幼な子われらに生まれ
劇場公開日:2017年8月26日
解説
直木賞作家・重松清の同名小説を浅野忠信、田中麗奈主演で映画化したヒューマンドラマ。中年サラリーマンの信と妻の奈苗はバツイチ同士で再婚し、奈苗の連れ子である2人の娘とともに幸せに暮らしていた。奈苗の妊娠が発覚し、長女が「本当のパパ」に会いたいと言いはじめる。前の父親である沢田とはDVが原因で離婚していたため、信と奈苗は長女が沢田と会うことに反対するが、長女は父親としての信の存在自体を辛辣な言葉で否定する。そんな長女を前妻との間に生まれた実の娘とつい比べてしまい、現在の家庭を維持することに疲弊した信は、新たに生まれる命の存在すらも否定したくなる心境になっていく。信役、奈苗役を浅野と田中が、奈苗の前夫役を宮藤官九郎、信の前妻役を寺島しのぶがそれぞれ演じる。監督は「幸せのパン」「繕い裁つ人」の三島有紀子。1996年の小説発表時から重松と映画化の約束を交わしていたという、荒井晴彦が脚本を担当した。
2017年製作/127分/G/日本
配給:ファントム・フィルム
スタッフ・キャスト
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2017年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
浅野忠信と田中麗奈のバツイチ同士の夫婦と妻側の連れ子が暮らすニュータウンと駅をつなぐ傾斜エレベーターが印象的。妻の妊娠という出来事は普通であれば祝福すべき慶事なのに、この映画ではむしろ何かの呪いのように再婚家族を苦しめていく。物語がじわじわと重く苦しくなっていくさまは、まさに斜行エレベーターで暗い地獄へ下っていくかのよう。
自暴自棄になりかける主人公の心情に共感してしまうことに、男の身勝手さを突きつけられているような気がして、自己嫌悪に陥りそう。
浅野忠信の独特の浮遊感、漂う感じがキャラクターにはまっている。田中麗奈も「葛城事件」に続き、従来のイメージを打破する役に挑んでいて好感が持てる。
浅野さんの演技が見たくて観ました。
内容はなかなかに重く、苦労して頑張っている主人公に自分を思わず重ねてしまいます。
自分は経験していないからわからないけれど、連子に対する虐待事件が後を断ちませんが、そんなのは本当に一握りで、多くの方はこの家庭の様に愛情を持って育てているのだろうと思います。
それは育ての、実のに関係なくなのでしょう。
他方、新たな子どもを授かり、その家族のバランスが崩れる時、子どもは子どもなりに自分を守るための行動を起こすのでしょう。身勝手な長女の振る舞いも納得出来ます。
それらも踏まえて家族とは。
家族とは。バラバラでも、つぎはぎでも運命共同体として生きていかなければならない。
そんな重さを受け止められるだろうか。
思わず口に出てしまった、降ろした離婚しようと言う主人公の投げやりな気持ち、それを聞いてしまう妻の気持ち。
重い気持ちのまま映画は終わり、後々まで考えてしまいます。
2021年11月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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後悔する事いっぱいあっても、目の前の問題に向き合うお父さんえらい!!
個人的に好きなジャンルではない映画でしたが、俳優陣も演出も内容も丁寧に描かれていて良作でした。
ステップファミリーならではの複雑な問題と葛藤を率直に描いています。
お父さんは仕事も大変なのに家族を大切にして、思春期の長女の反発や酷い言葉に対してあえて言い返さず、向き合おうとする姿勢心の葛藤が胸を打ちます。
いいお父さんになろうと努力しているのに、認めてもらえず「本物のパパがいい」って言い続ける長女。涙ながらに子供部屋に鍵をつけるシーン。
前妻に「前からそう。理由は聞くけど、気持ちを聞かないのね」と言われた言葉。
直木賞作家・重松清の同名小説を浅野忠信、田中麗奈主演で映画化したヒューマンドラマ。
監督は「幸せのパン」「繕い裁つ人」の三島有紀子。1996年の小説発表時から重松と映画化の約束を交わしていたという、荒井晴彦が脚本を担当した。
2021年7月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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主人公田中信(浅野忠信)は斜行エレベーターに乗って通勤、途中に徒歩や電車という移動手段もあるのですが、なぜだか、彼の日常が会社と自宅を往復するだけの世界観にも思えた。信も妻奈苗(田中麗奈)もバツイチ同士での再婚であり、奈苗の連れ子である小6の薫(南沙良)と幼稚園の恵理子(新井美羽)の4人暮らし。信には元妻友佳(寺島しのぶ)との間に沙織(鎌田らい樹)がいて、3カ月に1度面会しているのです。
信が沙織と遊園地で過ごし、帰宅すると薫も恵理子も奈苗が妊娠していることを知っていた。恵理子は妹か弟ができるとはしゃいでいたのだが、薫は不機嫌そのもの。沙織と会っていることも知っていた薫との溝は徐々に深まり、やがて「本当のお父さんに会わせてよ」と口走る薫。恵理子は幼すぎたために信が義父であることも理解していないが、薫は本当の父親沢田(宮藤官九郎)に殴られた経験もあるほどDVの父親だったし、会いたいという言葉もどことなく嘘くさいのだ。実の娘沙織が素直でいい子だったためか、同じ年の薫が思春期であるために本音さえ見抜けないでいた信だった。
家庭での奮闘ぶりはダメ親父というより、真剣に悩んでしまうタイプ。いつかはキレて沸騰しかねないと予想させる。おまけに会社では出向リストに載ってしまい、内勤職から倉庫番と異動させられ、昇給も望めない状況に。家庭と会社の鬱憤を一人カラオケで晴らそうともするが、根本的解決にはならず、薫と沢田を会わせる考えに向っていくのだった。
元現とも夫婦の関係が脆いところや、子ども目線にならないと確執は改善しないところなど、注目すべき点は多い。ギャンブル好きになってしまった沢田のダメっぷりも、落ちるとこまで落ちてしまったと感じるが、料理人という定職も持っていたりする。いざ会わせようとセッティングした時には着慣れないスーツを着たり、プレゼントを持っていたりするが、これも与えてしまった10万円が資金となったのだろう(やっぱりダメ男でしょ)。もっとヤバいのは信の方で、50万円を渡して薫を引き取ってもらおうとためらったシーンにはオイオイと呟いてしまいそうになりました。
一方では、元妻友佳の再婚相手の教授が41歳という若さで末期がんと診断され、余命わずかという状況。友佳からは「理由ばかり聞いて、気持ちは聞かない」となじられ、沙織からは「血のつながらない義父の死を前にしても悲しめない」と打ち明けられる信。大団円の前には必ずディザスターが来るかのごとく、突如豪雨となって、危篤となった義父のもとへ行かねばならない沙織。車で送ろうとするものの、車の中には奈苗と恵理子がいたのだ。ぎくしゃくした人間関係が“友達”というキーワードでまとめられる、巧い構成だった。
最終的にはすべての人間関係が上手くいきそうな予感をさせるので、ホッとさせられました。ストーリーそのものは普通な感じだし、大学准教授になったキャリアウーマンがなぜ沙織を引き取ったのかもわからなかった。しかし、役者の演技が皆すごい!一番良かったのは奈苗も一人カラオケを楽しんでいるシーン。
【2017年11月映画館にて】