「わたし達はおとな」木竜麻生の生涯ベスト映画、最近感銘を受けた作品は?【あの人が見た名作・傑作】
2022年6月17日 12:00
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映画を見に行こうと思い立ったとき、動画配信サービスで作品を鑑賞しようとしたとき、何を見れば良いのか分からなかったり、選択肢が多すぎて迷ってしまうことは誰にでもあるはずです。
映画.comでは、企画「あの人が見た名作・傑作」を更新中。映画業界、ドラマ業界で活躍する著名人がおすすめする名作、傑作をご紹介していきます。第4回は、恋愛映画「わたし達はおとな」に出演した木竜麻生さんです。
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14歳の時に原宿でスカウトされ、大学進学を機に上京し、本格的に芸能活動をスタート。映画デビューは、2014年の大森立嗣監督「まほろ駅前狂騒曲」です。18年には、瀬々敬久監督作「菊とギロチン」で300人の中から花菊役に選ばれ映画初主演を務めました。また、同年に公開された「鈴木家の嘘」(野尻克己監督作)でもオーディションを兼ねたワークショップで400人の中から選ばれ、ヒロインの鈴木富美役を演じています。この2つの作品の演技が評価され、毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞など数々の映画新人賞を受賞。近作には、瀬々敬久監督作「とんび」、松本優作監督作「ぜんぶ、ボクのせい」などがあります。
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生涯のベストを選ぶのは、難しいですね……。何度も見てしまうのは「もののけ姫」なんです。子どもの頃のアニメ映画といえば、やっぱりスタジオジブリ。自分にとっては、それほど存在感が強かったんです。コロナ禍になった頃(=2020年6月)、映画館でのリバイバル上映が行われましたよね。その時、改めて観に行きました。それまではテレビの画面でしか観たことがなかったのですが、スクリーンで鑑賞してみると、情報量が全然違ったんです。
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子どもの頃は、とにかくサンとアシタカを応援するばかりだったのですが、今鑑賞してみると「色々な立場の人たちがいる」という見方ができるようになっていました。それぞれに正義があって、信じるものがある。大人になったからこそわかった感じ方、面白さというものがあるんですよね。
それに、初めて「もののけ姫」を観たのがテレビ画面だったからこそ、スクリーンでの鑑賞はとても鮮明でした。サンとアシタカが少しずつ歩み寄っていくという点はずっと好きなんですが、特に注目してしまったのは、エボシ御前側を描いている時の光景です。アシタカは、その光景を中立の立場で見つめています。エボシ御前が仕切る「たたら場」、そこに居る人々の様子、そして彼らの話を聞いているアシタカの“顔”をしっかりと憶えています。
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他の映画でも、こういうシーンが好きなんです。大事なことを話している人の“顔”も気になるんですが、その話を聞いている人の“顔”に注目してしまう。「この人はどんな事を思いながら、話を聞いているのだろう?」と考えてしまうんです。
実は「風の谷のナウシカ」もスクリーンで見ました。「もののけ姫」と同様に、それまではテレビでしか観たことがなかったからです。リバイバル上映のことを知った時は「そうか……『風の谷のナウシカ』も『もののけ姫』も映画なんだ!」と改めて気づかされました。これって当たり前のことなんですけどね(笑)。そんなことを考えていたら「やっぱり映画は、映画館で観たいじゃないか!」と。すごく楽しい経験でした。
1997年にスタジオジブリが発表した長編アニメーション。宮崎駿が監督、原作、脚本を担当している。当時の日本映画歴代興行収入第1位を記録し、アニメーション作品として初の日本アカデミー賞最優秀作品賞(第21回)に輝いた。舞台は室町時代の日本。タタリ神にかけられた呪いを解くため西方へ旅立った少年アシタカは、人間でありながら神々の側につく“もののけ姫”と呼ばれる少女サンと運命の出会いを果たす。声優として、松田洋治、石田ゆり子、田中裕子、小林薫、美輪明宏、森繁久彌らが参加している。
