PLAN 75

劇場公開日:

PLAN 75

解説

これが長編デビュー作となる早川千絵監督が、是枝裕和監督が総合監修を務めたオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」の一編として発表した短編「PLAN75」を自ら長編化。75歳以上が自ら生死を選択できる制度が施行された近未来の日本を舞台に、その制度に翻弄される人々の行く末を描く。少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度「プラン75」が国会で可決・施行され、当初は様々な議論を呼んだものの、超高齢化社会の問題解決策として世間に受け入れらた。夫と死別し、ひとり静かに暮らす78歳の角谷ミチは、ホテルの客室清掃員として働いていたが、ある日突然、高齢を理由に解雇されてしまう。住む場所も失いそうになった彼女は、「プラン75」の申請を検討し始める。一方、市役所の「プラン75」申請窓口で働くヒロムや、死を選んだお年寄りにその日が来るまでサポートするコールセンタースタッフの瑶子らは、「プラン75」という制度の在り方に疑問を抱くようになる。年齢による命の線引きというセンセーショナルな題材を細やかな演出とともに描き、初長編監督作にして第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品。初長編作品に与えられるカメラドールのスペシャルメンション(次点)に選ばれた。ミチ役で倍賞千恵子が主演。磯村勇斗、たかお鷹、河合優実らが共演する。

2022年製作/112分/G/日本・フランス・フィリピン・カタール合作
配給:ハピネットファントム・スタジオ
劇場公開日:2022年6月17日

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

第46回 日本アカデミー賞(2023年)

ノミネート

最優秀脚本賞 早川千絵
最優秀主演女優賞 倍賞千恵子

第75回 カンヌ国際映画祭(2022年)

受賞

カメラドール(新人監督賞)
スペシャル・メンション 早川千絵

出品

ある視点部門
出品作品 早川千絵
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(C)2022「PLAN75」製作委員会 / Urban Factory / Fusee

映画レビュー

3.5設定と演出とキャスティングの妙

2022年6月19日
PCから投稿

悲しい

怖い

勿論、間近に迫る日本の近未来を見据えた視点には震えるものがある。75歳を過ぎると自ら生死を取捨選択できる制度が導入された社会というのは、実際、年金制度の見直しが決定したこの国では、すでに近未来ではないからだ。

しかし、本作のリアルはより細部に宿る。ある日突然、高齢を理由に解雇された78歳のヒロインが、役所に出向いて『まだ、働きたい』と申し出ても、担当者は年齢を理由に彼女の意向を遮断してしまうシーンには、行政の冷酷さと、まだ生かせる労働力を適切に社会に還元できない政治の対応力の遅さがあからさまなのだ。そういう意味で『PLAN 75』がいかに短絡的な制度かがよく分かる。

細部がリアルなのは、演技者たちのスキルに負うところも大きい。政治への疑問や不満を声高に訴えられず、未来へのわずかな希望に縋って生きる主人公は、これまで、庶民の喜びと悲しみを映画を介して代弁して来た倍賞千恵子ならではの役どころだし、『PALN 75』の申請窓口で働く青年を演じる磯村勇斗の、老人たちに対する優しい目線には、思わず引き込まれるものがある。

すぐそこまで来ている厳しい現実が、俳優たちの魅力によってより身近なものに思える。本作の高評価は監督の演出力とキャスティングによるものだと思う。

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共感した! 61件)
清藤秀人

4.5想像と解釈を喚起する「余白」の巧みさ

2022年6月18日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

これは、少子高齢化のような“正答”のない難題に直面したとき、誰もリスクと責任を取って解決にあたろうとせず、ひたすら先延ばしにしようとする日本的なメンタリティへの静かな抗議ではないか。本作を観ながらそんな風に思っていたのだが、鑑賞後に資料を読むと、早川千絵監督の意図は違うところにあったようだ。本作を着想するきっかけのひとつに、2016年に相模原で起きた障害者施設殺傷事件があり、「人の命を生産性で語り、社会の役に立たない人間は生きている価値がないとする考え方」への危機感が、映画を作る原動力になったとしている。

