第76回毎日映画コンクール「ドライブ・マイ・カー」が日本映画大賞と監督賞 男優、女優主演賞の佐藤健、尾野真千子が喜び語る
2022年2月15日 20:40
第76回毎日映画コンクールの表彰式が2月15日にめぐろパーシモンホールで行われた。受賞者たちが多数来場し、喜びのコメントを寄せた。
1946年に創設された毎日映画コンクールは、約80名の映画評論家や専門家などによって選出される映画賞。2021年1月1日から12月31日までに国内で14日以上、有料で劇場公開された作品が対象となる(アニメーションおよびドキュメンタリーは同時期に完成、もしくは上映された作品)。
今年の米国アカデミー賞の作品賞ほか4部門にノミネートされている濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」は、日本映画大賞と監督賞の2部門に選出。濱口監督は、現在開催中のベルリン国際映画祭で審査員を務めているため、会場にメッセージを寄せた。そこには「歴史ある賞を心より光栄に思っています。この場を借りて一番に感謝をささげたいのは、カメラの前に立ってくれた役者の皆さんです。村上春樹さんに映画化許諾をお願いする手紙を書いた際に、手紙の中で、村上さんにとってのひとつひとつの文字にあたるものが、わたしにとっては役者なのですという趣旨のことを申し上げました。それはつまりわたしの映画にとっては、彼らの存在が本質であるということです。わたしが良い監督に見えているとすれば、それは何よりもまず、画面に映った役者さんの姿や、響いてくる声によって起こることです」と記されていた。
さらに「村上さんの世界観を生身の身体で表現するという非常に困難な仕事をやり遂げた役者の皆さん」という言葉とともに、西島秀俊、岡田将生らをはじめとしたキャスト陣への感謝の言葉、そしてそんなキャストを支えたスタッフへの感謝の言葉がつづられ、最後に「われわれの仕事が多くの人に届いていることをうれしく、誇らしく思っています。そしてこの作品を見つけてくれた毎日映画コンクールさまにあらためてお礼を申し上げます」という言葉で締めくくられた。
そして「護られなかった者たちへ」で男優主演賞を獲得した佐藤健は、「間違いなく、ここに立てるのは瀬々監督をはじめとしたスタッフ、共演者の皆さんのおかげ。ありがとうございます」と感謝のコメント。さらに「自分で何かを頑張ったというよりは、空気に身を委ねたという感じが近いですね。僕も宮城で2カ月ほど撮影していたので、その空気を感じながら。あとは震災当時の、例えば学校などを再現してくださったので。美術の力を借りて、全部身を任せて撮影したという感じでしたね」と述懐。さらに撮影中はコロナ禍だったということもあり、「現場が終わった後にみんなでご飯を食べることもできなかった。他の映画と比べて、共演者とスタッフとコミュニケーションとる時間があまりなくて。だから本当に阿部さんとの共演をすごく楽しみにしていたんですけど、ほぼほぼ挨拶くらいしかしていなくて。お互いの関係性もそうだったから、本当はずっとお話したかったなと思いましたね」と感じていたそうで、「だからまた別の機会で、今回の皆さんとご一緒したいなと思います」と希望を述べた。
なお、「護られなかった者たちへ」からは清原果耶も女優助演賞を獲得。「無事に撮りきれるのか、公開できるのかと。いろんなことにハラハラしながら作った作品なので、多くの皆さんの目にとまったことがうれしいですし、奇跡だなと思います。これからも映画を愛するひとりの人間として、俳優として、成長できるよう、努力していきます」と決意を語った。
