空白
劇場公開日 2021年9月23日
解説
「ヒメアノ~ル」の吉田恵輔監督によるオリジナル脚本作品で、古田新太主演、松坂桃李共演で描くヒューマンサスペンス。女子中学生の添田花音はスーパーで万引しようとしたところを店長の青柳直人に見つかり、追いかけられた末に車に轢かれて死んでしまう。娘に無関心だった花音の父・充は、せめて彼女の無実を証明しようと、事故に関わった人々を厳しく追及するうちに恐ろしいモンスターと化し、事態は思わぬ方向へと展開していく。悪夢のような父親・添田を古田、彼に人生を握りつぶされていく店長・青柳を松坂が演じ、「さんかく」の田畑智子、「佐々木、イン、マイマイン」の藤原季節、「湯を沸かすほどの熱い愛」の伊東蒼が共演。
2021年製作/107分/PG12/日本
配給:スターサンズ、KADOKAWA
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2021年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ある女子中学生の交通事故死の本当の加害者は誰なのかを問う作品だ。
万引きをした女子中学生を、万引きされたスーパーの店長が追いかけた。女子は逃げる時に道路を飛び出し車に轢かれて死んだ。万引きの被害者は店側だが、事故に視点を変えると店側は加害者に見える。女子は学校でいじめられていた。学校側はそれを隠そうとする。では、真の加害者は学校だろうか。女子の父親は、娘につらく当たる駄目な父親だった。しかも、自分の駄目さを自覚できていない。では、彼は加害者なのだろうか。しかし、最愛の娘を失ったという点では、被害者ともいえる。
事故を起こした女性運転手が父親に謝罪に来る。自責の念から彼女は自殺する。この自殺の加害者と被害者は誰だろうか。スーパーの店長はワイドショーで女子中学生の死の責任を問われ、スーパーには人が寄り付かなくなり、スーパーを閉店させることになった。ここの件については、彼は被害者となる。こんな風に、被害者と加害者が入れ替わり続ける。
理不尽な死の責任が本当に誰にあるのか、それはわからない。誰かを悪く言えば、だれかを加害者に仕立て上げれば解決できるほどにこの世界は単純にできていない。その複雑を真正面から見据える勇敢な作品だ。
2021年9月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会
スーパーで化粧品を万引きしたことを疑われ、発作的にその場から逃走した女子中学生が交通事故死。彼女を追い詰めた店長の責任を追求する父親は、さらに、娘が通っていた学校側の型通りの対応を批判。一方、メディアは店長を殺人者のように追い回し、客足が遠のいたスーパーは閉店に追い込まれる。偽善と悪意が渦巻くうんざりするような世の中で、父親は、1人、猛獣のように吠え続ける。しかし、彼は娘が生前発信していた"かすなSOS"を聞き逃していた。
吉田恵輔監督は日々のニュースで見聞きしてきたような、そう珍しくもない事柄をヒントにオリジナル脚本を完成させた。細部にまで神経が行き届いた本作の魅力は、怒りながらもやがて自分と向き合わざるを得なくなる父親を演じる古田新太を筆頭に、メインキャストは勿論、いかにも無責任そうな学校長や、地味だが人が良さそうなスーパーの男性店員、等々、脇役が絶妙な点が挙げられる。「確かにこういう人いる」と思わせる、実は定型に陥らない素朴でリアルな脇役たちの演技によって初めて、物語はリアリティを持ち得たのだと思う。
脇役を侮るなかれ!
そういう意味で、これは限られた予算内でディテールに時間をかけた1級の作品。そんな細かな積み重ねの上に、感動的なラストが訪れる。
2021年9月20日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
吉田恵輔監督の作品はほぼ全て観ているが、どれもこれも何を伝えたいのか、何を訴えたいのかが明確に伝わり、ガッカリさせられた記憶というものが殆どない。
そんな中で、スターサンズの河村光庸氏と2度目のタッグを組み、世に放とうとしているのが今作。メインビジュアルで古田新太の姿を見た方々は、娘を失った父親がどんどんモンスター化していく様を思い浮かべるかもしれないが、それだと既視感のあるものになってしまう。
吉田監督はそんな安直な人ではない。古田の魅力を最大限に引き出すための“生贄”として、いまの日本映画界にとって欠かすことのできない松坂桃李を差し出すというキャスティングの妙にうならされる。
2022年5月22日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
CGは最小限で、派手演出もなし。ストーリーはあらすじ通りでそれ以上でも以下でもない。
それでも人間の感情表現描写オンリーでこんなにも面白い。脇役それぞれが最高に輝くし主演の古田新太&松坂桃李のどうしようもない普通の人間っぽさが染みる。
事故に関わった人たちが何を考えて、変化にどう対応して行くか。
コストで海外に勝てない邦画こそこうあるべきと思わせてもらいました。
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