とはいえ、75歳以上が自ら生死を選択できる制度が施行されている近未来の日本を舞台にした本作は、特定の意見や主義主張を明示する映画ではない。登場人物らの苦悩や心の触れ合いを描いているが、彼らに思いのすべてを語らせるのではなく、観客のさまざまな想像や解釈を喚起する“余白”が大いにある。1983年のカンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作「楢山節考」で描かれた姥(うば)捨ての風習を想起する人もいれば、スイスやオランダなど一部の国で合法化されている安楽死と関連付ける人もいるだろう。この国では安楽死について口にすることさえタブーのような空気があるが、本作をきっかけに議論が活発化するなら良いことだと思う。

本作の主演に倍賞千恵子をキャスティングした点にも感心させられた。当たり役は「男はつらいよ」シリーズでの寅次郎の妹“さくら”であり、高度成長期に日本の国花の役名で知られた女優が、本作では衰退する日本、“日(ひ)没する国”を象徴するようなミチを演じているのだ。このアイロニカルな巡り合わせに思いをはせる観客も多いのではないか。

コメントする 4件)
共感した! 77件)
高森 郁哉

3.5今からでも始まるかも🫨

2024年3月15日
iPhoneアプリから投稿

知的

事件がきっかけ?で政府が決定した75歳になったら、安楽死の選択が出来る法案プラン75が出来る。

主人公のミチ(倍賞千恵子)が、主人に先立たれ生活がギリギリでバイトも高齢がきっかけになり解雇される。プラン75を選択するが…

いやー、考えたくない内容ですが日本の未来もこうなるかも🫢
なんて思ってしまいます。

まず、政府がテレビなどで極めて安全な保健に加入出来るよーって宣伝している。
役所の人間が、炊き出ししている場所で勧誘しているのが、ぞっとしましたね。

いかにも,世のため人の為に行っていますと、善人ズラしてる事に、人が生きるとか死ぬ事はどうでもよくて、不必要な人間は消えて下さいと。

いつからか、老害なんて言葉がでてきて当たり前に使われているが、これこそが差別意識を植え付けているんじゃないかと考えてしまう。

安楽死の問題も、生きにくい世の中になっているのは何故か?年金問題?政治の腐敗?移民問題?現在進行形やん!なんて考えさせられました。

倍賞千恵子さんの演技は素晴らしいです。

ラストは、何を思いその決断にしたのかは、不明ですが、ミチさんの選択は正解だと思わされました。

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共感した! 5件)
アキより

4.5今だからこそ、考えるべき作品

2024年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

怖い

知的

TVドラマで話題の磯村勇斗 さん&河合優実 さんが共演していることを思い出し、再度鑑賞。
近い将来、加速度的に進む超高齢化社会の中で、増え続ける高齢者対策として「75歳になったら自分で死を選べる法律」が出来た。「生きたい」気持ちと誰にも受けれず「見捨て」ていかれる現実のはざまで、主人公はプランに参加を決めるが・・・
という物語を倍賞千恵子さんが文字通りに体当たりで演じている。
映画は、理不尽な世の中に対して声高に訴えることもなく、老人たちの日常を淡々とつづって描いています。余計なセリフも派手なBGMもありません。最近はやりの大どんでん返しも伏線回収もありません。「この後どうするのだろう」という疑問を投げかけて映画は幕を下ろします。
大方の若いレビュアーには理解不能な作品かも知れません。予想通り「セリフがない」「主張が見えない」「暗い」「現実味がない」・・等々のレビューが散見されます。「老い」と「死」をまだ遠くに感じて、元気な老人たちしか知らない若者には違和感しかないと思います。でも、まもなく定年する私のような人間からみると、主人公が追いつめられてプランに参加していく過程が本当に恐ろしく感じます。
 プランに参加した老人たちの映画の中での遺体の扱いが、このプランの真の狙いを表現していて、また恐ろしい。「自ら死を選べる」ではなく「死を選ばざるを得ない」状況を作っているのだと理解するのです。
 暗く重い物語の中で、若い三人(磯村勇斗 さん&河合優実 さん、ステファニー・アリアンさん)の苦悩が、わずか一筋の光として救いとなります。特に河合優実さんの「先生」は出番は少ないものの、素晴らしいです。
 現実味がない。と感じたひとはどういう現実を見ているのか。今こそ向き合わなくてはならない命題が、ここにはあると思います。

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ベーコンえっぐ
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