死刑にいたる病
劇場公開日:2022年5月6日
解説
「凶悪」「孤狼の血」の白石和彌監督が、櫛木理宇の小説「死刑にいたる病」を映画化したサイコサスペンス。鬱屈した日々を送る大学生・雅也のもとに、世間を震撼させた連続殺人事件の犯人・榛村から1通の手紙が届く。24件の殺人容疑で逮捕され死刑判決を受けた榛村は、犯行当時、雅也の地元でパン屋を営んでおり、中学生だった雅也もよく店を訪れていた。手紙の中で、榛村は自身の罪を認めたものの、最後の事件は冤罪だと訴え、犯人が他にいることを証明してほしいと雅也に依頼する。独自に事件を調べ始めた雅也は、想像を超えるほどに残酷な真相にたどり着く。「彼女がその名を知らない鳥たち」の阿部サダヲと「望み」の岡田健史が主演を務め、岩田剛典、中山美穂が共演。「そこのみにて光輝く」の高田亮が脚本を手がけた。
2022年製作/128分/PG12/日本
配給:クロックワークス
スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る

- ×

※無料トライアル登録で、映画チケットを1枚発行できる1,500ポイントをプレゼント。
2022年6月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
「つながれた犬」というタイトルだった櫛木理宇の原作を見つけたこと。白石和彌監督にサスペンスを撮ってもらいたいと考えたこと、阿部サダヲの映画における新生面を拓いたことに加え、未ださほど顔の知られていない若き俳優、岡田健治を起用したこと。俗に云う“新しさ”を求めたこと。大ヒットの要因はいくつも思い当たる。
葬式で帰省した大学生、筧井に獄中の猟奇殺人犯、榛村から手紙が届く。犯した罪は認める。でも最後の犯行は自分ではない。冤罪を晴らすために真犯人を見つけてくれないか。突然の申し出を受けた流すこともできた。だが、煮え切らない学生生活を持て余していた筧井は面会室へと向かう。弁護士事務所を訪れた筧井は24件もの榛村の犯罪履歴を辿り始める。
犯罪履歴を追い始めた筧井は、若さと情熱、探究心に目覚める。弁護士見習いの名刺を偽造してまで能動的に動き始める。監督は、グロテスクな被害写真を並べた部屋でカップ焼きそばを喰らわせる。青年の変化を瞬時に見せるこの描写は効いている。また、取材の過程における人との新たな関係性が築かれていくことも秀逸だ。
『凶悪』にあった面会室の描写は、より密室度が増した部屋で、より濃密なふたつの人格を重ねる。
その様は、高村薫の問答小説「太陽を曳く馬」のように互いの胸の内を探り、雌雄を競う駆け引きとなる。褒め称えるかと思えばいなし、突き放すかと思えば慈しみを示す。そっぽを向いたかと思えば瞳に涙を浮かべる。これは究極の心理戦だ。どちらが勝つかではなく、どちらが優位に立ち、会話というゲームの主導権を握るのか。しかも、ガラスで隔たれたはずの手が伸びて互いに触れ合うことすらある。鏡に写る相手の影が重なり、ふたりは同一の業を宿した化け物のように見えてくる。化け物、その様はコッポラの『地獄の黙示録』で、密命を帯びてカーツに対峙したウィラードの覚醒を思い出させる。
真実は藪の中。几帳面な字で書かれた獄中からの手紙が依頼する、意表を突いた真犯人探しの依頼。長髪で猫背、常に俯き加減な岩田剛典が演じた青年によるミスリードの妙。自分では決められない母の秘められてきた過去、キャンパスで青年を注視する幼馴染、観客の眼前で凶暴化していく大学生、その先にある獄中からの手紙が支配する世界。
意識のレベルがこの映画の評価を変える。阿部サダヲのチカラを監督は見極めている。画面に出し続けることではない、既に支配下に置いた彼は画面から姿を消すべきなのだ。勇気ある演出、白石和彌は止まらない。
2022年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
全体的に好キャスティングが光る。シリアルキラー・榛村を演じる阿部サダヲは、大人計画入団時に提出した履歴書の写真で顔色が悪かったことから芸名が「死体写真」になりかけたという逸話がよく知られるが、常に死んだような目をしていることもそんな印象に影響しただろう。穏やかな物腰と細やかな気配りで狙った相手の心を支配するという人物設定に、あの眼差しが説得力を与えている。
榛村に取り込まれそうになりながらも抗おうとする大学生・雅也を演じた岡田健史も、阿部とのコントラストが絶妙だ。長髪の謎の男は誰が演じているのかわからないまま、エンドロールで岩田剛典の名を見て「ああ、あの男か」とようやく気づいた。それほど見事にスターオーラを消している。
そして、雅也と同じ大学に通う灯里を演じた宮崎優。初めのうちこそ彼女の目立たず内にこもった感じが、映画の中で“映えていない”ように感じたが、次第に秘めていたものが表に出てきて、あの地味目な見かけも実は伏線だったかと驚愕させられた。過去の出演作「任侠学園」「うみべの女の子」を観たのに印象に残っていないが、本作での演技は映画関係者と観客の心にしっかりと刻まれるだろう。宮崎優を世に出す一本でもある。
2022年3月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
あまり穏やかではないタイトルだが、何をかいわんや…。色々な意味を示唆している。
それにしても、今作は阿部サダヲが白石組という盤石の態勢下で、存分に個性を発揮し、演じる喜びを体全体から解き放っている。
対峙する岡田健史も素晴らしいが、それ以上に目を引いたのは宮崎優。
今後要注目と言い切れるほどのパフォーマンスを披露し、良いシーンが随所にある。
2023年6月9日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
【映画評価:75点】
内容の美しさ。
これについては、
素晴らしいの一言。
この作品の良さは、
阿部サダヲさんの演技力の高さもありますが、
作品に引き込む力にあると思います。
総じて脚本と演出も全て凄かった。
本当に130分もあるか?
90分映画だったのでは?と勘違いしてしまう程
引き込まれていたみたいです(汗)
オチも良かったです。
気を抜いていた訳ではなかったですが、
手のひらで遊ばれたと
視聴者として体感してしまった。
ゾクっとします。
話しは変わって、
タイトルについてですが
私には理解出来なかったです。
死刑にいたる?
そして病?
これは、どういう意味なんだろうか。
作品を見ても、納得感がなかった。
[死線]とか[君たちを愛死てる]
みたいな分かりやすくて良かった気もします。
【2023.6.8観賞】