また佐藤が関わった作品としてはもう1本。大友啓史監督の「るろうに剣心 最終章 The Final」がTSUTAYA 映画ファン賞・日本映画部門を受賞した。大友監督に「われわれが頑張った日々が報われましたね」としみじみ語った佐藤は、「スタッフも共演者の皆さんも、みんな喜んでいると思います。投票していただいて本当にありがとうございます。皆さまの愛を感じました。その気持ちしっかりと受け取りましたので、それを原動力に変えて、精進していきたいと思います」と決意のコメント。さらに本作のアクションについて「とにかくアクションチームの皆さんが支えてくれて。間違いなく、僕は世界で一番優秀なアクションチームなんじゃないかと思っているんですけど、みんなでああだこうだとアイデアを出しあって。一緒に作っていく過程がうれしかったです」と振り返った。
さらに2011年の第1作から10年という日々における、佐藤の変化について質問された大友監督は「皆さん、ご存じの通りですよ」と誇らしげに語ると、「21歳、22歳くらいの頃から……、いや、その前の(大河ドラマの)「龍馬伝」の頃からですよね。お付き合いさせていただいて。日本を代表する、どこに出しても恥ずかしくない俳優になったなと思いますんで、ぜひ今後とも佐藤健をよろしくお願いします」と呼びかけた。
女優主演賞を獲得したのは「茜色に焼かれる」の尾野真千子。「女優をやっていて、孤独に感じることがありました。でもこの作品に出合えて、ひとりじゃないんだなと。わたしはここで、ひとりでがんばっているんじゃない。みんなでやっているんだと、すごく思えた作品でした。今、とても、みんなと、飲みたいです。こんなうれしいことはありません。ありがとうございました」と感謝の言葉を述べた。また同作からは和田庵、片山友希がともに新人賞を獲得した。そんな3人の俳優陣に対して、石井監督から手紙が送られた。
そこには新人賞を獲得した2人に対して「とてもうれしいと思う反面、少し心配をしています。賞をもらうと、往々にして悪いことが起こるものです。今年はまだ大丈夫だと思いますが、2年後には気を付けてください」と辛口のエール。だが、2人の才能は本作で開花したのではなく、元から才能があったのだということ。そしてそんな2人だからこそ、石井監督は2人をキャスティングしたのだ、というようなことも付け加えられていた。さらに尾野に対しても「片山さんと和田くんが評価されたのは、ほとんど尾野さんのおかげだと思います。尾野さんの圧倒的な熱量と覚悟が若い2人にも伝わったんだと思います。映画の歴史が継承されていくさまを現場で見ることができてうれしかったです」と感謝の思いを述べつつも、「それから尾野さんも2年後くらいです。気を付けてください」と締めくくり、会場を笑いに包んだ。
日本映画大賞:「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督)
日本映画優秀賞:「すばらしき世界」(西川美和監督)
外国映画ベストワン賞:「ノマドランド」(クロエ・ジャオ監督)(ウォルト・ディズニー・ジャパン 目黒敦)
男優主演賞:佐藤健「護られなかった者たちへ」
女優主演賞:尾野真千子「茜色に焼かれる」
男優助演賞:仲野太賀「すばらしき世界」
女優助演賞:清原果耶「護られなかった者たちへ」
スポニチグランプリ新人賞(男性):和田庵「茜色に焼かれる」
スポニチグランプリ新人賞(女性):片山友希「茜色に焼かれる」
監督賞:濱口竜介「ドライブ・マイ・カー」
脚本賞:吉田恵輔「空白」
撮影賞:笠松則通「すばらしき世界」
美術賞:原田哲男「燃えよ剣」
音楽賞:林正樹「すばらしき世界」
録音賞:浦田和治「孤狼の血 LEVEL2」
アニメーション映画賞:「岬のマヨイガ」(川面真也監督)
大藤信郎賞:「プックラポッタと森の時間」(八代健志監督)
ドキュメンタリー映画賞:「水俣曼荼羅」(原一男監督)
TSUTAYA 映画ファン賞・日本映画部門:「るろうに剣心 最終章 The Final」(大友啓史監督)
TSUTAYA 映画ファン賞・外国映画部門:「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(東宝東和 山崎俊)
田中絹代賞:宮本信子
特別賞:岩波ホール(エキプ・ド・シネマの活動、岩波ホール 岩波律子)
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