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リバー・フェニックスとリリ・テイラーが出演している「恋のドッグファイト」です。友人に薦められて、配信サービスで観ました。その友人とは「こんな映画がよかったよ」とか「この作品が面白かった!」と共有し合うことがあって、その時は「マイ・プライベート・アイダホ」について話し合っていたんです。「このシーンが良い!」「これが格好いいんだよね……」という会話の流れのなかで「『恋のドッグファイト』って知ってる? ここに出ているリバー・フェニックスも見た方がいいよ」と教えてくれました。
海兵隊員のバードレース(フェニックス)と、喫茶店で働く女の子のローズ(テイラー)が出会って……というお話なんです。バードレースが無茶なことをしたり、突拍子もないことをする度に「なんでそんなことをするの?」「なんでそんな言い方になるの?」と思ってしまうんですよね。でも、それに対して、ローズは笑っていたり、冗談で切り返すんです。
そのやり取りを見ているうちに、バードレースがチャーミングに思えてきたんです。この感覚にびっくりというか……感動しちゃったんです。ローズが、バードレースを“どう見ているのか”という点に触れた時、そんな感情が芽生えました。この出来事に、ひとりで興奮してしまって……(笑)。
友人に感想を伝えている時は、勝手にテンションがあがってしまいました。「あの行動は嫌だよね!? でも、あの展開のおかげで、彼のことを嫌いになれなくなっちゃったんだよ!」と感じたことは全部伝えてしまうほど。自分にもこんな一面があるんだなぁ、と。こんなことは滅多にない経験で「これって、すごく素敵だ!」と思えたんです。「自分自身の感受性を楽しめている」と言えばいいんでしょうか。自分はこんな風に感じることができるという“発見”があった映画だったんです。
リバー・フェニックスが「マイ・プライベート・アイダホ」に続いて出演した青春ラブストーリー。1963年、サンフランシスコ。ベトナムへの出征を目前にした若き海兵隊員たちは、誰が最も可愛くない女の子を連れてくるかを競うゲーム「ドッグファイト」に興じていた。その中の1人である青年バードレースは、喫茶店で働く冴えない少女ローズに目をつける。しかし、バードレースは次第にローズにひかれていき……。監督は、ナンシー・サボカ。フェニックスはバードレース役で出演し、ローズをリリ・テイラーが演じている。
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撮り方がとても面白いんです。恋愛が関わる映画で、こういう見つめ方、こんな距離感で対象をとらえている作品は、なかなか観たことがありません。これこそ加藤監督の“眼差し”。最初から最後まで一貫しています。加藤監督が撮れば、こんな空気感になるということを実感できる作品です。映画という非日常のものから、すぐに日常の雰囲気を感じとることができると思います。この映画の中には「暮らしがある」ということを感じ取ってほしいです。
これも悩ましい質問ですね……。最近は、衝動的に映画館へ行くことができているんです。この前はアップリンク吉祥寺で「アネット」(レオス・カラックス監督)を観ました。「息すらも止めてご覧ください」という言葉にはびっくりしちゃいましたね(笑)。白洲正子さんの著書に書かれていた「何か書くという事は、ある程度、独断でやらぬかぎり出来るものではありません。いや、ついには徹頭徹尾独断でないかぎり、人は何一つやってのける事は出来ないのです」という言葉を思い出しました。カラックス監督が撮るからこそ、映画の自由さというものを、お客さんは感じることができるのかもしれません。「これは映画だ! だから、なんでもいい!」という意志を感じました。
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私は、作品に少しでも興味を抱いたら、なるべく劇場に行こうと思っているんです。チケットを買って、席に座り、アナウンスを聞いた後、館内が暗くなる。「どういう人が来ているのか?」ということも気になったりします。そういう場にいるのが本当に好きなんです。
だからこそ、クランクイン直前に劇場へ行けたら、モチベーションが上がりそうですよね。例えば、かつて自分が座っていた座席で、今も誰かが映画を鑑賞しているはず。その人は「私の出演作を見にきてくれたのかもしれない……」と考えることだってあります。「映画館に行く」ということは、その可能性を身近なものとしてとらえることができますし、撮影にも「楽しい事をしに行くぞ!」という考えで臨めると思っています。
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(C)2022「わたし達はおとな」製作委員会
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