空白

劇場公開日:

空白

解説

「ヒメアノ~ル」の吉田恵輔監督によるオリジナル脚本作品で、古田新太主演、松坂桃李共演で描くヒューマンサスペンス。女子中学生の添田花音はスーパーで万引しようとしたところを店長の青柳直人に見つかり、追いかけられた末に車に轢かれて死んでしまう。娘に無関心だった花音の父・充は、せめて彼女の無実を証明しようと、事故に関わった人々を厳しく追及するうちに恐ろしいモンスターと化し、事態は思わぬ方向へと展開していく。悪夢のような父親・添田を古田、彼に人生を握りつぶされていく店長・青柳を松坂が演じ、「さんかく」の田畑智子、「佐々木、イン、マイマイン」の藤原季節、「湯を沸かすほどの熱い愛」の伊東蒼が共演。

2021年製作/107分/PG12/日本
配給:スターサンズ、KADOKAWA
劇場公開日:2021年9月23日

スタッフ・キャスト

監督
脚本
吉田恵輔
企画
河村光庸
製作
河村光庸
エグゼクティブプロデューサー
河村光庸
プロデューサー
佐藤順子
アソシエイトプロデューサー
山本礼二
ラインプロデューサー
道上巧矢
撮影
志田貴之
照明
疋田淳
録音
田中博信
装飾
吉村昌悟
衣装
篠塚奈美
ヘアメイク
有路涼子
編集
下田悠
音楽
世武裕子
助監督
松倉大夏
キャスティング
田端利江
制作担当
保中良介
題字
赤松陽構造
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(C)2021「空白」製作委員会

映画レビュー

4.5入れ替わる被害者と加害者

2021年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ある女子中学生の交通事故死の本当の加害者は誰なのかを問う作品だ。
万引きをした女子中学生を、万引きされたスーパーの店長が追いかけた。女子は逃げる時に道路を飛び出し車に轢かれて死んだ。万引きの被害者は店側だが、事故に視点を変えると店側は加害者に見える。女子は学校でいじめられていた。学校側はそれを隠そうとする。では、真の加害者は学校だろうか。女子の父親は、娘につらく当たる駄目な父親だった。しかも、自分の駄目さを自覚できていない。では、彼は加害者なのだろうか。しかし、最愛の娘を失ったという点では、被害者ともいえる。
事故を起こした女性運転手が父親に謝罪に来る。自責の念から彼女は自殺する。この自殺の加害者と被害者は誰だろうか。スーパーの店長はワイドショーで女子中学生の死の責任を問われ、スーパーには人が寄り付かなくなり、スーパーを閉店させることになった。ここの件については、彼は被害者となる。こんな風に、被害者と加害者が入れ替わり続ける。
理不尽な死の責任が本当に誰にあるのか、それはわからない。誰かを悪く言えば、だれかを加害者に仕立て上げれば解決できるほどにこの世界は単純にできていない。その複雑を真正面から見据える勇敢な作品だ。

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杉本穂高

4.5脇役を侮るなかれ!細部に神経が行き届いた1級の作品

2021年9月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

幸せ

スーパーで化粧品を万引きしたことを疑われ、発作的にその場から逃走した女子中学生が交通事故死。彼女を追い詰めた店長の責任を追求する父親は、さらに、娘が通っていた学校側の型通りの対応を批判。一方、メディアは店長を殺人者のように追い回し、客足が遠のいたスーパーは閉店に追い込まれる。偽善と悪意が渦巻くうんざりするような世の中で、父親は、1人、猛獣のように吠え続ける。しかし、彼は娘が生前発信していた"かすなSOS"を聞き逃していた。

吉田恵輔監督は日々のニュースで見聞きしてきたような、そう珍しくもない事柄をヒントにオリジナル脚本を完成させた。細部にまで神経が行き届いた本作の魅力は、怒りながらもやがて自分と向き合わざるを得なくなる父親を演じる古田新太を筆頭に、メインキャストは勿論、いかにも無責任そうな学校長や、地味だが人が良さそうなスーパーの男性店員、等々、脇役が絶妙な点が挙げられる。「確かにこういう人いる」と思わせる、実は定型に陥らない素朴でリアルな脇役たちの演技によって初めて、物語はリアリティを持ち得たのだと思う。
脇役を侮るなかれ!

