「るろうに剣心」「劇場」「鬼滅の刃」… 映画を観る前に読んでほしい原作6選

2020年5月1日 20:00


原作を読んでから、映画を観よう!
原作を読んでから、映画を観よう!

[映画.com ニュース] 映画.comユーザーの皆様、こんばんは。映画ライターのSYOと申します。5月の大型連休がやってきました。しかし家から出られないこの期間、どう過ごしたものか。

今回ご提案したいのは、「新作映画の原作本を読んでおく」です。普段だったら時間もなくて、なかなか“予習”が追い付かない方も多いかと思いますが、おうち時間は絶好の機会。「原作読破」→「映画鑑賞」の深ーい魅力に、ハマれるかもしれません。

本稿では、今年公開予定の映画6作品+αの原作をご紹介します。「おうちで読書」の手引きとして、お役立ていただければ幸いです。


1.「劇場」(小説)

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新型コロナウイルスの影響で公開延期となってしまいましたが、前評判が非常に高い作品です。芥川賞作家である、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんが「火花」より前に書き始めていた小説を、行定勲監督、山崎賢人さん、松岡茉優さんのタッグで映画化しました。

本作で描かれるのは、演劇の道を目指し、上京してきた青年と、彼を傍らで支え続けた女性の歳月。切ないラブストーリーであり、自尊心と羞恥心、渇望の狭間で葛藤し続けた表現者の生き様を描いた珠玉のドラマでもあります。

原作は主人公の「語り」形式で書かれており、男女の目線がフラットに描かれた映画版を補完する内容になっています。つまり、「その時、主人公は何を考えていたのか」が克明に記されている。そのため、原作読了後に映画を観ると、冒頭の「どこまで持つだろうか」というモノローグの時点で、感情がより強く揺さぶられるはず。

これは、原作と映画版のシンクロ率が恐ろしく高いからこそ起こる現象。驚くほど忠実に、小説の世界観を具現化した映画版のスタッフ・キャスト陣の熱意と力量に圧倒されることでしょう。その衝撃と感慨は、原作を読んだ人だけの特権です。ぜひ味わっていただきたい!

また、小説版と映画版では、大きく違うシーンがあるので、その部分も注目してもらえたらと思います。


2.「朝が来る」(小説)

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人気作家・辻村深月さんが生み出した慟哭(どうこく)のサスペンス小説を、国際的評価も高い河瀬直美監督が映画化。「養子縁組」をテーマに、ある夫婦と少女の数奇な運命を描きます。

本作をオススメする理由は、小説と映画、どちらも違った風味の傑作であり、2つを比べることで新たな発見が見えてくるから。辻村さんと河瀬監督の“作家性の違い”が、実に興味深いのです。

子どもに恵まれず、養子縁組を決意した夫婦(演じるのは井浦新さんと永作博美さん)。中学生で妊娠した少女(演じるのは蒔田彩珠さん)から子どもを引き取るが、数年後に「子どもを返してほしい」と1本の電話が入る――。

本作の原作と映画には、2つの大きな“差”があります。「距離感」と「温度」です。原作は一歩引いた目線で登場人物を見つめていますが、映画は役者の微細な表情の変化を“寄り”のカメラで映し出します。ドキュメンタリー風の演出も顕著で、河瀬監督のこだわりが如実に感じられます。

また、原作は少女の家族や、彼女を取り巻く人物をある種の残酷さをもって描いていますが、映画は周囲の人間に、温かみを(恐らく意図的に)付加したように感じられます。この部分も、辻村さんと河瀬監督のアプローチの違いがハイレベルな“闘い”を繰り広げていて面白い。

ストーリー自体は共通しているのに、手法が違う。見比べる楽しさが詰まった作品です。


3.「るろうに剣心」(マンガ)

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日本映画界で、今年最も話題を集めている映画のひとつ。それが「るろうに剣心 最終章 The Final」「るろうに剣心 最終章 The Beginning」の2部作です。テレビドラマ「恋はつづくよどこまでも」が一大ブームとなった佐藤健さんの代表シリーズで、前作から約6年の時を経て堂々の復活。これまでのスタッフ・キャストに加え、新田真剣佑さん、有村架純さんが加わります。

今回は、原作マンガ中でも非常に人気の高いエピソード「追憶編」が実写化されると予想され、ファンの間では「遂に……!」の声も高まっています。ということで! 未読の方はこの機会に読んでおくと、原作ファンと同じ熱量で臨めますし、実写版がぐっと楽しめること請け合いです。

今回映画化されるのは、原作コミックの18巻から28巻。その中でも「追憶編」(剣心の過去編)は、19巻から21巻に収録されています。無理なく読めるボリュームですし、原作を先に読んでおくと「このキャラ、まだ配役が発表されていないけど誰がやるんだろう? あの俳優さんにやってほしいな」といった“予想大会”も可能に。

