劇場公開日 2022年12月16日

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「16mmフィルムに刻まれた気迫と生き様に圧倒される」ケイコ 目を澄ませて 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.516mmフィルムに刻まれた気迫と生き様に圧倒される

2022年12月30日
PCから投稿

16mmの映像から生き様が伝わってくる。岸井ゆきのがリングで拳を構える時、その鍛え込まれた俊敏な動き、瞳にみなぎる気迫と執念にただただ圧倒される自分がいた。勝ち負けなどではない。強いのか弱いのか、あるいはボクサーとしての才能に恵まれているのかすら関係ない。主人公にとってリングや潰れかけのジムは、己の魂を唯一ただひたすら燃焼させることのできる場所。絞り込まれた体と筋肉が躍動し、一発一発のパンチが鈍く乾いた響きを放つ。日常生活における意思疎通や感情表現を体全体を駆使して行うケイコだからこそ、彼女が闘う時、そこには自ずと人生の全てが凄まじいエネルギーで集約されていくのだろう。岸井ゆきのによる映画史に残るこの役どころに留まらず、カメラはその周辺に生きる人々にも目を向ける。とりわけ、岸井とは異なるリングで生きることの”闘い”を体現した三浦友和。三宅監督が描いた二者の対比とつながりと併走に心が震えた。

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牛津厚信