そういう意味で、これは限られた予算内でディテールに時間をかけた1級の作品。そんな細かな積み重ねの上に、感動的なラストが訪れる。

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清藤秀人

4.0吉田恵輔監督がまた傑作を撮った

2021年9月20日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

吉田恵輔監督の作品はほぼ全て観ているが、どれもこれも何を伝えたいのか、何を訴えたいのかが明確に伝わり、ガッカリさせられた記憶というものが殆どない。
そんな中で、スターサンズの河村光庸氏と2度目のタッグを組み、世に放とうとしているのが今作。メインビジュアルで古田新太の姿を見た方々は、娘を失った父親がどんどんモンスター化していく様を思い浮かべるかもしれないが、それだと既視感のあるものになってしまう。
吉田監督はそんな安直な人ではない。古田の魅力を最大限に引き出すための“生贄”として、いまの日本映画界にとって欠かすことのできない松坂桃李を差し出すというキャスティングの妙にうならされる。

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共感した! 53件)
大塚史貴

4.0☆☆☆☆ 〝 西洋的決闘主義と、日本人特有の日和見主義との対立 〟...

2024年3月18日
iPhoneアプリから投稿

☆☆☆☆

〝 西洋的決闘主義と、日本人特有の日和見主義との対立 〟

その昔にこんな出来事があった。

日本の企業の電子レンジを購入した人が、ある日その電子レンジで濡れたペットの猫を乾かすとゆう信じられない事をしたのだ!

結果は言わずとも解る。
しかし、その人はその後、我々日本人には思いもつかない行為に出る。
何と!その電子レンジを発売した日本の企業を相手に訴訟を起こしたのだ!

その理由が、、、

電子レンジの取説には《猫を入れて温めてはいけない》とゆう文言が無いから…との理由だった。
全くもって有り得ない訴訟なのだけど。あろうことか、この裁判で日本の企業は負けてしまう。
しかも、訴訟を起こした相手には数十億円とゆう大金を得てしまった。
当時のニュース番組での報道を「信じられない!」と思いながら見ていた人は多いと思う。

この作品の中で対立する古田新太と松坂桃李との関係は表裏一体であり、(かなりの極論かも知れないとは思いつつ)ある意味では西洋と東洋(特に日本的な)考え方のぶつかり合いなのかも…と思いながら、スクリーンを眺めていた。

この作品には色々な人物が登場しているのですが。それぞれの性格には、色々な【悪】とも言いきれない(おそらくは)持って生まれた性格ゆえの小さな利己主義が内包していた…と言えるでしょうか。

●自分の考えこそは絶対であり、他人の意見等には一切の耳を貸さない者。
●取り敢えず面倒な事象があれば謝っておけばいいだろう…と考える、日本人特有の日和見主義者。
●ある程度の事実・又はそれに近いのかも?と思いながらも、確かめようともせずに事実から逃げ隠れする者。
●正義感が強すぎる為に、ついつい回りを巻き込んでしまい他人の気持ちを踏みにじってしまう者。

多少の思い違いがあるかもしれないのですが。作品を観終わっての単細胞男の発想だと思って頂けたら…と思いながら、もう少しだけ作品を観た感想を💧

先程指摘させて貰ったそれらの人達は、少しばかり度を過ぎてしまったとしても、なかなかそれには気がつかない。
ところが作品中には、もっと【度が過ぎる輩】が登場し、〝 正義とゆう盾を振りかざし 〟登場人物達の真綿をジワジワと締めて来るのだから本当にタチが悪い。
テレビ等のマスメディアやネット民達には、《面白ければ何でもOK》であり。全ては自分達がどれだけの期間、楽しめるのか…だけにしか興味がない。
対象者がそれに対して激しく反応を見せたりしたら、それだけでもう白飯が3杯でも4杯でも食べられるくらいに満足感が増す。
〝 楽しければ全て良し! 、のネット民からすると、《人の不幸は蜜の味》とばかりに、不幸が増せば増すほど別腹なのだ!