そして、余裕がある方は実写版第一作もチラリとチェックしていただけると、なおGOOD。というのも、実は少しだけ、最新作につながるシーンが描かれているから。窪田正孝さんが、短い出番ながら重要キャラクターで参加されています。


4.「鬼滅の刃」(マンガ)

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もはや社会現象。原作マンガもテレビアニメも驚異の大ヒットを記録している本作、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が公開されます。「劇場版」といっても、描かれるのはテレビアニメ版の続き。「無限列車」に乗り込んだ主人公たちが、新たな任務に挑みます。

「鬼滅の刃」は、人を食う異形の「鬼」と、鬼を退治する集団「鬼殺隊」の壮絶な戦いを描く作品。鬼にされてしまった妹の禰豆子を元に戻すため、鬼殺隊に入隊した少年・炭治郎は、戦いの中で妹だけでなく、人と鬼の「憎しみの連鎖」を断ち切ろうと奮闘していきます。

ダークな世界観、容赦ないストーリー、敵である鬼の過去をも描くエモーショナルな心情描写、魅力的なキャラクターが人気を集めています。「鬼」は元々は人間であり、主人公・炭治郎の「敵も悼む」まっすぐな優しさが、涙腺を刺激します……。

さてこちらですが、人気作品の宿命か、“原作勢”からネタバレを食らう確率も決して低くはありません。しかも、「鬼滅の刃」は他の作品と比べて衝撃的な展開が多く、「情報シャットアウト」は必須。しかし、公開までの5カ月半もの間、徹底するのは大変ですよね。

じゃあ、読んじゃいましょう。「無限列車編」は7巻と8巻、単行本2冊分です。いけます。


5.「ジョゼと虎と魚たち」(小説)

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犬童一心監督の映画で、本作を知った方も多いかと思います。2003年の劇場公開時、本作を観ていることが「邦画好き」の一種のステータスにもなりました。

車いす生活を送る女性と、同棲中の男性による愛とも絆ともつかぬ不思議な関係を描いた作品。田辺聖子さんによる短編小説が原作になっています。

そして、なんと今年、本作がアニメ映画化されるのです。アニメーション制作は、「僕のヒーローアカデミア」や「文豪ストレイドッグス」のスタジオであるボンズ。まだ劇中カットが披露された段階ですが、色鮮やかな映像美と、天真爛漫なヒロイン、ジョゼの表情が印象的です。実写版にあったエロスと可愛らしさの絶妙な配分が、どのように表現されるのでしょうか。

ちなみに、「ジョゼと虎と魚たち」は、原作と実写映画では結末が違います。アニメ版では、どのようなストーリーになるかも気になるところです。

本作を推すのは、第一に原作小説がわずか30ページで読めるから。短編なので、非常に短いです。

ですが、本当の理由はここから。この原作、読んだ後もずうっと心に残り続けるのです。「泣いた」とか「感動した」ではなく、海底に沈んだように、心の全部が作品の世界に染まってしまう。

ジョゼの「アタイ、好きや」「今晩も、居てて」というようなセリフ回し、怠惰なのに色っぽい文体、ふたりの何とも言えない空気感……。「文学」というものが持つ圧倒的な“雰囲気”に呑み込まれるはず。豊かな時間が、本の中に眠っています。


6.「青くて痛くて脆い」(小説)

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君の膵臓をたべたい」の著者・住野よるさんによる、仕掛けが満載の青春小説。吉沢亮さんと杉咲花さんの共演で実写映画化されます。

人付き合いが不得意な田端楓(吉沢さん)と、想いが強く、孤立しがちの秋好寿乃(杉咲さん)。一人ぼっちだったふたりの大学生は、ふとしたことから友人に。“世界を変える”ためのサークル「モアイ」を結成するなど、充実した大学生活を送っていた。

だが、秋好は“この世界”からいなくなってしまう……。楓は、彼女の想いを継ぎ、本来の姿を失った「モアイ」(単なる意識高い系就活サークルになった)をぶっ潰すために立ち上がる。

このあらすじから見てわかるとおり、「君の膵臓をたべたい」とは全く違う、ある種の「復讐もの」として物語は進んでいきます。そして――。

実写版の特報もかなりトリッキーな作りになっており、話題を集めました。ですが、原作は「こう来たか!」とうならされるような意外性が満載です。


今回挙げた作品以外にも、原作も映画版も泣ける「ステップ」、「怒り」「悪人」「横道世之介」など映画化作品も数多い吉田修一さんのアクション巨編「太陽は動かない」、大泉洋さんを想定して書かれたという「騙し絵の牙」、ドラマ「アンナチュラル」の野木亜紀子さんが映画版の脚本を担当する「罪の声」、佐藤健さん主演で映画化される推理小説「護られなかった者たちへ」、堤幸彦監督・堤真一さんで映画化される社会派ミステリー「望み」など、まだまだ話題作は無数にあります。

読んでから、観る。「Stay Home」期間を、映画館再開時の“助走”にするのも、有意義かもしれません。

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