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人体に寄生する“エイリアン“の恐怖を描いた『エイリアン』シリーズ(1979-)と、宇宙から飛来した狩人“プレデター“と人類との戦いを描いた『プレデター』シリーズ(1987-)がコラボレーションしたSFパニックアクション『エイリアンVS.プレデター(AVP)』シリーズの第2作。
前作の直後、プレデターの体内から生まれた新型エイリアンにより彼らの宇宙船は地球へと墜落。逃げ出したエイリアンはガニソン郡にある閑静な田舎町へと侵入し、住人達を恐怖に陥れる。
一方その頃、とあるプレデターが異常を探知。事態を収束させるため、たった1人で地球へと赴く…。
「勝手に戦え!」と誰もが叫んだ前作から3年。またしてもヤツらが帰ってきた。
南極に隠された古代遺跡というバラエティ番組みたいなところから一転、今回はアメリカの地方都市がバトルの舞台。一般市民を豪快に巻き込んで、前作以上の大迷惑が展開される事となります。
監督はジャンク映画界の巨匠、ポール・“ダメな方“・アンダーソンからグレッグ&ストラウス兄弟へとバトンタッチ。彼らは『タイタニック』(1997)や『デイ・アフター・トゥモロー』(2004)といった大作映画にVFXアーティストとして関わってきた人物であり、本作で長編映画監督デビューを果たした。
まぁ正直、前作の出来が散々だったもんで今作を観る気なんて全く起こらず、「もう結果だけ教えろ!」なんて思っていた訳なんですが、いざ意を決して観てみるとこれがなかなかに悪くない。いや、それどころかかなり楽しいぞこれっ!
「関口宏の東京フレンドパーク」でもやってんのかと言いたくなるほど、アトラクション感覚の強かった前作。その反省からか、今作では驚くほどモンスターホラー要素が強まっている。とにかく人が死にまくりっ!子供も妊婦も容赦なし。老若男女、一切の差別なく、満遍なく皆殺し。これが本当のジェンダーレス!
さらに嬉しい事に、『用心棒』(1961)でお馴染みの「手首咥え犬」まで登場♪下手すぎる恐怖表現。だがそれが良い!
涙を誘うのは、儀式にエイリアンを用いたがために皆殺しにされてしまった無能な仲間たちの尻拭いの為に、たった1人でエイリアンに立ち向かう事になってしまったプレデターくんの奮闘っぷり。エイリアン退治から痕跡の抹消までを1人でこなすワンオペっぷりには、牛丼チェーン店の店員さんもさぞ舌を巻いた事だろう。
どう考えても1人の手に負える事態ではないにも拘らず、全く応援を遣さない本社。ボロボロに傷つきながらもワンオペで業務を熟すが、最終的にはエイリアンもろとも核爆弾でぶっ飛ばされるというあまりにも悲惨な最期。本作はプレデターの過重労働の実態を暴いた社会派映画でもある。これはもう地球外生命体版「蟹工船」。現代に蘇ったプロレタリア文学だっ!
VFX畑出身の監督を起用していながら、プレデターのDNAから誕生した新型エイリアン「プレデリアン」の姿がイマイチ判然としないのは不満だし、群像劇にこだわるがあまり編集がぶつ切りで映画がブサイクになってしまっているなど、問題点も多く目に付く。身も蓋も無い事言うと、エイリアンvsプレデターの勝敗なんて1mmも興味ないしね。もう結果だけ教えろ!
だがしかし、それを差し引いても今作は十分に魅力あるモンスターホラー映画に仕上がっていると思う。
現代の郊外都市をエイリアンが襲う、という誰もが観たかったヤツを存分にやってくれた。それだけでも満足なのに、「最も恐ろしいのは人間だった…」というクリシェなエンディングまで用意してもらって、これで文句言ってたらバチが当たるわっ!
…と、個人的には満足したのですが、世間の批評的には総スカンを喰らってしまい、その結果、興行成績は悪くなかったのに続編の計画は白紙となってしまいました。
まあ実際、この続きが観たいかというと別にそんなことは無いし、この後『エイリアン』シリーズも『プレデター』シリーズも大復活を遂げるわけだから、ここで『AVP』シリーズが打ち切りになった事は結果として良かったのかもしれない。……でも、もうそろそろ復活してくれてもええんやでっ!!