いつしか、そんな姿を現さない悪の空気に耐えられなくなって行く関係者達。
そして、少しずつ疲弊し。遂に悲劇の連鎖は雪崩の様に関係者達の心を押し潰してしまう。

登場人物達が表裏一体・合わせ鏡の関係にあるのは指摘されてもらいました。
主に娘を亡くしてしまった事で、そのきっかけを作ってしまった2人の関係性。
古田新太と松坂桃李は、作品を支える核となる2人だけに当然の如く表裏一体の関係と言って良いと思います。
娘の無実、、、と言うよりも、己れの信念と性格ゆえに一切の妥協はせず、他人の意見等は聞く気は毛頭ない男と。自分は間違ってはいないのだけど、その性格と立場から直ぐに妥協する道を選んでしまう弱い男。

悲しい最期を迎えてしまう娘と、その瞬間に偶然にも居合わせてしまった或る人物の2人。
人とのコミュニケーションを取るのが苦手な性格ゆえ、ついつい逃げてしまった事が悲劇を生んでしまった。
一方で、コミュニケーションを何度も取ろうとするも。現実の大きさに押し潰されてしまい、現実逃避へと走ってしまう。

ダブル主演の古田新太と松坂桃李が作品を支えている…と一見すると見えるのですが。実はこの2人よりも、ひょっとすると最重要なのでは?と思える登場人物が2人いる。

それが寺島しのぶと片岡礼子の2人。

寺島しのぶは見ていれば解る通りに、松坂桃李側で奮闘するのですが。奮闘すればするほどに、松坂桃李の心と身体を精神的に破壊して行く。
彼女も古田新太と同様に、自分の信念にブレがない性格。
同じボランティアの人物に「やる気はあるの!?
」と叫ぶ姿は、学校の先生役の趣里が、亡くなった古田新太の娘に対して感じていた「無気力に見える」…と語った思いと、熱量には差があるものの、この2人もまた合わせ鏡の様に思える。

その意味では、身体的に松坂桃李を破壊して行く《怪物》が古田新太ならば。精神的に破壊して行く《怪物》は寺島しのぶでもあり、共に、「絶対に自分の考えは正しい!」との信念に溢れる古田・寺島の2人も或る意味では表裏一体で合わせ鏡の関係性にあるのでは?と言える。

もう1人の重要な人物が片岡礼子。

彼女は作品中では特に目立たない。
或る人物の横でそっと寄り添っているだけで台詞も多くない。
彼女のところにも悲劇は忍び寄りその心を砕きに来る。
しかしながら彼女の心は折れる事はなく気丈に振る舞った。

「もう許してあげて下さい!」

彼女は気力を振り絞り古田新太に哀願する。

その言葉の一言一言は、古田新太にとっては2度目の言葉だった。
全く同じ言葉をその前に松坂桃李の口から聞いていたが、古田はその言葉を単なる口から出まかせ的な意味でしか聞いていなかったのだった。

それだけに、、、

古田は、今この時。その立場が逆転してしまったのだとゆう現実をその言葉で理解し。自分は今や松坂桃李と同じなのだと悟り無言となる。

この悲劇の連鎖のきっかけとなったのは一体何だったのか?

作品中では趣里演じる学校の先生の証言が何度か挿入される。
先生と生徒の関係で接した限りでは、死んでしまった彼女は正直言ってよく分からない生徒だった。
彼女には真相は分からない。始めの内は理解しようとも感じていない風に見える。
どうしても憶測での発言しか出来ずに古田新太の怒りを増幅させる。

「証拠を出すよ!証拠を!」

何度も何度も古田新太は叫ぶ。

古田にとって確かな証拠こそが唯一の信じられるモノ。

やがてその言葉に呼応されたのか趣里は「ひょっとしたら…」と、サインが出ていたのかもしれないと思い始めて来る。
しかし学校側は、真相を確かめようとはしない。
やるだけの事はやったとの考えなのか?それとも、、、【身の保身】に走ったのか。

●他人を追い詰めて行く行動の【悪】
●真実の追求を辞めてしまう【悪】
●都合の良い方向に嘘をでっち上げる【悪】
●ただ面白ければ良いと考え、罪の意識の欠片も持たない【悪】

吉田恵輔監督は、そんな問い掛けを観客に提示させ、様々な思いを感じさせながら。最後の最後に思いもよらない冷や水を、観客の頭を目掛けて浴びせて来る。

「証拠を出せ!」と何度も叫んだ古田新太。

彼は知ってしまったのだ、娘の真実を。

古田新太は、悪魔の前に跪き悪魔と契約を結んでしまったのだ!
それこそが、この作品中に提示される【悪】の中では最大の【悪】の行為。
今、古田新太は。【身の保身に走る悪人】や、【自分が楽しければ良い】と考える輩よりもタチが悪い人間に成り下がってしまったのだ!

〝 真実を隠蔽してしまう最悪の【悪】の人間へと 、

2021年 9月24日 TOHOシネマズ錦糸町オリナス/スクリーン8

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