ぜんぶ、ボクのせい

劇場公開日:

解説

自主制作映画「NOISE ノイズ」で注目を集めた松本優作監督が、それぞれ孤独を抱える男女3人の絆とひとりの少年の成長を描いたドラマ。

児童養護施設で母の迎えを待ちながら暮らす優太は、ある日偶然母の居場所を知る。母に会うため施設を抜け出す優太だったが、たどり着いた先で見たのは、同居する男に依存し自堕落な生活を送る母の姿だった。絶望に苛まれ当てもなく海辺を歩く優太は、軽トラックで暮らすホームレスの男・坂本に出会う。坂本は何も聞かず優太を受け入れ、2人はわずかな日銭を稼ぎながら寝食をともにするように。裕福な家庭に生まれながらも居場所がない少女・詩織とも知り合い、心優しい彼女にひかれていく優太だったが……。

「とんび」の白鳥晴都が主演を務め、「ある船頭の話」の川島鈴遥がヒロイン・詩織、オダギリジョーがホームレスの坂本を演じる。

2022年製作/121分/日本
配給:ビターズ・エンド

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(C)2022「ぜんぶ、ボクのせい」製作委員会

映画レビュー

3.5松本優作監督の恵まれた商業映画デビュー作。ただし話にはいろいろ難が

2022年8月15日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

1992年生まれの松本優作監督は自主映画が海外の映画祭で高評価され、CMやドラマにも活動の幅を広げてきた新鋭で、本作が初の商業映画となる。文化庁の文化芸術振興費補助金の対象となったこともあり、オダギリジョー、片岡礼子、仲野太賀、木竜麻生、松本まりか、若葉竜也といった中堅から若手の豪華なキャストが揃い、恵まれたデビュー作となった(脚本も兼ねている)。

主人公・優太を演じる白鳥晴都の悲しい光を宿した目は、近年の作品でいえば大森立嗣監督作「MOTHER マザー」の奥平大兼や、レバノン映画「存在のない子供たち」に主演したゼイン・アル・ラフィーアに通じるような観客の心を締めつける力がある。ただまあ、優太が発する題名の「ぜんぶ、ボクのせい」という台詞は、そこに思い至るまでの心理描写が乏しいせいで唐突だし、嘘っぽく響く(大人の作り手に言わされたことが透けて見えてしまう)。もし本気でそこまで思い込めるのだとしたら、逆に自分の影響力を過大評価していることになるが、もちろんそんなキャラクターではない。

ほかにも優太が失踪後の施設の対応や、人目につく漁港近くでホームレスと一緒に車上生活を送る少年がいつまでも通報されなかったり、制服姿の女子高生がラブホテルを出入りしたりと、話のあちこちで現実味が乏しいのもひっかかる。母親から育児放棄され施設暮らしになった子、親からの虐待によるトラウマに苦しむ男など、社会問題を提起するが、その先のメッセージが弱いのも難点。不遇な人、社会の底辺でもがく人を描き、同情を誘うのは結構だが、その先を考える姿勢、では周りに何ができるか、本人たちはどうすればよかったのか、という視点が希薄に感じられた。

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共感した! 7件)
高森 郁哉

3.5【”火は自分の心を映し出す・・。”ラスト、優太が、氷の様な静かな怒りの眼で、刑事に向かって言った言葉が突き刺さった作品。白鳥晴郁君、役者続けて欲しいなあ・・。】

2022年10月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

<Caution! 内容に触れています。>

■主要登場人物は、3人。

 1.母(松本まりか)に捨てられ、施設で暮らす優太。母に会いたくて、施設を抜け出すも、母は男(若葉竜也)と暮らしていて、居場所はない。

 2.幼い頃、母から虐待を受けたことがトラウマになっている海岸に停めた故障した軽トラで暮らす坂本(オダギリジョー)。
ー 優太と坂本は劇中でも、坂本自身が語っているが境遇が似ている。それだからか、優太は初めて明るい表情で廃品回収を手伝う。廃品回収業の男(仲野大賀)も、良い男である。
  ついでに言えば、オダギリジョーって、良い役者だなあ、と再認識する。ホームレスを演じても、崩れた姿にならない所が、凄い。-

