菅田将暉、キネ旬主演男優賞受賞に決意新た 大林宣彦監督は「あと30年は撮りたい」
2018年2月12日 21:41
[映画.com ニュース]第91回キネマ旬報ベスト・テンの表彰式が2月12日、東京・文京シビックホールで行われた。主演男優賞は「あゝ、荒野」「火花」など八面六臂の活躍ぶりだった菅田将暉に贈られた。重量約5キロのトロフィーを受け取り、「本当に重い賞。まだまだ知らないことも多く、自分に何ができるのかもわかりませんが、ワンカットワンカット、俳優部として真摯にやっていきたい」と決意を新たにした。
2017年は歌手、声優など大忙しで駆け抜けたが、菅田本人は「自分で決めてやったことなので、『それはそうなるわな』という1年でした」とケロリと語る。「ありがたいことに『菅田くんとこれをやりたい』と言ってくれる方がいらっしゃって、目や熱意を見ていると幸せで、『ぜひ!』と言うほかない。まだ体も元気なので、倒れたりしないまでも、出来る限り頑張っていきたい」と意欲を燃やした。
また「あゝ、荒野」はヤン・イクチュンが助演男優賞、岸善幸監督が読者選出日本映画監督賞を受賞。この日のために韓国から来日したヤンは、トロフィーを振り回し「家にもう1個あるんですよ。これを持って帰り、家のトロフィーと結婚させようと思います。『あゝ、荒野』が日本映画の歴史、世界の歴史に記録されていきます。私の名前も1ページくらいに残してくれる、そんな感動を噛み締めています」と誇らしげだった。
さらに主演女優賞は、「彼女がその名を知らない鳥たち」での熱演が映画ファンの心を震わせた蒼井優の手に。京都での舞台公演から駆けつけた蒼井は、「11年前にもこの賞を頂き、またこうして呼んでもらえて光栄です」と感激の面持ちだが、「私は11年前からどれだけ成長しているんだろうか。なりたい役者像の何%まで来られたのか。正直、2%くらいかなと思います」と謙虚に明かす。それでも「たくさんの素晴らしい人との出会いによって、私はここに立たせてもらっています。私自身は本当に大したことないんです。今日も壁に3度ほど激突したくらいです。たくさんの人に手を差し伸べてもらっていて、しっかりとそれを信じ、あと98%頑張りたいです」と笑顔で結んでいた。
日本映画ベスト・テン第1位の「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」は、石井裕也監督が日本映画脚本賞、石橋静河が新人女優賞に輝いた。石橋は今作で数々の映画賞を受けているが、「これからは役を全うできるような役者になりたいと思っています。(なるためには)人の痛みがわかる人になることなのかな、と思います。精進します」と気を引き締めた。「幼な子われらに生まれ」を全身全霊で支えた、助演女優賞の田中麗奈は「(『がんばっていきまっしょい』で)新人賞を頂いてから20年ほど経ち、再びこのトロフィー。新人のころは、この重さをわかっていたのでしょうか。キネマ旬報さんに映画の道を切り開いていただいたと年々感じており、こうやって受賞という形でいただけたのは本当に嬉しいです。主演の浅野忠信さんはじめ、みんなで一緒に頑張ったで賞として、受賞を分かち合いたいです」と表情をほころばせた。
そして「花筐 HANAGATAMI」で日本映画監督賞を獲得した80歳の大林宣彦監督が登壇するや、場内を万雷の拍手が包み込む。「映画によって過去を学び、今を考え、明日をより良くしていこう。映画で、歴史の未来を変えることができます。それは『戦争なんかない平和な時代』。それを皆で手繰り寄せる、そういう素晴らしい力を皆さんが与えてくれた」と映画の素晴らしさを称えた。闘病中であるが、「新藤兼人さんは99歳まで映画を撮った。(自分も)あと30年は映画を撮りたい。がんごときで、誰が死ぬか!」と力強く宣言していた。
立川志らく
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。