毎日映画コンクール、女優主演賞岸井ゆきの「ケイコ　目を澄ませて」5部門受賞に「誰一人欠けてもできなかった映画」

毎日映画コンクールは1946年、日本の映画産業振興に寄与し、国民に映画の楽しさを広く伝えることを目的に、毎日新聞社とスポーツニッポン新聞社によって創設された映画賞。各賞は第一線級で活躍する映画評論家やジャーナリスト、専門家など約80人が選考に関わる。

各映画賞で高い評価を得ている「ケイコ　目を澄ませて」は、本映画賞でも合計5つのタイトルを受賞した。同作は、聴覚障害と向き合いながらプロボクサーになり、戦いに挑んだ小笠原恵子さんをモデルにした物語。

女優主演賞に輝いた岸井は壇上に登場すると「誰一人欠けてもできなかった映画。皆さんでこの場に立てて嬉しい」と笑顔を見せる。続けて岸井は「この映画は情熱を注いだものに対して、勝ち負けではなく継続すること、静かに愛することの大切さを描いています」と作品に込められた思いを述べると「でも（岸井が演じた主人公）ケイコには負けたくないという思いもありました。勝ち負けではないと言いましたが、賞をもらえたことは、認められたという証として、大切にしたいと思います」とスピーチ。

「ケイコ　目を澄ませて」は監督賞、撮影賞、録音賞も受賞し、最高賞である日本映画大賞も受賞。三宅唱監督と共に、岸井が演じたケイコのモデルとなった小笠原さんもステージに上がると、手話で「何気ない日常のなかで、一つ一つが大事なものとして静かに迫ってくる感じが素晴らしかった」と映画を称賛。小笠原さんの言葉に岸井は聞き入っていた。

「土を喰らう十二ヵ月」で男優主演賞を受賞した沢田は、ビデオメッセージで喜びを伝える。沢田は「こういう賞に縁がないと思っていたので驚きました」とつぶやくと「すごい俳優さんがいるなかで私を選んでいただけたのは、とても嬉しいし、僭越だし、恐れ多い。こういう賞をいただけると、まだ頑張らなければいけないなと思いました」と語っていた。

また日本映画界に大きな足跡を残した女優の田中絹代さんを冠にした「田中絹代賞」を史上初となる母（富司純子）娘受賞した寺島しのぶは「このような伝統、格式のある賞をいただけるなんて、選考委員の方々に感謝すると共に、また寺島しのぶのハードルを上げてくださったなと思いました」と率直な胸の内を明かすと、受賞に対して「母はとても喜んでくれました」と明かしていた。