 3.幼い頃に母を亡くした詩織(川島鈴遥)。父から病で死んだと聞かされているが、実は自殺ではないかと思いながら、何不自由ない生活の中、空虚な日々を送っている。愉しそうなのは、坂本の所に遊びに来る時だけである。

■そんなある日、坂本の車への落書きが増え、そしてある夜に火が放たれる。だが、坂本は“妄想である、地震で倒壊した家で業火に焼かれる母の姿”が脳裏に過り、逃げようとしない。
残された、優太は母の家に一度は戻るも、男に抱かれる姿を見て、世間に対する怒りを感じながら海に入って行く。それを、止めようとする詩織。
 二人は、夜の海岸で、焚火をしながら夜明けを迎える。
 そして、坂本の認知症になった母が居る名古屋に行くことを約束する・・。が・・。

<ラスト、警察に放火犯として拘留された、優太が刑事(駿河太郎)に氷の様な静かな怒りの眼で”世の中の悪い事は、全部僕がやった!”と言い放ったシーンは、凄かった。
 白鳥晴郁のあの眼は、本当に凄いと思った作品である。>

<2022年10月9日 刈谷日劇にて鑑賞>

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共感した! 6件)
NOBU

3.0小道具の使い方が好き

2022年10月6日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

飽きずには見れた。
ヘッドフォンの使い方が巧いのもあるけどああいった状況が個人的に好き。あの場面のラストは一枚絵としても良かった。良いように言えば、その後が気になる終わり方。

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ルル

4.0救われない者たちへの鎮魂歌

2022年9月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

幸せ

児童養護施設で暮らす優太は母親の居場所を知り、1人施設を抜け出す。
なんとか母親との再会を果たした優太だったが、男に依存し自堕落な生活を送る彼女の姿は優太の知っている母親ではなかった。
遂に母親からも追い出されてしまった優太は、軽トラで暮らしているホームレスの坂本と自分には何もないと言う女子高生の詩織と出会い、自らと似た境遇の2人に徐々に心を開いていくのだが…

「ぜんぶ、ぜんぶです。」
上映終了ギリギリでなんとか観ることができた。
ミニシアターの空気感と規模がぴったりの作品だったので、ミニシアターで観ることが出来て本当に良かったと思う。
親、金、社会…etc
それらから見捨てられた居場所のない3人によるひとときの夢。
少年にはあまりにも残酷なこの夢の結末に心の中はぐちゃぐちゃだった。
自分の名前が主人公と同じだったことに加え、(位置は全然違うけれど)千葉県が舞台だったこともあって、かなり親近感を覚えた。
何度も名前を呼ばれた気がしてハッとする。
しかし、境遇に関しては彼とは全く正反対。
本当に有難いことに私は恵まれているし、親や家族に対しても大きな不満は全くない。
この映画で起こることは映画として多少オーバーに描かれているが、今もすぐそばでこのように苦しんでいる人がいるのは事実だろう。
幸せとは何なのだろうか。
詩織のように裕福な優等生でも幸せじゃないかもしれないし、坂本のように貧乏で最低でも多少の幸せの元自由に暮らす人もいる。
立場や年齢の異なる3人が同じ悩みを抱えて互いを埋め合うように浜辺に集まる姿はなんとも映画的な一幕だった。

親ガチャという言葉があるけれど、親という存在がいかに大切なのか考えさせられる。
施設の人たちや警察が恐ろしい敵のように描かれていたのも印象的。
本当はもっと優しく接していたかもしれないが、優太から見れば皆あんな風に見えていたのかもしれない。
この作品を観たいと思った1番の理由でもあるのが主題歌に大滝詠一の「夢で逢えたら」を選んでいたこと。
希望はすぐ目の前に沢山あるのに残酷な結末を迎えてしまったこの物語に合った優しいメロディ。
1人ホームで優太を待つ詩織のヘッドホンの中にもきっとこの曲が流れていたのだろう。
「これがもしも夢であったら素敵なことね。」
そんな風に言っているような気がした。

〈余談〉
シリアスなシーンなのにテレビでさらばの「男優」っていう本当にあるコントが流れてて笑ってしまった。
地上波で流すようなコントじゃない笑

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唐揚げ
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