤の他人

5.0フィクションという形をとったノンフィクション

2024年2月11日
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鑑賞方法:DVD/BD

現実の世界では、理由とか目的とかは、だいたい後付け。私たちは何となく何かを決め、日々の流れの中で何かが始まり何かが終わっていく。自分の気持ちをなぞってみると、理由らしきものを見つけ出すことはできるのだけれど、ぼんやりとした曖昧なものだったりする。普通の人の日常って、そんなもんでしょう、きっと。

岸井ゆきの演ずるケイコがボクシングを始めた理由も、またしかり。説明されるのだけど説得力はない。そして、やめる決意は中途半端で、ジムの人間関係の中で迷い、ダラダラと続けていく。ケイコの表情はいつも複雑で、見るものに明確な答えを与えてくれない。言葉にしない分、多くの思いが積み重なって、笑いながら泣いているような、泣きながら笑っているような。

リアリズムを追求すると、こういう映像表現になるのかもしれない。ボクシング映画といえばドラマチックな展開とカタルシスを求めてしまうけれど、現実のボクシング、そしてボクサーの日常には映画音楽なんて流れてこないわけだし。
だから、ケイコのリアリズムが強い説得力をもつ。ケイコが、迷いながら同時にひたむきに日々を積み重ねる姿に、心を動かされる。強さと弱さをあわせもつ彼女が身近にいるような感覚になる。
多くを語らない。そのことが、こんなパワーを生むとは。ちょっと、驚き。

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マツドン

4.0BGM

2024年2月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

あらゆる音が聞こえる
流れる水、近づく自転車、縄跳び、足音
心地良いミット打ちのリズム

彼女は「音」を知らずに生まれ生きている
大きな問題かもしれないが小さくすることはできそうだ
彼女を見ていると大きな問題じゃないのかと思ってしまう
バイブが鳴る、扇風機がタイマーで動き出す
風がカーテンを揺らすとそろそろ起きる時間だ

どこの誰でも物語がある
会長には会長の、奥さんには奥さんの
2人のコーチ、弟、その彼女、母親、病院の老婆
この作品からはそんな人々の心が見えてくる
もっと知りたくなる、
会長の栄光
奥さんの苦悩
両コーチの私生活
弟の作品
彼女のダンス
母親の生活
老婆の生きがい

全てが主役になる

また縄跳びの音が聞こえてきた

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カルヴェロ

3.5練習そのものが画

2024年2月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

 両耳とも聞こえないケイコは、ホテルの客室清掃の仕事をしながら、プロデビューしたボクサーとして古いジムで練習に励んでいた。しかし、このまま続けるかどうか悩んでいる時に、会長の体調不良のためジムが閉鎖されることを知る。
 耳が聞こえない女子プロボクサーの実話を原案にした物語。熱いドラマや、試合そのものの劇的な展開はありません。淡々としていながら、練習そのものが画になり、見入ってしまいました。俳優陣の演技のたまものです。
 岸井ゆきのは「神は見返りを求める」で見ました。全く違った役を演じ、見事だと思います。これから楽しみな人です。

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sironabe

2.0悪いとは思わないが過大評価?

2024年1月22日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

岸井さんをはじめボクシングジムのキャストの演技は上手いと思う。画も雰囲気が合って良いと思う。岸井さんの演技を観たのは99.9とCMくらいだったが、これはとてもハマっているとは思う。岸井さんの努力も感じる。が、映画として魅力がない。勿論、格闘技に全く興味がないのを差し引いてもだ。
ジムの会長の妻がケイコに話した後のシーンと後半の弟の彼女とのシーン、ラストの仕事場のシーンは良かったが、そのくらい。
ダメな所というほどの所もない為この評価。何がテーマかよくわからないがケイコの心の成長がテーマだったのだろうか?

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モンブラン

3.0高い読解力が求められる

2024年1月12日
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 とにかく情報が少なく静かな映画なので、些細なしぐさや繊細な心情の移ろいをとらえきれないと意味不明な映画

 だから、自分にとっては意味不明でした

 どの辺が世界中の映画祭で絶賛されるポイントなのか教えてほしいです

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大学生1

3.5鑑賞動機:岸井ゆきの10割

2024年1月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

『愛がなんだ』や『前田建設ファンタジー営業部』でのコミカルでちょっとダメな人イメージが強かったけど、ここではガラリと違う硬質の人物像で、こんな顔をするのか、と新しい発見だった。
最後はちょっと成長したってことかな。

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なお

3.5渋い

2023年12月29日
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主人公のセリフがない(文字では表現している)ので。
見ている側の集中力が想像力を掻き立てている。
シンプルだからこそ、心に染みるのでしょう。

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ゆき@おうちの中の人

3.5聴覚障害のある女性ボクサーの日常。 障害をほとんど苦にせずに生きて...

2023年12月23日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

聴覚障害のある女性ボクサーの日常。
障害をほとんど苦にせずに生きている姿は下手にお涙頂戴モノにすることなくよかったと思う。
所属ジムの閉鎖に加えて不運な敗北を喫してやる気をなくしそうになりながらも、再び前を向くラストも勇気づけられた。

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省二

4.0賛否あるのはよく分かる

2023年12月23日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ボクシング映画ではなくてケイコの努力の積み重ねと挫折を描く作品。
なのに後味がいい。(否の人は後味が悪かったのだろう)

岸井ゆきのはプロボクサーを演じるにあたりコロナ禍でのトレーニングのためマスクをしながら挑んだそう。「トレーニングをマスクでして、撮影は外して行ったので、撮影の時の方が楽に感じました」との事。
撮影後もボクシングの練習は続けてるらしく、「今もまだボクシングは続けているけれど、あの日よりも体重が落ちて、パンチが軽くなってしまったことが悔しい。でも、軽い分早いパンチが打てるかもしれないので、なんとかケイコに勝てないかな」とインタビューで笑顔で話してたらしい。

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ナイン・わんわん