ポン・ジュノ監督「オクジャ」は少女版「未来少年コナン」 押井守作品の影響も
2017年6月22日 17:00
[映画.com ニュース] 韓国の鬼才ポン・ジュノ監督が最新作のNetflixオリジナル映画「オクジャ okja」を引っさげ、前作「スノーピアサー」以来約3年5カ月ぶりに来日。主演を務めた子役アン・ソヒョンとともに6月22日、東京・六本木で来日会見に出席した。
ジュノ監督の長編6作目となる本作は、韓国の山奥で生まれ育った少女ミジャが、巨大な多国籍企業に連れ去られた親友の巨大生物“オクジャ”を取り戻すため、ソウル、ニューヨークを駆け巡るアクションアドベンチャー。「ハウスメイド」「その怪物」などで天才子役として脚光を浴びたソヒョンが主人公ミジャを演じ、ティルダ・スウィントン、ジェイク・ギレンホール、ポール・ダノら、ハリウッドの演技派俳優たちが脇を固めた。
同作で描かれる自然の描写が宮崎駿作品に影響があると公言していたジュノ監督は、「『未来少年コナン』の女の子版だと考えたことがある」と告白。「主人公がずっと走り続けていて、誰にも止めることができないからです。コナンがおじいさんと自然の中で暮らす様子は、ミジャにも通ずるものがありますね」と解説した。さらに、宮崎監督へのリスペクトを示しつつも、それ以外の作品からもインスピレーションを受けたと明かし、オクジャを世界にお披露目するニューヨークでのパレードは、押井守監督の「イノセンス」をイメージしていたと告白。その他にも、ジョージ・ミラー監督が農場から都会へ旅する子豚を描いた「ベイブ 都会へ行く」などからの影響もあると語った。
一方、現在13歳のソヒョンは緊張しつつもオーディション当時の思い出や印象に残ったエピソードを落ち着いて話していたが、日本の話題になると「日本の映画やアニメ、歌が大好き」とにっこり。「ハウルの動く城」「千と千尋の神隠し」「となりのトトロ」といったお気に入りの作品を挙げながら、「いつか日本で『君の名は。』の三葉のようなキャラクターを演じてみたい」と声を弾ませた。
ジュノ監督はリラックスした様子で、「水鉄砲で20回くらい水を浴びせられた」というソヒョンの苦労話に、日本語で「本当にすみません。監督は悪魔です」とジョークで応じていたが、「映画とは?」という質問になるとすっと居ずまいを改めた。本作は今年5月の第70回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門に入選したものの、フランスでの劇場公開の有無をめぐり大論争を呼んでおり、ジュノ監督は映画界に一石を投じたNetflixの方針、ひいてはデジタル配信サービスについて持論を展開した。
「映画のつくり手として、映画の定義を一般論として話すのは難しい」と前置きしたうえで、「映画の鑑賞方法としては、大勢の人が集まり大きなスクリーンで泣いたり笑ったりしながら見るというのが、依然として最も美しい鑑賞方法ではないかという思いに変わりはない」と語る一方で、テクノロジーの急速な発達により、鑑賞スタイルが多様化している現状をポジティブに受け止めているとコメント。テレビと映画が共存できたように、「デジタル配信は、従来の映画と平和に共存できると思う」と真摯に語り、その実現のためには映画産業全体の整備づくりが必要だと説いた。
Netflixオリジナル映画「オクジャ okja」は6月29日から全世界同時オンラインストリーミング開始。