【コラム/細野真宏の試写室日記】劇場版「鬼滅の刃」は「興行収入100億円最短到達記録」を更新するのか?
2020年10月22日 12:00
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が10月16日(金)から劇場公開され、「史上初の記録」を次々と打ち立てています。
まず、映画のヒットの基準は、基本的には(最終)興行収入10億円が大きなラインとされていますが、本作の場合は、初日が普通の金曜日であったにもかかわらず「興行収入12億6872万4700円(動員91万507人)」と、平日の1日で興行収入10億円を飛び超えてしまいました。
もちろん、これは「平日における映画の興行収入・動員の歴代1位」を記録しています。
そして、週末の土日には、17日(土)は「興行収入17億172万3350円(動員127万234人)」、18日は「興行収入16億5266万9400円(動員123万9752人)」となっています。
これも、「土曜における映画の興行収入・動員の歴代1位」と「日曜における映画の興行収入・動員の歴代1位」を記録しています。
そして、わずか3日間で興行収入46億2311万7450円(動員数342万493人)と、これまでの歴代初週の最高だった「アナと雪の女王2」の19.4億円を超えるばかりか、倍以上も稼いでしまったのです!
ここまでの勢いが出ると、どこまで新たな記録を塗り替えることができるのかが、次の大きな焦点の一つになってきます。
そこで、日本の歴代興行収入ランキングを見てみると次のようになっています。
1位:「千と千尋の神隠し」 興行収入308.0億円
2位:「タイタニック」 興行収入262.0億円
3位:「アナと雪の女王」 興行収入255.0億円
4位:「君の名は。」 興行収入250.3億円
5位:「ハリー・ポッターと賢者の石」 興行収入203.0億円
6位:「ハウルの動く城」 興行収入196.0億円
7位:「もののけ姫」 興行収入193.0億円
8位:「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」 興行収入173.5億円
9位:「ハリー・ポッターと秘密の部屋」 興行収入173.0億円
10位:「アバター」 興行収入156.0億円
【2020年8月2日(興行通信社調べ)】
そして、作品の勢いを表す「興行収入100億円に到達した日数」を見てみると、次のようになっています。
1位:公開から25日目 「千と千尋の神隠し」
2位:公開から28日目 「ハリー・ポッターと賢者の石」
2位:公開から28日目 「君の名は。」
4位:公開から29日目 「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」
5位:公開から31日目 「崖の上のポニョ」
6位:公開から32日目 「ハリー・ポッターと秘密の部屋」
7位:公開から33日目 「ハウルの動く城」
8位:公開から34日目 「天気の子」
9位:公開から37日目 「アナと雪の女王」
9位:公開から37日目 「アリス・イン・ワンダーランド」
11位:公開から40日目 「アナと雪の女王2」
このように、歴代興行収入ランキングのトップの「千と千尋の神隠し」でさえ、公開から興行収入100億円に到達するまでに1か月近くの25日間かかっています。
ただ、今回の「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、週末が明けて平日になっても勢いは落ちず、公開から4日目には興行収入50億円を突破しています。
かなり異次元すぎる推移なので、過去のデータが当てにならない部類なのですが、今のところ、最速で次の週末の日曜日には興行収入100億円を突破する可能性があります。
つまり、これまでの1位の「公開から25日目で興行収入100億円を突破」という記録が、「公開から10日目で興行収入100億円を突破」という新記録に生まれ代わる可能性があるのです!
遅くとも来週の月曜日か火曜日あたりには突破が濃厚で、よほどの事が起こらない限り、興行収入100億円という大台への到達記録が倍のスピードで短縮することになりそうなのです。
何より、作品の出来がストーリー、映像、音楽と、どれも最高峰のクオリティーだと思うので、このスピード感であれば、まずは興行収入200億円は十分に射程圏内でしょう。
これまでの上位作品は、「ギャグシーン」というのが相対的に少なく、割とシリアス路線が主流で、本作のような「人間模様」、「アクションシーン」、「ギャグシーン」とバランスがとれた作品が少なかったので、新しい潮流になりそうで多様性ができ良い流れだと思っています。
ちなみに、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の客層ですが、配給元からの調査発表はありませんでした。
ただ、それも理解できます。
というのも、本作では、コア層は特定できないほどの幅広い訴求力があり、どの世代にも響くものがあると思われるためです。
私自身も実際に、ただならぬ世の中の雰囲気を感じ、何とか初週の日曜日に時間を確保できたので、作品を見るついでに客層を確認するために2回見てみました。
日曜日の1回目は最大スクリーンで見て、2回目は「轟音上映」という特殊な環境で見てみました。
1回目の時の客層は、「最大スクリーンの満席」で情報量が多すぎて把握しきれなかったです。
特徴的には全世代がいた雰囲気で、たまにぐずる赤ちゃんをなだめるお母さんとお父さんが交代で一時的に外に出たりと可哀想に思えました。
やはりお母さんもお父さんも見たい作品なんだろうな、というのは強く感じました。
全世代ではあるものの、チケットを早めにとらないといけない面もあったため、どちらかと言うと若い層が多かった状況もありました。
男女比は、半々か、4:6くらいで女性が多いかな、という印象です。
ファミリー層、カップル、女性同士のグループ、男性同士のグループ、というのが目につきました。
実際に、文化通信社が劇場にアンケートしたところ、やはり同様だったようで「オールターゲットで、ファミリー層、若年層、中年夫婦など幅広い層」で、全国的に同じ傾向で、劇場によっては「就学前から小学校低学年の子どもとその親が大半」という場所まであったようです。
2回目の「轟音上映」という特殊な環境の場合は、特に若者層が多かった印象です。
この「轟音上映」というのを初めて経験した感想は、やはり映画館ならではの音響を体感でき、特にアクションシーンの音響が凄く、なかなかの迫力でした。
今回、配給元が初日のアンケートで発表したのは「満足度」で、「非常に良かった」 が84.6%、「良かった」が13.8%で、合わせて98.4%が「満足」していたのですが、もし私が初回にアンケートを受けたら「良かった」と答えていたかもしれません。
というのも、かなり盛沢山の印象的なシーンがあるので、「興味深い」「面白い」「悲しい」「感慨深い」など多くの感情があり、感情が追い付かなかったからだと思います。
日曜日に映画館でじっくり見た結果は、余裕で「良かった」から「非常に良かった」に変わりました。
よくある「泣ける」というのは本当で、これはリピーターが増える部類の作品だと思います。
今週末の劇場の座席数ですが、文化通信社によると、今週末は「先週末と同程度」や「少し増やす」といった劇場が多く、特に先週末に取りこぼした劇場では回数増の方向で動いているようです。
現時点では、まだ最終的な興行収入の規模感までは見通せませんが、次回あたりに考察できれば、と思っています。
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